Day3: コンテナサービス徹底比較:AWS ECS/EKS vs Azure AKS/ACI
皆さん、こんにちは。エンジニアのAkrです。
「徹底比較!AWS vs Azure」シリーズ、Day3へようこそ。
今回は、モダンアプリケーション開発に欠かせないコンテナサービスに焦点を当てます。マイクロサービスアーキテクチャやクラウドネイティブな開発において、コンテナ技術は重要な基盤技術となっています。
AWSではAmazon ECSとAmazon EKS、Azureでは**Azure Kubernetes Service(AKS)とAzure Container Instances(ACI)**が主要なサービスです。
コンテナサービスの役割と位置づけ
コンテナサービスとは
コンテナサービスは、アプリケーションとその依存関係を一つのパッケージにまとめた「コンテナ」を実行・管理するプラットフォームです。これにより以下のメリットを提供します:
- 環境の統一性:開発・テスト・本番環境の差異を解消
- スケーラビリティ:需要に応じた自動スケーリング
- リソース効率:仮想マシンより軽量で高密度実行
- マイクロサービス対応:小さな独立したサービスの管理
初心者必見:知っておきたいコンテナ用語集
コンテナサービスを理解するには、いくつかの重要な用語を知っておく必要があります。ここでは、実際のサービス選定や運用で頻出する用語を分かりやすく解説します。
基本概念
🐳 コンテナ(Container)
アプリケーションとその実行に必要なファイル(ライブラリ、設定ファイルなど)をひとまとめにしたパッケージ。「引越し用のダンボール箱」のようなもので、どこに持っていっても中身が変わらない。
📦 コンテナイメージ(Container Image)
コンテナの「設計図」や「テンプレート」。DockerHubなどに保存されており、このイメージからコンテナを作成する。
🎯 オーケストレーション(Orchestration)
複数のコンテナを協調させて動かす仕組み。「オーケストラの指揮者」のように、各コンテナに適切な役割を与えて全体を管理する。
Kubernetes関連用語
🎛️ コントロールプレーン(Control Plane)
Kubernetesクラスター全体を管理する「司令塔」。以下の重要な役割を担います:
- どのコンテナをどこで動かすかの決定
- 障害時の自動復旧
- スケーリングの制御
- APIの提供
※AWSでは有料($72/月)、Azureでは無料で提供
👷 ワーカーノード(Worker Node)
実際にコンテナが動作するサーバー(仮想マシン)。「工場の作業員」のような存在で、コントロールプレーンからの指示を受けてコンテナを実行する。
🏠 Pod(ポッド)
Kubernetesの最小実行単位。1つ以上のコンテナをまとめたグループ。通常は1つのPodに1つのコンテナが入る。
🚀 Deployment(デプロイメント)
アプリケーションの「展開設定書」。「このアプリを3個のPodで動かして、更新時は段階的に」といった指示を記述。
🔗 Service(サービス)
複数のPodに対する「入口」を提供。ロードバランサーのような役割で、外部からのアクセスを適切なPodに振り分ける。
AWS固有の用語
⚡ Fargate
「サーバーレスコンテナ」実行環境。サーバーの管理を一切せずにコンテナを実行できる。「ホテル」のようなもので、部屋(コンテナ)だけ借りて、清掃や設備管理はすべてお任せ。
📋 タスク定義(Task Definition)
ECSでコンテナの設定を記述したもの。「レシピ」のような存在で、どのイメージを使って、どれくらいのCPU・メモリで動かすかを定義。
🎯 サービス(ECS Service)
指定した数のタスクを常に動かし続ける仕組み。1つのタスクが停止しても、自動的に新しいタスクを起動して数を保つ。
Azure固有の用語
☁️ Azure Container Instances(ACI)
「必要な時だけコンテナを動かす」シンプルなサービス。オーケストレーションは不要で、単発のタスクや一時的な処理に最適。
🔄 Virtual Kubelet
AKSからACIにコンテナをバースト(一時的に拡張)できる仕組み。需要が急増した時に、追加のサーバー準備なしでコンテナを増やせる。
運用関連用語
📊 HPA(Horizontal Pod Autoscaler)
