この記事は ここのえ Advent Calendar 2023 最終日の記事です。
Introduction
かれこれ2年ぐらい前の事になりますが、大学在学中に学内向けのLT大会を学部~院の約5年間運営していました。その他にもサークルのLT立ち上げや、エンジニア関連の友人でクローズドなLTも実施しています。
長期間にわたってあちらこちらでLTを運営していることもあり、色々と知見が溜まっているのでどこかでアウトプットできないか?と長らく考えていたのですが…… この話題、5分で全然収まらないのでLTのネタにできません。
ということでずっとモヤモヤしていたのですが、今回丁度ひとりAdvent Calendarの締めくくりとして記事にまとめてみます。制限がないことをいいことに結構なボリュームになっています。まあまあ泥臭い内容も多いのですが、良ければ最後までお付き合いください。
準備フェーズ
発表ジャンルと開催頻度
一般論で言えば、LTのテーマ設定は ジャンルが広い方が良い です。
大半のLTイベントの持ち時間は5分、長くても10分程度です。持ち時間が短いため発表準備のコストが低く、1回でたくさんの発表者が登壇できるところがLTのメリットです。
それらの発表を話題として生まれるコミュニケーションというのも、LTイベントの面白さです。特にジャンルを限定しないLTでは、エンジニアとデザイナーのような異分野の交流で新たな発見が生まれる事もあります。
また ジャンルの広さに応じて、開催頻度についても考慮すべき です。
ジャンルが広いほど参加対象は増えるので、開催頻度が高くても継続して一定数の参加者が望めます。肌感覚ですが、常連参加者の規模が 50人以下の場合は隔月
、60~70人以上の場合は月一
が成立するラインだと考えています。
逆に「LaravelについてのLT」のように特定のフレームワークまで絞ってしまうと、四半期に1回
ぐらいのラインがギリギリかな、と思います。ジャンルが狭いと連続してネタが出しづらいことは勿論ですが、短時間の枠で発表できるという制約が付き内容が絞られ、更に発表者同士がネタ被りを警戒したり…という事になるので中々大変です。ただジャンルを制限すればするほど内輪ネタが通じるので、盛り上がりは凄まじいです。
発表者の募集
何がともあれ、発表者が集まらないとLTイベントとして成立しません。
告知前に最低3~4人にはLT出ませんか?と声をかけておくのがベストです。特に初回イベント時・参加数が低迷している時は、スケジュール発表してくれそうな人たちの日程を予め聞いて開催日を決めた方が安心できます。泥臭い感じになってしまいますが、発表者あってのLTです。
継続して実施していくのであれば、次回以降発表してくれる可能性のある潜在層を掘り起こすことも重要です。LTには興味があるが、参加したことがなく発表できる自信がない…という知人を見かけたら、一旦観覧側で参加してみませんか?と積極的に声をかけたほうが良いです。
タイムテーブルを考える
「エンジニアLT会」「デザイナーLT会」ぐらいの粒度であれば、大雑把に分類して並べて行ったり、登録順でそのまま設定していけば問題ありません。
ただしオールジャンルLTの場合そうもいかず、タイムテーブルの設定に熟慮が必要です。前半がエンジニアばかり、後半がデザイナーばかりのように偏ってしまうと、知らない話ばかりが連続してしまうため飽きてしまいます。妥当なラインとしては理系2・文系2・理系2…といったように、2つずつ交互ぐらいが丁度良いと思います。
そういった広範なジャンルで実施するのであれば、参加時にそもそも枠を設けることも有効です。
