Java
著作権
jjug

「JJUGナイトセミナー Java API訴訟問題を考える 」に行った

More than 1 year has passed since last update.


概要

「JJUGナイトセミナー Java API訴訟問題を考える 」に参加してきました。今回はマイクロソフト品川本社での開催でした。

内容に不正確な点がございましたら訂正致します。

もしよろしければコメントか編集リクエストをくださいますと幸いです。

項目

日時
2016/07/11(Mon) 19:00-21:00

場所
マイクロソフト株式会社 品川本社

イベント詳細
https://jjug.doorkeeper.jp/events/46995

Twitterのハッシュタグ
#jjug

togetter
http://togetter.com/li/998688


タイムテーブル

Time
Title
Speaker

19:00-19:30
「Oracleが訴えるまでの経緯について~SunとOSSとIBMとAndroid~」
鈴木雄介さん(JJUG会長)

19:30-20:10
「Oracle vs Google訴訟の全貌と概要 ~APIは著作権で保護されるべきか~」
栗原潔さん(弁理士)

20:15-21:00
「Q&A」
栗原潔さん/鈴木雄介さん


イベント内容


2012年、OracleはGoogleが「Android OSにおいてOracleの著作権や特許を侵害している」として訴訟をおこしました。その後、Googleによる著作権侵害が認めらえたあるとされたものの、2016年5月には「フェアユースの範囲である」とされました。この件について考える勉強会を行いたいと思います。




「Oracleが訴えるまでの経緯について~SunとOSSとIBMとAndroid~」

Speaker

鈴木雄介さん @yusuke_arclamp(JJUG会長)


Oracleは何故Googleを訴えるに至ったのでしょうか。それはSunがJavaVMをオープンソースにした、あるいはせざるを得なかった当時の時代背景を理解し、その中で産まれたAndroidの立ち位置について理解する必要があります。



Java のエコシステム


  • 標準仕様と各社別の実装

  • 仕様の策定は JCP を通して策定

  • 当時は Sun 中心にベンダ各社が仕様すり合わせをするためにJCPがあった

  • 2011年から JUG (を通しての個人)の参加も可能に


ベンダは標準APIを実装した個別の製品を販売できた

Java SE や Java EE に独自の実装があった


「標準だからロックインが回避できる」

ベンダ独自実装には極端な拒否感があった……代表が当時の Microsoft



JCP には「Java のようなもの」ができるのを避ける目的があった


  • それをやってボコボコにされた某社……

  • TCK をパスすることが標準認定には必要だった(もちろん Sun にお金も払う必要あり)


ふくらむ Java


  • 1.2から5.0でクラスが倍近く増えた

  • 全部を実装する必要があった


OSS のエコシステム


Apache Software Foundation


  • 1999年に設立されたオープンソースを支援する任意団体

  • 様々な OSS を受け入れていく

  • ライセンスは基本的に Apache Software License version 2.0 (2004年1月)……GPLv3互換(1,2とは非互換)、商用利用やクローズ製品にも利用可能


IBM と Apache Software Foundation

WebSphere が Apache Software Foundation の成果物を利用

- Servlet コンテナは Tomcat ベースではないそうです。後述

- HTTP サーバは Apache ベース

@TTakakiyo さんから下記の通りご指摘がありました。


WebSphereはTomcatの成果物を利用してはいますが,ServletコンテナはTomcatベースではありません。つまり,以下のパッケージのクラスはWebSphereには一行も入っていません。

org.apache.catalina.*

org.apache.coyote.*

org.apache.tomcat.*

JSPパーサーやELは利用していて,以下のパッケージはほぼ丸ごと入っています。

org.apache.jasper.*

org.apache.el.*



Linux の成功体験がベース


  • Eclipse は2001年11月にOSS化……2004年に Eclipse Foundation を結成してすべてを移管

OSS を通じた「実質的な標準化」……仕様ではなく実装の共有


2004年、Tomcat が Reference Implementation に

仕様を策定したうえで実装も一緒にやる


コミュニティベースのイノベーション


  • 2005年 DI

  • 2006年 JBoss


Java と OSS

Java SE でも Tomcat のようなことは商用可能なライセンスでできないか?


