近年、サイバー攻撃の増加に伴い、企業や開発者は自らのシステムの脆弱性を発見し、対策を講じる重要性が高まっています。総務省によると、サイバー攻撃関連の通信数の推移は2015年から右肩上がりになっており、2023年には過去最高を記録しています。サイバー攻撃関連の通信内容では、IoT機器を狙った通信がサイバー攻撃関連通信全体の約30%を占めています(参照:総務省)。このような状況において、脆弱性診断はシステムを守るために欠かせない手段となっています。
出典:総務省
このような状況下で脆弱性への対策が必要とは理解しているものの、どの脆弱性診断ツールを使うべきか、またどのように診断を進めるべきか、迷う方もいるのではないでしょうか。本記事では、初心者向けに脆弱性診断の方法やツール、選び方を解説し、実際に利用できるおすすめの診断ツールを紹介します。脆弱性診断ツールを検討する際の参考にしてください。
脆弱性診断とは
脆弱性診断は、システムやソフトウェアに潜むセキュリティ上の弱点(脆弱性)を見つけ出し、それに対する対策を講じるためのセキュリティテストです。近年、サイバー攻撃の増加によって、企業や個人の情報がターゲットにされるケースも多くなっています。特に、ウェブアプリケーションやネットワークにおける脆弱性が悪用されることが頻繁に報告されています。
脆弱性診断には様々な方法があります。中でも専用のツールを使ってシステムの隙間をチェックしたり、専門家が手動で調査を行ったりする方法が一般的です。そうすることで、攻撃者が悪用する前にリスクを発見し、対策を打てるようになります。
脆弱性診断の選び方:3つのポイント
脆弱性診断ツールを選ぶ際に重要なポイントは、目的に合ったツールを見極めることです。ここでは、初心者でも分かりやすい3つの選び方のポイントを紹介します。
1. システムの種類に応じたツール選び
脆弱性診断ツールは、システムの種類や診断対象によって使うべきツールが異なります。例えば、Webアプリケーションに特化した診断ツールが必要な場合や、ネットワークやサーバーのセキュリティを確認したい場合などは、診断対象に合ったツールを選ばなければなりません。それぞれのツールの特性を理解した上で、適切なものを選ぶことが重要です。
2. ツールの使いやすさとサポート体制
脆弱性診断ツールを使いこなすためには、そのツールがどれだけ簡単に操作できるかが大きなポイントです。特に初心者の場合は、インターフェースが直感的で使いやすいツールを選ぶと良いでしょう。ツールを使用中に問題が発生した場合にサポートが受けられるかどうかも、選択の基準になります。また、オンラインのサポートやコミュニティフォーラムが充実しているツールは、初心者でも安心して利用できます。
3. コストパフォーマンスと機能性
脆弱性診断ツールの選定において、コストと機能性のバランスを考えることも重要です。無料で利用できるツールもありますが、商用ツールはより高度な機能やサポートを提供することが多いです。しかし、機能が豊富な一方で高額な料金が設定されている場合もあるため、予算に応じて必要な機能を見極めることが必要です。例えば、商用ツールの中には、定期的なアップデートや脆弱性データベースの更新が含まれており、最新の攻撃手法にも対応できる場合があります。
脆弱性診断のおすすめ7選
ここでは、エンジニア初心者でも使いやすく、さまざまなシステムや用途に対応できる脆弱性診断ツールを7つ紹介します。それぞれのツールは特定の特徴や強みを持っており、用途や予算に合わせて選ぶことができます。以下のツールを活用して、システムの安全性を高め、攻撃リスクを減らすことが可能です。
1. 脆弱性診断サービス
出典:脆弱性診断サービス
脆弱性診断サービスは、株式会社サイバーセキュリティクラウドが提供する、クラウドベースの企業向け脆弱性診断サービスです。このサービスは、ウェブアプリケーションやネットワークシステムに潜む脆弱性をスキャンし、情報漏洩やシステムの停止など、セキュリティにおける問題を特定します。OWASP、WASC、SANSなど、代表的なセキュリティ団体が掲げる、脆弱性の項目を網羅しています。また小〜大規模まで様々なシステムに対応できたり、アフターサポートがあったりして、多くの企業から支持されています。
サイバーセキュリティクラウドは、ウェブアプリケーションの開発から運用に至るまで、あらゆる企業に対して強力なセキュリティ支援を行います。特に、サーバーやネットワークに関する脆弱性診断に加え、最新の攻撃手法に対応した脆弱性を定期的にチェックできるため、継続的なセキュリティ管理が可能です。
2. Nessus
出典:Nessus
Nessusは、セキュリティ脆弱性スキャナーとして広く認知されている商用ツールで、ネットワークやシステムに対する詳細な脆弱性診断を行うことができます。脆弱性を優先づけて修正するために、CVSSやv4など、様々な脆弱性の評価スコアを用意しています。また、セキュリティ担当者や外部のユーザーに役立つヒントが提供されているため、知識のギャップを解消することができます。
