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Arduinoを自作して量産して販売する(超小型Arduino互換機 8pinoを例に)

Last updated at Posted at 2015-12-17

田中章愛と申します。友人の高橋良爾とVITROというデザインユニットで作品を作ったり、品川周辺の仲間と放課後ものづくりコミュニティ品モノラボで活動しています。普段はメーカーでハードウェアエンジニアをしています。

このAdvent CalendarはArduinoがテーマと言うことで、読者の皆様はすでに一連の連載でArduinoの使い方はある程度ご存じなのかなと思い、今回はいざという時に役立つArduinoの自作・販売方法について説明したいと思います。
ちなみに書いてみるとかなり長文になってしまったのでご注意ください。。

本記事のテーマと対象範囲

自作と言っても普通に手作りする例はネット上にたくさんある(12)ので、この記事では
1. 独自の要素を加えた自作Arduinoの回路を試作・量産設計する
2. 深センの工場(SeeedStudio)で量産する
3. オンラインストア(SwitchScience)で販売する
といった、より製品寄りの流れを大雑把に説明したいと思います。
本格的ビジネスでの製品開発ではなく、あくまで放課後ものづくりの一環として個人活動レベルでの説明になります。

対象者はArduinoを使い慣れた方&Eagleでの電子回路設計経験者としたいと思います。

ちなみに私は超小型Arduino互換機8pinoというものを製品化して昨年2014年より販売開始しました。
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8pino (税込888円)
小さいArduino基板を作るのはそれなりに面倒ですので、もし小さいものが必要な場合はご購入いただければ幸いです・・・。

今回はこの8pinoの開発経験をベースにご説明します。

なぜArduinoを自作・販売したのか?

8pinoを作ることになったのは、VITROのデザイナー高橋と一緒に作った作品Trace(Webサイト, 動画)がきっかけです。
これはいわば「ペンの万歩計」で、加速度センサとマイコンを使って『ペンで書いた距離』がわかることで勉強や仕事のモチベーションを上げるデバイスです。ここに超小型マイコンを使った開発が必要だったことが直接の開発のきっかけになりました。
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自分自身が必要だったから作った

もともとVITROで作っていたアート・デザイン系の作品は超小型マイコン(PIC)を多用していたのですが、ライブラリが少なくコーディングが面倒で、かねてよりコーディングが楽なArduinoを使いたいと思っていました。
自分たちが欲するレベルの小型のものが市販されておらず、特にこのペンの万歩計Traceでは基板が入れられる幅が9mmしかなかったため、組み込みに苦労しました。市販のArduinoは通常幅2cm以上はありました。
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そのため、もし幅8mm以下くらいのサイズでArduino基板があれば開発も楽だしデザインも邪魔せず作品の幅が広がると感じました。
周りの人に聞いてみると自分も欲しいという方が多かったので自作し販売しようと決心した次第です。
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やはり自分自身が切実に必要に感じているものは、たとえ売れなくても自分が使えばいいわけですし、自分としても納得がいきます。
また、人のニーズも自分に投影して深く理解することができます。
実際自分が切実に必要だと思っているものは、一定の方々は同じように必要としているんだということが学べました。
最後までやりきるモチベーションを維持する意味でも、やはり自分がほしいとか、誰かにプレゼントしたいものをテーマに選ぶのが良いのではないかと思います。

学びの機会として

製品にしたかった理由としてもっと本音を言えば、自分たちが考えたコンセプトが世の中に受けるのか?とか自分で商売するって実際どうやるんだろう?といった好奇心や、その学びを仕事に活かしたい気持ちがもともとありました。そういった経緯もあってこれを機会に実際に製品化して一連の流れを体験したいと思いました。
実際、スタートアップ体験とまではいかないまでも、ちょっとした製品化ができたことで視野が大きく広がりましたし、ものづくりの楽しさと厳しさも最小限ながら学ぶことができました。

職場の理解があったため許可を得たうえで放課後活動ができたことでちゃんと活動ができたのも大きいのですが、もし可能であれば製造業などで新規事業開発等にかかわっている方はぜひこういった放課後の小さな起業体験というか『小商い』体験は心からおすすめします。ものづくりの場合たいていはほとんど儲からないことは保証できますが(笑)、規模を小さめにしてそれなりに慎重にやれば赤字もそこそこ防げますし、何よりものづくりや商売の基本の基本を一通り経験できるという意味で、費用対効果としても本や学校よりも早く安くよりリアルな学びが得られたような気がします。

Arduinoを自作・販売するメリット

市販されているArduinoをわざわざ自作するメリットは

  • 無駄のない自分に最適な仕様のものが手に入る
  • Arduinoがどうやって作られているのか詳細を知ることができ、限界を引き出せる
  • 電子回路設計の修行になる
  • 名刺代わりの作品として話のネタになる

