#はじめに
最近は年を取ってきたのか、様々な人にマネジメントの考え方やソフトウェアアーキテクチャの設計についてのメンターリングをすることが多いのですが、その時に必要なのはやはり説得力です。僕は基本的には欲望に弱い人間なので、すぐに欲望のままに行動します。それは主に知識欲と食欲です。そのため、20歳からどんどんと太っていき、才能がないと突破できないとされる100kgの壁も悠々と突破するような人間ができあがりました。
すると不思議なもので、声が聞こえてくるのです。
「こいつ、マネジメントとかいってるけど、セルフマネジメントできておらんやんけ」
これは全くの幻聴なのですが、そういった幻聴を聴くくらいには心に内臓脂肪が溜まってきていました。
そんなタイミングと「胃痛を空腹と勘違いし回鍋肉を食べた結果、胃痛が加速する」という経験を経て、ちょっくらダイエットでもして見るかと考えるようになりました。
さて、せっかくダイエットするのですから、普通にやっては面白くありません。やるなら、徹底的にゲームとしてやりこみをしていくのが僕のスタイルです。せっかくですから、日頃培った「プロジェクト/プロダクトマネジメント」の知識を生かして、自分に対するセルフマネジメントをするとどうなるのかという実験をしてみようと考えました。
「痩せる」といえば「リーン」です。
リーンなプロジェクトマネジメントなどのアジャイルの手法を使って、劇的な減量を実現してみよう。そして、それは徹底的に「ムリ」のないリーンな手法に則っていこうという僕の実験が始まりました。
#ムリ・ムダ・ムラをなくすプロジェクトの考え方
ダイエットというと「つらくて」「ストイック」にやっていかないといけないものだという認識が広くあるのではないでしょうか。同じように何か目標を持って、仕事をしていくことも辛くて厳しいものだという認識をもっている方もおられるかもしれません。
僕は基本的に弱い人間なので、辛いことは一切したくありません。楽しいことはしたいのですが、楽しくないことは一切したくないのです。であれば、ダイエット自体を楽しくしていく以外に道はありません。
大体の人にとって、「つらい」のは「慣れないことをする」からです。どんな辛そうにみえることであっても、その人にとって普通のことであればなんの苦もなくできます。たとえば、僕はひと月に10〜15冊くらいの本を読みますが、人に言わせると苦行のように見えるそうです。でも、そういったひとが毎日、朝は1時間ランニングをしてから出社していたりします。僕にはそちらのほうが苦行に見えたりします。
つまるところ、当たり前の「習慣」になっていれば、難しいことでも当たり前になってきたりするのです。それなのに、急に行動をしようとして疲れたり苦しくなってしまって、それによってダイエットにくじけてしまったり、残業が増えたりします。急に何かをやったり、それをやらなかったりするのを「ムラ」があるといいます。こういったムラをなくしていくことが重要です。ムラを無くすというのは言い換えれば、習慣にすることです。
では、次に考えるべきことは「何を習慣化すべきか」「どのように習慣化すべきか」です。これを戦略と言います。戦略を立てるためには、メカニズムを知る必要があります。
もう一つ、重要なポイントは「不安に向き合うこと」です。人は、不安に向き合う時にストレスを感じてしまいます。でも、向き合わないことには状況を改善することができません。たとえば、なにかの試験前に急に掃除をしたくなってしまって、勉強もせず夜中なのに掃除を始めたりした経験はありませんか。僕にはあります。これは、試験勉強をしなくちゃいけないというプレッシャーと不安で、それに向き合わない理由を脳みそが必死に探した結果、部屋が汚いぞとなって、部屋を掃除しなきゃとなるのです。
人は何かにつけて、不安なことに向き合うのを避けようとしてしまいます。ダイエットにとってそれは、「体重計に乗ること」です。うまく体重計に乗ることさえできれば、ダイエットの8割が成し遂げられたといっても過言ではありません。
