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クラウド時代のデータ戦略:AWSデータベース・ストレージ完全攻略への道:Day 7 - リレーショナルデータベースの基礎:Amazon RDSとは?

Last updated at Posted at 2025-07-28

Day 7: リレーショナルデータベースの基礎:Amazon RDSとは?

皆さん、こんにちは!「AWSデータベース・ストレージ完全攻略:30日間マスターロードマップ」のDay 7へようこそ!

いよいよ本日、私たちはデータの「保管庫」であるストレージサービス(S3、EBS、EFS/FSx、Glacier)から、データの「処理場」となるデータベースサービスへと学習の焦点を移します。今日から始まる新しいセクションは、これまでのストレージの知識を土台に、さらに複雑で高度なデータ管理の世界へと皆さんを誘います。

最初のデータベースのテーマは、多くのWebアプリケーションや基幹システムで利用されている最も一般的なデータベースタイプ、リレーショナルデータベース (RDBMS) です。そして、そのAWSにおける代表的なマネージドサービスであるAmazon RDS (Relational Database Service) の基礎を徹底的に理解していきましょう。

Day 7_ リレーショナルデータベースの基礎:Amazon RDSとは_ - visual selection.png


1. リレーショナルデータベース (RDBMS) の基本

Amazon RDSを理解する前に、まずはリレーショナルデータベースの基本的な概念を復習しましょう。

リレーショナルデータベースは、データを**テーブル(表)の形式で整理し、これらのテーブル間をリレーションシップ(関連)**で結びつけることで、構造化されたデータを管理します。

RDBMSの主要な概念:

  • テーブル(Table): データが格納される基本的な構造。行(レコード)と列(フィールド/カラム)で構成されます。
  • 行(Row / Record): テーブル内の単一のデータエントリ。
  • 列(Column / Field): 各行が持つ特定の属性。
  • 主キー(Primary Key): テーブル内の各行を一意に識別するための列または列のセット。
  • 外部キー(Foreign Key): 他のテーブルの主キーを参照し、テーブル間のリレーションシップを確立するための列。
  • SQL (Structured Query Language): RDBMSと対話するための標準的な言語。データの定義、操作、制御に使用されます。SELECT, INSERT, UPDATE, DELETE などのコマンドでお馴染みですね。
  • ACID特性: リレーショナルデータベースは、以下のACID特性を保証することで、データの整合性と信頼性を維持します。
    • Atomicity (原子性): トランザクションは完全に実行されるか、全く実行されないかのいずれかである。
    • Consistency (一貫性): トランザクションが完了すると、データベースは常に一貫した状態になる。
    • Isolation (独立性): 複数のトランザクションが同時に実行されても、互いに干渉しない。
    • Durability (永続性): 一度コミットされたトランザクションの結果は、システム障害が発生しても失われない。

これらの特性により、RDBMSは金融取引、在庫管理、顧客情報管理など、データの正確性と整合性が最も重要となるアプリケーションで広く利用されています。


2. Amazon RDSとは?:RDBMSをフルマネージドで利用するメリット

Amazon RDSは、AWSが提供するフルマネージド型のリレーショナルデータベースサービスです。これにより、開発者はデータベースのインフラ管理(ハードウェアのプロビジョニング、パッチ適用、バックアップ、障害からの復旧など)から解放され、アプリケーション開発とデータ活用に集中できるようになります。

RDSが管理してくれること(オンプレミスRDBMSとの比較):

機能 オンプレミス/EC2上のRDBMS Amazon RDS
ハードウェア管理 サーバー、ストレージ購入/設置、冷却、電源 AWSがすべて担当
OS管理 OSインストール、パッチ適用、セキュリティ設定 AWSがすべて担当
DBソフトウェア DBソフトウェアのインストール、バージョンアップ AWSが自動でインストール、パッチ適用(設定による)
バックアップ スケジュール、ストレージ確保、世代管理 自動バックアップ、PITR (Point-in-Time Recovery)
レプリケーション 手動設定、障害検知、フェイルオーバー マルチAZ (自動フェイルオーバー)、リードレプリカ (自動作成)
モニタリング ツール導入、アラート設定 CloudWatch連携、Enhanced Monitoring
スケーリング 手動でサーバー増強/DB移行 数クリックでインスタンスタイプ変更、ストレージ増強
セキュリティ ネットワーク、OS、DBレベルの hardening VPC、セキュリティグループ、KMS統合、SSL/TLS接続

このように、RDSを利用することで、データベースの運用にかかる時間とコストを大幅に削減し、より本質的な業務にリソースを集中させることができます。

RDSがサポートするデータベースエンジン:

