ゼロから始めるAWS!クラウド時代の幕開けとアカウント作成の心得
こんにちは!現役エンジニアのAKIRAです。
いよいよ「【AWSプロフェッショナルへの道】現役エンジニアが贈るクラウド実践ガイド」の連載が始まりました。この連載を通して、皆さんがAWSを使いこなし、クラウドのプロフェッショナルとして活躍できるよう、全力でサポートしていきます!
第1回目は、「クラウドって何?」 という基本的な疑問からスタートし、AWSのアカウント作成、そしてクラウド利用における最初の関門である IAM(Identity and Access Management) の基礎までを徹底的に解説します。クラウドの全体像を掴み、安心してAWSを使い始めるための土台を一緒に作りましょう。
1. クラウドとは?オンプレミスとの違い
まず、クラウドとは何か?という点から始めましょう。簡単に言えば、インターネット経由で必要なITリソース(サーバー、ストレージ、データベース、ネットワークなど)を必要なときに必要なだけ利用できるサービスのことです。
これまでの主流だった「オンプレミス」と比較すると、クラウドのメリットがよく分かります。
オンプレミスの場合
オンプレミスでは、企業が自社でサーバーやネットワーク機器を購入し、データセンターやオフィス内に設置・運用します。
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メリット:
- 自社で全てを管理するため、高いカスタマイズ性とセキュリティ統制が可能。
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デメリット:
- 初期費用が非常に高額(サーバー購入、データセンター構築など)。
- リソースの調達に時間がかかる(数週間〜数ヶ月)。
- 運用・保守の人件費や手間が大きい。
- 需要の変動に対応しにくい(急な増減に対応しづらい)。
- 障害対応や災害対策が自社負担。
クラウドの場合
AWSに代表されるクラウドサービスでは、これらのITリソースをクラウドプロバイダー(AWS、GCP、Azureなど)が管理し、ユーザーはインターネット経由でサービスとして利用します。
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メリット:
- 低コスト: 初期費用がほとんどかからず、使った分だけ料金を支払う従量課金制(例: 使わなければ0円)。
- 迅速なリソース調達: 数分でサーバーを起動できるなど、必要なリソースをすぐに利用可能。
- 運用負荷の軽減: サーバーの保守やアップデート、物理的なセキュリティなどはプロバイダーが担当。
- 高いスケーラビリティ: 需要に応じてリソースを簡単に増減できる。
- 高可用性・耐障害性: 複数のデータセンターを利用することで、災害や障害に強いシステムを構築しやすい。
- グローバル展開: 世界中のリージョンを利用し、簡単にグローバルサービスを提供できる。
ご覧の通り、クラウドはコスト、スピード、柔軟性において、オンプレミスに比べて圧倒的な優位性を持っています。これが「クラウドファースト」と呼ばれる時代になった理由です。
2. AWSとは?なぜAWSを学ぶのか
AWS (Amazon Web Services) は、Amazon.comが提供するクラウドコンピューティングサービスです。2006年にサービスを開始して以来、世界中で最も多くの企業や組織に利用されており、クラウド市場で圧倒的なシェアを誇っています。
なぜAWSを学ぶのか?
- 豊富なサービス: コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワークから、機械学習、IoT、ブロックチェーンまで、200以上の膨大なサービスを提供しています。これにより、あらゆる種類のアプリケーションやシステムを構築できます。
- 業界標準: クラウド市場のリーダーであり、多くの企業がAWSを採用しています。AWSのスキルは、現在のIT業界で最も求められるスキルの1つです。
- 学習リソースとコミュニティ: 公式ドキュメント、トレーニング、認定資格、そして活発なコミュニティがあり、学習しやすい環境が整っています。
- 継続的な進化: 新しいサービスや機能が常にリリースされており、常に最新の技術に触れることができます。
この連載では、まずAWSを深く学ぶことで、クラウドの基礎概念と実践スキルを身につけます。AWSで得た知識は、GCPやAzureといった他の主要クラウドサービスにも応用できる「クラウドの共通言語」となるため、将来的なキャリアパスの幅も大きく広がります。