スクラムなどにおける振り返りやデイリースクラムは、究極的には「不安に向き合う」「現実を直視する」ためにあるのです。それによって、初めて問題は前向きに解決します。しかし、不安なことには誰も向き合いたくないので逃げ出したくなり、問題は奥へ奥へと隠れてしまいます。スクラムマスターやプロジェクトマネージャの一番の仕事は、不安に向きあうのを手助けし、それが不安ではなく楽しいことだと感じさせることです。
つまり、現状を可視化して「振り返る」必要があるのです。
さて、振り返る振り返ると言いますが、一体どこに向かって振り返ればいいのでしょうか。
振り返るからには、どこかに向かって振り返らないといけません。どこにむかっているか、それはゴールです。ゴールに向かって考えた時に、今回はどうだったのか?という問いから出発するのが「振り返り」です。どこに向かって振り返るかわからないままでは、ぐるぐるといろんな方向に振り返ってしまい、目が回ってしまいます。
ゴールのタイムマシンに乗り込む
「ゴールを設定しましょう!」とか「目標を設定しましょう!」とかいうと、多くの人が一瞬「いやだな」という思いが去来します。これは、ゴール設定とノルマが同一視されていて、誰かに課せられるものをゴール設定とか目標だとかだと勘違いされているからです。
たとえば、目標を立てたのに達成できなかったのであれば、それは誰かから処罰をうけるんじゃないかとか、自分の身に危険が及ぶんじゃないのかといった考えが会社や学校でインストールされてしまっているからです。結果、何か目標を口にしようものなら、「そんなことはやめておけ」「ムリだ。できっこない」といった反応をする社会によって、目標を立てることや、それを口にすることはなかなか難しいと感じるようになってしまうのです。
ゴールは、そういう種類のものではありません。できる限り難易度の高いゴールを設定して、それを達成するためにどうしたらいいんだろうと頭をひねらせることで、いままで考えつかなかったようなアイデアをひねり出したり、振る舞いを変えていくためのものです。
ゴールは自ら設定するものです。そして、それによって自分の今の行動を変化させるためのものです。誰かに課せられるようなものではありません。
バックキャスティング法
では、ゴールはどのように設定すればいいのでしょうか。ゴールの設定の仕方というものがあまり学校などで教わることがないので、社会人になってから目標を設定しろと言われてもなかなか困ってしまうことが多いのではないでしょうか。
ゴールの設定の仕方として、「バックキャスティング法」という手法があります。未来のある時点に目標を設定しておき、そこから振り返って現在すべきことを考える方法です。
たとえば、2年後とか3年後とか比較的遠い未来のことを考えてみましょう。将来どうなっていたら良いかというようなイメージを固めていきます。たとえば、めちゃくちゃ優秀なエンジニアになりたいとか、お金持ちになりたいとか、モテまくりたいとかそういうことです。
これはかなり抽象的でも構いません。本当になっていたらうれしいことをイメージしていくのが重要です。できるだけ素直に思ったことをそのまま書き出すようにするといいでしょう。この時重要なのは、実現可能であるかどうかを現在の自分で考えないことです。
バックキャスティング法に対して、現在の自分からの積み上げで考える思考法を「フォアキャスティング」といいます。こういうことをしていたら、いずれこうなって、そしたらこうしてというように現在の自分を出発点に将来を予見して目標を立てる方法です。これでは、現在の自分を超える発想が出てきません。
バックキャスティング法は、N年後の将来の理想を達成した自分をイメージし、そこからの逆算で、N/2年後にその人はどういうことをしているのかイメージし、さらにN/4年後にはどうかというように、理想からの逆算で目標を設定していきます。
このとき、重要なのは「未来の抽象的な目標」を「現在の具体的な行動」に変換していくために「具体化」と「ステップをイメージ」するという操作を目標に対して施していきます。僕の場合、最初の未来の抽象的なゴール設定は「20歳の自分を取り戻す」という目標でした。それに対して、具体化という操作をします。そのとき、成功したか失敗したかが明らかになるほどに具体化するのがポイントです。僕の場合は「半年後、40kg痩せている」でした。
