はじめに
AgVenture Labの山地です。
昨今よく聞かれる「アジャイル開発」「スクラム」といった単語。
これらのモダンな開発手法を社内に広めたい。アジャイルの概念を組織に浸透させ、仕事の仕方やチームマネジメントを変革していきたい。
今回は、そんな理想を持つが専門知識が無く、導入のハードルが高い!という非エンジニアの方でも、アジャイル、特に「スクラム」のエッセンスを体得していただけるようなワークショップを開催しました。その名も、
「スクラム基礎研修 ~アジャイルな動物園を作ろう!~」
このワークショップは、アジャイル札幌様が実施されている紙粘土スクラムをベースに、我々のチームで実施できるようにカスタマイズしたものです。
受講者からどのような反応が来るのか非常にドキドキでしたが、結果としては「今後もぜひ継続開催してほしい」と、非常に大好評。
この記事では、そんな大好評に終わったワークショップの内容や、受講者のリアルな反応などを紹介していきたいと思います。
目次
ワークショップの概要
このワークショップは、一日かけて以下のようなメニューをこなします。
- 前半1.5h: 座学研修(アジャイルの考え方やチーム運営手法の概要)
- 中盤4.0h: 体験ワークショップ(3スプリント分のアジャイル体験)
- 後半1.0h: 振り返りディスカッション(体験を通じた気づきの共有)
前半:座学研修
まずは、受講者にアジャイルの基本的な考え方をインプットしていただくフェーズ。今回の受講者は、非エンジニアの銀行職員だったので、金融系などのレガシーなシステムの開発現場で採用されがちなウォーターフォール開発との違いにフォーカスを当てたり、同業他社でアジャイル開発を導入した事例を織り交ぜて説明することで、より具体的にイメージアップしてもらえるように工夫しました。
中盤:体験ワークショップ
いよいよ、このワークショップのメインとなるフェーズです。スクラムのスキームに則り、3スプリントで「子供連れでも安心して楽しめる動物園」を作ります。
受講者は3〜4人ごとに分かれて開発者(=動物園のスタッフ)、講師側はPO(=動物園の園長)のロールを担い、スクラムチームを作ります。
また、スプリントごとに受講者の中から一人スクラムマスターをたて、各スクラムイベントのファシリテートやチームの観察等を行います。
スプリントの中では、上の画像のように一通りのスクラムイベントをこなしながら、PO(園長)が提示する要望(ユーザーストーリー)に沿って、動物園を開発(粘土をこねる)していきます。
やっていることは「粘土をこねる」でも、短い時間で成果物を作り上げるサイクルを経験することで、自然とアジャイル的な仕事の進め方、考え方が身につく仕組みになっています。
ユーザーストーリー | 受け入れ基準 |
---|---|
園長として、パンダを客に見せたい。なぜなら、パンダは子供に人気で、親子連れの客を集められるからだ。 | ・パンダの区画は出入口から離れたところに配置されていること ・(紙粘土)区画内にパンダが1頭いること ・(紙粘土) パンダは2色であること |
後半:振り返りディスカッション
最後に、体験ワークショップを通じて学んだアジャイルのエッセンスについて、チーム内でのディスカッションを通じてより理解を深めていきます。
あわせて、実際にアジャイルを取り入れているAgVenture Labでの工夫や事例などもご紹介しています。
ディスカッションテーマの例
・ワークショップを通じて気づいたアジャイル開発の特徴
・アジャイルの考え方を今後の業務にどのように活かすか
受講者の反応
冒頭にも述べた通り、受講者からの反応は上々でした。一部、アンケートに寄せられた意見をご紹介します。
- 開発を、粘土をこねるという手を動かす作業に置き換えることで、よりイメージしやすく、かつ飽きることなく取り組むことが出来た。
- 実際にスクラムのサイクルを経験することで、各々のステップが何を目的に何をしているのかを肌感覚を持って理解することが出来た。
- アジャイル開発の「試行錯誤を繰り返して成果物の質を高めていく」という手法は、システム開発のみならず、日常業務でも役に立つ考えであると思った。
講義の時間を極力削り、手を動かす時間を多く確保することで、教科書的な知識だけではなくアジャイルを「肌感覚」で掴んでいただけるようなワークショップを目指していましたが、アンケート結果からそれが効果的であったことが分かります。
まとめ
このワークショップ最大の利点は、冒頭にも述べたように非エンジニアの方々でもアジャイルのエッセンスを体感してもらえることです。
ワークショップのテーマが「動物園」というとっつきやすいものであり、かつワークショップで実際にすることは「粘土をこねること」なので、受講者の知識レベルや能力差を考慮する必要が全く無く、非エンジニアの方でも安心して参加することができます。
また、単にアジャイルの知識を身につけることができるだけでなく、学んだことを楽しい記憶として持ち帰っていただけるため、記憶に残りやすい(=知識の定着度が高い)のも、このワークショップならではの良さだと思います。
総括して、このワークショップは非エンジニアへのアジャイル教育のとっかかりとして、非常に有効であると感じます。