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クラウド時代のデータ戦略:AWSデータベース・ストレージ完全攻略への道:Day 5 - 共有ファイルシステム:EFSとFSxで実現する柔軟なデータ共有

Last updated at Posted at 2025-07-20

Day 5: 共有ファイルシステム:EFSとFSxで実現する柔軟なデータ共有

皆さん、こんにちは!「AWSデータベース・ストレージ完全攻略」のDay 5へようこそ!

これまで、S3という「無限のオブジェクトストレージ」と、EC2インスタンスに「直接接続するブロックストレージ」であるEBSについて深く掘り下げてきました。S3はウェブコンテンツやデータレイク、バックアップに、EBSはOSやデータベースのデータディスクに適していましたね。

今日は、これらとは異なるニーズに応えるストレージサービス、共有ファイルシステムに焦点を当てます。具体的には、複数のEC2インスタンスやオンプレミス環境から同時にアクセスできるAmazon EFS (Elastic File System) と、特定の商用ファイルシステムをマネージドサービスとして提供するAmazon FSxについて学びます。これらのサービスは、分散アプリケーションや共有データが必要なワークロードにおいて、非常に強力な選択肢となります。

Day 5_ 共有ファイルシステム:EFSとFSxで実現する柔軟なデータ共有 - visual selection.png


1. 共有ファイルシステムとは何か?:S3・EBSとの比較

まず、「共有ファイルシステム」がなぜ必要なのか、そしてS3やEBSとどのように異なるのかを理解しましょう。

  • S3 (オブジェクトストレージ):

    • 多数のアプリケーションからの同時アクセスが可能ですが、ファイルシステムのような階層構造やPOSIX(Portable Operating System Interface)準拠のファイルロック機能などは提供しません。データはHTTP/HTTPS経由でオブジェクトとして扱われます。
    • ユースケース:データレイク、静的ウェブサイト、バックアップ。
  • EBS (ブロックストレージ):

    • 基本的に単一のEC2インスタンスにのみアタッチできます(Multi-Attach対応のio1/io2は例外ですが、ファイルシステムの一貫性はアプリケーション側で管理が必要です)。
    • OSから通常のディスクドライブのように見え、POSIX準拠のファイルシステムを構築できます。
    • ユースケース:OSブートボリューム、データベースのデータディスク。
  • 共有ファイルシステム (EFS/FSx):

    • 複数のEC2インスタンスやオンプレミスのサーバーから、同時に同じファイルシステムにアクセスできる点が最大の特徴です。
    • POSIX準拠のファイルシステムセマンティクス(ファイルロック、ディレクトリ構造など)を提供するため、オンプレミスの共有フォルダと同じ感覚で利用できます。
    • ユースケース:コンテンツ管理システム、開発環境、ビッグデータ分析、メディア処理、コンテナ環境。

簡単に言えば、EFSやFSxは、まるでオフィス内の共有ファイルサーバーのように、複数のコンピューターから同じファイルを同時に操作できるクラウドサービスと考えると分かりやすいでしょう。


2. Amazon EFS (Elastic File System):クラウドのNFS

Amazon EFSは、AWSが提供するフルマネージドなスケーラブルなネットワークファイルシステム (NFS) です。LinuxベースのEC2インスタンスから、標準的なNFSv4プロトコルを使用して簡単にマウントできます。

EFSの主な特徴

  • 高いスケーラビリティ:
    • データ量に応じて自動的にストレージ容量が拡張されます。事前に容量をプロビジョニングする必要がなく、ペタバイト規模までシームレスにスケールします。
    • パフォーマンスは、ストレージに保存されているデータ量に応じてスケールする「バーストスループットモード」と、スループットを固定でプロビジョニングする「プロビジョニング済みスループットモード」の2種類があります。
  • 高い可用性と耐久性:
    • データは単一のリージョン内の複数のアベイラビリティゾーン(AZ)に冗長的に保存されます。これにより、単一AZ障害が発生してもデータが失われることはありません。
  • フルマネージド:
    • ファイルシステムのプロビジョニング、パッチ適用、バックアップ、リカバリなどをAWSが管理するため、運用負担が大幅に軽減されます。
  • POSIX互換:
    • 標準的なファイルシステムインターフェースを提供するため、既存のLinuxアプリケーションをほとんど変更することなく移行できます。
  • 料金体系:
    • 保存したデータ量と、データアクセス量(読み込み/書き込み)に基づいて課金されます。
  • 多様なアクセス方法:
    • EC2インスタンス、AWS Lambda、Amazon ECS/EKSコンテナ、AWS Fargate、さらにAWS Direct ConnectやAWS VPNを介してオンプレミス環境からもアクセス可能です。

