はじめに
私は長野県のソフトウェア開発会社、日本システム技研(JSL)で
カルチャーデザインチームのリーダーをしています。
社員数は30名弱。SESと受託開発を中心に事業を展開しています。
今年度から経営に携わるようになり、MVVの策定もその流れのひとつでした。
MVVの策定
見直しには2つの理由がありました。
ひとつは外部環境。生成AIの台頭で「エンジニアは要らなくなる」という風潮が生まれそうで、技術力だけでは差別化できなくなってきていました。
もうひとつは内部の課題。以前まではミッションステートメントがありましたが、社内で聞いても「一応あるらしいよ」程度の認識で、浸透しているとは言えない状態でした。
そこで具体的に決めた Mission/Vision/Value が以下です。
それぞれの言葉には、選んだ理由があります。
「長野から価値を生む」の「から」は、長野の中で完結するのではなく、長野を起点に外へ価値を発信していくイメージです。
Visionも当初は「社会から注目され続ける企業になる」でしたが、「信頼され続ける」に変えました。
注目は結果であって目的ではない。まず信頼を積み重ねることが先、という考えからです。
こちらを4月に発表し、運用しています。
2ヶ月経った現在、途中報告ですが Value だけは確実に浸透していそうです。
Valueの言葉えらび
なぜValueが浸透したのかをお話しする前に、まずこの3つの言葉をどう選んだのかを説明させてください。
Valueには設計の前提がありました。社長からの方針は「日々の業務で使えること」。そして評価軸として機能するレベルまで落とし込む、ということです。
- 「今日は何を試したか」
- 「どんな対話をしたか」
- 「チーム内で称賛できたか」
このような問いに変換できる言葉にしたかったので、動詞の形で3つのValueの粒度を揃えました。
その上で、それぞれに没案がありました。
更新する → 試す
「更新」はドライで、成果・アウトプットに聞こえました。
言いたかったのは姿勢のことです。
「1日1%でも前に進む」「止まらない」というニュアンスです。
失敗しても、試したこと自体に価値がある。そういう文化にしたかったのです。
提案する → 対話する
「提案する」は一方通行になりやすいと思っています。
相手の文脈を理解しないまま提案しても、ただの押しつけになります。
まず相手を理解することが先。だから「提案する」を「対話する」に変えました。
褒める・関心を持つ → 称賛する
SES企業のもう一つの課題は「無関心」です。
プロジェクトが違うと、同じ会社のメンバーなのにほとんど接点がありません。
「褒める」「関心を持つ」といった言葉も候補にあがりました。だから「称賛する」を置きました。
Valueを埋め込む仕掛け
- SlackにValue3つのスタンプが生まれた
- チームの振り返りで「試す・対話する・称賛する」が使われた
- 3つのValueを印刷して、会社に掲示された
これらの仕組みがなぜ機能したのか、もう少し掘り下げます。
Valueが根付いた理由
Valueを「言葉として伝える」のではなく、「仕事の中に埋め込む」ことを意識しました。
- スタンプを押すこと自体が、Valueの実践になっています(使う)
- チームの振り返りで3つを軸に使う場を作っています(振り返る)
- 掲示は、日常の視界にValueを置いています(見る)
言葉が短く、簡単な動詞であることも大きかったと思います。
「試す」「対話する」「称賛する」は軸や対象を限定していません。
誰に対しても、どんな場面でも使える言葉になりました。
Mission/Visionの現在地
一方で、MissionとVisionはどうでしょうか。
MissionとVisionは、今のところあまり語られていません。
でも今はそれでいいと思っています。
宣言だけで文化が変わるとは思っていません。行動が積み重なった先に、文化があると思っています。
Valueが行動として定着して、文化が深まったとき、「なぜ自分たちはこう動いているのか」の答えとしてMission/Visionが意味を持ち始めると思っています。
今はその途中に居るのだと思っています。
次の試み
Valueが行動に定着してきたら、今度はMission/Visionを判断の根拠として使ってみたいと思っています。
- 新しいサービスを作るとき、プロジェクトの方向性を決めるとき、「なぜこれをやるのか」という問いにMissionで答えてみる
- どの顧客と仕事をするか、どのプロジェクトを受けるかという場面でも使ってみたい
Missionを理由に何かを断れる場面が出てきたとき、言葉が本当に腹に落ちたと言えるんじゃないかと思っています。




