いろいろな選択肢が増加している今の世の中、やるべきこと・やらざるべきことを能動的に選択していかないと人生がいくつあっても足りないと感じます。
私は、決断をするということについてそれほど逡巡がないタイプです(社会的に高い地位にあるわけではないからかもしれません)。とはいえかなりこだわって決めるタイプでもあります。
最近は誰もが忙しく、雑な決断というものを目にする機会が多くなりました。
忙しいときでも納得感のある決断をしたい、と未来の自分を戒めるべく、決断する時に気をつけていることを文字に起こしてみようと思いました。
決断をする
1. whyにこだわる
「なぜそれをやるのか、やらないのか」
「なぜ今やるのか」
「なぜほかでもない自分がやるのか」
関連書籍
- イシューからはじめよ(安宅和人)
- FIND YOUR WHY(サイモン・シネック)
- 問いかけの力(野々村健一)
2. 二手先まで考える
機械学習の世界には「決定木」というアプローチがありますね。決定木では判断の繰り返しにより目的量(未来)が変わります。機械が計算する場合は、深い木構造を構成することでさまざまな未来に探りを入れることができます。おそらく将棋の棋士たちもかなり先の手を見越し、ありうる未来のパターンを脳内シミュレーションしているのだと思います(やがてそれが直観へと蒸留されるという説も)。
普通の人にはそれはかなり難しいです。またビジネスの場合、将棋のように、自分の判断に対する外界の反応がルールで定まったものでないことが多いと思います。それでも、二分木を深さ2の分だけ考えれば、4つの未来をシミュレートしたことになります。パッと思いつくたった一個の選択肢に依るのに比べれば、圧倒的によいビジョンを得ているはずです。
二手先を考えるということの意味は複合的です。たとえば、自分がうった施策に対する外界の反応が自分に返ってくるということや、自分が誰かに話した内容がその向こうにいる誰かに二次的に広がるといったことです。
さて、もうひとつ機械学習の分野で「因果推論」という領域があり、そこでは「反実仮想」というコンセプトがあります。今現在起こっている現実(例:自民党が政権を運営)では施策の効果(人々の幸福度など)が測れるが、起こらなかったほうの世界(例:民主党が政権を運営)は実際には起こっていないので効果を測ることができない、さあどうしましょう、という話です。目の前に起こっている現象は常にひとつです(だと思います)が、パラレルワールド(いろいろな可能性の未来)があって、自分が能動的に、根拠を持ってその一個を選びにいく感覚が大事だと考えています(これって量子コンピュータとのアナロジーも)。
関連書籍
- Pythonによる因果分析(小川雄太郎)
- IBM Quantumで学ぶ量子コンピュータ(湊雄一郎)
3. 大事な決断には客観性を
データで語る、エビデンスで語ることが大事なので、可能な限り数字の材料は集めます。可能なら小さな実験を組む。
常にデータがとれるわけではないので、歴史(先達)から決断の思考回路を学ぶというのもよくありますね。
いずれにしても、自分の外から貪欲に情報を集めることはすごく大切だと思います。
さて、判断材料を集めて決断の雛形ができたら、あとは外部視点にさらします。客観性を獲得するということです。重要な決断のときには、修羅場をくぐったメンターや先輩に異なる視点を注入いただく(メンターや先輩のアグリーをとるという意味ではない)ことで、決断の質は飛躍的に向上すると思います。個人的な思いだけで語る人ほど白けるものはありません(熱意は大事ですけど)。
4. こだわるけど時間制限はある
誰かの期待に適時的にミートしないとよい決断であっても意味がなくなります。こだわるといっても、あと(アクションをとるとき)に響かない範囲で決断することが重要だと思います。
そもそも100%正しい決断などないというマインドセットがあれば、決断は下しやすくなります。
5. 間違えても大したことにはならない
運や巡り合わせをバカにしてはいけないと思います。ただそれは神頼みということではなく、VUCA(volatility, uncertainty, complexity, ambiguity)時代において試行錯誤(実験・失敗)の回数を確保し、セレンディピティが訪れるチャンスを増やすという意味です。
エジソンの「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」は最近すごく好きです。「死ぬこと以外かすり傷」という言葉も言い得て妙だな、と。
何かを決断して何かを始めたとしても、「止めることを決断する」という道も残されています。
6. 決断はあとから正しいものにできる
スティーブ・ジョブスは「現実歪曲空間」を操っていたと言われています。彼がビジョナリーな言葉を発すると、必ずそれが実現されるように世界がひずむというものです。
マジックでもなんでもありません。
ビジョンを発したあと、彼はそれが実現するようにまわりを巻き込みながら努力をしただけです。
正しい決断をするというのは未来を予測する、といっているようなもので、あまり現実的ではありません。選んだ選択を正しいものにしていくように動く、これがリアルな姿ではないでしょうか。
7. 他者の決断に問いを投げかける
自分がよい決断をするためには、ほかの人の決断を観察することや作用を及ぼすことも有効だと思います。
私はアウフヘーベンというコンセプトが好きで、(一見相反するような)思想と思想をぶつける・ミックスすることでメタな思想を導く、といったニュアンスがあります。
プロフェッショナルなレベルの(=ある意味演じてやるような)対立がないチームや組織はたぶん底が知れてる。
最後に
おそらく7つの項目はMECE(mutually exclusive, collectively exhaustive)ではないので、このエントリーは今後も随時修正していく予定です。ひとまず、目先では、昔読んだ
を読み直して、自分の見方に修正を入れてみようと思います。