これに対して3ヶ月後のステップをイメージします。もし、半年後40kg痩せている人がいるのであれば、そのひとは3ヶ月時点で何をしているだろうかと考えます。
- 大きいサイズの服は捨てているだろうな
- カロリーの高いものは食べたいとも思わなくなってるだろうな
- 周囲からダイエット法を聞かれるだろうな
そこで、具体的な目標を「25kg減」「2サイズ服のサイズを下げる」「その服を捨てる」という風に設定しました。
そして、1.5ヶ月後には何をしているか。
- ダイエットが楽しくなっている
- 周囲にそれを言えるくらいには痩せてきている
- 目標達成できるという確信を手に入れている
とイメージし、さらに具体化していきます。「15kg減を自分の誕生日に発表し、アマゾンのウィッシュリストでダイエット食品を公開する」ということを目標にしました。
このように、バックキャスティング法あるいはタイムマシン法と呼ばれるような目標設定をすることで、一見無理なんじゃないかという目標であってもそれを実現するためのイメージを具体的に膨らませることができます。
そうするとだんだんと、それは達成できるのではないかという気がしてきます。チームマネジメントにおいても目標設定は非常に重要です。目標やゴールは、逆算によって自分やチームの思考の枠をとりはずして、行動を変化させるための重要なツールなのです。
ゴール認識とセルフマスタリー
さて、ゴールを設定してもすぐに忘れてしまう。あるいは、それを達成できないと思ううちに徐々にみないようにしてしまうということが往々にしてあります。僕はそういうタイプの人間です。何かやろうと思っても、なんだかすぐにどうでもよくなってしまうし、朝が寒ければ、布団から出たくありません。しかも、ゴロゴロしているだけで誰か「5000兆円くれないかな」と思ったりします。いや、いまでも思ってますが。
このような「〜〜だったらなぁ」とか「〜〜したいなぁ」と思っている状態は、ゴールを作っても非常に脆弱で何かあればすぐに消え去ってしまうようなレベルの低いものです。それに対して、成し遂げられるゴールとは、「できるという確信」あるいは「すでにそうなっているのだ」というくらいに強くイメージを持っている状態になっているものです。
このようにゴールに対する認識には「レベル」があるのです。これをゴール認識のレベルと言います。
漠然とそうだったらいいなと考えているレベル0のゴール認識では、考え方や行動は変わりません。また、人から押し付けられて、そうしなければならないと感じているレベル1のゴール認識では、達成できない理由探しを始めてしまいます。
レベル2の「〜したい」というゴール認識になって、見えるものが少しずつ変わってきます。レベル3の「〜するぞ」という意思の段階で初めて行動変化がおきます。
最も高いレベル4の「〜になっている」という確信を持っている状態になることで、継続的な行動、つまり習慣が変化し始めます。
この状態が「未来に行って見てきたような確信」がある状態です。これはあたかも「タイムマシンに乗って、未来を見てきた」のでそうなってるに違いないというぐらいのものです。
ここで、サッカー日本代表の本田選手の卒業文集の文章を引用して見ます。
「将来の夢」
ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいと言うよりなる。
世界一になるには、世界一練習しないとダメだ。
だから、今、ぼくはガンバッている。
このように、将来のイメージをはっきりともって、高いレベルのゴール認識を持ち、今とどのようにつながっているかをはっきりと意識できていることがわかります。すごいですね。このような状態をピーターセンゲの「学習する組織」や「最強組織の法則」においてはセルフマスタリー(自己熟達)を得ている状態ともいったりします。チームマネジメントにおいて重要なのは、このようなセルフマスタリーをチーム全体で持つことです。そうすると、チームの行動が変わります。自己組織化とか言ったりするのはこれのことですね。チームメンバーがいろんなスキルが身につくとか、前向きに改善するとかはこのセルフマスタリーの副産物にすぎません。
