地方自治体のガバメントクラウド AWS 環境で、Amazon Bedrock をどこまで使えるの?という質問を受けることが多いので、公開情報から分かる範囲だけで整理してみようと思います。
2026/06/13 現在の情報ですのでご注意ください。
最初に自治体ガバメントクラウドの Bedrock 利用のまとめ
まず、地方自治体のガバメントクラウド AWS 環境でも、Bedrock を使うことは可能です。ただし、以下の制約があります。
利用できるモデル
- 生成 AI の推論環境が国内に閉じている必要があります
- ガバメントクラウド独自の制約により、使えるモデルは限られており、具体的には Claude などサードパーティ製のモデルは現時点ではまだ利用できません
- ただし Claude については、今後利用できるようになる見込み です
肌感覚ですが、このガバメントクラウドで現時点では Claude が利用できない、というところから Bedrock 自体が利用できないという誤解が生まれているような気がしています。
利用できるネットワーク・セキュリティ要件
- 地方自治体のマイナンバー利用事務系と呼ばれる、機微な個人情報を扱う基幹業務システムのネットワークからインターネット接続が禁止されているため、マイナンバー利用事務系で Bedrock を使う場合は VPC エンドポイント経由のみ可能です
Bedrock はガバメントクラウドが求める ISMAP の要件を満たしており、また機能として生成 AI の推論環境を国内リージョンに限定することもできるため、Bedrock を自治体がガバメントクラウドで利用すること自体は問題ありません。
ただし、技術的な理由から利用の一部に制限がある、という状況に現在なっています。これはデジタル庁の 令和7年度 共同利用方式の推進及びマルチベンダーにおけるシステム間連携の検証事業の成果報告書 からも読み取ることができます。
それでは具体的に、現在地方自治体がガバメントクラウド AWS 環境で Bedrock をどこまで利用できるのかを見ていきます。
なぜ利用できるモデルに制約があるのか
生成 AI の推論環境が国内に閉じる必要があるのは、ガバメントクラウドの情報資産は日本国内に保管されることが要件となっているためです。そのため、Bedrock も推論が国内(東京・大阪リージョン)で完結するプロファイルを使う必要があります。
こちらは分かりやすい制限だと思いますが、なぜ現在 Bedrock で Claude のようなサードパーティ製モデルが利用できないのでしょうか?
これは現在地方自治体のガバメントクラウド AWS 環境には Service Control Policy で AWS Marketplace の利用が禁止されているためです。
自治体がガバメントクラウドで運用する AWS アカウントは、デジタル庁が管理する Organizations のメンバーアカウントになっています。
そして自治体のメンバーアカウントに対するセキュリティ対策として予防的統制が行われており、具体的には、Control Tower の予防コントロールと、個別の SCP での API 制限がかけられています。
デジタル庁の GCAS ガイド「ガバメントクラウド利用概要(AWS編)」 から、「3.2 予防的統制の設定内容」を引用します。
- 現状、ガバメントクラウドにおいて統制の実現が難しいと考えている一部サービスについて、クラウドサービスとしての利用を禁止
- AWS Marketplace※1
※1AWS Marketplaceの利用は原則禁止とする。
実際に Bedrock で Claude を使ったことがある人は分かると思いますが、Claude のモデルの利用料は Marketplace から別に請求書が来ます。また、Claude などのモデルを Bedrock から初めて使う際、AWS Marketplace へのアクセス権を持った IAM ロールの権限が要求されます。
しかしガバメントクラウド AWS 環境では SCP で Marketplace の利用が禁止されているため、結果としてサードパーティ製のモデルが使えない、という状況になっています。
ただし、この制限のうち、Claude の利用については近い将来に解除されるのでは と推測しています。
その理由として、デジタル庁の GCAS ガイド「ガバメントクラウド利用概要(AWS編)」 から、「4.3 Claudeの利用について」に書かれている Claude の利用に関する部分を引用します。