エンジニア3
・デザイン3
・マネジメント2
・フリー枠5
のように前もって枠を設定しておくと、タイムテーブルの調整に加えてジャンル分けも容易になります。発表者が特定のジャンルに偏ってしまうと、次回以降の開催で「どうせエンジニアの話題ばっかりだしな…」のように、主要層以外が参加を敬遠する理由にもなります。これを回避するためにもオールジャンルでの枠制限は有効です。
ただ、稀に何を発表してもおもしろいLT怪人みたいな人がいます。専門的すぎる話題を話していて何言ってるのか分からないのに聞き手にとって面白くなるようなプレゼンをする、達人みたいな人です。こういう人に限っては、タイムテーブルの序盤や、休憩開けに配置して上げるとLT全体の雰囲気が良くなるので、例外的に配置を変えるのもアリです。
開催前の盛り上がりを可視化し、運営のモチベ・危機意識に繋げる
オープンなイベントであれば、告知のタイミングで、Connpass のようなイベント用プラットフォームでページを作成しておくことを強く推奨します。
参加者の管理が簡単になることは言うまでもありませんが、何より発表者・参加者の人数がオープンに公開される ことが大きいです。
リアルタイムで人数が更新されるため、運営にとってはイベントの告知・宣伝の効果が体感しやすくなります。参加者が少ないようであれば、開催までの日数を確認しつつ「そろそろ頑張らないとまずいな」と運営のケツに火が付く要因にもなります。
募集効果の観点でも利益があります。参加者数がオープンになることで、人数が多いと「みんなも参加してるから参加してみるか?」といった、所謂バンドワゴン効果が期待できます。また少人数だと参加を躊躇ってしまうような層に対して、一定の効果があります。参加枠が決まっている場合は、「残りn枠だからとりあえず登録しとくか」と早めの登録を促す効果もあります。
他団体との繋がり
要はイベントを実施するにあたり仲間を増やしておきたいという事です。
例えば学内LTであれば、プログラミング系のサークルやクリエイター系のサークルを仲間につけたり、面白いことをやっている研究室などに声をかけておきます。その他の組織内では勉強会などのグループに声をかけておくのが良いと思います。
他団体とのコネクションがあるとイベント開催の告知を流しやすくなり、同じようなコミュニティに属している場合はイベント日程の被らないように確認もできます。ただし仲良くする団体が偏っているとLTの参加者も偏って、だんだん内輪LTになる危険性もあるため程々に。
当日
機材テストは可能ならやったほうが良い
発表者がPCをそれぞれ接続するタイプのLTの場合、機材テストは行っておいた方が良いです。
10人ぐらい発表すれば、大抵1人ぐらいは 接続でトラブります 。
大抵の会場ではHDMI、たまにD-Subが対応という感じになりますが、世の中にはType-C出力しかできないPCが山のように存在します。挙句の果てにはiPadを持ってきてLightning-HDMI欲しいんだけど…と急に言われることもあります。ちなみに一番ヤバいのはMini DPが来た時です
どうしても発表者も人間なので、注意力も有限です。LTの発表資料をギリギリまで作って変換器を忘れた、というケースはしょっちゅうあります。逆に3人いれば文殊の知恵とは言ったもので、発表者が少し前に会場入りしておき、もし忘れた人が居たら他の発表者から貸してもらう、といった段取りをつけておくとタイムテーブルが狂わなくなります。Mini DPマンは変換器を忘れたら、諦めてスライドを他の人に送りましょう
質疑応答を活発にするには?
