Rでのいわゆる表形式ファイル読み込みに関して、恥ずかしながら知らない部分や、今後標準になっていくであろう**{readr}
**パッケージの利用方法について整理しておきたかったのでメモ。
**{readr}
**に関してはHadleyの記事や奥村さんのページ、@yutannihilationさんのブログ記事ですでにまとまった情報がある。
組み込み関数
伝統的なRのファイル読み込み関数では、read.hoge
のような形(read + ドット + 対象)を取っているため、探してみる。
apropos("^read[.][[:alnum:]]")
## [1] "read.csv" "read.csv2" "read.dcf" "read.delim"
## [5] "read.delim2" "read.DIF" "read.fortran" "read.ftable"
## [9] "read.fwf" "read.socket" "read.table"
整理すると、
関数名 | 対象とする拡張子、ファイル |
---|---|
read.csv |
.csv |
read.csv2 |
.csv |
read.dcf |
Debian Control File |
read.delim |
.csv , .txt , .log etc. |
read.DIF |
.dif |
read.fortran |
Fixed-Format Data |
read.ftable |
Flat Contingency Tables |
read.fwf |
Fixed Width Format Files |
read.socket |
--- |
read.table |
.txt |
用途不明なものも幾つかあるが、きっとどこかで使うことがあるだろう。特に使用頻度の高いものは表形式のデータファイルを読み込むread.csv
とread.table
だ。個人的な話だが、read.csv
は実際には、read.table
の引数によって同等の機能を果たすため、最近ではread.table
に絞って使っていたりする。なお、このことは「R for Everyone (Jared Lander 2014, 翻訳: みんなのR(高柳他訳 2015))」にも書いてあり、その情報だけでも「みんなのR」は一読の価値がある。
どういうことかというというと、.csv
も.txt
も表形式のデータであれば、区切り文字が異なる、というだけの話なので、適切な区切り文字をsep引数に与えればきちんと処理してくれる、という話である。区切り文字としては通常、.csv
であれば,*(カンマとスペース)、.txt
であればタブ(\tで表記する)になっている。
read.csv
とread.csv2
の違いについては @hoxo_m さんがすでに書かれている。
R の read.csv() と read.csv2() の違い #rstatsj - Qiita
{readr}パッケージ
**{readr}**はその名の通り、さまざまな種類の表形式データに対応した読み込み関数が用意されており、上記のR標準の読み込み関数よりも、読み込みの速度が10倍速い(Hadley談)、という新進気鋭のパッケージである。
なお、ここで使用している**{readr}**のバージョンは0.1.1.9000であり、GitHubにあるバージョンと等しい。
# パッケージのインストールと読み込み
# install.packages("readr")
# CRANからインストール
# devtools::install_github("hadley/readr/readr")
# GitHubからインストール
library(readr)
{readr}では主に4つの重要な引数を指定して操作することになる。
file
**{readr}**の読み込み用の関数ではfile引数によって対象を指定するが、、ここではローカルにあるファイルだけでなく、圧縮ファイルやインターネット上のファイルも読み込みの対象にすることができる。さらに、データをそのまま文字列として扱うことも可能である。
この場合、何気なく使っているテキストファイルの振る舞いというか、仕様を知っておくと便利である。すなわち、read_
関数に与える文字列として、データの値のほか、タブ区切りや改行を意味する記号の意味である。
read_csv("x,y\n1,2\n3,4")
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
\n
は改行を意味する。今回の場合、カンマ区切りのデータとしてread_csv
を利用したため、区切り文字は,
となっている。これをタブ区切りで表現すると次のようになる。タブ区切りは\t
で表現されるため次のようになる。
read_tsv("x\ty\n1\t2\n3\t4")
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
また、任意の区切り文字を使用している場合には、read_delim
のdelimで区切り文字を指定することで対処できる。
read_delim("x y\n1 2\n3 4", delim = " ")
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
read_delim("x, y\n1, 2\n3, 4", delim = ", ") # read_csvと同じ
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
read_delim("x.y\n1.2\n3.4", delim = ".")