普通の人は、なかなか高いレベルのゴール認識に達することができません。なので、すぐにゴールを忘れて行動をしてしまいます。習慣も身につきません。なので、「一歩一歩近づいているな」というポジティブフィードバックをできるかぎりつくれるようにします。体重であれば、「あれ?痩せた?」とか「順調にやせてる」という言葉や、実際の体重減を確認することです。いっしょに向き合って褒めてくれる状態を作らないといけません。
もう一つは、「仮説」のともなった戦略の構築です。こうすれば、目標は達成できるという仮説をつくって、その通りに実際に体重が減っていけば、その仮説が確からしいということが確信でき、ゴール認識のレベルが上がっていきます。
僕は、そういう意味では確信を持って「5000兆円誰かがくれる」とはイメージできてません。まだ、ゴール認識のレベルが低いです。ダイエットにおいては、ゴールの具体的なイメージができなくなりそうなタイミングでたびたび、20歳の頃の自分の写真を取り出して眺めていき、そこにたどり着くことをイメージし直していました。
ゴールが確信に変わっていれば、辛く思える行動も当たり前の「習慣」になっているので、辛さも感じません。くりかえしますが、ゴール設定は、けっして押し付けられるノルマではなく、行動変化を引き起こすためのツールなのです。
仮説を立てる「人間は微分方程式である」
さて、具体的なダイエット方法について考えていきましょう。このとき、世の中にはいろんな情報があって混乱してしまいます。たとえば、「炭水化物を少なくしたほうがいい」とか「バナナを食べたほうがいい」とかそういうやつです。ですが、そういう情報に惑わされてもよくありません。物事を考えるときはできるだけ、当たり前の事実から考えていくほうがいいものです。
体重が減るとはなにか?をモデル化する
当たり前の事実は、「ご飯を食べずに運動すると痩せる」です。これをもう少し具体的な言葉で表現するとどうなるでしょうか。「摂取カロリーより消費カロリーが多いと痩せる」となります。
そうなると、少し疑問が生じます。何キロカロリーの差分がでると痩せるのでしょうか。調べてみると、1kgの脂肪を燃焼するのに必要なカロリーは7200kcalとのことです。これを採用してみましょう。
そうすると、「摂取カロリーと消費カロリーの差が-7200kcalになると1kg痩せる」となります。これが正確であるかはわかりませんが、とりあえずこれを一つのテーゼとして採用して見ましょう。
数式にすると以下のようになります:
$$ W'(t) = 1/7200 (Earn - Loss) $$
Wは体重を表す関数。Inは摂取カロリー。Outは消費カロリー。
消費カロリーは、運動によって消費するのと、基礎代謝によって決まります。
基礎代謝は次のような数式で概算できるそうです。
$$ 基礎代謝 = 13.397×体重+4.799×身長-5.677×年齢+88.362 $$
この数式では、筋肉量などの体組成は無視しています。実際には、筋肉量が多いほうが基礎代謝は高くなりますが、今回は単純化してもいいでしょう。
さらに、
運動によって消費するカロリーが一定で、身長や年齢も一定だとするとこのように単純化できます。
$$ Loss(t) = kW(t) + C $$
kは比例定数。Cは定数。
これを踏まえて、先ほどの体重減の式に代入すると
$$ W'(t) = 1/7200 (Earn - kW(t) - C) $$
と、このような微分方程式になることがわかります。この数式を解けば、1日に何kcalとれば、何日で40kg減るのかシミュレーションできそうです。
システムダイナミクスツールによるシミュレーション
微分方程式をそのまま解いてしまってもよいのですが、多少面倒でもあるので、Stella Modelerというシステムダイナミクスのツールを使います。「一般システム理論」と呼ばれる理論をシミュレーションするためのツールです。
