当エントリは、Schoo Advent Calendar 2016の16日目として書かれています。
9日目に引き続き @takoba がお送りします。Schooのエンジニア兼カレー王子を担当しております。
現在は主にエンジニアというロールで日々過ごしておりますが、学生時代よりいわゆるUXデザインに関連する内容を学んでおりました。
幸いなことに就職後にもそれらの手法を実践する現場に関わることができ、現在でも必要に応じてそのような活動をしてます。
そのなかで、今回は ユーザーに対面してインタビュー(ヒアリング)する際に押さえておくべき大切なこと を少し語ってみようかと思います。
このようなインタビュー調査は、"実際にサービスを利用するユーザー"や"今後ターゲットとして捉えたいユーザー層"について的確に捉える際に重要な手法となります。
そのような調査を設計する際に、意識してほしい基本的なところをお話しさせてください。
インタビュー手法について理解し、目的に合わせて設計する
ユーザーに対面してインタビューを実施する際に最も重要なのは、 目的に応じた設計を行うこと です。五月雨式に質問(聞きたいこと)をしていくだけでは、 わざわざ対面で様々なお話を聞いているという 貴重な機会をドブに捨てているようなもの だと思います。
その理由を語る前にいくつかご紹介したいことがあります。
インタビュー手法には複数あり、それぞれの特性を把握する
まず、インタビュー手法には幾つかの分類があります。
インタビュー手法 | 内容 |
---|---|
構造化インタビュー | あらかじめ定義しておいた質問票を使って、一問一答形式で行う。アンケート調査に近い。 |
半構造化インタビュー | 大まかな質問項目は決めておくが、インタビュイー(被験者)の返答によっては詳細に内容を掘り下げるための質問を即興でしていく形式。 |
非構造化インタビュー | 質問内容は特に決めず、普段と同様の行動をしてもらったり何かしらのタスクをこなしてもらい、それらをインタビュアーが観察した上で質問を即興的にしていく形式。 |
グループインタビュー | 複数名のインタビュイーに対して質問をし、インタビュイー同士の発話も促しつつ回答を得る方式。 |
cf.) 半構造化インタビューと非構造化インタビュー | 経験デザイン研究所
たとえば、"五月雨式に質問をする"方式は、この中では"構造化インタビュー"もしくは"半構造化インタビュー"に近いものだと捉えられそうです。
ただ、半構造化インタビューのような方式は、大半のケースで"意識して実践しないと、きちんと内容を掘り下げた情報は得られない"と思われます。そのため、結局は アンケート調査とさほど変わらない回答が得られるだけ になってしまうことが想定されます。
対面してインタビューをすることのメリット/デメリットを把握する
前述したインタビュー手段を実現するには、パッと思いつくだけでも以下のような手段がありそうです。
- 対面して質問をし、その場で回答してもらう
- テキストチャットで質問をし、回答してもらう
- ボイスチャットで質問をし、回答してもらう
- 質問票を送って、それに記入する形で回答してもらう
そんな中で、対面してインタビューすることのメリットとはなんでしょうか。ぼくが思うに、主に以下が挙げられると思います。
- インタビューされる人(以下インタビュイー)が発する言葉のニュアンスが捉えられる
- テキストでのコミュニケーションではわかりづらいこともある
- インタビュイーの返答を踏まえた上で、次のアクションがとれる
- 「この回答がくるなら、この質問もしてみよう」などの判断が柔軟に行える
- 元々予定していなかった質問をすることもできる
- インタビュイーが言語化できていないことを、質問によって掘り起こせる
- 内容を掘り下げていくことで、インタビュイー自身が気づいていないことに気づくことがある
- オンラインではやりづらいこともできる
- e.g. プロトタイプを公開し、操作してもらう(場合によってはオンラインでも実現できるが)
対面してインタビューする場合、1で挙げたような"ノンバーバルな情報"が手に入りやすく、その情報を活かして2.で挙げたような即興のアクションをとることができます。
