1. 導入
最近、YouTubeで個人開発のゲーム制作を追う動画をよく目にするようになりました。キャラクターが生き生きと動き、世界が形作られていくそのものづくりの過程を見ているうちに、自分も触れてみたいなと興味が湧いてきました。
ゲームエンジンとは、映像表示、物理演算、入力処理、音声、UIなど、ゲーム制作に必要な機能をまとめた開発基盤です。現在は、幅広いジャンルに対応するUnity、高度な3D表現に強いUnreal Engine、無料で利用できるGodotなどが代表的な選択肢となっています。今回は、その中でも押さえどころとなる5つのエンジンを比較してみます。
2. この記事はこんな方におすすめ
- ゲーム制作に興味を持ち始めたが、何から手をつければいいか分からない方
- Unity・Unreal Engine・Godotといった名前は聞いたことがあるが、違いを説明できない方
- 個人開発でゲームを作る際、費用面での違いも含めて比較検討したい方
3. 内容
代表的な5つのエンジン
| エンジン | 向いているゲーム | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Unity | 2D・3D、スマホ、インディーから商用まで | 対応プラットフォームが幅広く、学習資料・アセットが豊富。C#を主に使用 |
| Unreal Engine | 高品質な3D、FPS、オープンワールド | 美麗な映像表現と本格的な3D制作に強い。Blueprintによるビジュアルスクリプトも可能 |
| Godot | 2D、インディー、小〜中規模3D | 無料・オープンソース。軽量で扱いやすく、個人開発や学習用途でも人気 |
| GameMaker | 2Dアクション、レトロ風ゲーム | 2Dゲーム制作に特化。比較的始めやすく、短期間のプロトタイプ作成にも向く |
| RPG Maker | RPG、アドベンチャー | プログラミング経験が少なくてもRPGを形にしやすい。日本では特に知名度が高い |
それぞれ、もう少し見ていきます。
Unity
対応プラットフォームの広さと汎用性で知られるエンジンです。2Dも3Dも扱え、モバイル・PC・コンソール・XRまで1つのプロジェクトから書き出せます。言語はC#。資料・チュートリアル・アセットストア(10万点以上)の規模も大きく、初学者が情報を見つけやすいのが利点です。料金は、年間収益が一定額($200,000)未満なら無料(Personalプラン)、それを超えるとPro(年間$2,000台/席)に移行します。
代表例としては、Unityを使って作られた2Dアクション作品「Cuphead」(Studio MDHR)や「Hollow Knight」(Team Cherry)が挙げられます。いずれもUnity公式が2Dソリューションのケーススタディとして紹介しており、手描き風の作画と滑らかなアニメーションをUnity上で実現した事例です。
Unreal Engine(UE)
グラフィックの表現力で高く評価されているエンジンです。写実的な光の表現(Lumen)や高精細なジオメトリ処理(Nanite)など、映像品質を追求する機能が充実しています。言語はC++がベースですが、「Blueprint」というビジュアルスクリプティング機能を使えば、コードを書かずにロジックを組むこともできます。AAA級のタイトルで多く採用されています。エンジン自体は無料で使えますが、生涯収益が$1,000,000を超えた分に対して5%の利用料が発生する料金体系です。
代表例は、Unreal Engineを使って作られた作品の中でも、開発元のEpic Games自身が手がける「Fortnite」です。UE4でリリースされ、後にUE5へ移行しています。自社製品を自社エンジンで作っているという点で、最も分かりやすい実例と言えます。
Godot
MITライセンスで、収益規模にかかわらず完全に無料で使えるオープンソースのエンジンです。ロイヤリティも登録料も一切かかりません。近年、開発者コミュニティが急速に拡大しており(GitHubのスター数は2020年の2.5万から2026年には10万超)、特に2Dゲームや中規模の3Dゲームで採用が伸びています。GDScriptという独自言語(Pythonに近い書き味)のほか、C#での開発もサポートしています。
代表的な作品としては、Godot公式サイトのShowcaseページにも掲載されている「Brotato」(Blobfish開発)があります。Godotを使って作られたトップダウン視点のローグライトで、Steamで1,000万本以上を売り上げるヒットとなりました。無料エンジンでも商業的に成功した事例の一つです。
GameMaker
2D特化のエンジンです。「Undertale」「Celeste」「Hotline Miami」など、有名なインディーゲームの制作実績が多くあります。ドラッグ&ドロップによるビジュアル操作と、GML(GameMaker Language)というスクリプト言語の両方に対応しており、プログラミング未経験者でも扱いやすい設計です。買い切り型のライセンス(Proプランで約$100)を採用しており、サブスクリプションやロイヤリティが発生しません。
