年始にあたり、今年の注目技術がいろいろなメディアで取り上げられました。その中でも目についたもののひとつがビットコインであり、ブロックチェーン技術。ビットコインや仮想通貨以外の可能性も指摘はされてきたブロックチェーン技術を使って具体的にさまざまな分野での新しい仕組み作りのトライについても、メディアで紹介されるようになってきています。それぞれのターゲット分野に対するブロックチェーン技術を使って、どのような新しい仕組みを作り上げようとしているのか、オンラインメディアの記事をピックアップしてご紹介します。
※下記サイトからの転載。ビッグデータ・AIなどに関するトピックを毎週取り上げています。
TechCrowd: https://www.techcrowd.jp/related/
オンライン百科事典「Everipedia」がブロックチェーン導入で目指すもの
WIREDが紹介する、新しいオンライン百科事典「Everipedia」におけるブロックチェーン導入の試みについての紹介・解説記事です。
「Everipedia」、Wikipediaの改良版を目指して創設され、現在の月間ユーザ数は約300万、2017年12月にはWikipediaの共同設立者であるラリー・サンガーがCIOに就任した百科事典サイトです。同サイトは18年からブロックチェーン技術を導入する予定。
Everipediaはポイント制を導入しており、誰かが記事の作成や承認済みの編集を行うたびに“IQ”というポイントを付与している。そして18年1月にEveripediaにブロックチェーン技術が導入されると、IQポイントはトークンベースの通貨に交換され、すべてのEveripediaのエディターはIQポイントに応じた配当を受け取る。以降、ユーザーは記事の作成やキュレーションによってトークンを獲得していくことになる。このトークンは、プラットフォームのヴァーチャルな“シェア”の役割を果たす。
悪人が不正な記事や故意に間違った記事を作成・編集して利益を得るのを防ぐため、Everipediaは記事を提出する際に作成者にトークンの支払いを求めている。記事が承認されれば、支払ったトークンに貢献度に応じた報酬が少し上乗せされて返ってくる。承認されなければ、トークンを失うことになる。Everipediaはこのサイトの価値を維持したいと考えるほかのユーザたちが、不正行為を積極的に見つけ出すだろうと予想している。
別のメリットとしては、EveripediaをP2Pなリソースにすること。中央集権型のサーヴァーはもういらない(サーヴァー費用ももう不要だ)。そして、Everipediaが全世界のユーザーに分散されるということは、このサイトが検閲不可能になることを意味する。
web2.0をきちんと機能させるためのベースの技術としてもブロックチェーンは有効なようです。
Googleの人工知能部門・DeepMindが医療サービスでBitcoinの「ブロックチェーン」技術を応用へ
Gigazineの記事です。Googleが「ブロックチェーン」を使った各個人の医療情報の分散型デジタル台帳システムを計画しておりいることを報じています。
ビットコインの仕組みと同様に、このデジタル台帳の記録は追加専用になり、後で誰かが削除することはできなくなるほか、第三者による改ざんがないことも検証できるようになるとのこと。ただし、ブロックチェーンによる分散化システムは、デジタル台帳の検証を行うにあたって、システムの参加者すべての端末で複雑な計算を繰り返すことになり、参加者全員のエネルギー使用量は、キプロス共和国の消費電力と同程度の大規模なものになってしまうとのことで、医療情報すべてではなく医療情報をどこでどのように使われたかを追跡できるだけの最低限の情報を分散化する等の工夫が必要になるだろうとのことです。
個人の医療情報を現在のように、それぞれの医療機関に保管されていて、ほかの医療機関では参照できない形態ではなく、ひとりひとりの医療情報の蓄積を診療にあたっては参照して活用できる形態になることは望まれていますし、
セキュリティを担保しながらおおがかりな中央集権的なデータ管理の仕組みを構築しない方法としてはブロックチェーンも融合な技術だと思いますが、この分野はまだ時間がかかりそうです。
ブロックチェーンがサプライチェーンにもたらす変革
TechCrunchの記事です。ワールドワイドに複雑になる一方のサプライチェーン。そのサプライチェーンの管理にもブロックチェーン技術が活用検討されているという解説記事です。
サプライチェーンは原材料からコンシューマーが手にする最終的な商品に至るまでの製造と物流のすべてのつながり。複雑になる一方のサプライチェーンは、製造における本当のコストも見えにくくしており、商品を製造する時の環境へのダメージなどをトラックすることも困難にしている。プロダクトの偽造、強制労働、工場の劣悪な労働環境、あるいはプロダクトの利益が戦争犯罪や犯罪グループの資金源になっていないかの確認なども困難にしている。
ブロックチェーンの分散型台帳は透明性とセキュリティーの両方を担保していて、既存のサプライチェーンの問題を解決できる可能性があるとのこと。ブロックチェーン技術の単純な適用方法として考えられるのは、品物の移動を台帳に登録する方法。ブロックチェーンには品物に関わる事業者や価格、日付、位置情報、品質、プロダクトの状態を始めとするサプライチェーンの管理に必要な情報を登録することができる。台帳は広く利用可能であるため、すべてのプロダクトはそれを作るのに使用された原材料の出発店まで辿ることが可能になる。
この分野は、すでに企業での活用実績も出始めていることも掲載されています。詳細はTechCrunchの記事をご覧ください。
ぼくはクリプトアナキスト──21歳の天才ハッカーがブロックチェーンにみる夢
WIREDの記事です。契約書からEメール、リサーチ記録や知的財産まで、あらゆる文書にタイムスタンプを与える原則ゼロコストのオンライン公証サーヴィスを展開している、スペインのスタートアップを立ち上げたひとりの若者への取材記事となっています。
スマートコントラクトと呼ばれている分野は金融関係と並んでブロックチェーン技術を使った新しいビジネスが活発に展開されている分野です。さまざまなお金とビジネスサイドの人間がすでに入り込んでいる世界のようです。WIREDが取材したスペインの若者も、自分が立ち上げたオンライン公証サービスの会社からは距離をおいて、みなが活用すべきベーシックな技術に対しては特許権による独占的な使用権は与えない「アンパテント」の活動に主軸を移しつつあることを告げて終わっています。