Nutanix Advent Calendar 2015,12月18日分としての投稿になります。
本記事の内容はこの日付時点の情報(ce-2015.11.05-stable)に基づいています。そのため,今後新しいバージョンが提供された場合に,当該記載と矛盾が生じる場合がありますのでご注意ください。また,さわりはじめたばかりで認識誤り等があるかもしれません。おかしい,なんか違う等ありましたらご一報を。
はじめに
当初,Nutanix CEでベンチマークをいろいろ取る予定だったのですが,時間の都合を含む諸事情により難しくなったため予定を変更して,いまさら感もありますが,ce-2015.11.05-stableのファーストインプレッションについて書きたいと思います。既に,Nutanix Advent Calendar 2015のいくつかの記事の中で,ce-2015.11.05-stableで新規で追加された機能や改善された機能などについてお伝えしていますが,それを含めてce-2015.11.05-stableにおける不具合なんかについても少し書いておきたいと思います。
アジェンダ
- ce-2015.11.05-stableでの新規追加機能
- ce-2015.11.05-stableでの不具合
- まとめ
ce-2015.11.05-stableでの新規追加機能
前回行われたNutanix Community Meetup #6において,中の人からの「Nutanix Acropolis 4.5 最新機能解説」のセッションにおいて紹介された,ce-2015.11.05-stableのアップデートやNutanix Advent Calendar 2015における様々な記事の内容と一部重複する部分がありますが,ご了承下さい。ce-2015.11.05-stableのリリースノートから,今回のアップデートの主な内容をさらっとなめていきます。
なお,Nutanix Acropolis 4.5とは,基本的に商用版のNutanixで動作するNutanixのハイパーバイザーですが,Nutanix CEは,Acropolis 4.5をフォークしたものを搭載しているため,Acropolis 4.5のアップデート内容がほぼ反映されている形となります。
Image Service機能が追加
既に12月5日のgowatanaさんの記事及び12月9日のshmzaさんの記事で紹介されている内容でほとんどですが,Image Serviceと呼称されるNutanix CEへのファイルのアップロード機能がGUIと共に実装されました。
機能の主な内容は以下のとおりです。
- ISOファイルやvmdk,vhdファイル等をPRISMからNutanix CEへアップロード・コンバートできるようになった
- PRISMを操作しているPCやホストから又はURL指定でインターネット等からアップロードできるようになった
コンバート機能
Nutanixの機能のほとんどは制御用のVMであるCVMにあるため,このCVMが動く環境であれば,基本的にハイパーバイザーを問いません。そのため極端な例で行くと,3台のノードあったとして,1台目のノードはAHV,2台目のノードはVMware vSphere,3台目のノードはHyper-Vでクラスターを組んでも良いわけです。しかし,異なるハイパーバイザー上で動作する個々のユーザーVMは,それぞれVMのフォーマットが異なるため,これらのVMが3台の異なるハイパーバイザー上を行き来するには,何かしらの仕掛けが必要となりますが,Image Serviceは,そのコンバートを担ってくれるようになりました。
ただし,Nutanix CEでは,AHVしかサポートしていないため,Nutanix CEを用いて,VMware vSphereやHyper-Vとの混在クラスターを構築することはできませんが,Nutanix CE上にVMware vSphereやHyper-Vで動作していたVMのイメージをインポートする機能はあるため,オフラインでNutanix CE上又はPRISMを操作するPC上にvmdkやvhdを持ってきて,Image Serviceでインポートして,AHV上にデプロイする,と言った運用は可能です。
アップロード機能
以前のバージョンでは,CIFS経由もしくはSFTPでのアップロードのみが可能でしたが,Image Serviceが実装されたことで,CIFSの設定を行うことなくブラウザから自分が現在操作している端末のローカルディスクにあるISOファイルをアップロードしたり,またVMの作成時に,あらかじめImage Serviceで登録をしておいたISOやvmdkファイルを等を指定することで,ISOファイル等の指定を毎回しなくても済むようになっています(イマイチ,ピンとこないかもしれませんが,あらかじめよく利用するISOファイル等を大量の仮想CD-ROMドライブをNutanixのホスト上に作成しマウントしておくイメージで,VM作成時にそのマウント済みのデバイスを選択することで,毎回インストールISO等の設定の手間を減らすことができます)。
