【AWS経験者向け】EC2とCompute Engine:インスタンスの起動から課金モデルまで徹底比較
はじめに:AWS EC2の知識でGCP Compute Engineを攻略する
皆さん、こんにちは!「30日間でGCPをマスターするAWSエンジニアの挑戦」シリーズ、6日目へようこそ。
AWSにおける仮想サーバーサービス、**EC2(Elastic Compute Cloud)**は、クラウドコンピューティングの代名詞とも言える存在です。インスタンスタイプを選び、キーペアを設定し、セキュリティグループで通信を制御する一連の流れは、多くのエンジニアにとってお馴染みでしょう。
GCPにも同様の役割を持つサービス、Compute Engineがあります。しかし、EC2に慣れたエンジニアがCompute Engineを触ると、以下のような違いに戸惑うことがあります:
- 「インスタンスタイプを自由にカスタマイズできる?」
- 「課金が秒単位で、しかも自動で割引される?」
- 「セキュリティグループの代わりにファイアウォールルール?」
今日の記事では、AWS EC2の知識を前提に、GCP Compute Engineの以下のポイントを徹底的に比較します:
- インスタンスタイプとカスタムマシンタイプ:なぜGCPはCPUとメモリを個別に設定できるのか?
- 課金モデルと料金の最適化:GCPのユニークな課金モデルを理解する
- 運用管理機能:認証、セキュリティ、スケーリングの違いを学ぶ
この記事を読めば、GCPでの仮想サーバーの設計と運用が明確になり、よりコスト効率の高いシステムを構築できるようになります。
インスタンスタイプの根本的な違い
AWS EC2のアプローチ:定型パッケージ
EC2は、CPU、メモリ、ネットワーク性能が固定されたインスタンスタイプから選択します。
例:
- t3.micro:1 vCPU, 1GB RAM(汎用)
- c5.large:2 vCPU, 4GB RAM(コンピューティング最適化)
- r5.xlarge:4 vCPU, 32GB RAM(メモリ最適化)
メリット:
- 料金が予測しやすい
- 用途別に最適化された豊富な選択肢
- 実績とコミュニティの知見が豊富
デメリット:
- リソースの過不足が発生しやすい
- 中間的なスペックが欲しい場合に無駄が生じる
GCP Compute Engineのアプローチ:柔軟なカスタマイズ
Compute Engineの最大の特徴は、CPUとメモリを個別に設定できる「カスタムマシンタイプ」 です。
例:
- カスタム:2 vCPU, 8GB RAM
- カスタム:1 vCPU, 6.5GB RAM
- 事前定義済み:n1-standard-4(4 vCPU, 15GB RAM)
メリット:
- ワークロードに最適化したリソース配分が可能
- リソースの無駄を最小限に抑制
- コスト最適化がしやすい
デメリット:
- 設定の自由度が高い分、設計の判断が必要
- 性能特性の把握に時間がかかる場合がある
実際のコスト差の例
同じワークロード(2 vCPU、8GB RAMが必要)を想定:
AWS EC2:
- t3.large(2 vCPU, 8GB)を使用
- 東京リージョン:約$0.0944/時間
GCP Compute Engine:
- カスタム(2 vCPU, 8GB)を使用
- 東京リージョン:約$0.073/時間(継続利用割引前)
この例では、GCPの方が約23%安価になります。
課金モデルの革新的な違い
AWS EC2の課金体系
1. オンデマンドインスタンス
- Linux:1秒単位課金
- Windows:1時間単位課金
2. リザーブドインスタンス
- 1年/3年の確約で最大75%割引
- 事前購入が必要
3. Savings Plans
- 柔軟な確約利用プランで割引
- 事前購入が必要
GCP Compute Engineの課金体系
1. 秒単位課金
- 全OSで1秒単位課金(最小1分)
2. 継続利用割引(自動適用)
- 月の25%以上利用で自動割引
- 最大30%の割引
- 設定不要
3. 確約利用割引
- 1年/3年の確約で最大57%割引
- AWSのリザーブドインスタンス相当
継続利用割引の魅力
GCPの継続利用割引は、特に画期的です:
例:月744時間のうち
- 186時間以上(25%):割引開始
- 372時間以上(50%):20%割引
- 744時間(100%):30%割引
AWS vs GCPの運用負荷:
- AWS:割引を受けるには事前にリザーブドインスタンスやSavings Plansの購入が必要
- GCP:使用するだけで自動的に割引が適用される
運用管理機能の比較
認証とアクセス制御
項目 | AWS EC2 | GCP Compute Engine |
---|---|---|
SSH認証 | キーペアの作成・管理 | IAM連携によるSSHキーの自動配布 |
権限管理 | IAM + キーペアの組み合わせ | IAMロールとサービスアカウントの統合管理 |