3. AWSアカウントを作成しよう!
それでは、いよいよAWSのアカウントを作成してみましょう。 新規アカウント作成から12ヶ月間利用できる無料枠(AWS Free Tier) がありますので、学習用途であればほとんど費用をかけずに様々なサービスを試すことができます。
3.1. アカウント作成の手順
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AWS公式サイトにアクセス:
https://aws.amazon.com/jp/ にアクセスし、「無料サインアップ」または「コンソールにサインイン」→「新しいAWSアカウントを作成」をクリックします。 -
アカウント情報の入力:
- Eメールアドレス: AWSアカウントのルートユーザーのIDになります。
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AWSアカウント名: 管理しやすい名前を設定します(例:
MyPrivateSandbox
)。 - パスワード: 強固なパスワードを設定してください。
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連絡先情報の入力:
個人利用かビジネス利用かを選択し、氏名、住所、電話番号などを入力します。 -
支払い情報の入力:
クレジットカード情報を入力します。無料枠を利用する場合でも、不正利用防止のためにカード情報が必要です。無料枠を超過した場合は自動的に請求されますが、通常の学習用途であれば心配する必要はほとんどありません。 -
本人確認:
登録した電話番号に自動音声の電話がかかってきて、画面に表示されたPINコードを入力します。 -
サポートプランの選択:
最初は「ベーシックサポート - 無料」を選択しましょう。学習用途ではこれで十分です。
これらの手順を完了すると、AWSアカウントが作成され、AWSマネジメントコンソールにサインインできるようになります。
3.2. ルートユーザーとベストプラクティス
AWSアカウント作成時に設定したメールアドレスとパスワードは、「ルートユーザー」と呼ばれるアカウントの最高権限を持つユーザーです。このルートユーザーは、AWSアカウント内のあらゆる操作(請求情報の変更、アカウント削除など)が可能です。
セキュリティのベストプラクティスとして、ルートユーザーは日常的な作業には絶対に使用しないでください! ルートユーザーは、アカウント作成時や、特別な請求情報の確認など、ごく限られた場面でのみ使用し、それ以外は後述するIAMユーザーを使うべきです。
ルートユーザーに対しては、必ず多要素認証 (MFA) を設定しましょう。MFAは、パスワードに加えてスマートフォンアプリなどで生成される一時的なコードの入力も求めることで、セキュリティを大幅に強化します。
4. AWSセキュリティの要!IAMの基礎
AWSを安全に利用するための最初の、そして最も重要なステップがIAM (Identity and Access Management) の理解と設定です。
IAMは、 「誰が(ID)、どのAWSリソースに対して(リソース)、何をできるか(アクセス権限)」 を細かく制御するためのサービスです。
4.1. IAMの主要な構成要素
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IAMユーザー:
- AWSリソースにアクセスするための実体です。あなたやチームメンバーが日常的にAWSを操作する際に利用するIDになります。
- 必ずIAMユーザーを作成し、そのIAMユーザーで日常のAWS操作を行いましょう。
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IAMグループ:
- 複数のIAMユーザーをまとめるための入れ物です。グループにアクセス権限を付与することで、グループ内の全ユーザーに同じ権限をまとめて付与できます。
- ユーザーごとに権限を設定する手間を省き、管理を効率化します。
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IAMロール:
- ユーザーやAWSサービスに一時的に特定の権限を付与する際に使用します。
- 例えば、EC2インスタンスにS3バケットへのアクセス権限を付与したい場合などに利用します。特定の認証情報を持たないシステムやサービスに権限を与える場合に非常に便利です。
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IAMポリシー:
- IAMユーザー、グループ、ロールに対して、どのようなAWSリソースに、どのような操作を許可または拒否するかを定義するJSON形式のドキュメントです。
- IAMの権限管理の核となる部分です。
4.2. IAMユーザーを作成し、日常使いするための設定
- AWSマネジメントコンソールにルートユーザーでサインインします。
- サービス検索バーで「IAM」と入力し、IAMコンソールを開きます。
- 左のナビゲーションペインから「ユーザー」を選択し、「ユーザーを追加」をクリックします。
- ユーザー名を設定し、「AWSマネジメントコンソールへのユーザーアクセスを提供する」にチェックを入れます。
- 「IAMユーザーとして新しいパスワードを作成」を選択し、自動生成またはカスタムパスワードを設定します。
- 「ユーザーは、次回のサインイン時に新しいパスワードを作成する必要があります」のチェックは、運用ポリシーに合わせて選択してください。
- 「許可を設定」画面で、作成するIAMユーザーにどのような権限を与えるかを設定します。
- 最初は「既存のポリシーを直接アタッチ」を選択し、「
AdministratorAccess
」というポリシーをアタッチするのが手軽ですが、これは学習目的でのみ一時的に利用し、本番環境では最小権限の原則(後述)に従って厳密に設定すべきです。 - より実践的には、「グループに追加」を選択し、先に作成した管理者グループ(例:
Admins
)に追加することをお勧めします。
- 最初は「既存のポリシーを直接アタッチ」を選択し、「
- タグ(任意)を追加し、レビュー画面で設定を確認後、「ユーザーを作成」をクリックします。
これでIAMユーザーが作成されました。作成後、IAMユーザーのサインインURLが表示されますので、ブックマークしておきましょう。
4.3. 最小権限の原則
セキュリティにおいて最も重要な原則の一つが「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」です。これは、ユーザーやサービスには、その業務を遂行するために必要最小限の権限のみを与えるべきという考え方です。
例えば、S3バケットへの読み取りしか必要ないユーザーには、S3への書き込みや削除の権限は与えない、といった具合です。これを徹底することで、万が一不正アクセスがあった場合でも、被害を最小限に抑えることができます。
この連載でも、各サービスを学ぶ際に、そのサービスに必要なIAM権限についても触れていきます。
5. AWSの料金体系と請求の確認方法
AWSの料金は基本的に従量課金制です。使った分だけ料金が発生し、使わなければ料金はかかりません。サービスによって課金単位(データ転送量、CPU時間、ストレージ容量など)が異なります。
料金の見積もりと確認
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AWS料金計算ツール (Pricing Calculator): サービス利用前に費用の見積もりを行えます。
https://calculator.aws/ -
AWSマネジメントコンソール - 請求ダッシュボード: 現在の料金、請求履歴、サービスの利用状況などを確認できます。
- ルートユーザーでログイン後、右上アカウントメニューから「請求ダッシュボード」を選択します。
- 「コストと使用状況レポート」で詳細な利用状況を確認できる他、「予算」を設定して予算超過を通知することも可能です。
- 無料枠の範囲内で利用しているか、定期的に確認する習慣をつけましょう。
まとめ
第1回では、クラウドとAWSの基本的な概念、そしてAWSを安全に使い始めるためのアカウント作成とIAMの基礎を学びました。
- クラウドはオンデマンドで柔軟なITリソースを提供し、現代のビジネスに不可欠な存在です。
- AWSは世界で最も利用されているクラウドプラットフォームであり、そのスキルはあなたのキャリアを大きく拓きます。
- AWSアカウントを作成したら、ルートユーザーの厳重な管理と、IAMユーザーの作成・利用を徹底しましょう。
- IAMでは「最小権限の原則」を常に意識し、セキュリティを確保することが重要です。
- 無料枠を有効活用しつつ、請求ダッシュボードで利用状況を定期的に確認しましょう。
次回、第2回では**「AWSの要!VPCを徹底解剖 - ネットワーク設計の基礎と実践」**と題して、AWSのプライベートネットワークを構築するVPCについて深く掘り下げていきます。システム構築の土台となる非常に重要なサービスですので、お楽しみに!
皆さんのAWS学習、応援しています!
この記事が皆さんのAWS学習の一助となれば幸いです。
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