また、2.で挙げたような即興のアクションによって、質問内容をより深掘りすることができます。それによって、3.で挙げたような回答が得られることが割と多く発生します。このような情報は、アンケート調査のような構造化インタビューでは得づらい情報であるはずです。
反対に、対面してインタビューすることのデメリットはなんでしょうか。ぼくが思うに、主に以下が挙げられると思います。
- サンプル数を大量に確保することが難しい
- 同期的であるため、調査をセッティングする際に以下のような問題がある
- インタビュアーの数/時間的な制約
- インタビュイーのスケジュール的都合
- 同期的であるため、調査をセッティングする際に以下のような問題がある
- 時間制限がある
- 長時間調査をし続けることは、以下のような問題があるため難しい
- 上記した"同期的である"という性質を踏まえて
- それ以外にもインタビュアーの疲労なども考慮して
- 長めにしたとして、全工程で3時間程度にしておきたい
- 長時間調査をし続けることは、以下のような問題があるため難しい
やはりアンケート調査のように"質問票を多数に配布して回答を得る"ような非同期的に実施できる調査手法とは違い、量を集める調査には向いていません。
また、時間制限もあるため、質問できる項目も限られています。この部分からも"目的を設定し、それに合わせた設計を用意する"ことが必要になります。
じゃあ対面してインタビューをする場合、どう設計するの?
対面してインタビューする場合、"質的な調査として、インタビュイーのより詳細な情報を得る"というメリットを享受できるようにインタビューを設計しています。細かく挙げると以下のようなことを念頭に置いて、考えています。
- インタビュイーが言語化できていない情報を掘り起こすこと
- e.g. 「実は...〜」みたいな裏話的な情報
- "言語化できていない"というよりは、「話すに及ばないのでは?」みたいなバイアスがかかっていること、と言ったほうが正しいかも
- e.g. 無意識的にやってること
- e.g. 「実は...〜」みたいな裏話的な情報
- "浅く広い"情報ではなく、"狭く深い"情報を得ること
- e.g. 実際に体験したことがあったりして、"具体性が伴っている"エピソード
以上を踏まえて、いままで携わってきたチームでは基本的に 半構造化インタビューをベースに設計しています。
半構造化インタビューは、内容を掘り下げて聞く"質的な調査"のなかでも、時間のコントロールがしやすいのでオススメです。
大きなトピックを3件くらいまで決め、それぞれのトピックが30-40分くらいで完結するように設計すると、最大3時間くらいに収まるはずです。トピックが1つであれば1時間ほどで完結することも可能です。ランチタイムにでも実施できちゃいます
また、半構造化インタビューなどで内容を掘り下げる質問をしていく上で大事なのは、インタビュイーと信頼関係をつくることです。心理学の専門用語で"ラポールを形成する"と言います。
序盤でラポールを形成していくことを考えると、比較的答えやすいデモグラフィック属性に関する質問から聞いていくべきだと考えます。必要に応じて、簡単なアンケート用紙を用意するのもよいでしょう。
そのような"比較的答えやすい質問"は、あまり考えずに回答できるため、インタビュイーが質問に答えることに慣れさせることができます。いわゆるアイスブレイクとして有用です。
これを行うことで、その後のインタビューの進めやすさが変わってくるはずです。
おわりに
弊社でも必要に応じてユーザーヒアリングの機会を設けており、チームのメンバーにも比較的容易に取り組んでもらえるための準備を随時行っています。
この写真は以前インタビューを実施した際のものです。当エントリでお話しした内容を取り入れ、ユーザー調査をよりよく実施できるように、デザイナー職のメンバーを中心に取り組んでいます。
当エントリでお話しした内容は、弊社で実践している内容のほんの一部です。「もっとユーザー調査のノウハウが知りたい!」とか「実際にユーザー調査に取り組んでみたい!」と思ったそんな方々にオススメのリンク集がありますので、是非ご参考にしてくださいね
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それではまた!明日は弊社が誇るマスタープランのアシスタント業をしてくれてる @oceanbluecandy からお送りします