現代のアプリケーション開発において、AI音声サービスはユーザーとのインタラクションを大幅に変える可能性があります。例えば、音声認識を使った新たなインターフェースや、自動音声応答システムの構築です。今回はAI音声読み上げツールについて、おすすめの製品とともに、選び方のポイントなどを解説します。
AI音声読み上げツールとは
AI音声読み上げツールは、入力されたテキストを人工音声で読み上げるものです。近年の技術進歩により、より自然で人間らしい音声を生成することが可能になっています。そのため、ユーザーはテキストを音声に変換し、様々な用途で活用することができます。例えば、視覚障害者の支援や、コンテンツ制作におけるナレーションの自動化などが挙げられます。
音声合成(Text-to-Speech、TTS)技術は、テキストをリアルタイムで自然な音声に変換する技術です。TTSは、ナレーションの自動化、アクセシビリティ対応、アナウンスシステムなど幅広い場面で活用されています。近年では、ディープラーニングを活用したDNN(Deep Neural Network)音声合成エンジンにより、感情表現豊かな合成音声も実現しています。
AI音声読み上げツールの活用事例
AI音声読み上げツールは、教育、エンターテインメント、ビジネスなど多岐にわたる分野で活用されています。教育分野では、教材の音声化により学習の幅を広げられます。エンターテインメントでは、ゲームや動画のナレーションに利用され、より臨場感のある体験を提供します。ビジネスでは、顧客対応の自動化や社内資料の音声化による効率化が進められています。
新潟県長岡市では、ウェブサイトに「ReadSpeaker」のホームページ読み上げ機能「webReader」を採用しています。これにより、文字を読むことを難しい方も、ウェブサイトの内容を音声で確認できるようになりました。
出典:長岡市
参考記事:新潟県 長岡市のウェブサイトで「ReadSpeaker」のホームページ読み上げ機能「webReader」を採用。ベトナム語による音声読み上げも実装。
AI音声読み上げツールの選び方
AI音声読み上げツールを選ぶ際には、以下の3つのポイントを考慮することが大切です。
1. AI音声読み上げツールの基本機能
AI音声読み上げツールを選ぶ際には、基本機能の充実度も大きな判断材料になります。多くのツールではテキストの読み上げに加えて、画像やPDFファイルの音声化、ボイスの切り替え、音声のスピード・ピッチ調整、イントネーションの最適化などの機能を搭載しています。一部のツールは辞書登録やリアルタイム読み上げといった応用的な機能も提供しており、用途に応じて柔軟に使い分けることが可能です。
2. 利用目的別に最適なツールを選ぶ
AI音声読み上げツールは、それぞれの用途に応じて最適な製品が異なります。例えば、「動画制作やナレーションに使いたい」場合は、複数の音声スタイルやキャラクターを選べるツールが便利です。一方で、「アプリやWebサービスに組み込みたい」場合には、API連携が可能なツールを選ぶ必要があります。
3. 料金プランと文字数制限に注意
AI音声読み上げツールには、無料プランと有料プランが存在し、プランによって利用できる機能や文字数制限が異なります。商用で利用する場合や、大量のコンテンツを音声化したい場合は、有料プランのコストパフォーマンスも比較して選ぶとよいでしょう。また、「完全無料で使いたい」場合には、商用利用が制限されていない無料プランを提供している製品をチェックしましょう。
4. AIボイスの多様性と品質も比較ポイント
AI音声読み上げツールを選ぶ際には、対応しているAIボイスの数や種類も重要な比較ポイントです。ナチュラルな話し方ができる高品質なボイスに加え、性別や年齢、キャラクター性の違う音声を複数揃えているツールは、より表現の幅が広がります。例えば、「にじボイス」はエンタメ性の高いキャラクターボイスが豊富で、動画やゲームコンテンツとの相性が抜群です。ターゲットとなる視聴者層やコンテンツのトーンに合わせて、適切なボイスを選びましょう。
5. 対応言語と翻訳機能でグローバル展開にも対応
グローバルなコンテンツ制作や多言語対応が必要な場面では、AI音声読み上げツールの対応言語数や翻訳機能も重要な要素です。多くの先進的なツールでは、日本語・英語をはじめとした10数か国語以上に対応しており、一部では自動翻訳後の音声読み上げまで可能です。国際的な発信力を高めたい企業やクリエイターにとって、大きなアドバンテージになります。
6. API連携や外部ツールとの互換性もチェック
業務やサービスに組み込んで活用する場合、APIの提供有無や外部ツールとの互換性も見逃せないポイントです。たとえば、社内システムやeラーニング、動画編集ソフトなどとスムーズに連携できるツールは、業務の自動化や制作工程の効率化に大きく貢献します。開発者向けにドキュメントやSDKを用意しているサービスもあり、柔軟なカスタマイズが可能です。音声読み上げを単体の機能としてだけでなく、ワークフローの一部として活用したい場合には、こうした技術面の対応力にも注目しましょう。
