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研究ノートアプリとしてのQuiver

Last updated at Posted at 2016-04-25

概要

Quiverを研究ノートアプリとして利用する観点から簡単にまとめておこうと思います。

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研究ノートアプリに必要な要素とは?

長くてかつ個人的な意見なので、Quiverについて知りたい方は読み飛ばしてください

2016年時点では研究分野、特にデータをオープンに取り扱える分野において、EvernoteやWikiなどのクラウドを活用して研究の記録や研究者間のデータ共有を行う場面が増えてきていますが、これらが研究ノートアプリとして紙のノートを完全に置き換えられるかというと決してそうではないのが現状です。例えば紙は文章・図などの混在した情報を即座に記録できるという点で有用ですし、盗用などの不正行為から研究者を守るための確かなフォーマットとしても当分は使われ続けるのでしょう。しかしながら、デジタルデータによる記録はそれでも積極的に使う価値があると思っています1。個人的には以下の要素を備えるアプリやCMSであれば、研究ノートとしてメインに使っても良いんじゃないかと感じます2

0. ノートの管理

まず第一にノート・ノートブックという概念があり、記録内容ごとに管理ができること。タグを用いてノートに属性を付けられるとなお良い。

1. 簡便な記法による構造的な記録

デジタルデータの圧倒的な利点としての記録速度を損なわず、見出しや箇条書きなどの文章構造を記述できること。記法としてはPukiWikiなどの独自記法・Markdown・reSTなど様々だが、現状の普及度と可読性を考えるとMarkdownをベースにしたものが良さそうである。

2. あらゆる形式のデータの保存

画像・PDF・スクリプトなどのあらゆるデータをノートに関連付けて保存できること。この点はEvernoteやWikiが得意とするところで、Markdownベースのノートアプリは画像の保存しかできない場合も多い。

3. 作業履歴の保存

ノートの自動保存や必要に応じて過去のバージョンに遡れること。

4. エクスポート・共有

バックアップとも関連するが、ノートをアプリ外で再利用可能なフォーマットでエクスポートできること。また、ノートを研究者間で閲覧・編集するための仕組み (ユニークURLなど)を持っていること。

5. バックアップ

ノートのデータ全体をローカルやクラウドにバックアップし、必要に応じてレストアできること。また、バックアップの内部にアクセスし、保存したデータにアクセスできること。

6. (コードの取扱い)

プログラミングが必要な研究の場合のみ該当するが、ノート中にコードを適切な形で表示 (シンタックスハイライト・等幅フォント)できること。

Quiver - The Programmer's Notebook

前置きが長くなりましたが、"The Programmer's Notebook"を謳うMacのアプリQuiver (発音は/kwívɚ/)についてです。QuiverはGFM Markdownベースのノートアプリで、Jupyter Notebookライクなセルの概念を持ち、ノート内で複数の記法 (プレーンテキスト・Markdown (GFM)・TeX・コード・ダイアグラム)を使い分けることができます。特筆すべきはノートの実体が単なるJSONであり、これによってgitなどのバージョン管理や、Quiverがサポートしていないデータ形式へのエクスポートをユーザが簡単に行えるということです。また、完全にオフラインで使えるというのも場合によっては利点でしょう。このようなQuiverの思想については作者のブログに一言で良くまとまっており、研究ノートアプリとしての親和性は今のところ最も良いのではないかという印象です。

A great notebook app must do three things exceedingly well: taking notes, organizing notes, and retrieving notes. And it should refrain from doing anything else. (Yaogang Lian)

Quiverは2014年4月にリリースされたアプリということで、まだまだ日本語の情報が少ないようです (下はGoogleトレンドでquiver appを検索した結果; 20件ごとに水平線)。
quiver-trend.png

研究ノートアプリとしての比較

一応ですが2を満たすものとして3、Quiver・Marxico (Evernoteに保存するMarkdownベースのノートアプリ)・PukiWikiを研究ノートアプリとして比較してみました4。ただし、比較によってQuiverが最も優れていると主張するつもりはありません。それぞれ一長一短があり、何に最も重きを置くかという問題だと思います。

Item Quiver Marxico PukiWiki
0. ノート管理 ◯ (ディレクトリ・ページによる管理)
1. 簡便な記法 ◯ (Markdown) ◯ (Markdown) △ (独自記法・プラグインでMarkdown対応可能)
2. データの保存
3. 作業履歴の保存 ◯ (Dropboxやgitなどを使用) △ (Evernote Premiumなら可能) ◯ (デフォルト機能)
4. エクスポート・共有 △ (Dropbox共有リンクなど) ◯ (Evernote共有ノート) ◯ (URLの共有)
5. バックアップ ◯ (JSON) △ (ENML) △ (データベース)
6. (コードの取扱い) △ (プラグインで対応)
価格 (2016年4月時点) ◯ (1,200 JPY) △ (15.99 USD/yr) - (サーバの料金体系による)
プラットフォーム △ (Macのみ) ◯ (マルチプラットフォーム) ◯ (ウェブブラウザ)
オフライン使用 △ (Evernoteとの同期は不可) ×
オンライン同期 ◯ (Dropboxなどを使用) ◯ (Evernoteを使用) ◯ (ウェブサーバ)

References

Quiverの使い方については記事の範囲外のためここでは述べませんが、以下のみなさまの記事で一通りのことは分かると思います。


  1. このあたりの話は亀野先生の記事がとても参考になります。 

  2. もちろん分野によると思います。 

  3. 個人的には研究ノートアプリに最も求めるものなので。 

  4. 個人的に使用歴があるものを並べただけです。他にも良いものがあれば教えていただきたいです。 

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