AHVにおいてHA機能がデフォルトで動作するようになった
12月20日及び12月21日のNutanix Advent Calendar 2015で詳しくお伝えする予定ですが,Nutanix CEのハイパーバイザーであるAHVにおいて,HAの機能がデフォルトで有効になりました。あるノード上で動作しているVMがノード障害で動作できなくなった際に,別のノード上にて自動的に再起動される機能になります。なお,当然ながらこの機能はマルチノードクラスター構成時のみ機能します。
詳細については,12月20日及び12月21日に,Nutanix Advent Calendar 2015をご覧になって下さい。
インストレーション処理の品質向上
Nutanix CEがリリースされた当初は,インストールスクリプトのバグ等がありましたが,ce-2015.07.16-beta及びce-2015.11.05-stableでフィックスされたほか,細かいところでアップデートが掛かっています。ce-2015.11.05-stableのリリースノートから抜粋したアップデート内容はあ以下のものになります。
- ネットワークデバイスの認識率の向上
- CPUベンダーの判別処理の向上
- ハードディスクブートデバイス
ネットワークデバイスの認識率の向上
Nutanix CEでは,ネットワークカードの動作要件としてインテル製品を推奨していますが,それ以外のベンダー製品についてもハードウェア互換性が徐々に拡がってきています。
CPUベンダーの判別処理の向上
CPUベンダーの判別処理の向上についての詳細は不明です。が想像するに,ce-2015.11.05-stableでは,マイグレーション時にCPUの世代判別の互換性が向上し,世代が異なるCPUを搭載したノード間においてもマイグレーションが問題なく可能になったため,インストレーションとは直接関係ありませんが,何かしらの変更が入ったのではと妄想しています(誰か,具体的にどんな内容が知っていたら教えて下さい)。
ハードディスクブートデバイス
こちらも詳細は書かれていませんが,恐らくNutanix CEのブートイメージに関するものだと思われます。Getting Started with Nutanix Community Editionの「Recommended Community Edition Hardware」の中で,Nutanix CEのブートイメージを格納するデバイスに関する要件が以下のようになっています。
One 8 GB capacity device per node. It can be an external or internal device.
Nutanix has successfully tested and used external USB drives and internal devices such as a SATA DOM.
それまでNutanix CEのブートイメージは,USBメモリからの起動のみだったのが,内蔵ディスク等にもインストールできるようになった,と言うことだと思います。ただし,内蔵ディスク等にインストールする場合は,それまでWin32DiskImager等でUSBメモリに書き込んでいたce-2015.11.05-stableのインストールイメージファイルを内蔵ディスクに書き込むようにする必要があるため,一手間必要そうです(少なくとも従来どおりUSBメモリのインストーラーを書き込み,インストール先を内蔵のHDDにと言った操作はできないと思います)。
DR機能及びクラウドバックアップ機能の実装
先ほどまでがce-2015.11.05-stableのリリースノートにあった内容ですが,ここからは,Nutanix Community Meetup #6での内容とNow Generally Available: Nutanix Acropolis 4.5からの抜粋です。
DR機能及びAWSとAzureへのクラウドバックアップ機能が追加されています。主な機能追加の内容は以下のとおり。
- 異なる2つのNutanix CEのクラスター間でDRサイトを構築することができるようになった
- Nutanix CEのVMをAmazon Web Service及びMicrosoft Azure上にバックアップできるようになった
DR機能の追加
DR機能は,異なる2つのNutanix CEのクラスター間でDRサイトを構築することができるようになるもので,以下の2つの機能で構成されています。
- VMのバックアップ(スナップショット)をローカル及びリモートの異なるNutanix CEクラスター上にバックアップできるようになった
- リモートの異なるNutanix CEクラスター上にVMをDRマイグレーションできるようになった
バックアップ機能
VMのバックアップ(スナップショット)をリモートの異なるNutanix CEクラスターに取れるようになりました。この機能の詳細については,12月16日のshmzsaさんの記事で紹介されていますので,詳しくはそちらをご覧下さい。