システムというと情報処理システムのことばかりをイメージしがちですが、システムという言葉のさす意味合いは、「関係性の記述」にこそあるのです。たとえば、WebサービスにおけるKPIツリーを作成しようと思った時に、なかなかツリーに分解できないなという経験はないでしょうか。いわゆるロジックツリーは、結果となる要素を分解し、分解した部分をさらに分解しというように要素を細かく分解することによって、全体を記述します。そして、その分解した要素同士は親の要素と「加減乗除」のような線形な関係によって分解していくことになります。
そのため、たとえばLTVのような現在の価値ではなく、将来まで見越した価値というような要素をうまく分解することがしづらくなってしまいます。あるいは、広告宣伝費のような売上に対して影響が明らかにある要素であっても、コストのツリーの中に入ってしまうなど、相関関係をうまく記述することができないといった弱点があります。
システム思考においては、要素同士が微分積分などを含めた非線形な関係を持つネットワークとして記述されます。そのため、今現在は価値がないが累積するにつれて売上のドライバーになるような要素の存在を簡単に記述することができます。
たとえば、ビジネスを1つの微分方程式で表すのであれば、「資産」の推移を表す関数となるでしょう。それに対して、増加分を売上、減少する分をコストとして定義できます。そして、これらの相関関係を記述していくとその部分が「ビジネスモデル」と呼ばれるものになります。簡単にいうと、資産(B/S)という関数を微分すると収益(P/L)になるという関係があるのです。
たとえば、次のようなサービスをモデル化してみましょう。
月額:800円の有料会員サービスで、固定費は毎月100万円かかります。
顧客はSEMでつれてきて、一定の離脱率があります。すると以下のようになります。
このシミュレーションによると、コンバージョンレートがどの程度だったら、現在の調達額では底をついてしまうのかとか、離脱率がどの程度だとどの売上規模でサチュレートするのかなどがGUIで簡単に判断できます。このようにモデル化すると、「売上」「顧客満足」「資金調達」といった、どれを優先するか対立してしまいがちな概念が1つの画面におさまり、同じ数式を見ながら議論をすることができます。このような性質から、システム思考といったビジネスの全体性を俯瞰して見る考え方が発達してきたのです。
では、このツールを使って、ダイエットというビジネスモデルを記述して見ましょう。ダイエットにおける資産とは「体重」です。
するとこのようになります。摂取カロリーを一定にした場合、体重の減少は徐々に少なくなっていきます。なぜなら基礎代謝が下がるからです。さきほどの微分方程式をとくと、指数関数が体重に関する関数となるので、このシミュレーションとも一致します。
シミュレーションによると、180日で体重を40kg減少させるには、1100-1200kcalを安定して摂取する必要があることがわかります。
これによって、戦略の大筋が決まってきます。「1日1200kcalでの生活を習慣化すること」です。
ちょっとランニングしようとか、ちょっと運動を増やそうとか、筋肉をつけようとか、食べ物をこれだけ取ろうとか、これは取らないようにしようとか。こういうものは、些細な戦術レベルの話です。戦術がいかに優秀でも、戦略が間違ってしまうと勝利はできません。
お腹が減るとはなにか?を分析する
「1日1200kcalの生活を習慣化する」という戦略がたったら、次はそれに対する戦術です。人によっては「いろいろ食べたいし、お腹空いてしまうからそんなの無理」と思うかもしれません。僕も最初はそうでした。ですが、考え方を変える必要があります。
「1日1200kcalで美味しいものを食べて、お腹が減らなければいい」
もしそんなことができるなら、「楽に」「つらくない」ダイエットが実現できるはずです。
では、お腹が減るとはなんでしょうか。
空腹は血糖値に関係があります。胃に何も入ってなくて、血糖値が急激に下がったあとに人は空腹を感じます。空腹になる頻度が高かったり、強く空腹を感じると人は何かを食べたいと感じます。血糖値のサイクルが安定することで強い空腹を感じにくくなるのです。
ですので、
- 一定量の炭水化物
