はじめに
青山学院大学の社会人向けプログラム「ADPISA-Z」にて、「生成AIによる情報システムへのインパクト」というテーマで3時間の講義を行いました。
本記事はその講義内容のダイジェストです。
📊 講義資料:
📚 ADPISA-Zについて:https://adpisa.si.aoyama.ac.jp/adpisa-z/
講義の概要
対象は企業の情報システム部門の方々。プログラミング経験は前提としていません。
「技術の詳細」よりも「何ができるようになるか」「IT部門の役割がどう変わるか」にフォーカスした構成です。
| パート | テーマ | 時間 |
|---|---|---|
| 第1部 | 変化の兆候 | 15分 |
| 第2部 | 変化の原動力 | 30分 |
| 第3部 | 情報システムへのインパクト | 50分 |
| 第4部 | ハンズオン | 50分 |
| 第5部 | まとめ | 15分 |
全体を通じたキーワードは「民主化」です。
第1部:変化の兆候
2025年に何が起きたのかを振り返りました。
3つの数字
- 79% の企業がAIエージェントを導入済(PwC調査)
- 80倍 MCPのダウンロード数が1年で10万→800万へ
- 2025年 「AIエージェント元年」(Gartner)
特筆すべきは、業界が「標準」に合意したこと。Anthropic、OpenAI、Google、Microsoftといった競合企業が、わずか半年でMCPという同じプロトコルを採用しました。
また「バイブコーディング」という言葉に象徴されるように、プログラミングできない人も「開発者」になれる時代が始まっています。
第2部:変化の原動力
生成AI → AIエージェント → MCP という進化の流れを解説しました。
生成AIとAIエージェントの違い
| 生成AI | AIエージェント | |
|---|---|---|
| 役割 | 教えてくれる | やってくれる |
| 例 | 「会議の設定方法を説明します」 | カレンダー確認→空き時間探索→会議作成→招待送信 |
AIエージェントは「自分で考えて、自分で動く」AI。指示を理解し、計画を立て、ツールを使い、結果を返します。
MCPとは
Model Context Protocol(MCP)は、AIと外部ツールをつなぐ「共通ルール」です。
USBがどの機器も同じケーブルで繋げるようにしたように、MCPはどのAIでもどのツールでも同じ方法で連携できるようにしました。
2024年11月の登場からわずか1年で業界標準となり、カレンダー、メール、Slack、データベースなど、あらゆるツールとAIが連携できるようになっています。
Databricksの3つのツール
講義では以下の3つのツールを紹介し、ハンズオンで実際に体験しました。
| ツール | できること |
|---|---|
| AI/BI Genie | 日本語で聞くだけでデータ分析 |
| アシスタント | AIがコードを書いて実行 |
| Apps | 作ったものをすぐアプリとして公開 |
第3部:情報システムへのインパクト
生成AIが情報システムに与える影響を、Before/Afterで解説しました。
インターフェースの進化
| 時代 | 操作方法 | 使える人 |
|---|---|---|
| 1970s | コマンド入力 | 専門家のみ |
| 1980s | GUI | 訓練された人 |
| 2010s | タッチ | 子供でも |
| 2020s | 自然言語 | 誰でも |
「日本語が話せれば、コンピューターを操作できる」時代の到来です。
データ分析の壁が崩れる
従来の4つの壁(スキル、ツール、データ、時間)がすべて低くなりました。
| 壁 | 従来 | 生成AI時代 |
|---|---|---|
| スキル | SQL必須 | 日本語でOK |
| ツール | 専門ソフト | ブラウザだけ |
| データ | どこにあるか分からない | AIが探す |
| 時間 | 数週間 | 数分 |
業務プロセスの変革
「営業レポートを作って共有したい」という同じ要件でも:
従来:データ依頼→分析依頼→開発依頼→テスト→公開で2〜3ヶ月
AIエージェント時代:Genieで分析→アシスタントで深掘り→Appsで公開で約30分
IT部門の役割の変化
「作る」から「整える・育てる・守る」へ。
- 基盤整備(データ、セキュリティ)
- ガバナンス(利用ガイドライン、品質担保)
- 組織連携(業務部門の支援、教育)
- イノベーション推進(新技術の評価・導入)
これは「脅威」ではなく「機会」です。より価値の高い仕事へシフトするチャンスと捉えてほしいと伝えました。
第4部:ハンズオン
Databricks Free Editionを使い、全員が実際に手を動かしました。
Genie発展編
事前課題で基本操作を体験済みの受講者に対し、複合条件での分析や「なぜ?」を深掘りする質問を体験してもらいました。
店舗別・カテゴリ別の売上を月次で見せて
↓
先週比で、成長率が高い組み合わせは?
↓
その中で売上の高いものに絞って
会話の流れで条件を絞り込んでいく体験です。
アシスタント発展編
エージェントモードを有効にし、複合タスクの依頼を体験しました。
scikit-learnのirisデータセットを読み込んで、
以下の分析をしてください:
・種類ごとの特徴量の分布を箱ひげ図で可視化
・どの特徴量が種類の分類に効きそうか考察
・簡単な相関分析も見せて
ゴールを伝えるだけで、AIが自動でステップを分解して実行する様子を観察しました。
Apps入門編
テンプレートのカスタマイズを体験。コードを深く理解しなくても、文字列の変更だけで見た目が変わることを確認しました。
第5部:まとめ
3つのメッセージ
- 変化は「いつか」ではなく「今」起きている ── 待っていると取り残される
- 技術の詳細より「何ができるか」を知ることが大事 ── 使いこなす側に回る
- IT部門の役割は「なくなる」のではなく「変わる」 ── より価値の高い仕事へ
明日からできること
| 期間 | アクション |
|---|---|
| 今週中 | 事後課題に取り組む |
| 今月中 | 自分の業務で試してみる |
| 3ヶ月以内 | チームに共有する |
| 継続的に | 情報をキャッチアップ |
小さく始めて、徐々に広げることをお勧めしました。
おわりに
「生成AIは『脅威』ではなく『機会』。使いこなす側に回りましょう」というメッセージで講義を締めくくりました。
受講者の方々が「これ、Genieに聞けるかも」「アシスタントに任せられるかも」という視点で自分の業務を見直すきっかけになれば幸いです。
参考リンク
- 講義資料(SpeakerDeck)
- ADPISA-Zプログラム
- Databricks Free Edition
- Databricks AI/BI Genieドキュメント
- Databricksアシスタント ドキュメント
- Databricks Appsドキュメント







