Day 11: ECSクラスターの設計:EC2とFargate、どちらを選ぶべき? ⚖️
皆さん、こんにちは!30日集中講座、Day 11へようこそ。
昨日までの講座では、DockerとAWS CLIを使ってローカルのDockerイメージをECRにプッシュする方法を学びました。これで、アプリケーションをクラウドで動かすための準備が整いました。
ECSには、コンテナを実行するための基盤として、大きく分けて2つの選択肢があります。
- Fargate: サーバーレスで運用を簡素化
- EC2: 仮想サーバーを自分で管理し、カスタマイズ性を追求
今日は、この2つの起動タイプの特徴を比較し、プロジェクトの要件に応じてどちらを選ぶべきか、その判断基準を明確にしていきます。
1. Fargate vs EC2:選択肢の概要とユースケース
ECS on Fargate
Fargateは、サーバーの管理を完全にAWSに任せるサーバーレスな実行環境です。開発者は、CPUとメモリのリソースを指定するだけで、ECSが自動でコンテナを実行します。
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メリット:
- 運用負荷の軽減: EC2インスタンスのプロビジョニング、OSのパッチ適用、スケーリングといったインフラ管理の作業が一切不要になります。
- コスト管理: コンテナが実際に使用したCPUとメモリの時間に対して秒単位(最小1分)で課金されるため、使った分だけ支払うシンプルで明瞭な料金体系です。
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デメリット:
- カスタマイズ性の制限: OSレベルでのカスタマイズや、Dockerデーモンへのアクセスができません。
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適しているユースケース:
- Webアプリケーション(WordPress, Node.js, Python Flask/Django)やAPIサーバー
- 開発・テスト環境
- 突発的なトラフィック変動があるサービス
ECS on EC2
EC2は、コンテナを実行するための仮想サーバーを自分で管理する実行環境です。
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メリット:
- 高いカスタマイズ性: OSの選択や、Dockerデーモンへの直接的なアクセスが可能です。
- コスト最適化: リザーブドインスタンスやSavings Plansを活用することで、最大72%のコスト削減が可能な場合があります。
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デメリット:
- 運用負荷: EC2インスタンスの管理(パッチ適用、セキュリティ設定、スケーリングポリシーの定義など)を自分で行う必要があります。
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適しているユースケース:
- 高いI/O性能が必要なデータベースやキャッシュサーバー
- GPUを使用するML/AI処理
- 特殊なソフトウェアライセンス要件
2. どちらを選ぶべきか?判断のフローチャートと具体例
プロジェクトの要件に応じて、FargateとEC2のどちらが適しているかを判断するためのフローチャートを参考にしましょう。
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質問1: インフラ運用の専任者はいますか?
- No → Fargate。サーバー管理の複雑さを気にすることなく、アプリケーション開発に集中できます。
- Yes → 次の質問へ。
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質問2: OSレベルのカスタマイズやコストの徹底的な最適化が必要ですか?
- Yes → EC2。ハードウェアを自由に選択できるため、パフォーマンスやコスト要件に柔軟に対応できます。
- No → 次の質問へ。
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質問3: トラフィックは予測可能で、24時間365日稼働しますか?
- Yes → EC2。大規模な常時稼働システムでは、リザーブドインスタンスなどを活用することでコスト効率がFargateより高くなる可能性があります。
- No → Fargate。突発的なトラフィック変動にも運用負荷をかけずに対応できます。
【コスト比較例】
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開発・テスト環境(低稼働率)
- Fargate: 約$7-9/月(月100時間稼働)
- EC2(t3.small): 約$15/月(24時間稼働)
- → 低稼働率ならFargateが有利
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本番環境(高稼働率)
- Fargate: 約$50-60/月
- EC2(t3.small + RI): 約$10-15/月
- → 常時稼働ならEC2が有利
3. 技術的制約とセキュリティの比較
Fargate | EC2 | |
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セキュリティ | AWSがホストOSを管理。自動でセキュリティパッチが適用され、コンテナ間の分離も確保。タスク単位のIAMロールが簡単に設定可能です。 | ホストOSの管理・パッチ適用が必要。iptablesやSELinuxなど、より細かいセキュリティ制御が可能。設定ミスによるリスクがある。 |
技術的制約 | Dockerソケットへの直接アクセスや、特権モードでのコンテナ実行はできません。 | Dockerデーモンへのアクセスが可能。任意のカスタムAMIも利用可。 |
4. 導入順序と次へのステップ
多くのプロジェクトでは、以下の段階的な導入順序が推奨されます。
- 開発環境: 迅速な構築のためFargateを使用。
- ステージング: 本番と同等の環境をFargateで構築し、検証。
- 本番環境: 要件に応じてFargateまたはEC2を選択。
最終的な判断を下した後も、継続的な見直しは重要です。
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【Fargate選択後のチェックポイント】
- CloudWatch Logsの設定
- VPCエンドポイントによるコスト最適化
- タスクロールの最小権限設定
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【EC2選択後のチェックポイント】
- Auto Scaling設定
- ECSエージェントの最新化
- セキュリティグループの設定
明日からは、今日学んだ判断基準に基づいてFargateを選択し、昨日ECRにプッシュしたイメージを実際にECS上で動かすためのタスク定義を作成します。
次回の予告
Day 12: タスク定義とサービスの作成:コンテナをAWS上で動かすための設定
それでは、また明日お会いしましょう!