- 一定量の野菜
- 一定量のタンパク質
で構成された食事を1日3回から4回に分けて、合計1200kcalになるように調整し、
その食事の時間のサイクルを固定する
という戦術を取ることにしました。
健康的な食事を健康的なタイミングで取るという、至極真っ当な結論です。
食事を一定の型に納めるために、
- 小さめのランチプレートを購入
- 低カロリーで一定量のチンするタイプのごはんの買いだめ
- カロリーの明記されたコンビニのサラダ・惣菜
- 低カロリーな焼き魚や作り置きメイン食材
- 500kcal以下の低カロリー外食リスト
- カロリーゼロのゼリーの買いだめ
によって、一定のタイミングで一定量の食事をとるという実験を繰り返します。
空腹を感じたら、夜であれば寝てしまうか、昼間であれば食事時間を修正します。
そのカロリーの範囲内であれば、自由に組み合わせて食事をするようにします。
実際には、超えてしまう時もあるので、適度にサウナに行ったり、ウォーキングすると行ったことで微調整していきます。すると、血糖値の上昇と下降のサイクルが2週間程度で出来上がり、空腹を感じたり、辛さを感じたりはしなくなってきます。
徐々に、カロリーの高いものが食べたくなくなってきます。どういうものがカロリーが高く、どういうものがカロリーが低いのかを度々確認するようになると、自分の認識の中に「食べられないもの」というカテゴリーができるようになって、徐々にそれを食べ物だと認識できなくなります。
Facebook上では僕の友人たちが、美味しそうな食事を毎晩のようにアップロードしているのですが、それを見ても「これは毒を食べている」「プラスティックかな?」という気分になってきて、認識が変化していきます。認知を変えていくと、当たり前が作れるのです。
たとえば、誰しもがユニットテストのないプロジェクトを当たり前だと思ってやっているときは、テストを書くという第一歩を踏み出すのが大変だったかと思います。しかし、ユニットテストを書くことが当たり前になっているプロジェクトをしばらくすると、その後にユニットテストのないプロジェクトに行くと気持ち悪くなって、嘔吐・めまい・ひいては人間性を喪失します。このように、当たり前という感覚は徐々に変えることができます。
必要なことは、「当たり前」を戦略的・戦術的に作り上げるということです。
夏場は、冷汁が大活躍した。意外と食べられるんだなと感じられると思う。それぞれ400kcal程度。油を使わないことと、低カロリーなご飯(150kcal)を使うことで、意外と美味しい食事はできる。次で述べるが全ての食事を記録すると、食事習慣が可視化できる。でも、レコーディングダイエットとかいうと、脳裏をおたくの王様がよぎるので言わない。いかにして不安に立ち向かうか
プロジェクトを始めると、それが成功できるのか、ちゃんと達成できるのかと様々な不安が生まれます。しかし、不安に向き合うのはすごく大変です。不安に向き合うこと自体がストレスを生み出してしまうのです。
ダイエットにおいて最大の不安はなんでしょうか。それは、「体重計に乗る」ことです。
しかし、体重計に乗らないと行動を改善できません。今の行動がうまくいっているか行っていないかもわからないからです。スクラムなプロジェクトにおいては、スプリントレビューや、レトロスペクティブが「体重計に乗る」ということです。また、何も制限がないと、体重測定のタイミングや状況を固定しなければ、正確なそのスプリントの行動を確認することができません。
つまり、検査という「不安に向き合う瞬間」を強制的に同じサイクルで繰り返すことによって、
- 不安と向き合うタイミングを固定する
- 対照性のあるサイクルを作る
という二つのメリットを得るためのフレームワークがスクラムだということができます。
検査と適応
スクラムにおいては、3つの検査と適応のサイクルが存在します。それぞれ「何を作るべきか」「どのように作るか」「今日何をすべきか」という3つの問いに対応します。そのすべてにスクラムマスターがファシリテーターとして参加し、検査がなされていることを確認します。検査というと強制的に管理して指摘するような印象を覚えますが、実際にはどうしたらその状況を改善できるのかというポジティブな方向に議論を進めるのが役割です。ファシリテート(簡単にする)という言葉のさす通り、問題にしっかり向き合えるように・本当の問題が何かわかるように・モチベーション高く取り組めるようにというのが、彼らの役割です。