Nessus に搭載された機能は脆弱性評価をわかりやすく行えるよう設計されているため、評価や優先順位の設定、問題の修正にかかる時間と手間を大幅に削減できます。世界中で広く活用されている脆弱性診断で、企業向けのセキュリティ対策としては非常に信頼性が高いツールです。
3. 脆弱性診断サービス lite
脆弱性診断サービス liteは、アイレット株式会社が提供する、セキュリティ脆弱性の診断を行うサービスです。必要な機能だけに絞って脆弱性診断を行えて、診断対象にしたい機能に合わせて最適化されたサービスが用意されています。
時間や予算に余裕はないけれど、Webサイトにおける脆弱性の有無を把握したい場合や、必要な機能だけでも良いから診断したい場合におすすめです。1機能あたり15万円という明快な会計で、予算や用途に合わせてプランを選択できます。
4. Vex
出典:Vex
Vexは、Webアプリケーションの脆弱性診断ツールで、日本国内の市場シェアNo.1*を誇ります。2007年にリリースされて以降、金融機関と行った強固なセキュリティを必要とする組織から導入が始まり、脆弱性診断の精度には定評があります。
「検査シグネチャの提供」や「自由度の高いシナリオ作成」などの機能が充実しており、脆弱性の検出力が高くなっています。また、導入する企業に対してトレーニングメニューが豊富に用意されており、導入から運用までサポートしてくれます。脆弱性診断が初めての方も、安心して使えます。
*富士キメラ総研調べ「2024 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」(Webアプリケーション脆弱性検査ツール 全体市場 2023年度実績) 参照:https://www.ubsecure.jp/vex
5. Webアプリケーション診断
Webアプリケーション診断は、Webアプリケーションの脆弱性診断を行うことができるサービスです。豊富な実績と経験に裏打ちされた高度な技術力を活かし、Webアプリケーションに潜むクロスサイトスクリプティングやSQLインジェクション、なりすましなどの脆弱性を特定し、セキュリティリスクの排除をサポートします。
金融機関をはじめとする高いセキュリティを求められる組織での導入実績が豊富で、脆弱性診断の精度には高い評価を得ています。
6. Securify
出典:Securify
Securifyは、Webアプリケーションの脆弱性診断に特化した商用ツールです。見やすく操作しやすいインターフェースと、分かりやすいレポートを提供することで、設定や運用を簡素化し、社内での脆弱性対応プロセスを効率的にサポートします。
特に、企業向けの大規模なシステムに対応しており、セキュリティ評価を包括的に行うことができます。Securifyは、複数の診断モードを提供しており、自動スキャンから詳細な手動診断まで幅広い対応が可能です。また、診断結果のレポート機能が非常に強力で、攻撃リスクやセキュリティの弱点をわかりやすく説明し、具体的な修正案を提案してくれます。
7. IssueHunt
出典:IssueHunt
IssueHuntは、完全成果報酬型の脆弱性診断ツールです。ソースコードや検証用環境など、事前の準備が不要なため、診断をスムーズに行うことができます。完全成果報酬型なため、脆弱性が見つからなかった場合には費用が発生しません。初期費用や月額料金などの固定料金も不要。
社内にセキュリティの知見を持つ人がいなかったりセキュリティ担当が忙し買ったりする場合には、サポートしてもらえる体制も整っています。
まとめ
以上、脆弱性診断ツール7選を紹介しました。自分のニーズやシステムの特性に最適な脆弱性診断ツールを選ぶことで、より強固なセキュリティ対策を実施できます。脆弱性診断は、攻撃からシステムを守るために欠かせないプロセスです。どのツールを使うかを検討し、システムのセキュリティ強化に役立ててください。
よくある質問
Q. 脆弱性診断はどのように行うのですか?
脆弱性診断は、主に専用の診断ツールを使ってシステムやアプリケーションの脆弱性を特定します。自動的にスキャンを行い、問題点を発見した後、手動での確認や対策が行われます。
Q. 脆弱性診断ツールの選び方は?
ツール選びの際には、まずは診断対象となるシステムやアプリケーションの特性に合ったものを選びましょう。また、ツールの使いやすさ、サポート体制、コストとのバランスも考慮するべきポイントです。
Q. 脆弱性診断はどれくらいの頻度で行うべきですか?
脆弱性診断は、システムに大きな変更が加わった際や、サイバー攻撃が増加している時期には定期的に行うことが推奨されます。最低でも半年に一度は診断を実施し、最新の脆弱性情報を反映させた対策を取ることが重要です。