EFSのストレージクラス

EFSもS3と同様に、コストとアクセス頻度を最適化するためのストレージクラスを提供しています。

  • Standard: 最も頻繁にアクセスされるデータに適しています。リージョン内の複数のAZにデータを保存し、高い可用性を実現します。
  • Infrequent Access (IA):
    • EFS Standard - Infrequent Access: 過去30日間アクセスされていないファイルは自動的にこのクラスに移動され、ストレージコストを削減します。データ読み取り時にアクセス料金が発生します。
    • EFS One Zone - Infrequent Access: データが単一のAZに保存されるため、Standard IAよりもさらに低コストです。ただし、AZ障害時にはデータが失われるリスクがあります。再生成可能なバックアップデータなどに適しています。

活用術:

  • ライフサイクル管理: EFSのライフサイクル管理機能を利用し、アクセス頻度に応じて自動的にStandardからInfrequent Accessクラスへ移行させることで、コストを最適化できます。

3. Amazon FSx:特定の商用ファイルシステムのマネージドサービス

Amazon FSxは、Microsoft Windows File Server、Lustre、OpenZFS、NetApp ONTAPなど、特定の商用またはオープンソースの高性能ファイルシステムをフルマネージドサービスとして提供します。EFSが汎用的なNFSを提供するのに対し、FSxは特定のファイルシステム機能やパフォーマンス特性が必要な場合に選択されます。

FSx for Windows File Server

  • 特徴:
    • Windowsアプリケーションとの完全な互換性を提供。SMB (Server Message Block) プロトコルをサポートし、Active Directoryとの統合、DFS (Distributed File System) Namespace、シャドウコピーなどの機能が利用できます。
    • SSDまたはHDDベースのストレージを選択でき、高I/Oパフォーマンスまたはコスト効率の良い大容量ストレージを提供します。
    • 複数のAZにまたがるマルチAZデプロイメントにより、高い可用性を実現できます。
  • ユースケース例:
    • オンプレミスのWindowsファイルサーバーのクラウド移行
    • Microsoft SQL ServerなどのWindowsアプリケーションの共有ストレージ
    • SharePointやDynamics AXなどのエンタープライズアプリケーションのファイル共有

FSx for Lustre

  • 特徴:
    • 高性能コンピューティング (HPC) ワークロード向けに設計されたオープンソースのファイルシステム「Lustre」をベースにしています。
    • 数千台のクライアントからの同時アクセス、テラバイト/秒のスループット、ミリ秒以下のレイテンシーを実現できます。
    • S3と連携し、S3バケットをファイルシステムのデータレイクとして利用できます。
  • ユースケース例:
    • 機械学習のモデルトレーニング、ゲノムシーケンシング、電子設計自動化 (EDA) などのHPCワークロード
    • メディア処理、動画レンダリング

FSx for OpenZFS

  • 特徴:
    • 人気のあるオープンソースファイルシステム「OpenZFS」をベースに、高性能なファイルストレージを提供します。
    • データの圧縮、重複排除、ポイントインタイムスナップショット、クローン作成など、OpenZFSが持つ高度なデータ管理機能を利用できます。
  • ユースケース例:
    • ハイパフォーマンスコンピューティング、金融分析、データベースストレージ、開発/テスト環境

FSx for NetApp ONTAP

  • 特徴:
    • エンタープライズストレージのリーダーであるNetApp ONTAPの機能(NFS, SMB, iSCSIプロトコル、データ削減、レプリケーション、スナップショットなど)をAWS上で利用できます。
    • データ保護、可用性、効率性に優れたエンタープライズワークロードに最適です。
  • ユースケース例:
    • SAPアプリケーション、VMware Cloud on AWS、データベース、開発/テスト環境

