こんにちは。小売業で働いている takuma です。3回目の投稿になります。
今回もまた、現場の課題を解決できるアプリの作成にチャレンジしてみました。
前回、前前回の記事はこちら
作業場が紙だらけ!
現在の職場では、連絡事項の確認にメールや専用ツールを使っています。
ただしメールは私にしか届かない、専用ツールはログインの手間があり、パートさんからは 「使い方がよくわからない」 との声も。
その結果、「紙にメモして貼る」「連絡事項を印刷して掲示する」「印鑑で確認する」といった アナログな方法で情報共有を行っています。
ただこの方法、手間がかかる上に、作業場が紙だらけになってしまうという問題があります。
貼り紙は増える一方で、見づらくなり、かえって重要な情報が埋もれてしまうことも。
そこで今回、誰でも簡単に連絡事項を確認できて、誰が確認済みかも分かるアプリを作ってみることにしました。
使用ツール
・AppSheet
・Google スプレッドシート
使用画面
連絡事項の投稿、確認ができ確認した人の名前やその日時も見ることができます。
また締切3日以内のものは赤文字で表示されます。
*ここにある10個の苗字は ChatGPT にランダムで出力してもらったものです。
作成手順
スプレッドシートの準備
このアプリは、Google スプレッドシートをデータベースとして3つのテーブルを使って構成しています。
1つ目は 「連絡事項」テーブルで、連絡事項の内容や締切日、作成者の情報を登録します。
2つ目は 「確認状況」テーブルで、誰がどの連絡をいつ確認したかを記録します。
3つ目は 「名簿」テーブルで、スタッフの名前を一覧管理し、作成者選択や確認時の選択に使用しています。
Appsheetで各カラムを設定
連絡事項テーブルのカラム設定について
このテーブルでは、連絡事項そのものの情報を管理します。画像の通り、連絡事項・作成者・締切日などを記録するカラムがありますが、ここでは特に重要な設定を紹介します。
「連絡事項ID」 はこのテーブルの key で、各連絡事項を一意に識別するためにUNIQUEID()
を使って自動生成されるようにしています。これにより、他のテーブル(特に確認状況テーブル)と正しく関連づけることができます。
「締切表示」 は仮想列として設定しており、"締切: " & TEXT([締切日], "yyyy/MM/dd")
という式を使って、連絡事項欄で表示されている日付がなんの日付かを一目で認識できるようにしました。
また、Format Rule(表示ルール) を活用することで、締切日まで72時間を切った連絡事項を赤文字・赤アイコンで強調表示するようにしています。これにより、見落としを防ぎやすくなっています。設定の詳細は後程…。
確認状況テーブルのカラム設定について
このテーブルでは、「誰がどの連絡事項をいつ確認したか」を記録します。下記の画像にあるように、カラムは主に5つで構成されていますが、ここでは特に重要な3つのカラムの役割を説明します。
「確認ID」 はこのテーブルの key として設定しており、UNIQUEID()
で連絡事項IDと同じく毎回自動的に異なる値が割り当てられるようにしています。これにより、どの確認記録を操作する場合でも一意に識別でき、アプリ内で正確なデータの参照や削除が可能になります。
「連絡事項ID」 は連絡事項テーブルとの関連づけを行うためのカラムです。Ref型で設定しており、これによって「どの連絡事項に対する確認なのか」が自動的に紐づく仕組みになっています。
「確認日時」 にはNOW()
関数を設定しており、確認操作を行ったタイミングが自動的に記録されるようになっています。手入力を不要にし、記録の精度も保つことができます。
名簿テーブルのカラム設定について
名簿テーブルは、アプリ内で利用するスタッフの名前を管理するためのテーブルです。構成は非常にシンプルです。
「名前」 は Key として設定されており、「連絡事項」テーブルの作成者選択や、「確認状況」テーブルの確認者選択に使われています。これにより、名前を毎回手入力せずに、ドロップダウンから簡単に選べるようになっており、入力ミスを防ぐことができます。
「表示順」 は、名前の表示順をこちらでコントロールするために追加したものです。AppSheet の並び順はデフォルトではあいうえお順や追加順になることがありますが、現場で使いやすくするために、スタッフの役割やよく登場する順番などを考慮して「1〜10」の番号を振ることができるようにしています。
この「表示順」カラムをもとに、AppSheet の設定画面でソートの基準を「表示順」に指定することで、ドロップダウンなどに表示される名前の順番を自在に調整できるようにしています。
UIの設定とデザイン上の工夫について
このアプリ作成において、「見やすさ」「わかりやすさ」「間違いにくさ」 にできるだけ配慮したUI設定を意識しました。
以下では、主な工夫ポイントについて説明します。
締切が近い連絡を赤く目立たせる(Format Rule)
連絡事項の中でも、締切が近いものは特に優先的に確認してもらいたいため、締切まで72時間を切った連絡事項に対して赤文字・アイコンを表示するように設定しています。
AppSheet の 「Format Rule」 機能を使い、以下の式を条件として指定しました。
AND( HOUR(DATE([締切日]) - TODAY()) <= 72, HOUR(DATE([締切日]) - TODAY()) > 0 )
この条件に合致するデータに対して、テキストを赤色にし、警告アイコンを表示しています。これにより、ユーザーがアプリを開いたときに締切が迫っている連絡事項が自然に目に入りやすくなります。
UI上で日本語表示に対応(Localize設定)
AppSheet は英語表記が多いため、そのままだと現場のスタッフが使いづらいです。そこで、「Localize」 設定で、ボタンやメッセージなどの主要な表記を日本語に置き換えています。
たとえば、以下のような項目を日本語に変更しました。
Add→「追加」
Save→「保存」
Delete→「削除」
Done →「完了」
Are you sure? → 「本当によろしいですか?」
これにより、初めてアプリを使うスタッフでも直感的に操作できるようになり、誤操作の不安も軽減されました。
職場の人に使ってもらいました!