RDSは、複数の主要なRDBMSエンジンをサポートしています。

  1. Amazon Aurora:
    • MySQLおよびPostgreSQLと互換性のある、AWSが独自に開発した高性能RDBMS。RDSの提供エンジンの中で最高性能。
  2. MySQL:
    • 世界で最も普及しているオープンソースのリレーショナルデータベース。
  3. PostgreSQL:
    • 高機能でエンタープライズ向けのオープンソースのリレーショナルデータベース。
  4. Oracle:
    • 商用データベースの代表格。ライセンス持ち込み (BYOL) も可能。
  5. SQL Server:
    • Microsoftが提供するリレーショナルデータベース。
  6. MariaDB:
    • MySQLから派生したオープンソースのリレーショナルデータベース。

これだけ多様なエンジンをサポートしているため、既存のオンプレミスデータベースからの移行も比較的容易です。


3. RDSの主要な機能と設定要素

RDSインスタンスを作成・運用する上で理解すべき重要な機能と設定要素を見ていきましょう。

a. DBインスタンスとDBインスタンスクラス

  • DBインスタンス: RDSで作成する個々のデータベース環境の単位です。例えば、MySQLデータベースを1つ作成すると、それが1つのDBインスタンスとなります。
  • DBインスタンスクラス: DBインスタンスのコンピューティングとメモリの容量を定義します。EC2インスタンスタイプと同様に、db.t3.microdb.m5.largedb.r6g.xlargeなど、様々なインスタンスクラスが用意されており、ワークロードの要件(CPU、メモリ、ネットワーク性能)に応じて選択します。

b. ストレージタイプとスケーリング

  • ストレージタイプ: EBSボリュームタイプと同様に、汎用SSD (gp2/gp3)、プロビジョンドIOPS SSD (io1/io2) が選択できます。
    • 汎用SSD (gp3): ほとんどの汎用ワークロードや開発/テスト環境に適しています。
    • プロビジョンドIOPS SSD (io1/io2): 高速なI/Oパフォーマンスが求められるトランザクション処理、大規模データベース、I/O集中型アプリケーションに適しています。
  • ストレージの自動スケーリング: ストレージ使用率が一定の閾値を超えると、自動的にストレージ容量を拡張する機能を有効にできます。これにより、容量不足によるサービス停止リスクを軽減できます。

c. バックアップとPoint-in-Time Recovery (PITR)

RDSは、データ保護のための強力なバックアップ機能を提供します。

  • 自動バックアップ:
    • RDSはDBインスタンスの完全なスナップショットと、トランザクションログ(Binlog/WALなど)を定期的に自動で取得し、S3に保存します。
    • バックアップ保持期間(最大35日間)を設定でき、この期間内であればいつでもデータベースを任意の時点の状態に復元できます(PITR)。
  • 手動スナップショット:
    • ユーザーが必要なときに手動でDBスナップショットを作成することもできます。これは、メジャーバージョンアップグレードの前や、重要な操作を行う前に取得すると良いでしょう。

d. マルチAZデプロイメント:高可用性の実現

マルチAZデプロイメントは、RDSの最も重要な高可用性機能の一つです。

  • プライマリDBインスタンスのスタンバイレプリカを、異なるアベイラビリティゾーン (AZ) に同期的に複製します。
  • プライマリDBインスタンスに障害が発生した場合(インスタンスの停止、AZ障害など)、RDSは自動的にスタンバイレプリカにフェイルオーバーします。この切り替えは通常1~2分程度で完了し、アプリケーションは同じエンドポイントを引き続き利用できるため、手動での対応は不要です。
  • 注意点: マルチAZは読み込みパフォーマンスを向上させるためのものではなく、あくまで高可用性のためです。読み込みパフォーマンスを向上させるには、後述のリードレプリカを使用します。

e. リードレプリカ:読み込みパフォーマンスの向上

リードレプリカは、プライマリDBインスタンスの読み込み集中型ワークロードをオフロードするための機能です。

  • プライマリDBインスタンスの読み込み専用コピーを非同期で作成します。
  • アプリケーションはリードレプリカに対して読み込みクエリを実行することで、プライマリDBインスタンスの負荷を軽減し、全体の読み込みパフォーマンスを向上させることができます。
  • 注意点: 非同期レプリケーションのため、プライマリとリードレプリカの間にはわずかなデータ遅延(レプリケーションラグ)が発生する可能性があります。また、リードレプリカは読み込み専用であり、書き込みはできません。

f. ネットワークとセキュリティ

RDSインスタンスは、セキュリティを考慮してAmazon VPC (Virtual Private Cloud) 内に配置されます。

  • VPCとサブネットグループ: DBインスタンスを配置するVPCと、そのVPC内のサブネットの集合であるDBサブネットグループを定義します。複数のAZにまたがるサブネットを含めることで、マルチAZデプロイメントが可能になります。
  • セキュリティグループ: DBインスタンスへのネットワークアクセスを制御します。通常、アプリケーションサーバーや特定のIPアドレスからのアクセスのみを許可するように設定します。
  • KMSとの統合: 保存されているデータ(at rest)の暗号化にAWS Key Management Service (KMS) を利用できます。
  • SSL/TLS接続: アプリケーションとRDS間の通信を暗号化するために、SSL/TLS接続を有効にできます。