4. EFSとFSxの選択肢:いつどちらを使うべきか?

EFSとFSxはどちらも共有ファイルシステムですが、最適な選択はユースケースと要件によって異なります。

特徴/要件 Amazon EFS Amazon FSx
ファイルシステムタイプ NFSv4 (Linuxネイティブ) Windows SMB, Lustre, OpenZFS, NetApp ONTAP
OS互換性 Linuxがメイン (NFSクライアントがあればWindows/macOSも可) Windowsがメイン (FSx for Windows) / Linux (Lustre/OpenZFS/ONTAP)
マネージドレベル フルマネージドで設定項目が少ない フルマネージドだが、より詳細な設定が可能
スケーラビリティ データ量に応じて自動でスケーリング 事前にプロビジョニングが必要(容量とスループット)
パフォーマンス 容量に依存してスケーリング(バースト/プロビジョニング済み) 高いパフォーマンスとスループットを保証 (HPCなど)
価格モデル 保存データ量 + アクセス量 プロビジョニング済み容量 + スループット + α
ユースケース 汎用的なファイル共有、ウェブコンテンツ、開発環境、ビッグデータ、コンテナ Windows依存アプリ、HPC、特定のエンタープライズ機能

選択のポイント:

  • Linuxベースの汎用的な共有ファイルシステムが必要な場合: EFS
    • アプリケーションがNFSプロトコルをサポートしている
    • 予測不能なデータ量の変化に対応したい
    • 管理の複雑さを最小限に抑えたい
  • Windowsネイティブのファイル共有機能が必要な場合: FSx for Windows File Server
    • 既存のWindowsアプリケーションをクラウドに移行したい
    • Active Directory統合やDFSなど、Windowsファイルサーバー固有の機能が必要
  • 高性能コンピューティング(HPC)やメディア処理など、極めて高いスループットと低レイテンシーが求められる場合: FSx for Lustre または FSx for OpenZFS または FSx for NetApp ONTAP
    • S3をデータレイクとして利用しつつ、高速な一時ストレージが必要な場合にもFSx for Lustreは強力です。
  • 既存のNetApp ONTAP環境をAWSに拡張したい場合: FSx for NetApp ONTAP

5. AI企業におけるEFSとFSxの活用例

AI企業において、EFSとFSxはデータ共有とコラボレーション、そして高性能なデータ処理の基盤として活用されます。

  • 共同開発環境のデータ共有:
    • 複数のAI/MLエンジニアが共通のコードベース、スクリプト、小さなデータセットを共有する開発環境でEFSを利用。各エンジニアのEC2インスタンスから同じファイルシステムにアクセスし、開発効率を高めます。
  • モデルトレーニングのデータ共有:
    • 特に大規模なモデルトレーニングでは、複数のEC2インスタンス(GPUインスタンスなど)やコンテナが同じ学習データセットにアクセスする必要があります。
    • EFS: バッチ学習の学習データセットや、トレーニング済みモデルのチェックポイントの共有に利用。
    • FSx for Lustre: 極めて高速なデータI/Oが求められる大規模分散トレーニングにおいて、S3上のデータレイクから一時的にデータを読み込み、高速に処理するためのスクラッチスペースとして利用。
  • コンテンツ管理システム:
    • AIによって生成された画像、動画、音声などのメディアコンテンツを保存し、複数のアプリケーションやユーザーがアクセスする共有ストレージとしてEFSまたはFSx (Windows/ONTAP) を利用。
  • ログファイルの一元管理:
    • 複数のサーバーやコンテナから発生するログファイルをEFSに集約し、一元的に管理・分析することで、AIアプリケーションの動作状況を把握しやすくします。
  • データレイクのキャッシュ層/高速層:
    • S3をメインのデータレイクとしつつ、頻繁にアクセスされるホットデータや、リアルタイム性が求められるデータに対してEFSやFSx for Lustreをキャッシュ層として利用することで、S3への直接アクセス頻度を減らし、パフォーマンスを向上させます。

まとめとDay 6への展望

今日のDay 5では、共有ファイルシステムという概念を深く理解し、AWSが提供する主要なサービスであるAmazon EFSとAmazon FSxについて学びました。

  • EFSは、Linux環境における汎用的な、自動スケーリングと高可用性を備えたNFS共有ストレージとして、多くのユースケースに対応できます。
  • FSxは、Windowsアプリケーションとの互換性や、HPCワークロード向けの超高速I/Oなど、特定の高性能なファイルシステム機能が求められる場合に最適な選択肢となります。

これらの共有ファイルシステムは、複数の計算リソースが協調して動作する分散アプリケーションや、大量のデータを共有する必要があるAI/MLワークロードにおいて、その真価を発揮します。

明日のDay 6では、アクセス頻度が非常に低いながらも、長期的な保存が求められるデータに最適なアーカイブストレージサービス、特にAmazon GlacierS3 Glacier Deep Archiveについて詳しく解説します。コスト効率の良い長期データ保存戦略を学んでいきましょう。

それでは、また明日お会いしましょう!


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