ガバメントクラウドでは、マーケットプレイス利用の制約により、サードパーティーが提供するAIモデルの利用も原則不可となるが、デジタル庁とAWSの契約に基づき、ガバメントクラウドのAWSではAnthropicが提供するClaude(Amazon Bedrock経由でアクセス・利用されるClaudeの基盤モデル)が利用可能である。
可能な限り最新のモデルは順次利用可能としていくが、利用可能モデルに関する最新の情報については、実際の環境から確認いただくか、GCASヘルプデスクのFAQを確認いただきたい。なお、国内リージョンで完結可能なモデルに限定されるため、留意されたい。
また、JAIPA(日本インターネットプロバイダー協会)が 2025/11/06 に開催した JAIPA Cloud Conference 2025 で、デジタル庁の山本 CCO が登壇し、以下のように発言しています。
ガバメントクラウドでの生成AI利用
ガバメントクラウドでは、採択したCSPが提供するAIサービスを国内に閉じて選択して利用可能
利用可能な生成AIモデルとしては、2025年10月現在で、たとえば、AWS:BedrockのClaude Sonnet 4.5/Haiku 4.5 1、Google Cloud:Vertex AIのgemini-2.5-pro2、Azure:Azure OpenAI Serviceのgpt-4o、OCI:OCI生成AIのLlamaとCohere、gpt-oss-120b/20b
最新の生成AIモデルが出てきた際にすぐに使えるような環境についても検討中
これらの一次資料から、ガバメントクラウドに関するデジタル庁と AWS 間の契約により、一部のサードパーティ製モデルを Bedrock から使えるようになっていることが分かります。
しかし、先述のとおり現在は Marketplace の制約があることから、技術的に Bedrock から Claude が使えないだけの状況であると想像しています。そのため、こういった技術的な課題が解消されたら、自治体もガバメントクラウドから Bedrock で Claude が使えるようになると私は考えています。
マイナンバー利用事務系のような基幹業務システムで Bedrock を使うには
自治体のネットワークは三層分離のセキュリティ対策が行われており、マイナンバー利用事務系の基幹業務システムがあるネットワークからインターネットへ接続することは禁止されています。
そのため、マイナンバー利用事務系のシステムから Bedrock を使うには、インターネットリーチャビリティのない閉域ネットワークの VPC から、VPC エンドポイント経由で Bedrock にアクセスしなければなりません。
また、Bedrock の API を呼び出すプログラム側も、インターネット接続できないことに注意が必要です。
閉域 VPC のため、プログラムの実体は VPC Lambda や ECS のコンテナ上へデプロイすることになりますが、当然プログラムの実体からインターネット接続ができません。
個人的にはこの制約が実運用上厳しいと思っていて、例えばプログラム内で MCP Client を作成して Agent から連携させようとした時、MCP Client はインターネットリーチャビリティがないので、MCP Client からインターネット上のコンテンツにアクセスさせることができません。この辺りは開発時に工夫が必要になってくると思います。
マイナンバー利用事務系で Bedrock を使っている事例
では実際にガバメントクラウドのマイナンバー利用事務系システムから Bedrock を使っている事例を見てみます。
こちらは奈良市で特定健診指導の業務にガバメントクラウドの閉域環境を使った事例です。生成 AI を閉域環境で使うため、AWS の開発したオープンソースソフトウェア(OSS)である GenU を使うアプローチです。
GenU の閉域モードについての解説もあり、大変参考になります。
次につくば市の「生成 AI を活用した基幹系(個人番号利用事務系)業務の効率化に向けた共同研究」の実施報告書です。
こちらも GenU を使っていることが書かれており、自治体で初のガバメントクラウドへの生成AIシステム導入事例となっています。
最後に運用管理補助者となるベンダー視点の事例で、株式会社大崎コンピュータエンヂニアリングがガバメントクラウド AWS 環境のアラートやログを要約して通知する仕組みを Bedrock で運用しているものです。
以上の事例から、ガバメントクラウドのマイナンバー利用事務系システムからも、VPC エンドポイント経由で Bedrock を使えることが分かります。
ガバメント AI 源内 はガバメントクラウドと関係がある?