今回は、私の部門のパートスタッフ3名(Tさん・Mさん・Sさん) に実際に使ってもらいました。
事前説明で伝えたこと
・右下の「+ボタン」で連絡事項を追加できる
・タップで詳細を見て、「確認」を押すと名前を選択して確認完了
・締切が近いものは赤くなるので、見逃さないようにできる
実際のフィードバック
・ポジティブな意見(良かった点)
Tさん:「直感的に使い易い。」
→ UIがシンプルなので、最初の抵抗感はすぐに消えた!
Tさん:「誰が見たかが分かるのが便利」
→ 「○○さん見た?」という確認が減って、皆の負担が減りそう!
Tさん:「確認を押すだけで済むのが楽」
→ 名前を書いたり印鑑を押すより手軽。ひと手間で済むのが嬉しい
Sさん:「紙がなくなると作業場がすっきりする」
→ 作業場のごちゃつきが解消されそう!
Mさん:「慣れたら紙より早いかも」
→ 慣れれば確認も記録もスムーズで楽!
・ネガティブな意見(課題点)
Tさん:「画面が小さくて見づらい」
→ 特に赤文字が増えると、スマホ画面では読みにくくなる。
→ ⇒ 対策:文字サイズ調整や配色の見直しを検討
Sさん:「どこ押せばいいか迷う時がある」
→ ボタンやアイコンが小さい。「あれ?入力ってどこからだっけ?」 と迷う。
→ ⇒ 対策:「確認はこちら」など導線を明示
Sさん:「名前選ぶときに間違えそう」
→ 自分の名前を選んだつもりが、Cさんになっていた…という事態が怖い
→ ⇒ 対策:確認後に確認内容を再表示・再確認できるポップアップを出す。
Mさん:「押したのに登録されたか不安」
→ 「確認完了」のようなメッセージが出ないと、本当にできたか不安になる
→ ⇒ 対策:確認完了の通知を追加する。
実際に使ってもらって分かったこと
今回のプロトタイプづくりを通して、「まず動くものを作って、実際に使ってもらう」 ことの大切さを再確認しました。
アプリの見た目や機能だけでは気づかなかった課題や、想像以上に喜ばれたポイントも、実際の声から初めてわかることばかりでした。
例えば、「誰が見たか分かるようになるのが便利」「確認がワンタップで済むのが楽」 など、思った以上に確認する側の負担が大きかったことに気づけたのは大きな収穫でした。紙の掲示では当たり前だった手間やごちゃつきも、デジタルにすることでかなり減らせそうだという感触がありました。
一方で、「画面が小さくて見づらい」「操作ミスが怖い」「押した後にちゃんと反映されたか不安」 など、操作の安心感や視認性への配慮がまだ不十分だった部分も明らかになりました。
特に、「名前を選び間違えるかもしれない」 という声や、「完了メッセージがないと不安」 という声は、機能的にはできていても使っている人が安心できるかどうかまで設計しきれていなかったことを教えてくれました。
こうしたリアルな声をもとに、今後は以下のような改善を検討しています。
・名前の選択ミスを防ぐために、確認後に内容を再表示するポップアップを追加する。
・完了メッセージを表示し、登録が成功したことをわかりやすく伝える。
・ボタンやフォントサイズの見直しによって、画面の見づらさや迷いを減らす。
・「操作に迷わないUI」を意識して導線を整理する。
現場の課題は見えていないところにこそ本質があります。だからこそ、まず作って試してもらい、声を聞いて磨くというステップがとても有効だと感じました。
今後も、「自分にできる業務改善」 を見つけて、手を動かして形にしていくことを続けていきたいと思います。