この方式をダイエットに当てはめるために、ダイエットの外来病院を利用します。毎日の食事を栄養士に送信し、課題点を指摘してもらったり、うまくすすめていることを確認してもらったりします。週に一回決まったタイミングで体重を測定するようにします。できれば、誰かが監視している環境の方がいいです。僕は弱いのですぐに逃げてしまうからです。健康状態も気になります。無理をしたダイエットになっていないか、体は健康であるかというのも2週に一回確認してもらいます。
このようにスプリントのサイクルを固定することで、問題を発見しやすく不安に向き合いやすくします。僕は医療機関を使いましたが、ペアプログラミングのように誰か一緒に取り組む人を決めてナビゲーターになってもらう方法も良いでしょう。
スクラムの手法とダイエットの重要なことは似ています。むしろ、違いはベロシティがカロリーになったくらいです。スクラムマスターに必要なことを知るためには、誰かのダイエットをサポートしてみるというのも一興かもしれません。
脂肪のバーンダウンチャート
プロジェクトマネジメントにおいては、いくつかのシミュレーションシナリオを考えておくことが重要です。うまく行く場合も、うまくいかない場合もあるからです。それがどの程度うまく行っていないのかを知ることで適応すべきアクションも生まれてくるものです。たった1つしかプランを用意しないと、それに合わせるためにさまざまな無理が生じます。
僕のケースにいては、4つのプランを事前に用意しました
- 1月4%減少のプランA
- 1日1500kcalから予測したプランB
- 1日1200kcalから予測したプランC
- 16週間で36kg減らすもっともアグレッシブなプランD
です。このように複数のプランニングを行っておくことで、全体の推移がどの程度うまくいっているかわかります。実際のチャートの一部をお見せします。
どこかでみたような図ですね。そうです。バーンダウンチャートです。CCPMであれば、バッファの傾向グラフでしょうか。語感がいいので、脂肪のバーンダウンチャートと呼ぶことにしましょう。
アグレッシブプランほどにはなってませんが、1200kcalプラン(180日で40kg)よりは常に高い状態で実績を積めていることがわかります。実際にはまだ、180日になるまでにあと20日ほどありますが、すでに目標を達成しています。アグレッシブプランと目標プランに十分なバッファを設けたことで、バッファ管理もうまくいきました。
#おわりに
本記事では、ダイエットをお題にプロジェクトマネジメントやチームマネジメントで必要となることをご紹介してきました。ダイエットという個人的なプロジェクトであっても、大規模なプロダクト開発であっても基本は同じです。その基本をおさらいすると次のようになります。
- 難しそうなことも習慣に落としてしまえば意外と簡単にできる
- そのためにゴールを設定し、未来から現在にかけてをイメージする
- ゴールのイメージを膨らませて、ゴールにたどり着く感覚を高める
- イメージできた対象領域をしっかりと分析し、仮説をモデル化した上で戦略を決める
- 戦略をもっとも無理なく実現するためのアイデアを出す
- 戦略がうまく進捗しているかという不安に向き合うタイミングの矯正を行い、サイクル化する
- 進捗を複数のパターンで可視化し現在位置を把握できるようにする
これらのことは、ストレスなく無理なく物事を進めるために重要な考え方です。徹底的に怠けたいのであれば、明確なゴールイメージと戦略が重要です。逆に言えば、それさえできてしまえば、辛くなくむしろゲーム感覚でさまざまなものを成し遂げることができます。おもえば、僕はこのことをFF5の低レベルクリアRTAの経験から学びました。遊び感覚が重要なのです。
ちなみに
この記事はEx-mixiアドベントカレンダーの最終日でした。