AI/MLサービス入門!SageMakerとRekognitionでAIの可能性を探る
こんにちは!現役クラウドエンジニアのAkrです。
「【AWSプロフェッショナルへの道】現役クラウドエンジニアが贈る実践ガイド」の第28回をお届けします。前回は、Lake FormationとAthenaを使ってデータレイクを構築し、データ活用の基盤を学びました。現代のビジネスにおいて、このデータレイクに蓄積された大量のデータを活用し、新たな価値を生み出すための最も強力な手段が、**人工知能(AI)と機械学習(ML)**です。
今回は、AWSの豊富なAI/MLサービスの中から、特に代表的な2つのサービス、Amazon SageMakerとAmazon Rekognitionを徹底的に解説します。
「AIってなんだか難しそう...」「自分で機械学習モデルを開発するには専門知識が必要なのでは?」「AIを簡単に使ってみたいけど、何から始めればいいの?」といった疑問を持つかもしれません。AWSは、専門家向けの高度な開発環境から、AIの機能を簡単に組み込めるフルマネージドなAPIまで、幅広いサービスを提供しています。本記事では、両サービスの特徴と使い分けを学び、あなたのビジネスにAI/MLを導入する第一歩を踏み出すスキルを身につけます。
1. AI/MLサービスの全体像:カスタマイズ性と手軽さ
AWSのAI/MLサービスは、大きく分けて2つのタイプに分類できます。
-
SageMakerのようなカスタマイズ型:
- 機械学習の専門家(データサイエンティスト)向け。
- データの準備から、モデルのトレーニング、デプロイまで、機械学習の全てのライフサイクルを管理する統合開発環境を提供します。
- 複雑な課題に対して、独自のモデルを開発したい場合に適しています。
-
Rekognitionのようなフルマネージド型:
- 機械学習の専門知識がなくても、AIの機能をAPIとして簡単に利用できます。
- 特定のタスク(画像認識、音声認識、翻訳など)に特化した、すでにトレーニング済みのモデルを提供します。
- アプリケーションにAI機能を組み込みたい場合に適しています。
この2つのタイプを理解することで、要件に応じた最適なサービスを選択できます。
2. Amazon SageMaker: 機械学習モデル開発の統合プラットフォーム
Amazon SageMakerは、データサイエンティストや開発者が、機械学習モデルを大規模に構築、トレーニング、デプロイするためのフルマネージドサービスです。機械学習の全てのステップをサポートするため、開発者はインフラ管理の手間から解放され、モデル開発に集中できます。
2.1. SageMakerの主要な機能
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SageMaker Studio:
- SageMakerの主要なインターフェースであり、機械学習ワークフロー全体を統合するIDE(統合開発環境)です。
- データの探索、モデル構築のためのJupyterノートブック、モデルのデプロイ、監視など、すべてのタスクを単一のWebインターフェースで行えます。
-
SageMaker Ground Truth:
- 機械学習モデルのトレーニングに必要な「ラベル付けされたデータ」を効率的に作成するためのサービスです。
-
SageMaker Pipelines:
- 機械学習ワークフローを自動化し、CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー)を実現するための機能です。
2.2. 実践!SageMakerでモデルをトレーニングするまでの流れ
- データ準備: S3バケットにトレーニングデータを保存します。
- ノートブックインスタンスの起動: SageMaker StudioでJupyterノートブックを起動し、Pythonコードでデータの探索や前処理を行います。
- モデルのトレーニング: ノートブックからSageMakerのトレーニングジョブを起動します。SageMakerは、指定されたアルゴリズムとハイパーパラメータを使って、大規模な計算リソースを自動でプロビジョニングし、モデルをトレーニングします。
- モデルのデプロイ: トレーニング済みのモデルをホスティングエンドポイントにデプロイします。これにより、モデルはREST APIとして利用可能になり、アプリケーションからリアルタイムで予測を受け取ることができます。
3. Amazon Rekognition: 画像と動画のAI分析API
Amazon Rekognitionは、機械学習の専門知識がなくても、画像や動画の分析機能をアプリケーションに簡単に追加できるサービスです。
3.1. Rekognitionの主要な機能
-
画像分析:
-
物体・シーンの検出: 画像に含まれる物体(例:
車
,木
)やシーン(例:ビーチ
)を検出します。 -
顔分析: 画像内の顔を検出し、感情(
Happy
,Sad
)、年齢、性別などの情報を抽出します。 - 顔の比較: 2つの顔画像の類似性を比較します。
- テキストの検出: 画像内のテキストをOCR(光学文字認識)で読み取ります。
- 有名人の認識: 有名人の顔を自動で認識します。
-
物体・シーンの検出: 画像に含まれる物体(例:
-
動画分析:
- 動画内の物体、シーン、アクティビティ、テキスト、顔などを検出します。
3.2. 実践!RekognitionでS3の画像を分析してみよう
AWS CLIを使って、S3にアップロードされた画像に写っている物体を検出してみましょう。
前提: S3バケットにimage.jpg
という画像が保存されているとします。
# AWS CLIでRekognitionのdetect-labelsコマンドを実行
aws rekognition detect-labels \
--image '{"S3Object":{"Bucket":"my-rekognition-bucket-123","Name":"image.jpg"}}'
- このコマンドを実行すると、以下のようなJSON形式のレスポンスが返ってきます。
{
"Labels": [
{
"Name": "Person",
"Confidence": 99.8,
"Instances": [ ... ]
},
{
"Name": "Human",
"Confidence": 99.8
},
{
"Name": "Face",
"Confidence": 99.8,
"Instances": [ ... ]
},
...
]
}
-
Labels
のリストに、画像に含まれる物体やシーン、その信頼度(Confidence
)が出力されます。このように、APIを呼び出すだけで高度なAI機能をすぐに利用できるのがRekognitionの強みです。
4. まとめと使い分け
今回は、AWSのAI/MLサービスを代表する2つ、Amazon SageMakerとAmazon Rekognitionについて学びました。
- Amazon SageMakerは、独自の機械学習モデルを開発したい場合に利用する、専門家向けの統合プラットフォームです。
- Amazon Rekognitionは、既存のアプリケーションに画像・動画分析のAI機能を組み込みたい場合に利用する、フルマネージドなAPIサービスです。
この2つを適切に使い分けることで、あなたはビジネス要件に応じて最適なAI/ML戦略を立てられるようになります。例えば、顔認識機能はRekognitionで実装しつつ、特定の業務に特化した独自の予測モデルはSageMakerで開発するといった使い分けが可能です。
この記事が皆さんのAWS学習の一助となれば幸いです。
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