CPU使用率などに基づいて、Podの数を自動的に増減する機能。「忙しくなったら人手を増やす」ような自動化。
📈 VPA(Vertical Pod Autoscaler)
Podに割り当てるCPU・メモリを自動調整する機能。「作業量に応じて机のサイズを変える」イメージ。
🔍 Ingress(イングレス)
外部からクラスター内のサービスへのアクセスを制御する「門番」。HTTPSの終端やパスベースのルーティングを担当。
💾 PV/PVC(Persistent Volume/Persistent Volume Claim)
コンテナが削除されても残り続けるストレージ。PVが「実際の倉庫」、PVCが「倉庫の利用申請書」。
よく混同される用語の整理
用語 | 意味 | 例え |
---|---|---|
コンテナ | 実行中のアプリケーション | 動いているダンボール箱 |
イメージ | コンテナの設計図 | ダンボール箱の設計図 |
Pod | コンテナのグループ | 関連するダンボール箱をまとめたパレット |
ノード | Podが動くサーバー | 倉庫(パレットが置かれる場所) |
クラスター | ノードの集合 | 倉庫群全体 |
これらの用語を理解しておくと、技術ドキュメントやエラーメッセージの意味が分かりやすくなり、チーム内でのコミュニケーションもスムーズになります。
各クラウドのアプローチ
AWSの戦略:選択肢の多様性
- ECS:AWS独自のシンプルなオーケストレーション
- EKS:マネージドKubernetes
- Fargate:サーバーレスコンテナ実行環境
Azureの戦略:Kubernetes中心
- AKS:マネージドKubernetes
- ACI:シンプルなコンテナ実行
- Service Fabric:Microsoft独自のマイクロサービス基盤
サービス詳細比較
基本的なサービス構成
サービス | タイプ | 特徴 | 最適な用途 |
---|---|---|---|
AWS ECS | 独自オーケストレーション | シンプル、AWS統合 | AWS中心の環境 |
AWS EKS | マネージドKubernetes | 標準Kubernetes | マルチクラウド、既存K8s |
Azure AKS | マネージドKubernetes | 無料コントロールプレーン | コスト重視、MS環境 |
Azure ACI | シンプル実行環境 | サーバーレス、従量課金 | 単発タスク、バースト |
機能・運用面の比較
項目 | AWS ECS | AWS EKS | Azure AKS | Azure ACI |
---|---|---|---|---|
学習コスト | 低 | 高 | 高 | 最低 |
柔軟性 | 中 | 高 | 高 | 低 |
AWS統合 | 最高 | 高 | - | - |
Azure統合 | - | - | 最高 | 高 |
コミュニティ | 限定的 | 活発 | 活発 | 限定的 |
移植性 | 低 | 高 | 高 | 中 |
実行環境の詳細
AWS Fargate:サーバーレスコンテナ
Fargateは、AWSの革新的なサーバーレスコンテナ実行環境です:
特徴
- EC2インスタンスの管理不要
- コンテナレベルでのリソース指定
- 自動スケーリングとパッチ管理
対応サービス
- ECS on Fargate
- EKS on Fargate
料金モデル
料金 = vCPU使用料 + メモリ使用料 + ストレージ使用料
例:0.25vCPU + 0.5GB = 約$0.04956/時間
Azure Container Instances(ACI)
Azureのシンプルなコンテナ実行サービス:
特徴
- 数秒での起動
- 秒単位の課金
- AKSからのバースティング対応
料金モデル
料金 = vCPU使用料 + メモリ使用料
例:1vCPU + 1GB = 約$0.0464/時間
料金体系の詳細比較
Kubernetesサービスの料金比較
コスト要素 | AWS EKS | Azure AKS |
---|---|---|
コントロールプレーン | $0.10/時間 ($72/月) |
無料 |
ワーカーノード | EC2料金 | VM料金 |
ネットワーク | 標準料金 | 標準料金 |
ストレージ | EBS料金 | Disk料金 |
年間コスト試算例
小規模環境(3ワーカーノード)
AWS EKS:
- コントロールプレーン: $72/月