DRマイグレーション機能
リモートの異なるNutanix CEクラスター上にVMをDRマイグレーションできるようになりました。この機能の詳細については,12月23日にshmzsaさんの記事で紹介される予定ですので,詳しくはそちらをご覧下さい。
クラウドバックアップ機能
クラウドバックアップ機能は,現時点でまだ開発中で更に機能追加が予定されているようで,今のところ単純にバックアップが取れるだけの機能となります。今後予定されている更なる機能追加では,クラウド上とオンプレミスのNutanixがシームレスに繋がり,ハイブリッドクラウドとなるよの予想です。
こちらの機能は,オンプレミス側にグローバルIPが必要になりますが,うちのNutanix CEが動いてる環境のインターネットの出口はケーブルテレビのプロバイダ提供するプライベートIPが振られているため試せていません。
ドキュメントを見る限り,おおよその手順は,以下のようになります。
- PRISM上のクラウドバックアップウィザードでバックアップ先がAWSであればAPIアクセスのためのアクセスキーとシークレットキーを入力
- PRISM上のクラウドバックアップウィザードでバックアップ先がAzureであればAPIアクセスのためのサブスクリプションIDとクレデンシャルを入力
- いずれの場合もカスタマーゲートウェイ等を含むVPNでオンプレミスのNutanix CEとAWSまたはAzureを接続する
クラウドバックアップを設定するためのPRISMでのセットアップウィザードでは,上記の入力を行うだけで,自動的にAPI経由でクラウド側にバックアップのための環境を作成するスクリプトやAPI流れるため,こちら側でVPCやインスタンスの構築,セキュリティの設定等を行う必要がないようです。
ただし,実際に動作はしませんが,試しにPRISM上からAWSへのクラウドバックアップのウィザードを途中まで流したところ,API経由でVPCが自動で構築され,m1.xlargeのインスタンスが起動してて,慌ててインスタンスを削除しました。これから試したい方はくれぐれもEC2インスタンスの落とし忘れ等にご注意下さい。
バックアップ(スナップショット)のセルフサービス機能(TP)の試験的実装
Nutanix Acropolis 4.5ベースのce-2015.11.05-stableで,スナップショットからのワンクリックリストアをセルフサービスで行うための機能がTech Previewとして実装されています。利用者は,PRISM上から又はAPI Explorerを見る限りでは,恐らくWebブラウザ経由でAPIを若しくはAPI経由するようなWebアプリ等を作ることで,システム管理者の操作を必要とすることなくセルフサービスでVMのバックアップとリストアを任意のタイミングで実施できるようになった模様です。
イレージャーコーディング(Erasure Coding)がTPからGAになり正式リリース
前バージョンのNOS 4.1.3からフォークされたce-2015.07.16-betaでは,Erasure Coding機能はTP(Tech Preview)でしたが,Nutanixで独自に重複排除と圧縮などの容量の最適化技術に加えて「EC-X」と呼称するErasure Coding機能を正式リリースさせています。EC-Xを有効にしない場合は,ストレージの利用効率は50%でしたが,EC-Xを有効にすることで,70%までストレージの利用効率が向上するとのことです。
VM Flashモードの実装
こちらはAcropolis 4.5,商用版のNutanixではリリースされていますが,Nutanix CEでも同様に機能が実装されているか不明です。中の人教えて下さい
VM Flashモードという機能が実装されてたとのです。Nutanixでは,特に分散ストレージ上におけるI/Oのパフォーマンスを保つためにSSDを必須の要件として,階層化ストレージによる高速化を図っています。
しかし,これまでのNutanixにおける階層化ストレージのデータの配置制御では,Tire-1アプリケーションと呼ばれる,非常にクリティカルなI/Oパフォーマンスを求められるシステムには対応できない場合もあったため,これを解消すべく,非常にI/Oパフォーマンスや低レイテンシを求められる,例えば大きなデータベースシステム等の場合は,階層化ストレージのデータの配置制御のロジックを一部変更し,常にHOT Tier,つまりSSDの側にデータを配置するようになった模様です。
Nutanix CEのコンテナ(ストレージ部分)をiSCSIで外部に提供する機能
Nutanixは,もともと分散ストレージが優れたソリューションですが,これをiSCSIで外部に提供する機能が実装されています。こちらはTPなのかGAなのか不明ですが,現時点ではPRISM上からの操作ができず,コマンドラインのみからの設定が可能であるため,これまで見てきたNutanixのポリシーから考えるとTP扱いなのかなと勝手に想像しています。