2005年5月、Project Harmony が提案


  • Apache Software License version 2.0 で提供される J2SE 5 の実相を提供

  • 2006年10月に Apache のトップレベルプロジェクトで誕生


2006年11月、Sun が J2SE を GPLv2 で OSS 化・・・・・のちの OpenJDK


  • 追加はできるが改変はできないので、ベンダは反発


2006年、Apache Harmony が認定を要求


  • SEを組み込みで動かすことは認められないので適用できず

  • 2007年に公開書簡で制限解除を要求するも Sun 拒否


2007年8月に Sun が TCK を公開


  • テスト対象は GPLv2 準拠に限定……どうみても OpenJDK 専用

  • Apache が抗議活動を展開……JCP での JSR 承認にすべて反対


Android と Java


  • 2005年頃から Google が開始

  • オープンソースによる共有資産を作ってキャリアや端末メーカーに大きなメリット

  • この時点では Mozilla ライセンスを検討

  • J2ME JVM の OSS 実装という位置づけ

Google も当初は認定を取るつもりだったが、Harmony を使っているので話を進められなかった


仕方なく独自実装の Dalvik VM を作り始める


  • 2007年に発表し、2008年に ASL2.0 で OSS 化

  • Sun が 2007年に Java の分断を招くと批判


Androidの成功


  • ソフトウェアの呪縛から逃れたかったハードウェアメーカーやキャリアに受け入れられる……無料で好きなだけ改造でき、Sunにライセンス料を払わなくていい

  • Google はソフトウェア利用料より広告料がほしかった


Google の責任でもあり、メーカのセンスのなさでもある



その後

Sun の OSS 戦略は失敗し、ハードウェア事業で生き残ろうとするが、2009年4月20日に Oracle に買収された

- 2010年8月、Oracle が Google を提訴

- 2010年10月、IBM が OpenJDK に

- 2011年11月に Harmony は活動停止


Android も OpenJDK 実装になる?という話が


  1. (InfoQ) AndroidがOpenJDKを採用へ

  2. (InfoQ) OpenJDKはAndroid開発にどのように影響するか


個人的な見解


  1. Google が Java を分断した、は正しい

  2. Sunが分断を招いた、ともいえる……Java を OSS 化しなかったらもっと大きな分断につながったとも考えられる

  3. Oracle が提訴したのは、「Java ME で得ていたライセンス料が Android のせいでなくなった」という論理

  4. IBM すごい……Harmony 始めたのも終わらせたのも IBM なのに全然名前が出てこない黒幕感



「Oracle vs Google訴訟の全貌と概要 ~APIは著作権で保護されるべきか~」

Speaker

栗原潔さん @kurikiyo(弁理士)


アジェンダ


  • 訴訟の概要と争点

  • 米国フェアユース制度とは

  • APIと著作権

  • 日米著作権制度の比較

  • 今後の展望


訴訟の概要と争点


  1. 特許権侵害……2012年5月にGoogleの特許非侵害(確定)

  2. Javaライブラリ実装コード本隊の無断複製……rangeCheck()の9行のみ

  3. Java APIの著作権侵害……APIはそもそも著作権で保護されるのか?APIの無断流用はフェアユースに当たるのか?

2016年6月「APIは米国著作権法で保護される、が、フェアユースだから侵害には当たらない」評決←イマココ

評決はまずひっくり返されることはないので確定の見込み


解釈論と立法論

ごっちゃにしないことが重要、今日は前者(解釈論……法律をどう解釈すべきか?)


著作権法


  • 目標……保護と利用のバランス

  • 発生……著作物を創作したら自動的に発生、ベルヌ条約を脱退しない限りは変えられない

  • 著作物の利用……複製・公衆送信・譲渡


著作権法は表現を保護

アイデアを保護するものではない、が、表現とアイデアは常に分離可能とは限らない(特にソフトウェア)


なぜソフトウェアを著作権で保護するのか?(ちょっと立法論)


  • 著作権は技術産業とは縁が薄かった

  • 1980年代にソフトウェアの保護が急務であった……米国の働きかけにより、政策的に保護することを決定

  • 国際的調和を早期実現するためには、ちょっと無理があってもやむを得ない決断


著作権の例外規定

著作物の利用は著作権者の許諾が必要


規定
メリット

日本
法文に明記された権利制限規定に従う(引用、個人的利用の複製、報道等)
予測可能性が高い

米国
「公正利用」であれば著作権が制限される
社会・技術の変化に迅速対応


米国フェアユース制度とは


  • 判断基準しか法律には書いていない

  • 非営利であれば認められうる可能性は高くなる

  • 「社会的にメリットがある」と判断されたら著作権は制限されうる

(例) パロディによって元の作品が売れるようになった……フェアユースの可能性が高まる

(例) ベータマックス裁判でのタイムシフト録画がフェアユースと認められた

日本だと、PDFの自炊代行は「著作物の複製は自分でやる必要がある」(要約)と法律に書いてあるのでアウト


参考

米国著作権法における「フェア・ユース」の考え方について


フェアユースに関するOracleとGoogleの言い分


Oracle


  • Google はフェアユースというレベルじゃない利益(420億ドル)を得ている

  • Google の用途はフェアユースの目的に合致しない

  • Google は自社の技術的優位性を獲得するために API を流用した


Google


  • API の再利用はイノベーションの源泉

  • Java は最初からフリーでオープンなものとして構築された。これにより産業と社会は大きな恩恵を受けた……ジョナサン・シュワルツ(Jonathan Ian Schwartz)氏、これが裁判の潮目を変えたとのこと

  • Oracle はライセンス収益を求めているだけ


3つの見解


  • APIもソフトウェア、商業目的で勝手にコピーするのはフェアユースじゃない

  • 互換プラットフォームを構築する限りならAPI流用はフェアユース……栗原さんの見解

  • API活用でイノベーションが生まれて産業が発達するならフェアユース


著作権保護除外とフェアユースの違い

仮にAPIは著作物でない、とするとAPIの流用は問題とはならない……APIは著作物


日本の場合は?