- EC2 t3.medium × 3: $100/月
- 合計: $172/月($2,064/年)
Azure AKS:
- コントロールプレーン: $0/月
- VM Standard_B2s × 3: $90/月
- 合計: $90/月($1,080/年)
差額: $984/年(AKSが有利)
サービス選択の指針
AWS ECSを選ぶべきケース
✅ シンプルなコンテナ運用を重視
✅ AWS他サービスとの深い統合が必要
✅ Kubernetes学習コストを避けたい
✅ 開発チームのスキルレベルが初級〜中級
具体例
- Webアプリケーションの簡単なデプロイ
- バッチ処理の定期実行
- マイクロサービスの小規模運用
AWS EKSを選ぶべきケース
✅ Kubernetesエコシステムを活用したい
✅ マルチクラウド戦略を検討
✅ 複雑なオーケストレーションが必要
✅ 既存Kubernetesクラスターの移行
具体例
- 大規模マイクロサービス基盤
- AI/MLワークロードの実行
- CI/CDパイプラインとの統合
Azure AKSを選ぶべきケース
✅ Kubernetesでコストを抑えたい
✅ Microsoft製品との統合が重要
✅ Azure中心の環境
✅ 開発・テスト環境を頻繁に作成/削除
具体例
- .NETアプリケーションのモダン化
- Azure DevOpsとの連携
- Active Directoryとの統合
Azure ACIを選ぶべきケース
✅ シンプルなタスク実行
✅ イベント駆動処理
✅ バースト対応
✅ サーバー管理を完全に排除したい
具体例
- 画像変換バッチ
- スクレイピング処理
- CI/CDエージェント
実践的な運用比較
デプロイの複雑さ
AWS ECS(Fargate)
# タスク定義例
family: my-app
requiresCompatibilities:
- FARGATE
cpu: 256
memory: 512
containerDefinitions:
- name: web
image: nginx:latest
portMappings:
- containerPort: 80
Kubernetes(EKS/AKS)
# デプロイメント例
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: nginx-deployment
spec:
replicas: 3
selector:
matchLabels:
app: nginx
template:
metadata:
labels:
app: nginx
spec:
containers:
- name: nginx
image: nginx:latest
ports:
- containerPort: 80
監視・運用
項目 | AWS | Azure |
---|---|---|
ログ管理 | CloudWatch Logs | Azure Monitor Logs |
メトリクス | CloudWatch Metrics | Azure Monitor Metrics |
トレーシング | X-Ray | Application Insights |
アラート | CloudWatch Alarms | Azure Alerts |
まとめ:戦略的な選択指針
コスト重視の選択
長期運用予定 → Azure AKS(コントロールプレーン無料)
従量課金重視 → AWS Fargate または Azure ACI
技術戦略重視の選択
AWS生態系活用 → AWS ECS/EKS
Microsoft生態系活用 → Azure AKS
ベンダーニュートラル → Kubernetes(EKS/AKS)
チームスキル重視の選択
Kubernetes経験あり → EKS/AKS
シンプル重視 → ECS/ACI
学習投資可能 → Kubernetes系
次回予告
Day4では、サーバーレスコンピューティングに焦点を当て、AWS LambdaとAzure Functionsを詳細比較します。
イベント駆動アーキテクチャの実現手段として重要なサーバーレス技術について、実行環境、料金体系、開発体験の違いを深掘りします。
コンテナサービスの選択は、技術的な要件だけでなく、チームのスキルレベルや運用戦略も考慮して決定することが重要です。
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