また、販売するメリットは

  • 他の人に使っていただいてより洗練される・喜んでいただける
  • 数が多く必要な場合は結果的に自分にとっても単価を安くできる(場合がある)
  • 量産設計・品質評価・販売・マーケティングのプロセスや商売の基本を一通り学ぶことができる
  • 開発費を回収できる(かもしれない)

といったものが考えられます。
自分の希望に合致するものがあればぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

Arduinoはユーザー数も多く、多少個性があれば一定のニーズは見込めるので販売リスクも比較的低いということで取り組みやすいテーマです。
(その分似たようなものが多いので埋もれてしまうリスクはあります)

市販の自作キットの紹介

Arduinoの自作には回路・基板の設計が必要です。もし基板設計の経験があまりない方は、まずは自作キットにて確実に動くものを作ってみることをお勧めします。ここから回路をいじって自分の好きな形に変えていくのが一番の近道です。

また、後程説明するブートローダーが書き込み済みのマイコンを用いてブレッドボード等で自作する手もあります。

ちなみにAitendoさんは怒涛の勢いで格安Arduino自作キットを出されていてすごいです。。

余談でした。
ともかくまず自作体験をするだけなら上記を購入したほうが楽です。以下はより切実な理由があって独自の形状やサイズ、回路構成を作って量産しなければならないケースについて述べます。

Arduinoを作るための基礎知識

ここからが本題です。

Arduinoの構成要素

Arduinoは下記で構成されています。

  • ソフトウェア

  • ハードウェア

    • マイコンボード (AVRマイコン・ARM等、電源/LED/USBコネクタ等の周辺回路部品、プリント基板)
    • AVRライタ(Arduino UNO・AVRISPmk2・STK500等)

忘れてはいけないのがブートローダー書き込みに必要なAVRライタですが、Arduino UNOで代用できます。
非常にシンプルですね。

Arduinoのライセンス

Arduinoはご存知の通りCreative Commonsに則ったオープンハードウェアですので回路図等が全て公開されています。

ですので、基本的にはCreative Commonsのライセンスを守って流用・改変して公開できます。NC(非営利)の表示がないので営利目的での販売も可能です。ただし、「Arduino」という名称は権利を厳格に管理されていますので、派生品に勝手にArduinoという名称を付けてはいけません。あくまで「Arduino互換機」という扱いになりますのでご注意ください。
(Arduino創設者たちが分裂してしまい、権利の都合でアメリカではArduino LCCの公式基板がArduinoという名前が使えなくなってGenuinoになった、といったような話もあります。)

詳細は英語版ですがArduino公式サイト上のPolicyを参照してください。

コンセプトを明確にする

まず、どういうArduinoを自作するかコンセプトを明確にします。最初の段階である程度販売を意識しているのであれば、コンセプトを周囲のユーザー候補や理解ある友人などに見せてフィードバックをもらい、手戻りや売れないリスクを回避しましょう。また、販売するとなると商売の基本・お金の使い方についても学ぶ必要があります。売れるかどうかわからず在庫が残ってしまうリスクがある場合は販売数量についてもいきなり1000個などは考えず、まずは10個、100個など徐々にロットを増やしていく方が無難ですし、何か修正点があった場合も対応しやすくなります。

8pinoの場合のコンセプトは「ミニマリストのためのArduino互換機」というものです。具体的には

  • 使い勝手は犠牲にしない範囲で最小サイズ ⇒小さいことでデザインを邪魔しないための余白を生む

を目指しました。
使い勝手を犠牲にしないという意味で

  • 最小限のピン数8pin(ここから8pinoになりました)⇒6pinでは電源・リセット以外で3本となり、通信を除くとGPIO 1本しか残らないので足りない
  • USBは標準搭載⇒変換ケーブルや書き込み装置が必要だとパッと使えない、コストがかかる
  • ブレッドボードに直接刺さる⇒2.54mmピッチのDIP8パッケージ互換のピン配置
  • 表面実装にも直接使えるモジュール型基板形状

といったものを設計コンセプトに盛り込みました。その代りかなり性能に関しては妥協し、8bitマイコン8MHzにしました。
いろいろ数字を決めていると8ばかりになってしまったので、名前も8pinのArduinoで8pinoとし、すべて8にこだわってみることにしました。八は日本でも末広がりですし、中国でも縁起のいい数字とも言われています。
安直な理由ですが、プロモーションも価格も含めてすべて8で統一して展開することにしました。
これはわかりやすさや特徴づけという意味でも後々よかったと思います。

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ここに至るまでには設計段階で品モノラボに参加する方々に見てもらってフィードバックをいただきました。コンセプト段階で試行錯誤できれば後々の手戻りが減るので非常に重要なプロセスです。
(いわゆるデザイン思考、リーンスタートアップといった仮説検証プロセスにも通じます)

下記は最初に品モノラボでコンセプトを発表した時のスライドです。まだ回路設計はしないまま、外形寸法と部品配置だけを軽く見積もった段階で見せました。ほぼこのまま実現したように見えて、実際には当時はフルカラーLEDが乗っていたりスイッチがあったり最終版との違いは多く、その後いろいろと細かい変更がありました。
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Arduino互換機の回路を設計する

