この記事はウェブクルー Advent Calendar 2025 の10日目の記事です。
昨日は@ysawaさんの「 Scalaのコンパニオンオブジェクトとは 」でした。
はじめに
本記事は、私が新卒向け総合演習において、
フロントエンド側メンターとして約2ヶ月間伴走した記録をもとにしています。
-
立場
新卒3名(フロントエンド1名・バックエンド2名)に伴走したフロントエンドメンター
そのとき実際にやったこと・考えたことを時系列でまとめ、どのようにして研修を進行したのかをご紹介いたします。
研修の概要
本記事で扱う「総合演習」は、
新卒社員3名で1つのWebアプリケーションを開発する研修です。
チーム構成
- 新卒メンバー:3名
- フロントエンド:1名
- バックエンド:2名
- メンター:2名
- フロントエンド担当(筆者)
- バックエンド担当
研修内容
- 企画・設計・開発・テスト・リリースまでを一気通貫で実施
- 最終日に成果発表を行う
フェーズ構成と期間
- フェーズ1:オープニングオリエンテーション(1日)
- フェーズ2:アイデア発表会(1日)
- フェーズ3:企画(5日)
- フェーズ4:設計(8日)
- フェーズ5:開発(28日)
- フェーズ6:成果発表準備(3日)
- フェーズ7:成果発表(1日)
全体で 約2ヶ月間 の研修です。
研修の目的
この総合演習の主な目的は、
開発現場で求められる基礎的な業務能力の向上 です。
単に個人の技術力を伸ばすことだけではなく、
「他者と協働してアウトプットを出す経験」 を重視しています。
総合演習を通じて習得してほしいスキル
技術・ツール面
-
エディタ / 開発支援
-
VSCode / IntelliJ IDEA
- ソース作成、デバッグ
- AI開発補助ツール(GitHub Copilot等)の利用
-
-
コンテナ
-
Docker
- 基本コマンドの理解
- 既存イメージの利用
- MySQLを使用できる状態まで
-
-
バージョン管理
-
Git
- 基礎コマンド
- push / pull / merge
- ブランチ運用
- コンフリクト解消
-
GitHubによるソースレビュー
-
セルフマネジメント
- タスクの優先順位付け
- 期限を意識した進行
- 朝会・夕会など、定期的な進捗共有
自律的な学習姿勢
-
調査力・質問力の強化
-
不明点が出た際の基本プロセスの徹底
- 自己解決の試行
- チーム内での相談
- メンターへの相談
この研修では、
「分からない状態をどう扱うか」そのものも学習対象になっています。
フェーズ1:オープニングオリエンテーション
やったこと
-
自己紹介
-
総合演習の目的・全体像の共有
-
使用する技術要素・ツールの共有
-
全体スケジュールの共有
-
次のアクションとして「まず企画を作る」ことを明示
-
企画立案のポイントとして以下を提示
- 目的・解決したい課題
- 期待する効果
- MVP(最低限成立させる範囲)
-
上記内容をまとめたオリエンテーション資料をパワポで作成し、自己紹介から企画立案のポイントまで順序立てて説明
フェーズ2:アイデア発表会
やったこと
-
新卒が持ち寄ったアイデアをすべて共有
-
以下の観点でディスカッションを実施
- 期間内に実装できそうか
- スキルアップにつながる内容か
- 作っている間のモチベーションが維持できそうか
-
ディスカッションの結果、
「複数チャンネルで自由に投稿・閲覧できるサイト」 を開発テーマとして決定
(イメージとしては某巨大掲示板のようなもの) -
仕様としてアカウント登録・ログイン機能を含めることで、
- 業務で頻出する認証機能の実装経験が積める
- フロント/バック双方に実装ポイントがあり、学習効果が高い
と判断しました。
悩んだ点
面白そうなアイデアは多く出たものの、
2ヶ月という期間で本当に完成できるかどうかは、メンター側でも判断が難しい状態でした。
新卒の「やってみたい」という気持ちを尊重しつつも、
メンターの立場としては 「確実に完走できるか」 という視点を持つ必要があります。
そこで最初に、
- MVPに明確な線を引く
- 拡張案は「後半に余力があれば対応する」
という合意形成に、しっかり時間をかけました。
フェーズ3:企画
やったこと
-
企画発表用の資料作成を依頼
- 企画書
- 機能優先順位表
-
フィードバックは以下に集中
- 課題が具体的か
- 「このサイトでどうなっていてほしいか」が想像できるか
- MVPが明確か
悩んだ点
企画書や発表資料に書かれる
課題・目的・効果の表現が、どうしても抽象に流れがちでした。
具体例をそのまま出すと答えを渡してしまうため、
- 「どのような課題があるのか」
- 「作成したアプリケーション使った後に何が変わるか」
といった切り口だけを渡し、
表現自体は本人たちの言葉で詰めてもらいました。
フェーズ4:設計
やったこと
-
設計フェーズとして、以下の設計資料の作成を新卒に依頼
- ユーザーフロー図
- ER図
- 設計書
- 要件定義書
- 総合演習用の開発ルールドキュメント
-
これらの資料の作成・レビューはすべて
総合演習用の GitHub リポジトリ上で Issue を使って実施 -
