【初級編; 2017年版】脳波で機械を操る!ブレインコンピュータインタフェース(BCI/BMI)って何?

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(2017.07.08 記事の大型アップデートを行いました。)

0, はじめに

はじめまして、Life is Tech!メンターのシャツインと申します。

Life is Tech!(ライフイズテック)は日本・シンガポール・オーストラリアをベースに、中高生向けのプログラミング教育を行う会社です。

シャツインは大学院の研究で、人間の『脳波』から意思を抽出し、『動作』に変換する"ブレインコンピューターインタフェース(Brain-Computer Interface)"(別名:ブレインマシンインタフェース)を扱っており、
本アドベントカレンダーをご覧いただいている中高生・大学生の皆さんにも興味を持っていただければと思い、筆を執りました。

この記事は、以下の内容で構成されています:

1, ブレインコンピュータインタフェース(BCI)とは?

わかりやすく言うと、「人間の脳波を解析し、何かしらの動作に変換をすること」の総称です。

例えば、ドローンを操作する際、一般的にはコントローラーのボタンやレバーから命令を送る(入力)と、ドローンがそれに従い動作(出力)します。

一方で、ブレインコンピュータインタフェース(以下BCI)を使うと、「右に動け」と頭でイメージした時の脳波を入力とし、ドローンを動作させることができます。

脳波は、頭皮から流れる微弱な電気信号です。単位はマイクロボルト(μV)で、乾電池のおよそ100万分の1程度の大きさです。

以下の動画では、実際にBCIを使用して、脳波でドローンを操作しています。

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[Youtubeより引用] A Mind Controlled Flying Robot

動画の中で用いられているBCIは、非侵襲型(ひしんしゅうがた)と呼ばれるもので、頭皮にキャップを被り、小さな電極をつけるだけで脳波を計測することができます。

Screen Shot 2017-07-08 at 11.09.33.png

[図1] 非侵襲型BCIの例です。頭皮に装着した電極から脳波を計測できるため、比較的手軽にBCIを利用することができます。

2, BCIは何に使われるの?

これらBCIの技術は、主に難病患者支援のために研究開発されています。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気をご存知ですか?

ALS患者は、症状が進行すると、全身の筋肉が次第に硬直してしまい、
最後には寝たきり状態になってしまう、神経・筋の難病です。
患者数は、日本国内だけでも約1万人いると言われています。

彼らは、健常者と同様な思考を持ちつつも、身体動作や発言が困難となるため、
自らの意思を表現する手段に乏しく、生活上の決断の大半を介護者に任せざるを得ません。

Screen Shot 2016-12-18 at 23.18.40.png

[図2] ALSをはじめとする神経・筋難病患者は、他人に伝えたいことがあったり、体を動かしたくても、筋肉が硬直してしまっていることから、自身の意思を伝えられず苦しい思いをしています。家族、そして介護者とコミュニケーションが不通となる"閉じ込め状態"は彼らにとって非常に苦痛であるそうです。ALSは一度悪化すると薬でも回復することはないと言われ、BCIは彼らにとって希望の光となりえる新技術です[2]。

以下は、日本の研究所、産総研が研究開発しているBCIの紹介動画です。

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[Youtubeより引用] Neurocommunicator

動画内では、脳波計を装着した男性(被験者)の前にiPadが提げられています。
画面内には、「歯を磨く」「寝返りをうつ」など様々なアクションが割り当てられた
ブロックが示されており、それらがランダムに点滅し続けます。

被験者が、希望するアクションを示したブロックに意識を集中させ続けると、
BCIが入力された脳波からどのブロックに意識を集中させているか、
つまりどのアクションを行いたいと考えているかを解析し、被験者の代わりに意思表示を行います。

上記の例のように、
身体動作を必要とせずに、脳波で直接操作することができるBCIは、
ALS患者にとって他者とのコミュニケーションの代替手段に成り得ると考えられています。

また、アメリカでは、実業家のイーロン・マスク氏が、また違った視点からBCIを見つめています。

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[Youtubeより引用] Elon Musk elaborates on his A.I. concerns (2016.9.15)

彼は動画の中でBCIについて言及し、
『人間が次なる世界に行くためには、脳とパソコンを直接結びつけ、既存のインタフェースの概念を打ち破ることが重要だ』
と述べています。

脳でパソコンを操る!と聞くと少々近未来感を感じずにはいられませんが、
こういった技術はBCIとともに、もう現実に近づいてきているということですね。

3, BCIの実用例

シャツインが所属するBCI-Lab-Groupで研究開発を行った、実用的なBCIをいくつか紹介します。
全てのBCIで、脳波を解析した後、ロボットや車椅子、文字入力などのアプリケーション応用を行っています。

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[Youtubeより引用] Tactile-body BCI-based NAO robot control
被験者の全身にバイブレータを配置し、振動刺激を与えることにより脳波を誘発します。BCIは被験者の脳波を解釈し、人間型ロボットに命令コマンドを送信します。被験者は寝たきり状態でも意思伝達を行うことができるため、ALS患者などへの応用を想定して開発されたBCIです。

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[Youtubeより引用] autdBCI and robot control (winner project of The BCI Annual Research Award 2014)
被験者の手のひらに、超音波で生成される非接触型の触覚刺激を複数種類与えて脳波を誘発し、ロボットアームを操作します。

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[Youtubeより引用] Wheelchair driving with tpBCI control by Kensuke & Tomek
こちらも被験者の手のひらに、ピンで押されたような接触型の触覚刺激を与えて、解析された脳波から車椅子を操作しています。まさに『脳波で動く車椅子』です。

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[Youtubeより引用] Chinese PinYin BCI speller • 基于声音听觉的BCI(脑机接口)拼音输入系统
被験者に対し、様々な方向のスピーカーから中国語の音声を与えて、入力したい1つの文字に集中してもらいます。BCIは、被験者がどの音に集中していたか解析を行い、選択された文字を画面に入力していきます。これは『脳波で入力するキーボード』と考えることもでき、設計次第で他言語対応も可能だということが分かります。

これらの例のように、脳波を入力として、出力を自由自在に変えられるのはBCIの大きな魅力でもあります。

4, おわりに 〜BCIについてもっと知りたい!〜

BCIについて、ざっくりと説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
将来脳波やBCI関連の研究をしてみたいと少しでも思っていただければ、非常に嬉しいです。

なお、もっとBCIについて知りたい!という人のために、本記事の中級編を近日中に公開したいと考えております。しばしお待ち下さい。

また、シャツインもできる限りのことなら答えられますので、気兼ねなくご連絡くださいね。
それではみなさん、良いクリスマスを!

文責

筑波大学大学院 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 マルチメディア研究室 BCI-Lab-Group 兒玉拓巳/Takumi Kodama