  • 日本の著作権法にフェアユースの考えはない

  • API仕様はプログラム言語の一部として保護対象外となる?

  • APIはアイデアに過ぎない?


陪審員は技術の素人


  • 心象に訴えかける必要がある

  • 反感を持たれてはいけないのでボロ車を使う

  • Googleのプロダクトがもたらした企業イメージ、「すぐれたプロダクトを無料で一般開放」



「Q&A」

Speaker
栗原潔さん(弁理士)
鈴木雄介さん(JJUG会長)

以下、私の解釈です。


標準の汚染

栗原氏「今回の問題は著作権と言うよりは不正競争、クソ仕様でも普及した方が勝者」


設計の苦労

栗原氏「クリエイティブな作業がすべて著作権で保護されるわけではなく、保護したいなら契約で保護するしかない(調査データとか)」

栗原氏「デジタルの世界で天賦の人権を主張するのは現実的でない」

鈴木氏「AWS の API で作られた資産が Azure 上で動くならそれは利益だし、市場も広がる、という考えもある。かなり文脈による」


Q. 権利を侵害されたくないなら、そもそも公開しなければいいのでは?Oracle の起こりからすると倫理的・道義的にどうなのかと

鈴木氏「Java の API は広まらないと意味がないので、むしろ保護されるという裁定が驚き、産業にとって健全な方法(巨人の肩に乗る)なら保護されないべき、Oracle の道義的な話についてはおっしゃる通りで、聖書の石を投げる話になる」

栗原氏「Sun を巨額で買収したので何かしないといけないという気持ちがあったのでは」

鈴木氏「Oracle は印象が悪すぎる。その点 IBM は上手いなと」


Q. 産業保護よりは文化の発展に寄与すべきとかは

栗原氏「日本だと文化庁が管轄しているのは歴史的経緯による、大丈夫かはわからない。米国は裁判で決まるので、素人が裁くことが問題」


Q.一般論として、公的な標準化されたものの著作権はどうなるのか?ISOとか

栗原氏「特許に関してはフリーでフェアでかつ非差別的なライセンス条件で許諾しなければならない。著作権に関しても行使できる仕組みにはなっていないと思う」


Q. もしこの係争が小さな会社と Google の争いだったらどうなるか?色眼鏡で見ていて、本質の議論が欠けているのでは?

鈴木氏「お気持ちは重々、大きいところ同士でないとそもそもこういう事態にならない。(Q&A冒頭のアンケートで)意見が半分ずつなのはいいことだし、今日やった意味がある(意見)」

栗原氏「法的安定性に欠けるのはフェアユースの欠点、日本は法律に書けば決まる、これはしょうがない。裁判で決まる=裁判に金をかけられるところは強い、なので日本でやるには難しい。判決が出ると規範ができる」


Q. 裁判の判決を書くときは陪審員とのディスカッションが反映されるのか?

栗原氏「裁判官とは直接絡まないはず、最終的な判決にはされないのでは?申し訳ないがそこまでは未確認」


Q. 今後のスケジュールは?早くて何年に終わる?

栗原氏「あとは控訴審と最高裁のみ、どちらが勝っても最高裁まで行く見込み。早ければ2、3年か。Oracle の要求が『使用差し止め』ではなく、『お金払え』という話なので」


Q. コミュニティで決めた仕様をOracleが権利主張するのは今後もありうるのか、コミュニティが裁判してくれるなという働きかけはなかったのか?

鈴木氏「JSR では著作権を譲渡する契約を結ばないといけない。喧嘩についてはコミュニティからの働きかけはあまりなく、Oracle の人気がなさすぎて『何やってるの Oracle』という考えが主流」


Q. APIの著作権を認めることでAPIマフィアが現れかねない可能性については?API著作権にGPLライセンス云々が効いていない状況なので

栗原氏「最高裁判決がおかしいといいたい。特定のAPIをパクったからと言って著作権侵害とはなりえない。全体設計と宣言のデッドコピーを問題としているので」


Q. API はクラス API に限られるのか?

栗原氏「可能性はある。理論的にはあり得る」

鈴木氏「それ訴えたらえらいことに」


Q. 今後、 AWS 互換の API を作るのも Amazon に殴られかねないのでは

鈴木氏「AWS の互換 API ができることを Amazon は現状容認している(から当面殴られることはない?)」

栗原氏「紳士協定のないところが権利を持つとちょっと面倒くさい」


Q. 今後、日本の係争でも判断に影響を与えるか?日本でサービスをやる際に気を付けるところが新しく生まれるか?

栗原氏「知財関連は属地主義なので、米国の判例が直接影響を与えることはない。せいぜい参考にする程度。『互換製品作るな』は難しいのでは」


Q. API に GPL 的宣言は可能か

鈴木氏「効力があるかは不明」

栗原氏「係争になった時に有利にはなるかも」


Q. Android で今後 Java を使い続けることになるのか?

鈴木氏「OpenJDK の話があったことを考えても、今のところ Google 内部では Java を使い続ける努力を Google がしていると思われる」