はじめに
Genie Oneのデスクトップアプリが提供されるようになりました。macOSネイティブのアプリで、ブラウザを開かずにGenie Oneを使えます。
6月にモバイルアプリを一通り触った記事を書きましたが、今度はデスクトップです。
インストール自体は数分で終わりましたが、サインインで手が止まりました。複数のDatabricksアカウントに所属していると同じところで詰まると思うので、そのあたりも含めて書いていきます。
Genie Oneデスクトップアプリとは
ドキュメントの表現を借りると「デスクトップ上でGenie OneにアクセスできるmacOSネイティブアプリ」です。できることはWeb版と同等で、自然言語でのデータへの質問、スレッドやドキュメントの操作、Genieエージェントの利用、Unity Catalogのテーブルへのアクセス、Databricks Appsの実行まで一通り揃っています。
Web版との差分はデスクトップならではの部分で、ドキュメントには以下が挙げられています。
- タイトルバーに戻る・進む・再読み込みのコントロールがある
- Dockアイコンに未読メッセージ数のバッジが出る
- 新しいバージョンをバックグラウンドで自動ダウンロードする
- 表示言語はOSの言語設定に従う
現時点ではmacOSのみの対応です。Windows版はありません。
インストール
インストーラーは.dmg形式で配布されています。開くとおなじみの画面が出るので、アイコンをApplicationsにドラッグするだけです。
ここまでは何の変哲もありません。
サインインで迷ったポイント
ここが最初のハマりどころです。
起動すると、Genie Oneのロゴと「The data-smart AI coworker」というタグラインが出て、その下に入口が2つ並んでいます。上が「Log in」ボタン、下がワークスペースURLを直接入力してSubmitする欄です。
画面上にはどちらを使うべきかの説明がないので、まず素直に「Log in」を押しました。ドキュメントによれば、この経路では認証情報を入力したあとにアカウントセレクターとワークスペースセレクターが順に表示されます。
ここで手が止まりました。アカウントセレクターに複数のDatabricksアカウントが並び、どれを選べばよいのか判断できません。 表示されるのはアカウントの識別子で、普段ブラウザで開いているワークスペースとの対応がその場では分かりませんでした。複数のアカウントに所属している人は同じところで止まると思います。
結局、下の欄にワークスペースURLを直接入力する方法でログインできました。目的のワークスペースが分かっているなら、こちらの方が確実です。
ドキュメント上、2つの方法はこう位置づけられています。
- 標準ログイン: 「Log in」を選ぶとDatabricksの認証情報を入力し、アカウントセレクターとワークスペースセレクターが順に表示される
- ワークスペースURL直接入力: SSOやメール認証が未対応の場合に有効
書きぶりとしてはURL直接入力が例外扱いですが、実際には複数アカウントに所属している場合の近道としても効きます。アカウントの選択で迷ったら、素直にワークスペースURLを入れてしまうのが早いです。
もう1つ、事前に知っておきたい制限があります。
パスキー、PIN、Touch IDは未サポートです。 ユーザー名とパスワード、またはYubiKeyでのみサインインできます。普段ブラウザでTouch IDやパスキーを使っている人ほど「いつもの認証が出てこない」と戸惑うはずなので、ここは先に把握しておく価値があります。
一度サインインするとアプリはワークスペースを記憶して、次回起動時にそのまま復帰します。迷うのは初回だけです。
起動後の画面
サインインすると、見慣れたGenie Oneの画面がネイティブウィンドウの中に出てきます。
左のサイドバーはNew chat、Agents、Discover、My stuff、Schedules、Customizations、Search chatsという構成で、Web版と同じです。右上にはワークスペース名 (私の環境ではe2-demo-tokyo) が出ていて、ここから切り替えられます。
中央の入力欄にはSearchとAskのトグルがあり、その下にAnalyze my data、Create a skill、Draft a document、Schedule a taskというクイックアクションが並びます。デスクトップアプリだから機能が削られている、ということはありません。
ちなみに画面の下部には「Genie One whenever, wherever」というモバイルアプリのインストールバナーが出ていました。デスクトップアプリの中でモバイルアプリを勧められる構図で、ここは少し面白かったところです。