自作Arduinoを設計するには、まず元になるArduinoを選択し、それを改変するのが一番の近道です。
ここでは、Arduino互換機である8pinoの回路設計を例に流れを説明します。

元にするArduinoを選ぶ

Arduinoはオープンハードウェアですから、基本は先人が作ったベースとなるArduinoを選ぶところから始めます。
8pinoはAdafruit社が販売しているTriknet (3.3V)というArduino互換機をベースにしています。このTrinketを選択した理由は

  • 小さい
  • 部品点数が少ない
  • 安い
  • USBに直接接続して使える

というもので、そもそも小さいArduinoを作りたかった自分としてはぴったりでした。
回路作成段階ではDigisparkというTrinketとほぼ同等のArduino互換機も参考にしました。
USBに直接接続して使えるというのも利便性の上でこだわった点で、専用の書き込み基板が必要なCheapduinoなどは採用を見送りました。

回路図を作る

回路図はGitHub上で公開されているTrinketの回路をもとに改変しました。
Arduinoの場合は先ほども述べたように基本となる回路があるので、回路設計は基本的には改変が主な作業となります。
まず、設計方針を下記のように決めました。

  • サイズにこだわるためできるだけ最小限の部品点数に絞る
  • ただし使い勝手は犠牲にしない

この辺のこだわりや方針がオリジナリティにつながると思いますので、皆様ぜひここは勝負どころと思って工夫していただければと思います。
私の場合は上記方針に則り、色々とポイントを絞って変更点を検討してみました。
部品サイズ等が気になる場合はOctopart等で徹底的に代替部品を調べて置き換えていきます。Octopartはコスト検討等にも便利です。

一例として、8pinoの開発において元の回路から割り切りと工夫を盛り込んで変更した点は以下のとおりです。

【逆流防止ダイオードの削除】

USBと別系統の電源(電池等)を同時に供給するとどちらかに電流が逆流してしまうことを防ぐために必要ですが、サイズが大きくどうしても入りきらない、使い方を気を付ければ必ずしも必要ではない、外付けもできる、などの理由から削除しました。

【リセットスイッチの削除】

元の回路にはリセット用のスイッチがついていましたが、サイズが大きいこと、USBの抜き差しで代用できることなどから削除しました。

【超小型レギュレータ(1mm角!)への変更】

元のTrinketのレギュレータは基板の中で他の部品に比べてかなり存在感がありました。
しかし、USB給電や電池での利用を考えると、大きいからと言ってなくすわけにもいきません。
また最近のレギュレータは電流制限・サーマルシャットダウン等の保護回路もあるのである程度ヒューズの代用にもなって便利です。
散々ネット上で検索し続けた揚句苦労して見つけたのがMicrelのMIC5524になります。これはMLFという特殊な5ピンパッケージで、なんと1mm角!のICです。これを見つけたことが8pinoの実現につながったと言っても過言ではありません。
小さいのに500mAまで流せますので、USBやボタン電池等で作るデバイスにはぴったりだと思います。
消費電流も比較的小さく、周辺部品もほぼ無しです。ドロップアウト電圧も260mV@500mAで、リチウムポリマー電池1セル3.7Vを使っても3.3V出力できるのが魅力です。
なお、モーターなど大電流を使う場合は別途FETやドライバ等で別電源からドライブしていただければと思います。

【LEDを白色に変更】

通常電源やLチカ(LEDをチカチカ発光させて動作確認する)等のLEDは緑や赤が使われますが、個人的には見た目が安っぽくなる気がして気が進みませんでした(笑)。
また他の色のLEDを光らせる場合に色が混ざって邪魔になるという問題を感じていました。
白色にすれば、油性マジック等で色を塗れば別の色に変更できますし、他のLEDを邪魔することも少ないと考え、電源とLチカ用のLEDを白にしました。

今回、回路図に関してはこれ以上の主な変更はありません。
作成した回路図が下記になります。本業は回路設計ではないので、書き方は我流です。。
回路図

回路設計にはおなじみのEagleを使いました。
商用利用するために商用利用可能なライセンスを購入しました。
Eagleの使用方法の説明は他の方々に譲りたいと思います。
MicroUSBコネクタ、超小型レギュレータなどの部品は独自にライブラリを作成しました。

パターンを設計する(アートワーク)

自作Arduinoの一番大変な作業は回路のパターン設計(アートワーク)と言っても過言ではありません。回路の改変はちょっとでも、パターンに関してはガラッと変えないと成り立たないことも多々あるからです。
8pinoの場合、パターン設計の難所は下記のとおりでした。

  • 独自MicroUSBコネクタの設計
  • 低コスト化のための制約
    • 1005以上のパッケージを使った部品構成
    • 両面基板
    • パターン幅