4. RDSのユースケースとAI企業での活用例

RDSは、トランザクション処理や構造化データの管理が必要な多種多様なアプリケーションで利用されます。

一般的なユースケース:

  • Webアプリケーションのバックエンドデータベース: eコマースサイト、SNS、ブログなどのユーザーデータ、投稿、設定情報など。
  • モバイルアプリケーションのバックエンド: ユーザーアカウント、ゲームデータなど。
  • エンタープライズアプリケーション: CRM、ERP、SaaSアプリケーションのデータストア。
  • ログデータやメトリクスの保存: 構造化されたログや、アプリケーションのパフォーマンスメトリクスなど。

AI企業におけるRDSの活用例:

  • AIサービスのユーザー管理/メタデータストア:
    • AI製品のユーザーアカウント情報、認証情報、ユーザーごとの設定、利用履歴などの管理。
    • AIモデルのメタデータ(モデル名、バージョン、学習データセットへのリンク、学習パラメータ、評価指標など)を保存し、モデルの管理システムを構築。
  • AIワークフローの進行状況管理:
    • データの前処理、モデルトレーニング、推論デプロイといったAI/MLパイプラインの各ステップの進行状況や結果をRDSに保存し、ワークフロー管理を効率化。
  • 少量の構造化学習データ:
    • 教師あり学習において、比較的小規模で厳密な整合性が求められる構造化データセット(例: 特定の分類タスクのラベルデータ、顧客属性データ)をRDSに保存し、学習プロセスで利用。
  • BI(ビジネスインテリジェンス)レポート用のデータ集計:
    • リアルタイム性よりも整合性が重視されるビジネスレポートやダッシュボードの基盤として、RDSで集計済みのデータを管理。
    • ただし、大量の分析クエリにはRedshiftのようなDWHがより適しています。

5. RDSインスタンスの作成手順の概要

実際にRDSインスタンスを作成する際の簡単な流れを把握しておきましょう。

  1. AWSマネジメントコンソールにログインし、RDSサービスへ移動。
  2. 「データベースの作成」をクリック。
  3. エンジンオプションを選択: Amazon Aurora, MySQL, PostgreSQLなど。
  4. デプロイオプション:
    • 「本番稼働用」: マルチAZデプロイメント、自動バックアップなど高可用性/耐久性オプションが推奨されます。
    • 「開発/テスト」: コストを抑えた単一AZ構成。
    • 「無料利用枠」: 学習目的。
  5. DBインスタンス識別子と認証情報: DBインスタンス名とマスターユーザー名、パスワードを設定。
  6. インスタンス設定: DBインスタンスクラス(例: db.t3.micro)を選択。
  7. ストレージ設定: ストレージタイプ、割り当てサイズ、自動スケーリングの有無を設定。
  8. VPCと接続設定:
    • DBインスタンスを配置するVPCを選択。
    • DBサブネットグループを選択(通常はデフォルトでOK)。
    • パブリックアクセス可否(通常は「なし」を選択し、セキュリティグループで制御)。
    • 既存のセキュリティグループまたは新規作成で、アクセス元IPアドレスやセキュリティグループを許可。
  9. 追加設定:
    • データベースポート番号(例: MySQLは3306)。
    • データベース名(初回作成時にデフォルトDBを作成する場合)。
    • バックアップ保持期間、暗号化、モニタリングオプションなどを設定。
  10. 「データベースの作成」をクリック。

作成には数分かかる場合があります。作成が完了したら、指定したエンドポイントと認証情報を使ってアプリケーションから接続できるようになります。


まとめとDay 8への展望

今日のDay 7では、リレーショナルデータベースの基礎を復習し、AWSにおけるその主要なマネージドサービスであるAmazon RDSについて深く学びました。

  • RDSは、RDBMSの運用管理をAWSに任せることで、開発者がアプリケーション開発に集中できる強力なサービスです。
  • MySQL, PostgreSQL, Auroraなど多様なエンジンをサポートし、インスタンスクラスやストレージタイプでパフォーマンスを調整できます。
  • マルチAZデプロイメントによる高可用性、リードレプリカによる読み込み性能向上、自動バックアップによるデータ保護など、エンタープライズ級の機能が組み込まれています。

AI企業においては、ユーザー管理やモデルのメタデータ管理、ワークフローの進行状況管理など、データの整合性と構造が重視される場面でRDSが活躍します。

明日のDay 8では、今日学んだRDSの知識を実践に落とし込みます。実際にAmazon RDS for MySQL/PostgreSQLインスタンスを構築し、その設定方法やアプリケーションからの接続方法について、ハンズオン形式で詳しく解説していきます。お楽しみに!


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