質疑応答が出づらい環境の場合、これを解決するのは結構難しい問題です。どうしても発表内容や客層によっては、こういった事態は発生します。明確な解決策はありませんが、試してみて有効だった案を紹介しておきます。
1. 運営ががんばる
最初から本末転倒ではありますが、一番能動的に解決できます。質問が出なそうであれば運営側が質問を上げます。機材トラブル防止のために発表用PCを運営が用意し、先に資料を送ってもらって確認する形式をとる場合については、予め質問を考えておくのもアリです。まあまあ卑しい技ですが有効です。
2. (deprecated)ハッシュタグなど、コメントを拾いやすい仕組みを定義する
例えばコメントを拾いたいのであれば、Twitterでハッシュタグを決めておくという手がsilver bulletに近い解決策でした。が、青い鳥がいなくなって各地のSNSに散り散りになってしまったので、中々最適解とは言い難いです。開催するコミュニティがまだ X ユーザーが多ければ使えはしますが、Tweetdeckがないとリアルタイム性が担保できません。
3. Slack, Discordで専用チャンネルを作る
組織内でSlackやDiscordといったツールを使っているのであれば、そこに専用のチャットルームを設けて発信できるようにするのが最適です。質問の挙手が出なければ、運営側も匿名コメントを拾って質問を投げることもできます。チャットだと送る側のハードルも低いのでお勧めです。
少し脱線してしまいますが、オープンなコミュニティではDiscordなど作っておくと良いでしょう。開催期間外も色々と参加者の交流が生まれますし、当日も前述の通りチャットルームとして活用することもできます。またイベント告知時も確実に興味を持ってみてくれる層に対して、確実に告知を伝達することが出来るので優秀です。
4.専用チャットサーバーを設ける
これはエンジニア特有の解決策になってしまいますが、その場限りのチャットツールをホスティングしておいて当日参加者に周知、使ってもらう方法です。DiscordやSlackと異なり匿名チャットにすることも可能なので、OBSに乗せてスライドに直接コメントを表示するのも面白いです。開発コストが高い上、配信にキャプボが必要になるので積極的にはお勧めしません。
開会式・閉会式は面倒でもやる
イベントの開会式・閉会式はスライド作成の手間があり、正直面倒だとは思います。ただやったほうがメリットが大きいです。ここまで紹介した小技を全部放り込めます。
例えば開会式では、他団体とのつながりがあれば後援という形での紹介、どうにも映像の変換ケーブルなどの機材が見つからなければ参加者に声をかけて貸してくれる人がないか探す、質疑応答のためのチャットツールやハッシュタグのアナウンス、全てここに集約できます。
また定期開催のイベントであれば、閉会式でアンケートを案内するのも大切です。匿名アンケートの方が忌憚なく意見を送信しやすいですが、発表者か参加者かの判別はつくように設定します。可能なら閉会式の中で1~2分書く時間を設けると提出率が上がります。
終了後の対応
運営メンバーの募集
運営メンバーが少人数なのであれば、常連の発表者さんがいれば運営メンバーにならないか声掛けしてみましょう。運営サイドだと発表者が足りない時にお願いしたり、人が多いほど友達の友達を呼んでこれるのでメリットは大きいです。
反省会の実施
アンケートや当日のお客さんの反応を基に、少しだけ反省会を行います。運営メンバーが確実に集まっているので、当日終了後にそのままやってしまった方が良いです。
反省会も会議と同じで、長ければ長いほど運営メンバーの負担が大きくなります。手短に行いましょう。たいていの場合はイベントはお仕事ではなくボランティアなので、負担が多いとメンバーが自然消失していきます。
オンラインLT特有の対応
オンラインLTの場合は場所確保・日程調整は簡単になりますが、接続テストや配信環境など特有の準備が必要になります。
接続テストが非常に重要
実地開催と異なり、オンラインは絶対に接続・配信テストを前日までに行うべきです。オンラインLT未参加者のうち3人に1人ぐらいは問題が起きます。
可能ならチェックするのも同じような時間帯にします。開始が19:00ならそれぐらいの時間にテストして、各自の通信状況が大丈夫そうかも確認します。最悪だめそうならスライドを先に貰っておいて、発表者に指示をもらって運営がページめくりします。
運営・発表者共に手間になるのは間違いないのですが、当日に接続がうまくいかない、音が出ない、映像が出ないの三拍子でグダグダにならないための最低限の備えです。
配信環境はどうするか?