AI音声読み上げツールの比較
1. RecCloud
出典:RecCloud
RecCloudは、AI音声読み上げや動画編集機能を提供するプラットフォームです。Webエンジニア向けに、これらの機能をシームレスに統合できるAPIを提供しています。APIを利用することで、以下のような機能をアプリケーションに組み込むことが可能です。
- AI音声合成:テキストから自然な音声を生成します。
- 音声からテキストへの変換:音声データを高精度でテキスト化します。
- 字幕生成と翻訳:動画の字幕を自動生成し、多言語に翻訳します。
- 動画編集:動画のトリミング、マージ、クロップなどの編集機能を提供します。
料金
- 無料アカウント:¥0
- 基本:¥518/月
- 上級:¥778/月
- 商用:¥3,558/月
上記は年間契約の場合。
詳細は公式ページでご確認ください。
2. にじボイス(旧DMMボイス)
にじボイスは、DMMグループであり、大規模言語モデル等生成AI技術を活用したサービスの開発や提供を手がける、株式会社Algomaticが提供するAI音声読み上げツールです。豊富なキャラクターボイス(100種類以上)を特徴としています。多様な声の選択肢があり、エンターテインメントや教育分野での利用に適しています。特に感情表現に優れた音声生成が可能で、AIVtuber、動画ナレーション、ゲーム音声など多様な活用が見込まれます。
API活用事例
にじボイスはAPIも提供しており、Webサービスやアプリケーションと連携した音声生成が可能です。公式の「にじボイスAPI」では、以下のような機能が提供されています。
- APIキー発行と管理:専用ポータルから簡単に取得・管理可能
- ボイスIDによるキャラクター指定:キャラクターごとのボイスIDを指定して音声合成
- 音声ファイルの生成・保存:mp3ファイルとして取得可能
なお、商用利用の場合は、クレジット表記(例:「使用サービス: にじボイス」「Voiced by NIJI Voice」)が必須となります。
APIドキュメント:https://platform.nijivoice.com/
料金
- フリープラン:¥0
- スタートプラン:¥490/月(月間5,000文字)
- ベーシックプラン:¥980/月(月間10,000文字)
- スタンダードプラン:¥2,940/月(月間30,000文字)
- プレミアムプラン:¥9,800/月(月間100,000文字)
詳細は公式ページでご確認ください。
3. AITalk
出典:AITalk
AITalkは、自然な音声生成に定評のある音声読み上げツールです。多言語対応で、カスタマイズ性が高く、商用利用にも適しています。導入実績2,000社以上、音声制作実績は400以上を誇ります。
API・クラウド活用事例
Webエンジニアにとって注目すべきは、SaaS型で提供されている「AITalk® WebAPI(AICloud)」です。このAPIを活用することで、自社で音声合成サーバーを構築・運用せずとも、高品質な音声合成機能を簡単にWebサービスやスマートフォンアプリに組み込むことができます。
- 用途:主な用途として、情報配信やメディア、音声対話、Webキャンペーンで活用できます。
- クラウドAPIで簡単導入:SaaS型で提供されるため、APIキーの取得だけで音声合成機能の導入が可能。音声合成用のサーバーを用意する必要がないため、音声合成を利用したサービスを手軽に開始できます。
- マルチデバイス対応:Android、iOS、Windows、Macなど多様なデバイスに対応した音声合成機能を提供。
- 感情表現対応:一部の話者は「嬉しい」「怒り」「悲しい」などの感情を表現可能で、エンタメ系サービスやボイスUIのUXを向上させることができます。(一部の話者のみ利用可能)
API詳細:https://www.ai-j.jp/products/cloud_webapi/
料金
詳細は公式ページでご確認ください。
4. ReadSpeaker
出典:ReadSpeaker
ReadSpeakerは、グローバル基準の最高品質音声合成のツールです。ウェブサイトの記事を音声で読み上げることができます。45以上の多言語対応で、様々な場面で活用できます。世界中で12,000社以上の実績があります。
「speechEngine SDK」や「speechCloud API」といった開発キット・クラウドAPIが提供されており、アプリケーションへの音声合成機能の組み込みが可能です。
- speechEngine SDK:WindowsやLinux向けのスタンドアロン型SDKで、開発言語はC/C++/.NETに対応。マルチスレッドに対応しており、複数音声の同時出力も可能。波形接続型およびDNN型(感情音声合成)エンジンを選択可能です。