また、利便性向上のために下記のような要素を盛り込みました。

  • 表面実装にも足をつけてブレッドボードにも使えるハーフカットスルーホール
  • 手で折れるユニバーサル基板エリア
  • 電源等の裏面パッド領域
  • ATTiny85のパッケージをQFNに変更

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これらの詳細は長くなるので省きますが、特にMicroUSBコネクタは作ってみると接触不良が多く、幅・厚み・長さの調整に非常に苦労しました。今回、MicroUSBコネクタを使わずにケーブル側の細長いスロットに差し込む独自の端子を作ろうとチャレンジしため、0.1mm単位での調整を繰り返し行うことでなんとか実用的に使える状態に落ち着きました。
また、ATTiny85のパッケージをQFNに変更しただけでは目標サイズに入らなかったため、使っていないピンはパターンサイズを切りつめるなど、実はかなりマニアックな調整をしています。。

手で折れるユニバーサル基板部分のアイデアは「あるでゅいーの部」という勤務先のサークルの皆さんからいただきました。
実際自分でもけっこう便利に感じています。

Eagleでパターンを引く場合、基本的には自動配線(Auto Router)は使い物にならないので、ほとんどを手配線します。
主要なところが全て配線し終わったら、確実な部分のみ自動配線機能を使って少しだけ楽をすることはできます。
ちなみに8pinoについてはアートワークにゴールデンウイーク丸々3夜くらいかかりました。両面基板になかなか収まらず、何度も部品の位置や方向を調整して非常に苦労しました。
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配線が終わったらDRC(デザインルールチェック)を行って、変なところがないかチェックします。
また、最後に必ず各層を表示・非表示して目視でも変な部分がないかチェックします。このチェックに30分~1時間でもかけるかかけないかが後の手戻り防止や無駄なコストの削減につながります。

試作基板を発注する

基板のパターンが設計できたら、まずは基板だけを試作します。
基板の発注方法は色々とオンライン上に情報が転がっています1/2/3のでご参考いただければと思います。

私は後々量産を依頼することになるSeeedのFusionPCBにて試作しました。
10枚で9.9ドルと格安だったため、細かい点を調整するのに計4回くらいは発注したのですが、開発費が抑えられて助かりました。
ガイドラインを参考にしながらFusionPCB用にガーバーファイルを出力し、サイトにアップロードして簡単に発注することができました。
日本語で発注する場合はSwitchScience基板製造サービスP板.com等が便利だと思います。

回路を確認・検査・評価する

基板が届いたら動作確認&デバッグが必要です。

  • まず顕微鏡や虫眼鏡等でパターンを目視確認します。
  • 基板の状態でテスター等でピッチの狭い部分がショートしていないかチェックします。
  • 次に部品を頑張って手で半田付けし、電源投入します。
  • 電源やマイコンのピンなどいくつか主要なピンの電圧をチェックし、正しいことを確認します。
  • 次に説明する通りブートローダーを書き込みます。
  • サンプルプログラム(Lチカ等)を書き込み動作確認します。
  • 異常があればテスターやオシロスコープを使って原因を突き止めます。

これを繰り返し、回路図に反映し、再度発注するなどの対応を行います。
できるだけ少ない回数で問題を解消することが時間もお金も節約になりますが、最後は実際にやってみないとわからない部分もあるものなので、1発でうまくいかなくても嘆く必要はありません。
むしろ2~3回は試作するつもりで時間と予算を考えておく方が無難です。

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失敗して速攻没になった1枚目。安くするために色とかメッキとかは標準で。

また、量産に向けて実際に問題がでないかどうか品質評価のための実験を行います。
特に元の設計があるArduinoの場合は自分で変更を加えた差分の部分を中心に評価します。
8pinoの場合は自分で設計したMicro USBのコネクタを中心に設計評価を行いました。

  • 何度も抜き差しし、PCとの接続性を確認
  • USBケーブルを何種類も用意して相性のばらつきを評価

これらを繰り返し、設計に反映しながら試作・評価を繰り返して改善していきました。
特にMicro USBは先にも述べたとおり評価の結果0.1mm単位でのサイズ調整が必要となってしまい、非常に苦労しました。

また、量産性の評価として実際の量産を意識したプロセスで一通りの組み立て~出荷検査までをシミュレーションし、量産プロセスに問題がないかも確認しておきましょう。8pinoの場合は当初書き込み治具の接触が悪く、何度か変更しました。

こういった作業は問題点が顕在化するためしんどい作業であることは間違いないので、絶対に必要なプロセスだと認識して淡々とこなしましょう。

ブートローダーを書き込む

ArduinoをArduinoたらしめているのがブートローダー(ファームウェア)になります。
これを書き込むことで、ただのマイコン基板にArduinoの魂が入ります。

ブートローダーの書き込みにはAVRライタが必要です。
専用のキットや基板、ライタも売られていますが、通常はArduino UNOを使えば十分です。
ブートローダーの書き込み方法はこちらなどをご参考ください。

