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MQTTバージョン5の概要 第1回 標準化の狙い

Last updated at Posted at 2017-02-25

2017/3/18 連載終了!

最近IoTへの応用で注目されている通信プロトコルであるMQTTですが、最新バージョン3.1.1の次のバージョンとして、バージョン5の標準化が進んでおり、2017年末には標準化完了する見込みです。

バージョン番号がかなり上がることにふさわしい、大きな変更になっているようです。しかし、これに関して日本語のドキュメントが皆無に等しい状況です。よって、拙いですが、情報発信してみます。

なお、筆者は、標準化には素人なので、間違いがありましたら、ご容赦とともに、あたたかいご指摘をお願いします。

連載目次

第1回 標準化の狙い (2017/2/25)
第2回 旧バージョンからの主な変更点 1〜3.2 (2017/3/9)
第3回 旧バージョンからの主な変更点 3.3〜3.15 (2017/3/12)
第4回 旧バージョンからの主な変更点 4〜 (2017/3/18)
第5回 考察 MQTTはIoTにおいてHTTP/RESTを完全に駆逐する (2017/3/18)

参考文献
OASIS MQTT TC - 本記事はこちらの各種ドキュメントをもとに記載しました。
Mosquitto MQTT v5 draft features - 概要がまとまっていますが執筆時点が古く、重要な新機能が漏れています。

1. 標準化完了は2017年末の見込み

1.1. 標準化スケジュールと進捗

MQTT_v5_TC_Timeline_30062016 2016/6/30 にスケジュールが記載されています。

タスク 期限
WD(final) = CSD1 2016/9/8
CSD2 2016/12/1
CS 2017/1/8
COS 2017/1/15
OS 2017/4/17

WD: Working Draft (TC内の標準化作業メンバー間の合意形成)
CSD: Committee Specification Draft
CS: Committee Specification (OASIS MQTT TCでの投票による最終合意)
COS: Candidate OASIS Standard
OS: OASIS Standard (パブリックレビューを経たOASIS標準)

これによると、2017年4月には、バージョン5の標準化が完了する予定になっています。しかし、現時点でWD11(2017/2/23)まで議論が進んでいますが、いまだにWD(final)には至っていません。

1.2. 標準化完了時期の予測

本稿では、大胆に、MQTTバージョン5標準化の時期を予測します。

まず、2/9の議事録を参照すると、WD12がCSDとなる期待があるようです。WDのリリース間隔から想定すると4月にはWD12=WDfinal=CSDが出てくると思われます。以降のスケジュールは投票期間等であるため、計画時と相対期間は変わらないと仮定すると、+7か月あまり、すなわち2017年11月〜12月に標準化完了すると思われます。

なお、OASIS標準は、いわゆる「コミュニティー標準」であり、国際標準ではありません。前の版のMQTT3.1.1は、OASIS標準化から約1年半経過して、国際標準であるISO/IEC標準になりました。

CSDが出てくると、オープンソースの対応も進み、夏〜秋には一部のオープンソースの先行評価版において、MQTTバージョン5ドラフト対応のものが出てくると予想します。そのあたりになると、日本語の解説も揃ってくることでしょう。

2. 標準化の狙い

MQTT Recharter.docx #6 2016/4/12 に標準化開始時の目的が記載されています。

Charterとは、OASIS標準化におけるプロジェクト計画書のことを示します。後続バージョンのプロジェクト計画書は、Recharterと呼びます。

これによると、MQTTバージョン5は、MQTTバージョン3.1.1をベースに以下の拡張を行うとあります。

  • 拡張性強化と大規模システムへの対応
    • 通信機能、オプション機能、リソース使用量制御など
  • エラーレポートの改善
    • MQTTクライアントとサーバの双方に対する拡張リターンコードの定義
  • Observedパターンへの対応
    • 検索、要求応答、関連付けなど
  • 拡張機構
    • パケットにアプリで活用可能なデータ領域の追加を可能に
  • 性能改善とリソース制限が厳しい端末への対応強化

なお、この文章の中には、同じOASISで標準化をしているAMQPとの位置付けについて、次のような記載があります。OASISの公式見解として、興味深いです。

  • AMQPは、企業ミドルウェア・アプリケーション同士の相互接続向け
  • MQTTは、センサー、制御システム、組み込みシステム、モバイルデバイス向け
  • 双方をブリッジすることで、テレメトリーを企業アプリと接続することができる

3. 標準化イシューリスト

JiraListInputForAprilFaceToFace.odt #4 2016/4/13 にイシューリストが記載されています。

JIRAとは、OASIS標準化におけるイシューリストのことを示します。

標準化プロジェクト開始当初、以下の20個(項13は欠番)のJIRAがリストアップされています。それぞれの詳細内容や検討進捗状況は、https://issues.oasis-open.org/browse/(JIRA番号)という形のURLに記載されています。本稿執筆時点(2017/2/25)における進捗状況を確認し、ステータスおよび結果の欄に記載しました。

JIRA番号 表題 ステータス 結果
1 MQTT-276 大規模システム向け拡張 open unresolved
2 MQTT-236 ACK結合、否定応答 closed fixed
3 MQTT-256 一般的なメッセージフォーマット表示、メッセージメタデータ applied fixed
3続き MQTT-282 既存のパケット領域をメタデータ向けに再構成 closed unresolved
4 MQTT-270 MQTT-SN向けサーバー契機の切断 applied fixed
5 MQTT-197 要求応答(Observedパターン) applied fixed
6 MQTT-235 非局所的サブスクリプション applied fixed
7 MQTT-249 有効期限機能の追加 applied fixed
8 MQTT-203 MQTT URIスキーマ open unresolved
9 MQTT-234 共有サブスクリプション applied fixed
10 MQTT-257 フロー制御 applied fixed
11 MQTT-255 新たな認証機構 applied fixed
12 MQTT-278 MQTT-SN向けサーバー契機のping applied fixed
14 MQTT-269 MQTT-SN向けトピック登録 applied fixed
15 MQTT-217 サブスクリプションの重複に関する実装ガイドライン applied fixed
16 MQTT-251 サーバーにて付与したクライアントIDをクライアントに返信 applied fixed
17 MQTT-260 CONNACKにリダイレクトを追加 applied fixed
18 MQTT-263 ステート管理の簡略化 closed fixed
19 MQTT-259 MQTTの拡張性のためのDNS SRVレコードの利用 new unresolved
20 MQTT-271 低性能デバイスの制限「Arduino問題」 closed unresolved
21 MQTT-252 大きなサイズのメッセージの転送 closed unresolved

進捗状況を見ると、初期のJIRAのうち、openもしくはnew/unresolvedは、残り3つになっており、WD完成が近づいていることがわかります。

これらを踏まえつつ、次回は、最新のMQTTバージョン5 WD11が、バージョン3.1.1からどのように変更されたかを、見てみましょう。

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