オンラインで実施する場合、幾つかの開催形式が想定されます。
1.各種配信サイトでの配信
Youtube, Twitch, ツイキャスといった各種ライブ配信ができるサービスを使ってイベントの配信を行います。オープンなイベントを実施しているのであれば、最も効果的な配信方法です。大手の配信サービスであれば接続の安定性もかなり保証されるので、発表側に問題がなければ止まることはありません。
また運営側で映像のスイッチングなどを自由に行うことができるため、イベントの画作りがしやすくなります。また配信画面にコメントを載せるなどの芸当が可能になります。イベントロゴのウォーターマークが配信に乗っていたりすると、それっぽい感じが出てとても良いです。
この場合発表サイドはDiscordやZoomを使って画面共有し、それを運営側がOBSで拾って映像で送れば大丈夫です。意外と手間はかかりません。
2.DiscordサーバやZoomでクローズドに配信
一般的なやり方ですが、DiscordサーバやZoomなどを用意してそこで配信する方法です。社内イベントやサークル内のイベントなど、比較的クローズドな範囲での開催ならこれがお勧めです。各種配信サイトでの配信に比べて準備コストを抑えられるので、コンパクトにオンラインイベントが実施できます。
ただしどのプラットフォームも多くて100人程度が限界で、ウェビナー機能を使うと別料金というのもしばしばあるため、人数の規模次第では配信プラットフォームを使う事も検討に入れたほうが良いです。
オープンなイベントの場合はDiscordサーバへの参加など、参入障壁がそれなりに高くなってしまうため最適とは言えません。ただし参加者の質の向上のため、敢えてハードルを上げる手もあります。
3.メタバースでやる
これは特殊例ですが、メタバース上でLTイベントを実施するという変化球もあります。参加者のリアクションも配信形式に比べて分かりやすいのでかなりメリットはありますが、事前にソフトウェアのインストールが必要な場合もあり、参加者に忌避される傾向があります。例外的にxR関係のイベントであれば参加者の親和性が高いので、ClusterやVRChatでのイベントが好まれることもあります。
オンラインイベントで運営がやるべきこと
オンラインでは特に司会、MC、ひいてはストリーマーのような役割が求められます。
実地開催と異なり質問は基本的にコメントで投げられることが多いのですが、発表者はスライドの表示で全画面にしていることが大半で、コメントが見えない状態です。発表中に流れるコメントに至ってはなおさらどうにもなりません。そのため運営側が質問コメントを常時監視し、発表が終わったらコメントをひたすら裁いていきます。司会一人だとどうしても見逃しが発生してしまうので、可能なら司会意外にもう一人コメントを見る係がいると安心です。
特に配信プラットフォームを使ったイベントでは顕著です。ZoomやDiscordと異なり観覧者が参加することができないため、直接質問する方法は一切存在しません。YoutuberやTwitchのストリーマーのようにどんどんコメントを処理していきましょう。
学生も社員にも、終わりがある
嫌な話になってしまいますが、学内LTや社内LTでは メンバーが消えていく事が前提である ことを頭の片隅に置いておきましょう。
特に自分が立ち上げたイベントであれば、ずっとコアメンバーとして活動していきたい気持ちもよくわかります。多忙を極めた結果都合がどうしても合わなくなったり、急に体調不良になってしまったり、などなど予期せぬ要因は至る所に潜んでいます。ただ折角立ち上げたイベントが消えてしまうのは、往々にしてかなしいものです。
属人化を一切排するべき、とは言いませんが運営メンバーが一人抜けても円滑に運営できるよう、簡素なものでも構わないのでマニュアルを用意したり、イベント管理ページの確認やタイムテーブルの設定、会場準備といった専門性を要求しない業務は交代で行うのが良いでしょう。
まとめ
かなりの長文になってしまいましたが、割と地味な内容も多かったと思います。イベントの成功は人が集まってこそなので、参加者とのコミュニケーションを地道にやっていくしかありません。ただし、そこにイベントがあるからこそ、予期せぬ人が集まって来て新たな化学反応が起きるという体験する機会の少ない面白さがあるのも事実です。
LTや勉強会の運営にはそれなりにパワーが必要ですし、悩むことも多いと思います。自分も運営側として、参加数が低迷した時期はどうしようかとかなり頭を抱えました。色々解決していってもコロナによるオンラインイベントなど時勢に振り回されることもあり、どこまでいっても試行錯誤の連続です。会社は生き物、試合は生き物なんて名言もありますが、実際の所イベントも似たようなものだなあと実感します。
長文となってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事がLTイベント立ち上げのきっかけになったり、運営周りに悩んでいる人の微力にでもなれればうれしいな…という気持ちです。