Youtube チャネル 伝説のSpice さん経由で, LTspice がバージョンアップしたことを知った.
あたらしい LTspice に追加された機能を少し工夫することで,スイッチトキャパシタ回路 (SC回路) の特性がシミュレーションできたので,その流れを紹介する.
LTspice の FRA 機能
新しい LTspice には Transient Frequency Response という解析が追加されていて,こちらも新しく追加された fra ブロックと組み合わせて使と,過渡解析の結果から周波数ごとの成分を抜き出して周波数特性としてプロットしてくれる.信号源の周波数掃引も過渡解析条件の設定も自動的に制御してくれるのでとても便利である.
fra ブロックには2種類のモードがある.
今回は,Impedance vs. Frequency を使用した.
使用例:スイッチトキャパシタ抵抗の周波数特性解析
スイッチトキャパシタ回路を解析するうえで問題なのは,fra が「電流を出力して電圧を測定する」という点である.スイッチトキャパシタ回路は「電圧」をスイッチ経由で容量にサンプリングし,その電荷を演算に使う.しかしながら fra ブロックは「電流」を出すので,スイッチトキャパシタ回路側でスイッチをオフにしても電流を止めることができず,スイッチのオン抵抗とオフ抵抗の平均的な抵抗値が見えるだけになっていまう.
そこで,fra が出力する電流を電圧に変換してスイッチトキャパシタ回路に与え,流れる電流を電圧に変換して fra にもどす,という構成をとった.電圧と電流が入れ替わるので, Transient Frequency Response 解析結果として出力されるインピーダンスも逆数をとる必要がある.
容量 10pF,クロック周波数 1MHz の簡単なスイッチトキャパシタ抵抗のインピーダンスの周波数特性を計算した例を以下に示す.抵抗値として期待される抵抗値 (1/10pF/1MHz = 100kΩ) が得られた.
この時の過渡解析波形は次のようになる.周波数を自動的に掃引している様子がわかる.なお, fra ブロックの設定にある Max # of Simultaneous Harmonics を 2 以上に設定すると,整数倍の周波数を重ね合わせて同時に解析するようになり,解析時間が短縮される.
まとめ
fra ブロックと Transient Frequency Response 解析を使用して,スイッチトキャパシタ抵抗のインピーダンスの周波数特性をプロットする手順を示した.この機能はかなり使い道がありそうなので,また検討したい.