こちらの詳細については,Nutanix Advent Calendar 2015の最終日,12月25日に詳しくお伝えする予定ですので,今しばらくお待ち下さい。
Nutanix CE on Demandの提供
gowatanaさんのNutanix Advent Calendar 2015の連載記事にあるとおり,Ravelloで、Nutanix CEが使えるようになり,オンプレミスの機材がなくても,インターネットを経由してクラウド上にインストールされたNutanix CEが利用できるようになっています。詳しくは,gowatanaさんのAdvent Calendarをご覧下さい。
ce-2015.11.05-stableでの不具合
ce-2015.11.05-stableではいくつかの不具合が見つかっていますので,こちらも併せて紹介しておきます。
NehalemアーキテクチャCPU(Xeon 5500系以前)において,CVMが起動しない不具合
smzkstsさんのさんの12月1日の記事でも紹介されていますが,Xeon 5500系以前のCPUを搭載したマシンにce-2015.11.05-stableをインストールした場合,CVMが起動しない不具合が報告されています。対処方法については,以下のスレッドを参照。
Is Nehalem Intel Family supported on latest CE?
※Nutanix Next Discussion Forumへのログイン (参照にはNutanix Next Discussion Forumの登録が必要)
CentOS 7でGNOMEデスクトップ利用する際,PRISMから起動したコンソールVNCがyum update後,接続できなくなる不具合
CentOS 7をゲストVMとしてce-2015.11.05-stableのAHV上にインストールし,かつGNOMEデスクトップを利用する場合,CentOS 7のインストール後にyum updateで最新化すると,PRISMから起動したコンソールVNCに接続できなくなる不具合が発生しています。現時点におけるワークアラウンドは,yum updateを行わずに利用する他ありませんが,既にNutanix内で不具合を確認しておりチケットが切られているため,次期リリースでは修正されるとのことです。
なお,VNCが接続できないのみでsshは正常に接続可能です。
正常にPRISMのVNCが動作するバージョン
[root@localhost ~]# cat /etc/redhat-release
CentOS Linux release 7.0.1406 (Core)
[root@localhost ~]# uname -a
Linux localhost.localdomain 3.10.0-123.el7.x86_64 #1 SMP Mon Jun 30 12:09:22 UTC 2014 x86_64 x86_64 x86_64 GNU/Linux
PRISMのVNCが繋がらなくなるバージョン
[root@localhost ~]# cat /etc/redhat-release
CentOS Linux release 7.2.1511 (Core)
[root@localhost ~]# uname -a
Linux localhost.localdomain 3.10.0-327.3.1.el7.x86_64 #1 SMP Wed Dec 9 14:09:15 UTC 2015 x86_64 x86_64 x86_64 GNU/Linux
Ubuntu 14.04において,PRISMから起動したコンソールVNCで表示が崩れる
Ubuntu 14.04において,PRISMから起動したコンソールVNC内の表示が崩れる不具合が確認されています。こちらはまだ原因が不明ですが,VMware vSphereにおけるVMware ToolsやHyper-VにおけるLinux Integration Servicesに相当する,AHV用のドライバがないため,この症状が生じているのではないかと予想しています(コマンドからxの起動設定で解像度を直接指定したら治るのだろうか…)。
※単純に私の知識不足というかLinux初心者っぷりが分かっただけかもしれません…もし,Nutanix以外の要因だ,ド素人め!と言う場合は,詳しい方,対処方法を教えて下さい
まとめ
上記の不具合も報告されていますが,インストレーションハンドリング,ゲストVMインストール機能の拡充,運用フェーズを想定したマイグレーション機能,バックアップ機能の拡充,ドキュメントの充実などのアップデートになっています。GNOMEデスクトップ利用者には致命的な不具合がありますが,HA機能の正式リリース,Windowsにおけるマイグレーション,ゲストVMのバックアップリストア,イレージャーコーディングの正式リリース等,ひととおり運用が可能なレベルになってきてると思います。