少し横道にそれますが、先日 OSS として公開されたデジタル庁のガバメント AI 源内 について、ガバメントクラウドの AWS で使えるのか?という質問もあると思うので解説してみます。
源内とガバメントクラウドの現状は、整理すると以下のようになるかと思います。
- 源内とガバメントクラウドは直接の関係はなく、ガバメントクラウド以外のクラウド環境でもデプロイすることができます
- 源内をガバメントクラウドの AWS で運用することも可能
- ただし源内は GenU のように閉域モードがないため、ガバメントクラウドといってもインターネット環境で運用する必要があることから、そのままではマイナンバー利用事務系で利用することはできない
源内のシステム構成
源内は、ユーザーがアクセスするポータル的なフロントエンドとなる「源内 Web」と、源内 Web から呼び出すバックエンドとなる API の二層の構成となっています。
源内 Web は AWS にデプロイできるよう IaC のコードが用意されています。バックエンドとなる API は、源内 Web のインターフェース仕様に沿っていれば、自由に開発することができ、AWS に限らずどんな環境でもデプロイすることができるようになっています。
なお、源内 Web はポータル機能だけでなく、汎用的なチャットアプリなども用意されており、ここで Bedrock が使われています。
源内 Web の IaC をそのまま使うのであれば、インターネット接続可能な AWS 環境へのデプロイが条件となります。
マイナンバー利用事務系で源内 Web を使うとしたら
源内 Web は OSS のため、もしマイナンバー利用事務系から源内 Web を利用したい場合は、自分で源内 Web のリポジトリをフォークし、VPC エンドポイントを使うようにインフラを改造する必要があります。
当然自前フォークした場合は本家のアップデートに自前で追従していく必要がありますが、源内 Web は閉域モードのある GenU をベースに開発されているので、頑張ればなんとかなるかもしれません。これは後ほど言及します。
自治体職員としてのガバメントクラウドで Bedrock を使う準備
以上のことをまとめると、地方自治体のガバメントクラウド AWS 環境における Bedrock の利用の現状は次のとおりです。
- セキュリティ制約等をクリアすれば、マイナンバー利用事務系でも Bedrock の利用は可能
- 現時点では Bedrock から Claude は利用できないが、近い将来利用できるようになる見込み
いち自治体職員としては、マイナンバー利用事務系での Bedrock の利用、Claude の利用に大きな期待を寄せているところです。
そこで、個人的にですが閉域ネットワークで Bedrock を使う準備として私が行った検証作業をいくつか紹介します。
ECS Express モードを使った Bedrock アプリのデプロイ
閉域ネットワーク VPC でアプリをデプロイするときの制限として、CloudFront が使えないことは大きいと思っており、どうしても EC2 や ECS に頼る場面が出てきます。ECS Express モードは閉域ネットワークでも利用できて比較的デプロイも容易なので、閉域ネットワークでアプリをデプロイする環境としては使いやすいと思います。
以下の記事では、ECS Express モードで Bedrock を使った Streamlit アプリを閉域ネットワーク VPC にデプロイする手順を検証しています。
源内を閉域ネットワーク VPC へデプロイ
先に説明したとおり、源内をそのまま閉域ネットワークの VPC にデプロイすることはできないため、ガバメントクラウド AWS のマイナンバー利用事務系のシステムの VPC で源内を使うには、インフラを自前で改造する必要があります。
以下の記事では、GenU の閉域モードを参考に、フロントエンドを ALB + ECS 構成に変更し、VPC エンドポイント経由で Bedrock などを使うようにすることで、源内 Web を閉域ネットワーク VPC へデプロイする手順を検証しています。
また、源内 Web から呼び出す API の参考実装(源内 AI アプリ)も同様に閉域ネットワーク VPC へデプロイしてみています。
クロスアカウントアクセスで Bedrock へアクセス
こちらは今後必要のない構成かもしれませんが、ガバメントクラウド AWS アカウントから、ガバメントクラウドではない通常の AWS アカウントの Bedrock の VPC エンドポイントへクロスアカウントアクセスする手順の検証です。
今の時点で必要そうな Bedrock を利用する最低限の準備として参考になるかなと思っています。
一方、Bedrock に限らず生成 AI を巡る状況は常に変わっていくので、情報を集めつつ、冷静に必要な準備を続けていこうと思っています。

