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実践!AWSネットワーク構築・運用30日チャレンジ: Day 20

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Day 20: AWS PrivateLink:セキュアなサービス接続

皆さん、こんにちは!「実践!AWSネットワーク構築・運用30日チャレンジ」のDay 20へようこそ!

昨日はAWS Firewall Managerを使って、大規模なAWS環境におけるセキュリティポリシーの一元管理について学びました。これにより、組織全体のセキュリティガバナンスを強化できることが理解できたかと思います。

今日のテーマは、VPCからインターネットを経由することなく、AWSサービスや独自のサービスにプライベートに接続するための強力なネットワークサービス、「AWS PrivateLink」です。PrivateLinkは、データセキュリティを大幅に向上させ、ネットワークの複雑さを軽減する画期的な方法を提供します。

1. なぜプライベートなサービス接続が必要なのか?

通常、AWSサービス(S3、DynamoDB、SageMakerなど)はインターネット経由でアクセスされます。VPC内のEC2インスタンスがこれらのサービスにアクセスする場合、パブリックサブネットからの直接アクセス、またはプライベートサブネットからNAT Gateway経由でのアクセスが必要になります。

この方式にはいくつかの課題があります。

  • セキュリティリスク: インターネットゲートウェイやNAT Gatewayを経由するということは、トラフィックが一時的にインターネットを通過する可能性があり、セキュリティ上の懸念が残ります。特に機密データを扱う場合、インターネットに露出する経路を避けたいと考えるのが自然です。
  • 複雑なネットワーク構成: プライベートサブネットからAWSサービスにアクセスするためにNAT Gatewayが必要になり、そのためのルーティング設定や管理コストが発生します。
  • パブリックIPアドレスの管理: 一部のサービスはパブリックIPアドレスを介してアクセスする必要があり、その管理が手間になることがあります。
  • 帯域幅の制約とコスト: NAT Gatewayを経由するトラフィックには、ゲートウェイの処理能力による帯域幅の制約や、データ転送コストが発生します。

これらの課題を解決し、よりシンプルでセキュアなサービス接続を実現するのがAWS PrivateLinkです。

2. AWS PrivateLinkとは?

AWS PrivateLink は、VPCのプライベートIPアドレス空間を使用して、特定のAWSサービス、VPCでホストされている独自のサービス(サービスエンドポイント)、またはAWS Marketplaceで提供されているSaaSサービスにプライベートに接続できるようにする技術です。インターネットを経由するトラフィックがなくなるため、ネットワークセキュリティが大幅に向上します。

PrivateLinkは、サービスを「サービスプロバイダ」が公開し、サービスを消費する「サービスコンシューマ」がそれを利用するというモデルで機能します。

PrivateLinkの仕組みと主要コンポーネント

PrivateLinkを理解するための主要なコンポーネントは以下の通りです。

  1. VPC エンドポイント (VPC Endpoint):
    • サービスコンシューマ側(あなたのVPC側)に作成するインターフェース。
    • これは、VPC内のプライベートサブネットに配置されるElastic Network Interface (ENI) として機能し、サービスプロバイダ側のサービスに接続するためのプライベートIPアドレスを持ちます。
    • VPCエンドポイントは、DNSによってサービス名に解決され、VPC内のリソースはまるでそのサービスがVPC内に存在するかのように、プライベートIPアドレスでアクセスできます。
    • ゲートウェイVPCエンドポイントインターフェースVPCエンドポイントの2種類があります。PrivateLinkは後者のインターフェースVPCエンドポイントを利用します。
      • ゲートウェイVPCエンドポイント: S3とDynamoDB専用。VPCのルーティングテーブルにゲートウェイのルートを追加することでアクセス。PrivateLinkとは異なる。
      • インターフェースVPCエンドポイント: PrivateLinkを利用する全てのサービスに対応。ENIとして動作し、プライベートIPアドレスを持つ。
  2. エンドポイントサービス (Endpoint Service):
    • サービスプロバイダ側が、自身のサービス(NLBの背後にあるEC2インスタンスなど)をPrivateLink経由で他のAWSアカウントや他のVPCに公開するための仕組みです。
    • サービスプロバイダは、そのサービスにアクセスするためのNLB (Network Load Balancer) を作成し、そのNLBをエンドポイントサービスとして公開します。
    • サービスコンシューマは、このエンドポイントサービスを介してサービスに接続します。