各設計資料について、Issue 上でレビューを行い、
指摘内容をもとに修正 → 再レビュー、という形で進行 -
企画〜設計フェーズ全体のスケジュール管理として
- 当初は GitHub Project を利用
- 途中から、スプレッドシートでの WBS 管理に切り替え
- WBS の雛形はメンター側で作成し提供
悩んだ点
設計資料そのもの以上に、
レビュー時のやりとりの進め方に悩みました。
当初はレビュー依頼が
「レビューお願いします」で止まることが多く、
- どこを見てほしいのか
- どの観点で意見を求めているのか
が共有されていない状態が続きました。
結果として、レビューの往復に時間がかかり、
確認の粒度もばらつきが出てしまいました。
その時に意識したこと・対応
そこで、レビュー依頼時には
- 「どこを特に見てほしいか」
- 「どの観点でコメントしてほしいか」
を一言添えることを、明文化して伝えました。
また、レビューコメントでは設計内容の指摘だけでなく、
- 依頼内容が具体的か
- 相手が確認しやすい書き方になっているか
といった テキストコミュニケーション面についても
フィードバックを行いました。
この運用を定着させるまでに何度かリマインドが必要で、
どこまで求めるかには悩みましたが、
結果的に後半のレビューはかなりスムーズになりました。
フェーズ5:開発
やったこと
-
開発期間中は、毎朝簡単な朝会を実施
- 進捗
- 詰まっている点
- 相談したいこと
を共有する場として運用
-
フロントエンドの開発環境構築は、メンター側で事前に対応
-
実行環境の構築についても、メンター側で対応
-
実装は段階的に進行
-
フェーズ1:
ユーザー認証・アカウント機能
(新規登録、ログイン画面など) -
フェーズ2:
コア機能の構築
(チャンネルの作成・閲覧、コメント投稿画面など)
-
-
API のつなぎ込みや画面実装は新卒主体で進行
-
以下のような、開発を進める上で必要な基礎知識をレクチャー
- ブランチ運用
- プルリクエストの作成手順
- コンフリクト発生時の対応方法
反省点
開発に入るまでの準備部分に想定以上の時間がかかった点が、今回の大きな反省点でした。
- 開発環境の構築に時間がかかり、なかなか実装に着手できなかった
- 実行環境の構築完了にも時間を要してしまった
結果として、
- MVPの実装で精一杯
- 付加価値機能の構築まで手が回らなかった
- より多くの技術に挑戦したり、テストを行って品質を高める余地を十分に確保できなかった
という状況になりました。
環境構築は新卒に任せづらく、どうしてもメンター側のタスクになりがちです。
そのため今回の経験から、
可能であれば、総合演習のキックオフ前に
開発環境・実行環境の準備を済ませておくのが理想的
だと強く感じました。
初動がスムーズであれば、
開発フェーズ後半をより「挑戦と改善」に使えた可能性が高く、
今後同様の研修を担当する際には、最優先で改善したいポイントです。
フェーズ6:成果発表準備
やったこと
発表資料の構成は以下を依頼:
- 背景
- 概要
- 使用技術
- スケジュール
- 実装機能
- 担当
- 学び・反省
- デモ
- まとめ
フィードバックでは
- 表現の統一
- 具体例の追加
- 今後の改善案の明記
を重視。
社内リハーサルを複数回行い、
- 冗長な箇所の削減
- 質疑応答の想定
を行いました。
悩んだ点
「学び・反省」が抽象になりがちでした。
最終的に
「1つの具体エピソード+改善策」 に絞り、
深く掘る構成にしてもらうよう、依頼しました。
フェーズ7:成果発表
やったこと
進行は事前に以下の流れで設計しました。
- 前説(メンターが担当)
- 新卒による発表
- Q&A
- メンターコメント
- 上長コメント
初回リハーサルで所要時間を把握し、
本番では内容の密度を上げる形で構成を調整しました。
振り返り
当日はメンター側としてかなり緊張していましたが、
新卒の方々が落ち着いて発表を進めてくれたおかげで、
結果として良い成果発表になったと感じています。
おわりに
これまで新卒研修を数日間担当した経験はありましたが、
約2ヶ月間、メンターとして伴走するのは今回が初めてでした。
その中で、教える立場として多くの学びがありました。
特に、
- どうすれば新卒に正しく理解してもらえるか
- どこまで教え、どこからは任せるべきか
といった「教え方の匙加減」には、常に悩まされました。
答えをそのまま伝えたり手伝えば一時的には解決しますが、
それが必ずしも成長につながるとは限りません。
あえてヒントだけを出し、最終的には見守る判断をすることも多く、
そのもどかしさを感じる場面もありました。
大変なこともありましたが、振り返ると非常に学びが多く、
個人的にはとても充実した2ヶ月間だったと感じています。
この記事が、これから新卒研修のメンターを担当される方の
参考になれば幸いです。
明日は@wc-nakayamaさんの投稿になります。お楽しみに!
ウェブクルーでは一緒に働いていただける方を随時募集しております。
お気軽にエントリーくださいませ。
https://www.webcrew.co.jp/recruit/