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
col_names
header引数の役割を果たす引数。初期値としてTRUEが指定されており、先頭行がデータの列名として扱われる。先頭行がデータの値である場合、FALSEを指定する。あるいは次のように列名を文字列として与える。
# col_names = FALSE にした場合、列名は自動的に与えられる
read_tsv("1\t2\n3\t4", col_names = FALSE)
## X1 X2
## 1 1 2
## 2 3 4
# 任意の列名を与える
read_tsv("1\t2\n3\t4", col_names = c("列1", "列2"))
## 列1 列2
## 1 1 2
## 2 3 4
col_types
列の型を指定するcolClasses引数と同等の機能を備えるとともに、より柔軟な指定を可能にする。必須ではなく、何も指定しない場合には自動的に判断された型が与えられる(先頭の100行分のデータから推測される)。詳細は後述する。
progress
読み込みに5秒以上の時間がかかりそうなファイルに対して、読み込みの過程を表示するオプション。大規模なファイルを読み込む場合には、プログレスバーがあると精神上良い。
locale
RPubsの記事の中でHadleyは強調していないが、日本人の利用者にとっては大事だと思う。
以前ブログで{readr}では文字化け対策ができない、云々書いたが、きちんと用意されていた( @yutannihilation さんのブログ記事でも、対応している文字コードについてはUTF-8のみと書かれているし、最近対応したのかも )。read.table
でいうところのfileEncodingはlocale引数を使って指定する。忌まわしきcp932を扱う場合には
read_csv(locale = locale(encoding = "cp932"))
のように、locale
関数を利用して指定を行う。ロケールに関しても後述。
おまけ
列の型: col_types引数の活用
列がどのようなデータなのかを正確に定義しておくことは、のちの解析でエラーを発生させないために重要であり、分析者間(自分だけの場合でも、未来の自分が理解するために重要)でデータに対する理解を統一させておくためにも大事である。そのため、データをRに読み込む段階で各列のデータがどのような型をしているかを識別し、適当な型を指定しておくと良い。
# iris データの先頭行の幾つかを用意する
"Sepal.Length Sepal.Width Petal.Length Petal.Width Species
5.1 3.5 1.4 0.2 setosa
4.9 3.0 1.4 0.2 setosa
4.7 3.2 1.3 0.2 setosa
4.6 3.1 1.5 0.2 setosa
5.0 3.6 1.4 0.2 setosa
5.4 3.9 1.7 0.4 setosa" %>%
read_delim(delim = " ") %>%
{
print(.) # 読み込んだデータの表示
class(.) # クラスの確認
}
## Source: local data frame [6 x 5]
##
## Sepal.Length Sepal.Width Petal.Length Petal.Width Species
## (dbl) (dbl) (dbl) (dbl) (chr)
## 1 5.1 3.5 1.4 0.2 setosa
## 2 4.9 3.0 1.4 0.2 setosa
## 3 4.7 3.2 1.3 0.2 setosa
## 4 4.6 3.1 1.5 0.2 setosa
## 5 5.0 3.6 1.4 0.2 setosa
## 6 5.4 3.9 1.7 0.4 setosa
## [1] "tbl_df" "tbl" "data.frame"
これまでの例でも見てきたように、**{readr}**の関数で読み込まれたデータを表示すると列名の下に列の型が表示されている。これはdplyrで表示されるものと同じであり、読み込んだオブジェクトがtbl_dfオブジェクトであることを意味している。上の例では、種名をSpecies列以外の列は実数として扱われていることがわかる(Species列は文字列型)。
こうした心遣いにはHadleyverseを感じる。
任意の列の型を与えるにはcol_types
引数で指定する。col_types
にはlistオブジェクトあるいは**cols
で与えたcol_specオブジェクト**を定義する。vignettesをみるとlistではなくcolsが用いられているので、Hadley的にはこっちが推奨なのかもしれない。
# x列は整数型として評価し、y列を文字型に指定
read_csv("x,y\n1,2\n3,4",
col_types = cols(x = col_integer(),
y = col_character())) %$%
{
print(class(x))
print(class(y))
}
## [1] "integer"
## [1] "character"
# 関数名の略称を与えても良い
read_csv("x,y\n1,2\n3,4",
col_types = cols(x = "i",
y = "c"))
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
指定できる型には次のようなものがある。
型 | 関数 | 省略時の表記 |
---|---|---|
論理型(TやF, TRUE, FALSEにのみ適用) | col_logical() |
l |
整数型 | col_integer() |
i |
実数型 | col_double() |
d |
文字列型 | col_character() |
c |
日付型(Y-m-d表記) | col_date() |
D |
時間型(ISO8601) | col_datetime() |
T |
数値型(数字と. 以外は無視する。「$1,234.56 」のような数値と文字列が入り混じったデータ用) |
col_number() |
n |
-(型は推測する) | col_guess() |
? |
実数型と日付型は小文字と大文字とで区別されるので混同しないように注意が必要であるが、同じく時間を表す時間型の表記が大文字のTであるので、時間に関する型は大文字であると認識しておくと良いだろう。
データ内で不要な列を含む場合、読み込みの段階で列を読み込まないように指定することもできる。col_skip
はそのための関数であり、省略表記は_
である。
read_csv("x,y,z\n1,2,a\n3,4,b",
col_types = cols(x = "i",
y = "c",
z = "_"))
## x y
## 1 1 2
## 2 3 4
日付型と時刻型
日付型と時刻型に関しては、引数formatを指定して柔軟な表現に対応できる。
read_csv("date,time\n2015-10-06,20151006T065346+0900",
col_types = cols(date = "D",
time = "T"))
## date time
## 1 2015-10-06 2015-10-05 21:53:46
read_csv("date,time\n01/02/2010,2015年10月7日 21時00分",
col_types = cols(date = col_date(format = "%d/%m/%Y"),
time = col_datetime(format = "%Y年%m月%d日 %H時%M分")))
## date time
## 1 2010-02-01 2015-10-07 21:00:00
ロケール
**{readr}**は様々なロケールに対応した表記を扱うことができる。その際locale
関数によって指定する。
locale(date_names = "ja", tz = "Asia/Tokyo")
parse_date("2001年 12月 31日", "%Y年 %m月 %d日", locale = locale("ja"))
## [1] "2001-12-31"
いくつかの組み合わせからなる省略表記が用意されている
parse_datetime("2015-10-06", "%F") # %F は %Y-%m-%d を意味する
## [1] "2015-10-06 UTC"
ドットではなくアンダースコアを使おうな! Enjoy!