PrivateLinkのメリット

  • セキュリティの強化:
    • インターネットからのアクセス経路が完全に不要になるため、悪意のある攻撃やデータ漏洩のリスクを大幅に削減できます。
    • トラフィックはAWSのプライベートネットワーク内に留まります。
  • ネットワークの簡素化:
    • NAT Gateway、インターネットゲートウェイ、パブリックIPアドレスが不要になり、ルーティング設定がシンプルになります。
  • 信頼性の向上:
    • AWSの信頼性の高いネットワークインフラストラクチャ内で直接接続されるため、インターネットの混雑や障害の影響を受けにくくなります。
  • スケーラビリティ:
    • AWSがフルマネージドで提供するため、高いスケーラビリティと可用性を持ちます。
  • パフォーマンスの向上:
    • インターネットを介さないため、レイテンシが低減され、安定したパフォーマンスが得られます。
  • コスト効率:
    • NAT Gatewayからのデータ転送コストを削減できる場合があります。VPCエンドポイント自体にも料金がかかりますが、トータルでコストメリットが出ることもあります。

3. PrivateLinkのユースケース

PrivateLinkは、主に以下の3つのシナリオで利用されます。

  1. AWSマネージドサービスへのプライベート接続:
    • S3, DynamoDB, Kinesis, SageMaker, SQS, SNS など、多くのAWSマネージドサービスにインターフェースVPCエンドポイントを通じてプライベートにアクセスできます。
    • これにより、これらのサービスを利用するアプリケーションのセキュリティとパフォーマンスが向上します。
  2. VPC間のプライベート接続(サービスコンシューマ/プロバイダモデル):
    • あるVPCでホストされている独自のアプリケーションやサービス(例: 共通認証基盤、ログ収集サービス)を、別のVPC(別のアカウントでも可)からプライベートに利用したい場合。
    • サービスプロバイダ側のVPCでNLBの背後にあるサービスをエンドポイントサービスとして公開し、サービスコンシューマ側のVPCでそのエンドポイントを利用します。
    • これにより、VPCピアリングやTransit Gatewayを使用することなく、特定のサービスに限定したプライベート接続が可能です。
  3. AWS MarketplaceのSaaSサービスへのプライベート接続:
    • AWS Marketplaceで提供されている一部のSaaSベンダーが、PrivateLinkを通じてサービスを提供しています。これにより、ユーザーはSaaSアプリケーションを自社のVPCからプライベートに利用できます。

4. PrivateLink (インターフェースVPCエンドポイント) の設定実践

今回は、あなたのプライベートサブネット内のEC2インスタンスから、インターネットを経由せずにS3にアクセスするためのインターフェースVPCエンドポイントを作成してみましょう。

注意: S3には、PrivateLinkの「インターフェースVPCエンドポイント」の他に、古いタイプの「ゲートウェイVPCエンドポイント」も存在します。ゲートウェイエンドポイントは無料で利用できますが、PrivateLinkの仕組みとは異なります。今回はPrivateLinkの概念を理解するため、インターフェースエンドポイントを設定します。

事前準備:プライベートサブネットのEC2とS3バケット

  • Day 9で構築したプライベートサブネット内のEC2インスタンス (EC2-in-PrivateSubnet または MyWebServer01 のプライベートインスタンス) が実行中であることを確認してください。
  • テスト用のS3バケットを1つ作成しておきましょう(例: my-privatelink-test-bucket-your-account-id)。S3にファイルをアップロードしておくと、後のテストで利用できます。

4.1. S3インターフェースVPCエンドポイントの作成

  1. AWSマネジメントコンソールで「VPC」サービスを開きます。
  2. 左側ナビゲーションペインから「エンドポイント」をクリックし、「エンドポイントの作成」ボタンをクリックします。
  3. エンドポイントカテゴリ: AWS のサービス
  4. サービス: S3は地域ごとのサービス名が異なるため、検索ボックスに s3 と入力し、表示されるリストから「com.amazonaws.ap-northeast-1.s3」というサービス名(Interface タイプ)を選択します。
    • ポイント: Gateway タイプではないことを確認してください。
  5. VPC: あなたのメインVPC (my-vpc など) を選択します。
  6. サブネット: プライベートサブネットを複数選択します。(例: my-private-subnet-a, my-private-subnet-c
    • ポイント: VPCエンドポイントのENIが配置されるサブネットです。これらのサブネット内のリソースからプライベートにS3にアクセスできるようになります。
  7. セキュリティグループ:
    • 新しいセキュリティグループを作成する を選択し、以下を設定します。
      • SG名: s3-privatelink-endpoint-sg
      • 説明: Allow inbound from private subnet to S3 endpoint
      • インバウンドルール:
        • タイプ: HTTPS (ポート 443)
        • ソース: あなたのVPCのCIDRブロック全体 (例: 10.0.0.0/16) または、S3にアクセスするEC2インスタンスのセキュリティグループ (例: my-private-instance-sg) を選択します。
          • ポイント: エンドポイントのSGは、VPC内のクライアントからの通信を許可します。
  8. ポリシー:
    • フルアクセス」 (Full Access) を選択します。
      • ポイント: 必要に応じて、S3エンドポイント経由でのアクセスに特定のS3バケットやアクションを許可するカスタムポリシーを設定することも可能です。
  9. エンドポイントを作成」をクリックします。