なお、8pinoではAdafruit社がGitHub上に公開しているTrinketのブートローダーを使いました。

ちなみに、普通は公式にはこのブートローダーを使って製品を作ることはできません。
なぜならこの中にはUSBのPID(プロダクトID)/VID(ベンダーID)が組み込まれており、Adafruit社のTrinket用になっているからです。
本来はこのUSBのPID/VIDは自分で取得しなければなりません。これには$4,000+維持費といった非常に高額な費用がかかるようです。なお、余談ですが、MicrochipFTDI等はPID/VIDをサブライセンスしています。
知り合いのスタートアップの方から貸していただけるという話もありましたが、Triket開発元のAdafruit社にサブライセンスしていただけないかと言うことで問い合わせたところ、「オープンハードウェアならいいよ」ということで快くPID/VIDを使わせていただきました。

you can use the VID/PID for free in this specific case as long as the hardware is 100% Open Source Hardware - CC By-SA or similar - not NC.
you can say VID/PID used with permission from Adafruit Industries & Limor "Ladyada" Fried
we do not require a royalty.

AdafruitのLimor "Ladyada" Friedはじめ、オープンソースコミュニティの優しさと懐の深さを感じました。
おかげでTrinket互換機を公式に作らせていただけることになりました。

AVRライタに関しては、当初はArduino UNOを使っていましたが、書き込み成功率が100%ではなかったので後々の不安もあったため、結局途中からはAtmel社公式の高電圧を用いるライタSTK500秋月で購入して使うようになりました。

量産の準備をする

試作品が完成したところで量産の準備に取り掛かります。
今回はSeeedStudioのPCBAサービスというものを利用して基板作成、部品実装(部品のはんだ付け)、ブートローダー書き込み、出荷検査、梱包まですべてを一括でお願いしました。最低1種類当たり5個から量産を受け付けてくれます。5個から量産できるってすごいですね。
PCBAサービスの詳細はこちらを参照してください。

部品表(BOM)を作成する

基板に実装する部品について、回路図のシンボル名と合わせた形で部品表を作成します。
BOMのフォーマットはここからダウンロードできます。
わからないことがある場合、まずはCustomer Serviceから問い合わせてみてください。

汎用部品はOPL(Open Parts Library)から選択し、それ以外の部品はOctopartで型番を調べて記入します。パッケージやグレードの違いなどに注意してください。

見積もる

PCBAサービスのページにアクセスし、まず指定されたガーバーファイル一式をまとめてzip圧縮してアップロードします。次に先ほど作成したBOMをアップロードします。
ここまでで大体の部品価格を見積もることができます。ただし、パッケージや検査が入る場合は本当の量産価格とは差があるのでまずは参考価格です。

テストプラン(検査用ドキュメント)を作成する

基板の出荷検査およびファームウェア書き込み(今回はブートローダー書き込み)等を行う必要がある場合はテストプランを作成します。
いわゆる検査工程の作業指示書(作業標準)になります。

SeeedStudioからサンプルとなるWORDファイルをもらい、それをベースに自分のケースに合ったものを作成しますが、ここから先はWebサービスでは対応できないので、Customer Serviceもしくは担当者を知っている場合は担当者にメールで問い合わせて手続きを進めます。

基本的にテストプランは作業の流れをできるだけ写真、絵、スクリーンショット等を用いて一つ一つの手順を記載すれば問題ありません。ただし全て英語(もしくは中国語)で記載する必要があります。不明点があれば質問が来ますが、基本的にはできるだけ丁寧かつ抜け漏れのないように記載すれば間違いありません。

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なお、このテストプランに書かれていないことは一切試験されないので、もし販売が目的の場合は非常に慎重に対応してください。
ここで試験したことが出荷品質を決めることになります。
基本的には、搭載した全部品の正常動作を抜け漏れなくチェックできる必要十分な試験項目を盛り込みます。
8pinoの場合は部品点数が少ないので、基本的には

  • ブートローダー書き込み
  • MicroUSB接続・給電(レギュレータと電源LEDの動作確認)
  • PCからの認識とLチカプログラムの書き込み(USB端子とブートローダーの動作確認)
  • Lチカ動作確認(マイコンとLEDの動作確認)

が主な検査項目になります。

テストプランが完成したら、一度それに沿って自分の手元で正しく動作するところまで自分で確認してみます。

全て問題ないと判断したら、ファームウェア(ブートローダー)とテストプランのドキュメント一式をzipファイルに圧縮してメールで送ります。
ファイルサイズが大きい場合は適宜Dropbox等で送ります。

なお、この時に特殊な治具が必要な場合はその旨を連絡して設計・手配してもらうか、日本から送ります。
8pinoの場合はISPでの書き込みが100%成功しない懸念があったため、確実に書き込みが成功するようにAtmel社のAVRライタSTK500を送ることになりました。これは全て自己負担になります。

下記は治具を送った際の設定指示書の例です。
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パッケージを設計する