メリット | シンプルで理解しやすい | より細かい権限制御が可能 |
セキュリティ制御
項目 | AWS EC2 | GCP Compute Engine |
---|---|---|
通信制御 | セキュリティグループ(インスタンス単位) | ファイアウォールルール(VPCネットワーク単位) |
適用方法 | インスタンスに直接アタッチ | タグやサービスアカウントで対象を指定 |
管理単位 | インスタンス毎に個別設定 | ネットワーク全体で統一管理 |
オートスケーリング
項目 | AWS EC2 | GCP Compute Engine |
---|---|---|
サービス名 | Auto Scaling Group | マネージドインスタンスグループ |
基本機能 | CPU、メモリ等のメトリクス監視 | 同様のメトリクス監視 |
特徴 | ELBとの統合が容易 | Load Balancerとの自動統合 |
実践ハンズオン:カスタムVMの作成
GCPコンソールで、EC2にはないカスタムVMを作成してみましょう。
手順
-
GCPコンソールにアクセス
Compute Engine → VMインスタンス
-
インスタンス作成の開始
「インスタンスを作成」をクリック
-
基本設定
名前:custom-vm-demo リージョン:asia-northeast1(東京) ゾーン:asia-northeast1-a
-
カスタムマシンタイプの設定
マシンファミリー:「カスタム」を選択 CPU数:2(スライダーで調整) メモリ:6GB(スライダーで調整)
-
その他の設定
ブートディスク:Debian GNU/Linux 11 ファイアウォール:HTTPトラフィックを許可
-
作成実行
「作成」をクリック
作成後の確認ポイント
- 料金の確認:右側のペインで月額料金の見積もりが表示される
- 継続利用割引:使用時間に応じて自動的に割引が適用される
- カスタマイズの柔軟性:CPUとメモリの比率を自由に調整できる
パフォーマンス比較のポイント
ネットワーク性能
AWS EC2:
- インスタンスタイプによってネットワーク性能が決定
- 拡張ネットワーキング(SR-IOV、ENA)をサポート
GCP Compute Engine:
- ティア1ネットワークによる高品質な接続
- プリエンプティブルインスタンスでも同じネットワーク性能
ディスクI/O
AWS EC2:
- EBS(gp2, gp3, io1, io2)の選択
- インスタンスストレージ(SSD)も利用可能
GCP Compute Engine:
- Persistent Disk(HDD、SSD)
- Local SSD(最大375GB×24個)
選択指針:どちらを使うべきか
AWS EC2を選ぶべきケース
- 既存のAWS環境との統合が重要
- 豊富なインスタンスタイプから最適なものを選びたい
- 実績のあるソリューションを求める
- WindowsやSQL Serverライセンスを活用したい
GCP Compute Engineを選ぶべきケース
- コスト最適化を重視する
- リソースを細かくカスタマイズしたい
- 運用の手間を減らしたい(自動割引など)
- Kubernetesとの連携を重視する
まとめ:EC2とCompute Engine、それぞれの強み
比較項目 | AWS EC2 | GCP Compute Engine |
---|---|---|
インスタンスタイプ | 豊富な固定タイプから選択 | カスタムマシンタイプで柔軟設定 |
課金モデル | 秒単位、要事前購入割引 | 秒単位、継続利用割引自動適用 |
セキュリティ | セキュリティグループ(インスタンス単位) | ファイアウォールルール(VPC単位) |
強み | 豊富なエコシステムと実績 | 柔軟性と自動的なコスト最適化 |
適用場面 | 多様なワークロードに対応 | コスト効率重視のワークロード |
主要な学び
- GCPのカスタムマシンタイプにより、リソースの無駄を最小限に抑えられる
- 継続利用割引の自動適用により、運用負荷を軽減しながらコストを最適化できる
- ファイアウォールルールによるVPC単位のセキュリティ管理で、より統一的な制御が可能
どちらも優れたサービスですが、GCP Compute Engineは特にコスト効率と運用の簡素化に強みを発揮します。
これで1週間の基礎編が完了しました!次回は、これまでの学習内容を総括し、AWSとGCPそれぞれの得意なことや設計思想について深掘りしていきます。
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- [【5日目】RDSとCloud SQL:マネージドデータベースの運用管理の違い]
- [【6日目】EC2とCompute Engine:インスタンスの起動から課金モデルまで](この記事)
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