26日目: GitOpsとArgoCD/FluxCD:Kubernetes環境での新しいCI/CDトレンド
はじめに:CI/CDの未来形、GitOpsへようこそ
皆さん、こんにちは!👋 昨日は、CI/CDパイプラインの障害対応とトラブルシューティングについて学びました。これで、問題が発生しても、迅速かつ自信を持って対処できるようになりましたね。さて、今日はCI/CDの概念をさらに進化させた、新しいトレンド「GitOps」について解説します。
これまでのCI/CDパイプラインは、CodeDeployやkubectl
コマンドを使って、デプロイメントプロセスをCIサーバー(例: CodeBuild)で管理してきました。しかし、GitOpsは、このデプロイメントのあり方を根本から変えるアプローチです。
GitOpsは、Kubernetes環境でのデプロイメントを自動化するための新しいパラダイムであり、その中心にはGitとKubernetesがあります。本記事では、GitOpsの基本的な考え方と、それを実現するための主要なツールであるArgoCDとFluxCDについて解説します。
1. GitOpsとは何か?
GitOpsは、「Gitを宣言的なインフラとアプリケーションの唯一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)として使用し、デプロイメントを自動化する」という運用フレームワークです。
従来のCI/CDとの最大の違いは、デプロイメントをCIパイプラインの外部、つまりKubernetesクラスター内部で行う点にあります。
GitOpsのワークフロー
-
Gitリポジトリ: アプリケーションコードとKubernetesのマニフェストファイル(
Deployment.yaml
,Service.yaml
など)をGitで管理します。 - プッシュ: 開発者がコードやマニフェストファイルをGitリポジトリにプッシュします。
- CIパイプライン: CIツール(CodeBuildなど)が、プッシュをトリガーにアプリケーションをビルドし、Dockerイメージを生成してECRにプッシュします。CIパイプラインはデプロイメントは行いません。
- 同期: Kubernetesクラスター内で動作するGitOpsツール(ArgoCD/FluxCD)が、Gitリポジトリを常に監視します。
- デプロイ: Gitリポジトリのマニフェストファイルが変更されると、GitOpsツールはそれを検知し、Kubernetesクラスター内の状態を、Gitリポジトリの状態と一致するように自動的に同期(デプロイ)します。
このアプローチにより、手動でのkubectl apply
コマンド実行や、CIパイプラインでのデプロイコマンドの実行は不要になります。
2. なぜGitOpsが注目されているのか?
GitOpsは、従来のCI/CDに比べて、いくつかの強力なメリットを提供します。
- 完全な監査可能性: Gitリポジトリがインフラの唯一の真実の源であるため、すべての変更がGitのコミット履歴として残り、誰がいつ何を変更したかが完全に追跡できます。
- 一貫性と信頼性: Gitリポジトリの状態がクラスターの状態と常に同期されるため、構成のばらつき(Configuration Drift)が発生しません。
- 迅速なロールバック: 問題が発生した場合、Gitの履歴を前のコミットに戻すだけで、Kubernetesクラスターも自動的に以前の状態に戻ります。
- セキュリティの向上: CIツールにKubernetesクラスターへの直接的なデプロイ権限を与える必要がないため、セキュリティリスクが軽減されます。
3. GitOpsを実現する主要なツール:ArgoCDとFluxCD
GitOpsの自動同期プロセスを実現するツールは、主にArgoCDとFluxCDの2つが有名です。どちらもCNCF(Cloud Native Computing Foundation)に属するオープンソースプロジェクトであり、活発に開発が進められています。
ArgoCD
- 特徴: Kubernetesネイティブの継続的デリバリー(CD)ツールです。Web UIが非常に優れており、Gitリポジトリの状態とKubernetesクラスターの状態を視覚的に比較し、同期状況を確認できます。
- デプロイモデル: Pull型デプロイメント。ArgoCDがGitリポジトリを監視し、変更をクラスターに適用します。
- ユースケース: デプロイメントの可視性を重視するチーム、手動での同期操作や承認プロセスを視覚的に管理したい場合に適しています。
FluxCD
- 特徴: GitOpsのパイオニア的なツールの一つです。ArgoCDと同様に、Gitリポジトリを監視してクラスターの状態を同期します。
- デプロイモデル: Pull型デプロイメント。
- ユースケース: よりシンプルで軽量なGitOpsツールを求めるチーム、コマンドラインベースでの操作や自動化に慣れている場合に適しています。
どちらのツールも基本的な機能は同じですが、Web UIの有無やカスタマイズ性などに違いがあります。
4. CI/CDパイプラインとGitOpsの連携
GitOpsはCI/CDを置き換えるものではなく、CD(継続的デリバリー)のフェーズを担うものです。
- CI(継続的インテグレーション): CodeBuildのようなツールで、アプリケーションのビルド、テスト、Dockerイメージの生成、ECRへのプッシュといったプロセスを自動化します。
-
CD(継続的デリバリー): ECRに新しいDockerイメージがプッシュされたことをトリガーに、Gitリポジトリ内のKubernetesマニフェストファイル(
deployment.yaml
など)のイメージタグを更新します。
このマニフェストファイルの変更をArgoCDやFluxCDが検知し、自動的にKubernetesクラスターに新しいバージョンのアプリケーションをデプロイします。
まとめ:GitOpsでCI/CDを次のステージへ
本日は、コンテナ時代の新しいCI/CDトレンド「GitOps」について学びました。
- GitOpsの原則: Gitリポジトリをインフラの唯一の真実の源として、Kubernetesクラスターの状態を自動的に同期する運用フレームワーク。
- メリット: 監査可能性、一貫性、迅速なロールバック、そしてセキュリティの向上。
- 主要なツール: ArgoCDとFluxCDが、このGitOpsをKubernetes上で実現する主要なツールであることを確認しました。
GitOpsは、アプリケーションのデプロイメントをより安全で、信頼性が高く、管理しやすいものに変革します。グローバルなAI企業のように、Kubernetesを基盤としたマイクロサービスアーキテクチャを採用している組織では、GitOpsはもはやデファクトスタンダードになりつつあります。
次回は、CI/CDの概念をさらに特殊な分野に応用した「AI/ML開発におけるCI/CD(MLOps)」について解説します。お楽しみに!