25日目: パイプラインの障害対応とトラブルシューティング
はじめに:問題は必ず起こる。いかに迅速に対処するか
皆さん、こんにちは!👋 これまで、私たちはCI/CDパイプラインを構築し、それを堅牢にするための様々なテクニックを学んできました。しかし、どんなに完璧に設計されたパイプラインでも、障害や予期せぬ問題は必ず発生します。ソースコードのバグ、環境設定の不一致、依存ライブラリの脆弱性、そしてAWSサービスの障害など、その原因は多岐にわたります。
重要なのは、問題が起こらないようにすることではなく、「問題が起こったときに、いかに迅速に原因を特定し、対処できるか」です。本記事では、CI/CDパイプラインの運用中に発生しうる障害とその対応方法、そしてAWS CodeFamilyのツールを使った効果的なトラブルシューティングの手法について解説します。
1. 障害発生時の基本的なアプローチ
パイプラインが失敗した場合、以下の手順で原因を特定していくのが一般的です。
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CodePipelineコンソールで全体像を把握する:
まず、CodePipelineのコンソールで、どのステージ(例:Source
、Build
、Deploy
)の、どのアクションが失敗したかを確認します。失敗したアクションは赤く表示されるため、一目でわかります。 -
失敗したアクションの詳細を確認する:
失敗したアクションをクリックし、詳細画面に移動します。ここでは、CodeBuildやCodeDeployといった実行されたサービスのログへのリンクが表示されます。 -
ログを深く掘り下げる:
ログはトラブルシューティングの鍵です。CodeBuildやCodeDeployのログには、buildspec.yml
やappspec.yml
のどのコマンドでエラーが発生したか、どのようなエラーメッセージが出力されたかが記録されています。これを手掛かりに、問題の原因を特定します。
このアプローチはシンプルですが、CI/CDのトラブルシューティングにおいて最も重要なステップです。
2. AWS CodeFamilyツールを使ったトラブルシューティング
CodeBuildのトラブルシューティング
CodeBuildでビルドが失敗する場合、主な原因は以下のいずれかです。
-
ビルド環境の問題:
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依存関係の不足:
buildspec.yml
で指定したpip install
コマンドが失敗している場合。ビルドログでインストール失敗のエラーメッセージを確認します。 -
Dockerのビルド失敗:
Dockerfile
の記述ミスや、ベースイメージの問題など。
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依存関係の不足:
-
buildspec.yml
の記述ミス:- コマンドのタイポ: 存在しないコマンドを実行しようとしている。
-
パスの不一致: ビルド成果物のパス(
artifacts
)が、実際にファイルが生成されたパスと異なっている。 -
フェーズの誤り: 実行すべきコマンドが間違ったフェーズ(例:
install
フェーズでテストを実行)に記述されている。
ログの活用:
CodeBuildのビルドログは、コンソールの「ビルドログ」タブで確認できます。このログは、install
、pre_build
、build
、post_build
といったフェーズごとに整理されているため、問題が発生したフェーズに絞って調査ができます。
CodeDeployのトラブルシューティング
CodeDeployでデプロイが失敗する場合、主な原因は以下のいずれかです。
-
appspec.yml
の記述ミス:-
ファイルのパス:
files
セクションで指定したファイルパスが正しくない。 -
フックのスクリプト:
hooks
セクションで指定したスクリプト(例:BeforeInstall.sh
)が存在しないか、実行権限がない。 -
タイポ: ディレクティブ(
files
やhooks
)のタイポ。
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ファイルのパス:
-
IAM権限の問題:
- EC2インスタンスのIAMロール: CodeDeployエージェントが、S3バケットからデプロイバンドルを取得したり、他のAWSサービスにアクセスしたりするためのIAM権限がない。
- CodeDeployサービスロール: CodeDeployがEC2インスタンスを管理したり、ロールバックを実行したりするための権限がない。
ログの活用:
CodeDeployのデプロイログは、EC2インスタンス上の特定のパスに保存されています。SSHでインスタンスに接続し、以下のログファイルを確認します。
/opt/codedeploy-agent/deployment-root/.../logs/scripts.log
/var/log/aws/codedeploy-agent/codedeploy-agent.log
共通のトラブルシューティング
- IAMロール: 複数のAWSサービスが連携するCI/CDパイプラインでは、IAM権限が不適切に設定されていることが、最も一般的な失敗原因の一つです。
- 環境変数の不一致: CodeBuildとCodeDeployで、同じ環境変数を使っているのに値が異なっている場合。
- タイムアウト: 各アクションにはタイムアウト時間が設定されています。ビルドやデプロイに時間がかかりすぎる場合、タイムアウトによって強制的に失敗することがあります。
3. ロールバック:問題解決までの緊急避難
トラブルシューティングに時間がかかりそうな場合、問題のあるバージョンを放置することはできません。20日目で学んだロールバックを実行し、迅速に安定したバージョンに戻すことが最優先です。
- CodeDeployコンソール: CodeDeployのデプロイメント履歴から、以前の成功したデプロイメントを選択し、「再デプロイ」を実行することで、簡単にロールバックできます。
- ブルー/グリーンデプロイ: ブルー/グリーンデプロイ戦略を使っている場合、トラフィックを以前の安定した環境(ブルー)に戻すだけで、瞬時にロールバックできます。
ポイント:
ロールバックは、あくまで一時的な緊急避難です。根本的な原因を特定し、修正した上で、再度パイプラインを実行してデプロイすることが重要です。
まとめ:ログを読み解く力こそが鍵
本日は、CI/CDパイプラインの運用中に発生する障害とその対応方法、そしてAWS CodeFamilyのツールを使ったトラブルシューティングの手法について学びました。
- 基本的なアプローチ: CodePipelineコンソールで全体像を把握し、CodeBuildやCodeDeployのログを深く掘り下げて原因を特定する流れを理解しました。
- ログの重要性: ビルドログやデプロイログは、問題解決の最も重要な情報源であることを再確認しました。
- ロールバック: 問題解決に時間がかかりそうな場合は、迅速にロールバックしてサービスへの影響を最小限に抑えることが最優先であると学びました。
CI/CDパイプラインの運用は、常にログと向き合い、問題を迅速に解決していく力が必要となります。グローバルなAI企業のような、高速で変化し続ける環境では、このトラブルシューティング能力が、システムの安定稼働を支える上で不可欠なスキルとなります。
次回は、CI/CDの新しいトレンドである「GitOps」について解説します。お楽しみに!