- speechCloud API:クラウドベースのソフトウェア(SaaS)のため、Webサービスやスマートフォンアプリに組み込みやすく、手軽に音声合成機能を追加できます。
- 辞書登録機能:業界用語や型番などの非一般名詞も正確に読み上げ可能です。
- 対応言語:日本語、英語、中国語など44言語以上に対応。
詳細は公式サイトでご確認ください。
5. CoeFont
出典:CoeFont
CoeFontは、AI技術を活用した音声読み上げツールで、ユーザーの声をAI音声モデルとして登録・共有できる「Voice Hub」機能が特徴的です。10,000種以上の多様なボイスが登録されており、ナレーション・動画・ゲーム・音声合成作品など、幅広い用途に活用できます。
CoeFontでは、開発者向けにAPI(CoeFont Cloud API)を提供しており、Webアプリやサービスに自然なAI音声合成機能を簡単に組み込むことができます。
- RESTベースのAPI提供:HTTPS経由でテキストから音声ファイルを生成可能。Webアプリやスマートフォンアプリとの統合が容易。
- マルチリンガル対応:日本語・英語・中国語など対応しており、グローバル展開にも最適。
- リアルタイム性の高い応答速度:音声合成結果が素早く返ってくるため、インタラクティブなWebサービスとの相性も良好。
- 利用例:動画編集ソフトでの自動ナレーション挿入、教育コンテンツの音声化、バーチャルキャラクターとの連携など。
料金プランに応じてAPIの利用制限(文字数や音声変換回数)が設けられていますが、法人向けには無制限プランやエンタープライズ向けのカスタムプランも提供されています。
CoeFontは、動画クリエイター、ボイスアクター、メタバース開発者など、音声の表現力が求められるシーンで高い評価を得ています。
料金
- Free:¥0
- Standard:¥3,300/月
- Plus:¥55,000/月
- Enterprise:お問い合わせ
詳細は公式ページでご確認ください。
6. OpenAI - Text to Speech
出典:OpenAI
OpenAIのText to Speech(音声合成)技術は、巨大なデータセットを用いた深層学習モデルに基づいており、自然なスピーチを生成できます。あらかじめ用意された11の声から、アクセントや性別、トーンの異なる声を選ぶことも可能。スピーチの速度、ピッチ、音量なども変更できます。
対応言語は日本語のほか、英語やフランス語、韓国語、中国語のほか、60を超える様々な言語に対応しています(2025年5月現在)。また、例えば日本語のテキストをインプットして、英語音声を生成することも可能なため、多言語への対応も容易にできます。
料金
詳細は公式サイトでご確認ください。
7. Amazon Polly
出典:AWS
Amazon Pollyは、高品質かつ自然な音声を、数十の言語で展開できるAI音声ジェネレーターです。深層学習技術を使い、記事やPDFなど様々なテキストをリアルな音声に変換します。
音声の早さやピッチ、大きさや発話のスタイルまで調整できます。同じ言語内でも、男性・女性それぞれ1つ以上の声が用意されているため、ユーザーのニーズに応じた音声を構築可能です。
料金
最初の12ヶ月間に限り、1ヵ月あたり500万文字のスピーチもしくはスピーチマークのリクエストが無料利用枠に含まれます。 詳細は公式ページでご確認ください。
8. Google Cloud Text-to-Speech AI
出典:Google Cloud
Google CloudのText-to-Speech(TTS)AIは、テキストを自然な音声に変換する強力なサービスです。最新のGemini AI技術を活用し、ユーザーに多様な言語と音声スタイルから選択できる機能を提供します。
Gemini AIは、高度なニューラルネットワークを利用しており、非常にリアルで自然な音声生成が可能。従来のTTS技術と比べてイントネーションや表現力が向上しています。
料金
詳細は公式サイトでご確認ください。
まとめ
AI音声読み上げツールは、テキストを自然な音声に変換する技術で、視覚障害者の支援やコンテンツ制作の効率化に役立ちます。選び方のポイントとして、音声の自然さ、対応言語、カスタマイズ性、価格が挙げられます。特に、商用利用を考える場合はライセンスの確認が重要です。おすすめのツールには、RecCloud、にじボイス、ボイスゲート、AITalk、ReadSpeaker、CoeFontがあります。これらのツールは、それぞれ異なる特徴を持ち、ユーザーのニーズに応じた選択が可能です。
よくある質問(FAQ)
Q. AI音声読み上げツールとは何ですか?
入力されたテキストを人工音声で読み上げるツールで、TTS(Text to Speech)技術が使われています。
Q. APIで音声読み上げを自動化できますか?
AITalk、ReadSpeaker、CoeFont、にじボイスなどはAPI対応しており、Webアプリや業務システムに組み込めます。