代表例の「Hotline Miami」(Dennaton Games)は、GameMakerを使って作られた作品です。GameMakerの開発元YoYo Games自身が公式ブログでリリース時に発表を行っており、公式Showcaseページにも掲載されています。
RPG Maker
クラシックな2D JRPG(ロールプレイングゲーム)の制作に特化したツールです。コーディングの知識がほとんどなくても、マップ・キャラクター・イベントを組み合わせてRPGを作れる設計になっています。汎用性は他のエンジンに劣りますが、「作りたいジャンルが最初から決まっている」場合には、学習コストの低さが際立ちます。日本では特に知名度が高く、同人・インディーのRPG作品で広く使われています。
代表例は、RPG Maker XPを使って作られた作品「To the Moon」(Freebird Games)です。感動的なストーリーテリングで高く評価されました。RPGらしい戦闘やレベル上げをほとんど排し、対話とイベントの仕組みだけでアドベンチャーゲームを作り上げた点が特徴です。
数字で見る勢力図
「代表的な5つ」といっても、実際の使われ方が横並びというわけではないようです。PC向けゲームの配信プラットフォームであるSteamのデータ(Video Game Insights「Big Game Engine Report of 2025」、直近の完全な通年データである2024年分を分析したもの)を見ると、2024年のリリース本数の内訳は、Unity 51%、Unreal Engine 28%、Godot 5%、GameMaker 4%でした。UnityとUnreal Engineの2つで全体の8割近くを占めており、この2つが頭ひとつ抜けているのが実情です。
一方、売上ベースで見ると様相が変わります。同じ調査によれば、2024年のSteam売上シェアはUnreal Engine 31%、Unity 26%、独自エンジン(主にAAA大作)42%となっており、本数では劣るUnreal Engineが、高単価タイトルの多さによって売上では上回っています。
Godotは本数・売上ともにまだ小さいものの、伸び率は際立っています。Steam上でのGodot採用シェアは2020年の0.9%から2025年には7.1%まで拡大しており、成長率で見れば5エンジンの中で突出しています。GameMakerとRPG Makerは、全ジャンル横断のシェアでは大きくありませんが、2Dインディーや同人RPGといった特定領域では根強い定番という位置づけです。
つまり、「代表的な5つ」は同じ土俵で競っているのではなく、UnityとUnreal Engineが大きな主流を占め、Godotがそこに急速に食い込みつつあり、GameMakerとRPG Makerはジャンル特化の有力な選択肢として棲み分けている、というのが実際の勢力図です。
他にもあるエンジン
上記5つが押さえどころですが、他にも用途に応じた選択肢があります。自然環境・屋外シーンの描写に強いCryEngine(「Far Cry」「Crysis」シリーズで使用)、ブラウザで完結するノーコードツールのConstruct、Robloxプラットフォームへの配信を前提としたRoblox Studioなどです
どう選べばいいのか
ここまでの整理を、目的別に単純化するとこうなります。
- とにかく手広く、将来的にどんな規模のゲームも作りたい:Unity
- グラフィックの美しさを追求したい、将来的に本格的な3Dタイトルを目指したい:Unreal Engine
- 費用をかけずに、オープンソースの思想にも共感する:Godot
- 2Dゲームを、なるべく早く形にしたい:GameMaker
- RPGを作りたいと最初から決まっている:RPG Maker
4. まとめ
ゲームエンジンは、「何を作りたいか」によって最適な選択が変わります。汎用性のUnity、映像品質のUnreal Engine、無料と柔軟性のGodot、そしてジャンル特化のGameMakerやRPG Maker。それぞれ狙っている層がはっきり分かれているのが、調べていて印象的でした。
エンジン選びに時間をかけすぎるより、まず気軽に触れそうな1つを選んで実際に手を動かしてみる方がゲーム開発の近道になりそうだな、と今回調べてみての率直な感想です。次回は、これらのエンジンが内部でどういう仕組みで動いているのか、一歩踏み込んで整理してみようと思います。
参考
- Godot vs Unity vs Unreal in 2026: A Data-Driven Engine Comparison - StraySpark
- Video Game Insights: Game Engines on Steam in 2025
- Unity Solutions for 2D(Cuphead・Hollow Knightのケーススタディ) - Unity公式
- Unreal Editor for Fortnite - Wikipedia
- Showcase - Godot Engine公式
- Indie Action Game Hotline Miami Developed With GameMaker - GameMaker公式ブログ
- To the Moon (video game) - Wikipedia