8pinoは製品として販売する目的だったため、パッケージも作成しました。
まずパッケージの方針を決定します。
パッケージは

  • 製品を保護する
  • どのような製品が入っているか情報を伝える

といった機能がありとても重要です。
もちろんSeeedStudioの標準の静電チャック袋に入れてもらうだけでも構いませんが、今回は使い勝手とおもてなしの意味を含め、一緒に活動するデザイナーである高橋良爾と相談して独自のパッケージを作成する方針にしました。

方針決めの議論の結果、今回はコスト的にも取扱説明書を入れる余裕がないため、

  • 製品を保護する
  • 説明が記載されてページのURLを記載する
  • パッと使えるようにピン配置を記載する

といった機能を一つの厚紙のパッケージに盛り込むことにしました。

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Photo by 南舘崇夫

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Photo by 南舘崇夫

グラフィックデザインは大学時代の同級生のフリーランスデザイナー南舘君に(当然ですが有償にて)依頼しました(8pinoの紹介ページ)。
彼は大手のデザインを長くこなしてきたプロフェッショナルなので、ラフなイメージを伝えるだけで的確に版下を素早くデザインしてくれて本当に助かりました。
英語で指示を入れた版下をそのまま送り、紙の材質や加工方法についてコスト等検討しながら担当者とメールで何度かやり取りし、量産前に一度サンプルを送ってもらって仕上がりを確認するだけでイメージ通りのパッケージが仕上がりました。

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Designed by 南舘崇夫(許可を得て掲載)
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Designed by 南舘崇夫(許可を得て掲載)

量産する

量産品と同じ試作品が確実に正常に動作し、出荷検査のシミュレーションを通過したら量産の準備に入ります。

量産価格見積もり

作成した基板データ、BOM、テストプラン、パッケージ版下を再度一つのファイルにまとめて担当者に送り見積もり依頼します。
数量によって価格が大きく異なるので、売り上げ予測や自分が投資できるイニシャルコスト、必要数量等と相談して決めてください。

製造販売計画と予算立て(資金調達)

製品の販売を事業として行うのであれば事業計画やマーケティングに沿って発注数量の計画を立て、予算立て・製造販売計画策定をします。
なお、部品によっては納期が数か月以上かかったり、MOQ(最小発注単位)が数千個というものもあるので、特殊な部品や部品点数が多い製品では発注タイミングや製造販売計画は非常に難しくなります。また、基板以外の樹脂成型品等がある場合は金型などに非常に大きなイニシャルコストがかかります。
この際必要であれば資金調達・クラウドファンディングの実施などを行いますが、当然ながら見積もりが正しいことや、リターンが生めることが前提になります。全く量産の経験がない場合は見積もり誤差も大きくなると思われますので、まずは部品点数や数量が少ないもので全体像を知っておくことが肝心だと思います。

8pinoのケースでは開発費は数万円程度で、イニシャルコストも10万円以下だったため、自己資金でやりくりできる範囲でした。
また、これまで特にこういった量産・販売経験はなかったのですが、今回程度の規模であればリスクを自己完結できる範囲に収まったと考えています。

発注する

見積もり価格が問題なければいよいよ発注します。
この際、SeeedStudioのオンラインショッピングサイトで委託販売を行う場合はその旨を伝えたうえで、販売マージン等について取り決めた契約書を受け取って確認し、問題なければサインして送ります。
製造コストは基本的に先払いとなるので、Paypalや国際送金等で代金を振り込みます。
送金がすんだら量産開始します。

量産にともなう工場とのやりとり

初めての量産ではいきなり何百個も作ることはせず、まず1割以下、例えば最初の10個~数十個程度を作ってもらって日本に送り、手元で品質確認を行って問題ない事を確認してから残りの多くを加工してもらうようにしました。これによりかなりのトラブルを回避できました。

実際の製造の上では、数個試作するときには起きなかった問題が起こることもしばしばです。
8pinoの場合はたまたま試作した工場と量産工場で工場が違うことになりかけて少しやりとりが発生しました。

また、ブートローダーの書き込み治具は接触が悪く、何度か改善してもらいました。今最初の治具を見るとちょっと適当すぎましたが、これは自分が指示したものなので仕方がありません。。歩留まりをよくするためにはそれなりに治具にコストをかけることも必要です。
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他にもパッケージの精度が試作の時と違うなどの問題もありました。
こういったことがあるので、いきなり100個など量産せず、まず少量(10個など)で品質確認を行うことは重要です。

もし何らかの理由で急いで製品の量産をしなければならない場合は、もちろんコストはかかりますが、現地に飛んで現場で確認するのがベストです。
日本から深センへは安ければ数万円で行けますので、一刻を争う場合は結果的に安上がりな場合もあると思います。

私の場合は量産前にたまたまMakerFaireShenzhen2014に行った際に工場見学の機会があったので、基板や部品実装の量産設備はそこで確認することができました。
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(2014年当時のSeeedStudioの実装ライン)
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(2014年当時のSeeedStudioのオフィス。おしゃれなスタートアップのオフィスという感じだが、すぐ真下のフロアに量産工場があった。)
この確認内容をベースにメールでやり取りができたので、実際には現地に行かなくてもスムーズにやり取りできました。