日本語で質問してみる
せっかくなので日本語で聞いてみます。COVID-19の感染者数のデータを入れてあるワークスペースなので、「東京の感染者数の推移」と入力しました。
まず思考過程が表示されます。
ここで何が起きているかが読み取れて面白いところです。エージェントはオントロジーのスニペットから「東京についてはcovid_cases_baseテーブルに対してPrefecture ILIKE '%Tokyo%'を使えばよい」という情報を得ていて、さらに私がお気に入りに入れていた「COVID19スペース」というGenieスペースを見つけ、「この種の質問のためにキュレーションされているのだから、そこにルーティングしよう」と判断しています。
質問文も「東京の感染者数の推移」から「東京の感染者数の推移を教えてください。日付ごとの感染者数を時系列で表示してください。」に補完された上でGenieスペースに渡されていました。こちらが投げた雑な一文が、そのまま雑に処理されるわけではありません。
思考の下には「Skip to a faster answer」というボタンがあります。エージェントの探索を待たずに手早い回答へ切り替える逃げ道で、待ち時間が気になるときに押せるようになっています。
そして結果です。
「東京都の新規感染者数は2022年1月〜2023年5月の期間で記録されており、2022年8月 (第7波) にピークを迎え、月間合計 約75.8万人 に達しました」というサマリーと、月別の折れ線グラフが返ってきました。右上にはShareボタンもあり、この結果をそのまま共有できます。
日本語で聞いて日本語で返ってくる。ネイティブアプリだからといって日本語の扱いが劣るということもありませんでした。
ブラウザ・モバイル・デスクトップの使い分け
3つの入口が揃ったので、どう使い分けるかを考えてみます。
デスクトップアプリの価値は、Genie Oneが独立したウィンドウとして常駐することに尽きます。ブラウザのタブは他の作業に埋もれますが、アプリなら⌘+Tabで一発です。Dockバッジで未読が分かるのも、非同期に返ってくるエージェントの回答やスケジュールされたタスクとは相性が良い。「データに聞く」を思い立った瞬間に開ける状態にしておく、という使い方がしっくりきます。
一方で、設定やSQL、ジョブへのリンクはデフォルトブラウザで開く挙動になっています。Genie Oneのページ内へのリンクはアプリ内、それ以外はブラウザという切り分けです。つまり、作り込みや管理作業は結局ブラウザに戻ることになります。デスクトップアプリはあくまで「聞く・見る・共有する」ための窓と考えるのが実態に近いです。
管理者視点で1点注意があります。Databricksは組織レベルでこのアプリを有効化・無効化する機能を提供していません。 アクセス管理は他のクライアントと同様に、MDMなど組織側の仕組みで行うことになります。また、アプリからサインアウトしてもアプリ内のセッションがクリアされるだけで、ワークスペース側のセッションは有効期限が切れるまで残ります。端末管理の話をするときに効いてくる部分です。
まとめ
Genie Oneデスクトップアプリを触ってみて分かったことをまとめます。
- macOSネイティブのアプリ。Web版と同等の機能に加えて、戻る・進む・再読み込み、Dockバッジ、自動更新が付く
- 現時点でmacOSのみ。Windows版はない
- サインイン画面には「Log in」とワークスペースURL直接入力の2つの入口があり、画面上に使い分けの説明はない
- Log in経由だとアカウントセレクターに複数のDatabricksアカウントが並び、どれを選ぶべきか判断できない。ワークスペースURLを直接入力する方が確実
- パスキー、PIN、Touch IDは未サポート。ユーザー名/パスワードまたはYubiKeyのみ
- 一度サインインすればワークスペースを記憶するので、迷うのは初回だけ
- 日本語の質問もそのまま通る。オントロジーの情報をもとに適切なGenieスペースへルーティングされる
- 待ちきれないときのための「Skip to a faster answer」がある
- 設定・SQL・ジョブへのリンクはデフォルトブラウザで開く
- 組織レベルでの有効化・無効化の管理機能はない。MDMなど他の手段で管理する
一番の収穫は、モバイルとデスクトップで役割がはっきり違うと分かったことでした。モバイルは移動中に結果を確認するための窓、デスクトップは思い立った瞬間にデータへ聞くための常駐窓です。どちらもブラウザの代替ではなく、Genie Oneへの距離を縮めるための入口という位置づけで捉えると腹落ちします。ブラウザのタブを1つ探す手間がなくなるだけで、データに聞く回数は確実に増えました。





