前提として、ここでいう奴隷とは決して過激な表現ではなく、その思想や行動がある程度操作されている状況を指します。
現代人はアルゴリズムの奴隷ということ
私たちは、日々大量に流れてくる情報を果たして正確に取捨選択し、捌いているでしょうか。
すべてを正確に把握するのは難しいことです。それは、私たちがどの時代においても、ある種の情報に踊らされてきた「奴隷」であることからも明白です。
歴史に見る情報操作の手段
歴史を振り返ってみると、メディアが存在しない時代では、交渉と噂話が情報伝達の中心であり、同時に情報操作の手段でもありました。教会や宗教団体、権力者が説教や公式声明を使って民衆をコントロールし、情報を統制していたのです。
時代が進み、新聞・ラジオ・テレビなど、これらのメディアが情報伝達手段になると、地理的な距離に関係なく大衆の意識を操作することが可能になりました。報道内容の順序や視点を操作するだけで特定の思想を広めるプロパガンダは容易に行われ、これが新たな形の情報操作となったのです。
SNS時代の情報操作の進化
そして現在、私たちが日々浴びている情報の大半はインターネットからもたらされます。特に若者は、YouTubeやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSから情報を得ることが多くなっています。これに対して、「メディア時代と同じ情報操作だ」と考える人もいるかもしれませんが、それは誤りです。現代のSNSでは組織による情報操作だけではなく、個人による情報操作や拡散が容易になっています。投稿がバズ(急速な拡散)を起こすことで、短時間で大量の人々に情報が伝播する点に注目すべきです。さらに、メディア時代では情報の受け手が受動的であったのに対し、SNSではユーザーが能動的に情報を発信し、共鳴するエコーチェンバー(同じ意見や思想を持つ人々が集まる空間)内でバズが促進されるという特徴があります。つまり正確な情報発信は組織レベルから個人レベルに細分化されたのです。これは、現代社会の情報の民主化とも言えるが、逆にそれが情報の信頼性やバランスを損なうリスクも伴います。
インターネット時代の新たなリスク
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アテンションエコノミー(ビューや滞在時間を延ばすために注意を引くもの)による、事実と違う内容の掲載
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アルゴリズムによる、ユーザのおすすめ表示機能。さらにそのおすすめの情報を受け取り続けることによる、フィルターバブル(自分の興味のある情報しか表示されない情報空間)の形成
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エコーチェンバー(自分と似た意見や思想を持った人々の集まる空間)による思想の偏り
実例: SNSによる情報操作の具体例
一つの実例を取り上げてみましょう。
とある国籍不明のアジア系女性が、「日本は少子化だから、日本人女性は外国人男性に妊娠させてほしいと思っている。そう望んでいる。」という動画をSNSに投稿しました。
この動画は瞬く間に拡散され、一瞬にして全世界に情報操作を行ったのです。そして、日本人女性が危険な目に合うということは、日本の治安にも影響するのです。女性に限らず、侵略や攻撃が、生物的な力や権力、社会的立場の弱いものに対して始まるという理論に基づくと、このような拡散は社会的な危機を生む可能性があるからです。
これがまさに、正確な情報発信は組織レベルから個人レベルに細分化された最悪の結果を示しています。メディア時代では、情報の受け手は受動的であったため、ある程度保護されていましたが、現代では誰もが情報発信者となり、その影響がバズを引き起こすことで世界中に広がるのです。
情報弱者とアルゴリズムへの対策
残念ながら、現代の情報社会において、情報弱者を完全に排除することは不可能です。私たちにできることは、あらゆるソースから情報を集め、正確に取捨選択することです。誤った情報や不純な動機によるバズを防ぐためには、以下のような心構えが必要です。
- 多角的な視点を持つ:情報を収集する際は、肯定的な意見だけでなく、否定的な意見にも目を向けることが重要です
- 複数のソースを確認する:一つの情報源に依存せず、異なるソースからの情報を比較することで、偏りを避けることができます
- アルゴリズムとフィルターバブルを意識する:SNSが自分に見せる情報は、アルゴリズムによって操作されている可能性があることを常に意識し、外部の視点を積極的に取り入れる姿勢を持つべきです
つまり、私たちの行動や思想は、無意識のうちにSNSアルゴリズムやエコーチェンバーの影響を受けている可能性があるということです。そのため、日常的にこれらの影響を受け入れるのではなく、常に批判的な視点を持ち、俯瞰的に物事を判断する能力が、現代社会では強く求められます。