実際の量産の様子は写真にとってレポートしてもらうことでさらに安心感が増しました。
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受け入れ検査

実際に量産したものが届いたときは感動します。
ただ、忘れてはいけないのが受け入れ検査です。

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特に初期ロットは全数正しく動作するか高橋君と検品しました。基本的にはテストプランと同様の検査をします。
これで安心して販売することができます。

販売する

量産が終わったら、SeeedStudioに必要な数を在庫してもらって販売することができます。
また、別の販路で売る場合はその倉庫や販売会社の住所を指定し、あらかじめ送料を振り込んでおいて送ってもらいます。
送料もばかにならない額なので、そのあたりもよく考慮して値付けしてください。

値付けする

値付けに関しては一口には言えませんが、二つの考え方があると思います。
かかった材料費・加工費・経費・販売マージンを積み上げて自分の利益を乗せる積み上げ型、市場に出ている他の機種やユーザーが欲しい価格に合わせる相場型といった感じでしょうか。

この世界は奥が深いのでここでは深入りしませんが、言えることは、赤字では販売し続けられませんし、やりがいも感じられないということです。ましてや生活を圧迫するようでは論外ですし、それほどの低価格で発売することは市場を荒らすのでビジネスとして販売している他の方々の迷惑でしかありません。不当に安い値段をつけるのは本気で商売している人に失礼です。

どんなに少なくとも価格の1-2割は自分の利益として手元に残るようにしなければ、おそらくは在庫リスクや開発費等で実際には赤字になってしまうと思われます。ぜひ市場やセオリー等を研究し、適切な価格設定を心掛けてください。

8pinoの場合は単純にもとにしたTrinketの値段($7.95)とほぼ同等にし、さらにダジャレの意味で888円にしました。

オンライン販売用ドキュメントを書く

まずSeeedStudioから送ってもらったサンプルをもとにWebサイトに記載する文章の下書きを自分で書きます。基本的にはこちらで書いた文章がそのまま掲載されるので、慎重かつ分かりやすく書いてください。お客さんはここに書いてあることで買うかどうかを判断するので非常に重要な顔となるドキュメントになります。
添付するファイルや転送先URL等も準備します。

販路を構築する

SeeedStudioで量産して売る場合は、以上にてほぼ準備は終わりです。担当者にそのまま販売開始する旨をメールで伝えるだけで販売開始してくれます。これでいきなり世界中に売ってくれるわけで、プラットフォームの力を感じます。
諸外国のローカルな小売ショップへの卸もなにもしなくても向こうで対応してくれます。
また、たまにキャンペーン等の提案もあり、8pinoもSpringセールなどを実施してトップページのバナーに掲載いただきました。
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日本で販売する場合はAmazon、Baseなどで作ったショッピングサイト、ヤフオクやメルカリといった個人売買など様々な方法があると思いますが、ことArduino互換機に関してはSwitchScienceさんに委託販売をお願いするのがおすすめです。販売マージンも低めで良心的、非常にメイカー想いのサービスになっていると思います。
詳細はSwitchScienceさんのドキュメントを参照ください。

広告する

やはりただお店にモノを置くだけでは売れません。
どの程度積極的に商売したいかによるかと思いますが、SNSやブログで発信したり、展示会に出展したり、雑誌やメディア等で取りあげてもらったりといった広告活動があれば販売が伸びる可能性がありますので、もし多くの人々に使ってもらいたい製品の場合はぜひチャレンジしてみてください。
8pinoの場合はMakerFaireBayAreaという展示会に出展するところから広告活動を始めました。おかげさまでいくつか記事に取り上げていただくことができました(Makeの記事THE BRIDGEの記事)。

その後、まずいきなりオンラインで売ることはせず、品モノラボで限定8個、次にMakerFaireTokyoで1日88個を手売りするところから始めました。やはりいきなり大量に作って在庫してしまうのは費用面でも場所の面でもリスクがあるので、少なく始めるのがベストです。ただし、これは電子回路のイニシャルコストが下がっているからできることでもあります。

品モノラボでは8個しかなかったのでじゃんけんになり、MFT2014ではおかげさまで発売後1時間もたたずに完売し、行列ができて本当にうれしかったです。また、この時にニーズの調査・細かいフィードバックを得てドキュメントなどにも反映しました。ここでのちの拡販時に備えて何が必要か学べたのは大きな経験でした。
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品モノラボで8個限定販売した際のじゃんけんの様子

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MakerFaireTokyo2014での1日88個限定発売時の様子

また、広告のためというわけではありませんが、このデザインにどの程度の意味があるのか・評価をいただけるのかチャレンジしてみるためにグッドデザイン賞に応募して賞をいただくことができました。これも特にこのような電子工作のための部品が本来リーチしにくいデザイナーの方々へアピールすることができたという意味で広告効果はあったと思います。
当然ながら評価いただけたことは本当に嬉しく光栄で、感動しましたが、そこで自己満足せずあくまでその後のユーザーの方々の価値につながる活動が重要だと改めて気が引き締まりました。