エンドポイントが作成されると、ステータスが「Pending」から「Available」になるまで数分かかります。詳細画面で、プライベートIPアドレスを持つENIが、選択したプライベートサブネット内に作成されていることを確認できます。

5. 動作確認:プライベートサブネットからS3へのアクセス

これで、プライベートサブネット内のEC2インスタンスから、インターネットゲートウェイやNAT Gatewayを経由せずに、S3へのアクセスが可能になります。

  1. Bastion Host (my-bastion-host) 経由で、プライベートサブネットのEC2インスタンス (EC2-in-PrivateSubnet) にSSH接続します。

  2. EC2インスタンスのターミナルから、S3へのアクセスを試みます。

    # AWS CLIがインストールされていることを確認 (多くの場合デフォルトでインストール済み)
    aws configure  # 必要であればアクセスキーとシークレットキーを設定 (IAMロールを割り当てている場合は不要)
    
    # 作成したS3バケットの内容をリスト表示
    aws s3 ls s3://my-privatelink-test-bucket-your-account-id/
    
    # 成功すれば、バケット内のファイルリストが表示されます
    

S3バケットの内容が正常に表示されれば、PrivateLink経由でのS3へのプライベート接続が成功しています。この通信は、インターネットゲートウェイやNAT Gatewayを通過していません。

確認:
プライベートサブネットのルートテーブルで、インターネットへのデフォルトルート (0.0.0.0/0) がNAT Gatewayまたはインターネットゲートウェイを指していないことを確認した上でS3にアクセスできた場合、PrivateLinkが正常に機能していることの強力な証拠となります。

6. AI時代におけるPrivateLinkの活用シナリオ

AI/MLワークロードは、大規模なデータ転送、複数のAWSサービスとの連携、そして厳格なデータセキュリティ要件が特徴です。PrivateLinkはこれらの要件を満たす上で非常に重要な役割を果たします。

  • セキュアなデータレイクアクセス:
    • 学習データや推論結果が保存されているS3バケットへのアクセスをPrivateLink経由で行うことで、インターネットへのデータ露出を完全に防ぎます。特に機密性の高いデータの場合、これは必須のセキュリティ対策です。
    • Amazon RDSやDynamoDBといったデータベースサービスへのアクセスもPrivateLink経由にすることで、データストア層のセキュリティを強化します。
  • 推論APIのセキュアな内部利用:
    • あるVPCでホストされている推論API(例: NLPモデル、画像認識モデル)を、別のVPC内のWebアプリケーションや他のマイクロサービスからプライベートに利用したい場合、PrivateLink経由でエンドポイントサービスとして公開します。これにより、APIがインターネットに公開されることなく、サービス間連携が実現します。
  • SageMakerのプライベート接続:
    • Amazon SageMakerの学習ジョブや推論エンドポイントが、ユーザーのVPC内のリソース(データソース、カスタムコンテナイメージのレジストリなど)にプライベートにアクセスできるよう、VPCエンドポイントを設定します。これにより、モデル開発・デプロイパイプライン全体のセキュリティを強化します。
  • 共通サービスVPCのデータ隔離:
    • 組織内で共通のログ収集サービス、監視サービス、または共有のデータ処理基盤をホストしているVPCがある場合、PrivateLinkを通じて各プロジェクトVPCからそのサービスにプライベートかつセキュアにアクセスさせることができます。
  • コンプライアンス要件の充足:
    • 特定の業界規制やコンプライアンス要件(PCI DSS, HIPAAなど)で、機密データがインターネットを通過することを禁止されている場合、PrivateLinkはその要件を満たすための重要なソリューションとなります。

本日のまとめと次へのステップ

今日は、VPCからインターネットを経由せずに、AWSサービスや独自のサービスにプライベートに接続するための「AWS PrivateLink」について学び、S3へのインターフェースVPCエンドポイントの作成を実践しました。

  • PrivateLinkは、VPCのプライベートIPアドレス空間を使ってサービスに接続し、セキュリティを大幅に強化する。
  • 主要コンポーネントは、サービスコンシューマ側のVPCエンドポイント (インターフェース) と、サービスプロバイダ側のエンドポイントサービス
  • インターネットからのアクセス経路が不要になり、ネットワークの簡素化、信頼性向上、パフォーマンス向上といったメリットがある。

PrivateLinkは、AWSでのシステム構築において、データセキュリティとネットワーク効率を両立させるための非常に強力なツールです。特に、機密データを扱うシステムや、高いセキュリティ要件が求められるエンタープライズ環境では、その価値は計り知れません。

明日のDay 21は、第3週の最終日です。「3週間の振り返り:監視とセキュリティのベストプラクティス」と題して、この1週間で学んだ監視、ログ、変更管理、そしてWebアプリケーション保護のサービスについて総括します。


今日のPrivateLinkの設定、プライベートなS3アクセスを体験できましたか?これでネットワークセキュリティが一段と向上しましたね!ぜひ「いいね」👍で教えてください!

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