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「行列式は自然変換の一例である」について

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『ベーシック圏論』で圏論の勉強をしているのですが、行列式は自然変換の一例であるというトピックが色々な概念を含み、あとで圏論の復習をする際に便利な素材だと思いました。

そこで『ベーシック圏論』の文言を引用しながら逐一補足する形で、行列式が自然変換であることを確かめていきます。引用箇所はp34~p35のおおよそ1ページ分です。

自然数nを固定する。どのようにn×n行列の行列式が自然変換として理解されるかを見る。

はい。

可換環RについてR成分のnxn行列はモノイド$M_n(R)$をなす。

台として「R成分のnxn行列の全体」、モノイド演算として「行列積」を採用する。すると結合則も満たすし、単位は単位行列とすることで単位則も満たすし、モノイド演算について閉じていることもいえる。だから$M_n(R)$はモノイド。

そして環準同型R→Sはモノイド準同型$M_n(R)→M_n(S)$を誘導する。

RとSが与えられれば、$M_n(R), M_n(S)$ というモノイドも明確に定まる。R→Sなる環準同型が存在すれば、$f: M_n(R) → M_n(S)$ というモノイド準同型もまた存在する、と言っている。さて、そのモノイド準同型はどのようなものだろうか?

$M_n(R)$ の元である行列Xについて、Xの各成分をfで送ることで構成される行列X'は$M_n(S)$ の元である。そこでXをX'に送ればよい。こうすることで、a)単位行列は単位行列に送られるし b)行列積XYをとってから各成分をfで送ってできた行列と、各成分をfで送ってできた行列の行列積が一致する。よってモノイド準同型を構成できた。

したがって $M_n$: CRingMon は可換環の圏からモノイドの圏への関手を定義している

対象について:任意の可換環 R∈ob(CRing) を、モノイドMn(R)∈ob(Mon)に送る方法は前述のとおり。

射について:任意の環準同型 f:R→S をモノイド準同型 f':Mn(R)→Mn(S) に送る方法も前述のとおり。

関手公理について:可換環R,S,TがありR→S,S→Tなる環準同型f,gがあったとして、その合成gf:R→Tもまた環準同型だけれど、それを送ったモノイド準同型Mn(gf)は、Mn(g)◦Mn(f)と一致するだろうか?答えはYesだからMnが関手性公理を満たす。証明は行列の各成分を具体的に書き下せばよい。

また環Rの台集合はモノイドU(R)になりU:CRingMonは別の関手を定めている。

環Rについて加法だけを忘れる忘却関手Uが存在するといっている。

R成分のnxn行列Xは行列式detR(X)をもち、これはRの元である。

後述の議論のためにはU(R)の台集合の元である(台集合の元と1対1対応する)といった方がいいかもしれない。

慣れ親しんでいる行列式の性質 $det_R(I)=1$ $det_R(XY)=det_R(X)×det_R(Y)$ は各Rについて detR: Mn(R)→U(R) がモノイド準同型であることを示している。

前述のようにMn(R)もU(R)もモノイドであるので、その間にモノイド準同型があっても不思議ではない。そして実際存在して「行列式の計算をする」という操作だといっている。

確かに、行列式の計算は、Mn(R)の単位行列をU(R)の1に対応付けるし、Mn(R)上でのモノイド演算後に送った結果(行列積をとってから行列式を計算した結果)は、送ってからU(R)上でのモノイド演算をした結果(行列式を計算してそれらを掛け合わせた結果)と一致している。なるほど行列式の計算はモノイド準同型だった。

だから射の族$(M_n(R)→U(R))_{R\in {\bf CRing}}$ があって、これが自然変換 det:M_n→Uを定義しているかという問いがありうる。

「自然変換を定義しているか」という言い回しは以下を由来とする。

これまでの議論のように各R∈CRingについて射 det_R を構成できた。これは自然変換Mn→U (存在するなら名前はdetというのが適当だろう)が存在し、そのR成分/component がdet_Rであるという気にさせる。

実際これは自然変換になっている(確認すること!)

自然変換公理は、「R成分行列をR'成分行列にしてから行列式を取った値」と「行列式の値を、R'にした値」が等しいを証明すればよい。

そもそも行列式の定義式は行列成分のかけ算と足し算のみを使った関数として定義されていたのであった。なので上記の自然変換公理はほぼ自明に成立する。

...こと!)は行列式が全ての環で一様に定義されていることを反映している。つまりある環上の行列式はこう定義するが別の環については違う方法で定義するということはしない。

前述の証明ではMn(R)上の行列式計算とMn(S)上の行列式計算が同じ形式をしていることが前提だったので、確かにそうだ。

一般的に言うと自然数公理は族 $(α_A)_{A∈\mathcal A}$ が $A∈{\mathcal A}$ にわたって一様に定義されているという考え方を捉えていると考えられる。

同じようなものを同じような仕方で定義するという我々の傾向性が、自然性公理という形で一般化・抽象化されているみなせるという見解。傾向性自体が数学的対象ではないので有意な命題ではないけれど、直観的には妥当だとは思える。

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