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なおこういった賞への応募自体にそこそこの審査費用等がかかるので、8pinoのような単価の低い商品の場合、こういった賞に応募するのが必要かどうかについてはケースバイケースだと思います。

生産計画・在庫管理する

在庫は多すぎても少なすぎてもいけません。毎月の販売状況に関してレポートをもらい、今後の売り上げを予測しながら量産の発注数量を調整します。
初期費用・部品代・加工費・送料などから最も経済的で安全な発注単位を割出し、展示会等のイベントなどの影響も考えて適切に管理しながら発注し、在庫を回していきます。
ちなみに8pinoの場合はこの辺があまり上手ではなく、何度も在庫切れを起こしてしまいました。。

サポートする

製品は販売するだけでなく、質問に答えたり不具合に対応したりといったカスタマーサポートが必要です。

公式サイトを作る

できればその製品の公式サイトを作って様々な情報の窓口にしましょう。
8pinoの場合はStrikinglyというサービスを使って簡単にデザインし、有料版で独自ドメイン8pino.ccを設定して使っています。実はこのページはMakerFaireBayAreaに初めて8pinoを出展した際に、そういえばWebサイトがないということで急きょ会場で作りました。写真と説明さえあれば1時間弱でそれなりのものができたので大変助かりました。
また今はFacebookページも運用しています。
ちょっと最近更新サボり気味ですね・・・。

ユーザー用ドキュメントを書く

説明書を書くのは正しく利用していただいて何度も同じ質問を受ける事を減らす第一歩です。また、場合によっては説明がないために法的な責任が発生してしまう場合もあります。簡単で構いませんので、注意事項や基本的な使い方・最初の一歩等を説明した説明書を準備しましょう。SeeedStudio等海外販売する場合は英語の文書も必要です。
頻繁に質問が来る項目を見つけたら、FAQ等をつけてアップデートしていきましょう。
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https://www.dropbox.com/s/rbgkc1joeur27f0/How%20to%20use%208pino.pdf?dl=0

回路を公開する

Arduinoはオープンハードウェアなので、回路図を何らかの形で公開しましょう。
回路図を公開することは、単に改変しようとする人のためだけでなく、データシートの一種としてユーザーにも有益な情報となります。
Eagleのsch,pcbファイルに加えて、最低限回路図のPDFファイルを公開するのがスタンダードなようです。
8pinoの回路はこちらです。
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書籍を書く

もしできる場合は様々な作例などを充実させた書籍を出版すると、マニュアルとしても販促手段としても有効かもしれません。
8pinoの場合は、工学社さんの方で入門書を企画いただき出版していただきました。
「8pino」ではじめるミニマム電子工作 (I・O BOOKS) 重村 敦史 (著), VITRO (監修)  工学社

コミュニティの力を借りる

やはりArduinoはコミュニティあってのプラットフォームです。
8pinoも発売から本当に様々な方々に助けていただき、ほとんど大したドキュメントもない状態だったにも関わらず、多くの方々にブログ記事YouTube動画等を公開いただき、様々な作例とともに製品を盛り上げていただきました。最初8個だけ販売した段階からブログに書いていただいた方もいらっしゃって、その時のフィードバックと課題が実際の量産には非常に役立ちました。
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中には本当に丁寧な記述をいただいた方、想像を超えた使い方をされる方、たくさんの作例を公開される方など本当にコミュニティの力を心から感じました。
このQiita上にもいくつも記事があります。

こうやって技術サポートや作例をユーザーの方々に書いていただけるだけでもうれしいのですが、さらに純粋に使って楽しいとか、便利、などの声をいただけることは本当にモチベーションにつながります。

こちらのブログでは「女子ウケ基板No.1」という評価をいただきましたが(笑)、本当にこういった一言一言が力になり、やりがいを感じます。

また、何より、コンセプトの最初からサポートしていただいている品モノラボの皆様には本当に感謝してもしきれません。

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とある方々から誕生日プレゼントでいただいた、アクリルにUVプリンタで8pinoを印刷したオブジェ。心温まります。

本当に多くの8pinoユーザーの方々に心から感謝しています。

これからArduinoを作る方もぜひコミュニティとともに作った製品の用途を広げていってみてはいかがでしょうか。きっと思わぬ発見があると思います。

おわりに

ここまで、想像以上に長文となってしまいましたが、Arduino互換機を設計して量産して販売するまでを自分の備忘を兼ねて書いてみました。
このドキュメントが一人でも多くのArduino作家もしくは電子工作好きな方々の刺激になり、オリジナリティあふれる楽しくて役立つ製品が増えることを心から願っています。
ぜひみなさんも楽しくArduinoを自作して販売してみましょう!
もし自作された場合はぜひ品モノラボのイベントにお持ちください!

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