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黒い案件に対峙する時

Last updated at Posted at 2022-06-25

自転車操業の企業は珍しくない。

ムラタセイサク君のような強烈な安定力など夢のまた夢。

今月の売り上げが第一であり、返済に奔走し、怪しげな事業者に引っ掛かり、
思考力が鈍って、即席を謳う法外な稼ぎメソッドに手を出す。

以下に書くのは数ヶ月前実際に体験した、(私が黒いと思う)案件について。

ここにそれを書くのは、他のエンジニアならどう考えるのか、をただ知りたいと思ったから。

俺が変なのか周りが変なのか。

、、、
リターンがない綱渡りと
あまりの近視眼に
私は匙を投げた
2月の昼下がり…
、、、

思わず詩を詠んでしまう。
この記事を要約すると、そうなる。

是非想像力をたくましくして、自分ごとのように読んで欲しい。

悲壮漂う、下層社会の1ページへようこそ。

せどり = 悪?

社長の知り合いから開発の相談があった。

その知り合いはネット上で何でもいいから商品を安く買って高く売る、要するにせどりを生業としている。
アルバイトを数人雇い、一定の条件にマッチする商品を見つけたら購入ボタンをクリック。
発送、検品はまた別の人が担当。倉庫を借り、日夜稼働して売上は上々の様子。

いくらか仕組み作りをしていて、なかなかうまく行っているが、もっとスケールさせたい。
その為には現状の「手動」で購入するのがネックになっている、との事である。

要件はこうだ。

メルカリやヤフオクといったフリマアプリで
「無在庫販売」を「自動」でやりたい。

最強のパワーワード2つ。

、、、

無在庫販売とは、文字通り在庫なしで販売するという事。

分かりやすく例を書く。例えば

  • amazonで商品Aの販売ページを作成する
  • ヤフオクのAPIを引いて、ヤフオクに商品Aが売られているか検索
  • amazonで販売されている商品Aの平均価格と、ヤフオクで販売されている商品Aの最安値の差額を計算(同時に商品状態、良好なども取得)
  • その差額が一定を超えるなら(利益が出るなら)、amazonでの商品Aの販売ステータスは「現在取扱しています」
  • ヤフオクに在庫がない or 利益が出ない場合は、ステータスを自動で「現在取扱していません」
  • 上記は、お客(amazon利用者)が、amazon上で商品Aの詳細ページをクリックした瞬間にすべて自動で行われる
  • お客が購入ボタンまで押すと、その瞬間プログラムが自動でヤフオクから対象の商品を買うようにする

こうして、在庫を持たずにノーリスクで商売できるという、夢のツールが完成という訳だ。
ツマミをひねるだけで、自由に売り上げを調節できる。
しかも他人の在庫で。

弊社社長はこの話を持ち帰って来た。そして言う。

技術的に可能か、と。

できるかじゃねえ。やっていいかだろうが。

まず最初にそこを考えると思うのだが。

このひと昔前の、アフィリで大儲けして、タワーマンション最上階住んでます。その方法をあなただけに教えます的な話を聞いた時のような、あの何とも言えない馬鹿げた気持ち、、

社長は「でも違法ではないよね?」と。

確かに違法ではなければやっていいとする思考は、私は嫌いではない。

black listは明確に記述すべし。よって、list になければ white にすべし。

今回の仕様だって、別に禁止してないのに人々が勝手に配慮して実現してないだけかもしれないのだ。

、、、

しかし、何か引っかかる。善意が許さない気がして。正当な理由で何とかやめさせたい。

私は証拠を集める事にした。

メルカリは反戦の姿勢

プラットフォームそれぞれのAPIやポリシーを1つ1つ調査していく。まずはメルカリ。

これはすぐに見つかった。
メルカリはAPIを提供していない。

そして、一応「スクレイピングすればできるのでは」という問いに切り返す用に、ポリシーも確認。これはうまい一文を見つけた。

禁止事項:
「弊社が提供するインターフェイスとは別の手法を用いてサービスにアクセスすること」

メルカリ、deny!

こうしてメルカリは我らの悪事から逃れた。

本丸へ切り込む

次、amazon。今回の悪事のベースになろうとしているプラットフォーム。

メルカリ、ヤフオク、amazon、比較するとamazonが一番高く売れるらしい。せどり業社の間では常識との事。

「無在庫販売」に近い「ドロップシッピング」については明確に禁止している。

しかし焦点の「無在庫販売」については明確な記述がない。amazon出品者同士のForumで、アメリカではOKだが日本ではNG、このドロップシッピングポリシーが無在庫販売についても内包する、など関連する記述はあるが、意見は様々だ。

なので、amazonサポートに問い合わせる事にした。
アマゾン出品者になれば、より充実したサポートを受けられる(可能性がある)とamazon窓口に言われたので、月々5000円のamazon sellerにも入った。

結果は

アマゾンでの無在庫販売についてお尋ねします。

1. 在庫がない状態でアマゾン上で商品を出品
2. その商品がアマゾン上で売れる
3. 2と同時に、ヤフオクなどのフリーマーケットで対象商品を調達する

この手法はOKでしょうか。

後日返事が来た。

Amazonテクニカルサポートにお問い合わせいただきありがとうございます。
お問い合わせいただきました無在庫販売システムについてご案内いたします。

誠に恐れ入りますが、Amazonといたしましては、こちらのシステムにつきまして推奨しておりません。

(中略)

最終的には、出品者様側で法律や規約に基づいた対応をしていただく必要があり、
こちらの件でトラブルが発生した場合はAmazonでは責任を負いかねます。

こちらを踏まえ出品者様でご判断していただきたく存じます。

この文面を読んで、どう判断するのか。

社長は「よし、やろう」
私は「やるべきでない」

感じ方の違い

彼はなぜやろうと思ったか?理由は以下である

  • いちサポートがamazonを代表して回答している訳ではない
  • 具体的に、amazonのどのポリシーに違反するかを明記していない
  • うちはシステムを開発するだけ。納品後は先方が対応する

どうしてもこの開発依頼を受注するつもりである。
ここまで言われると、どれだけ証拠を集めても全て否定する気だろう。
最初からやると決めて掛かっている姿勢である。

私はやるべきでないと思う理由は以下である

  • 現状でポリシーが明記されてないだけ(頻繁に更新される)
  • 開発途中で十分中止が考えられる(この会社前例多し)
  • 普通にこういう開発を依頼してくる先方を信用できない

現に今、先方はメルカリをスクレイピングするツールを使って転売している。
関わりたくない。その一点である。

弁護士

社長の知り合いの弁護士に、この件についてどう思うかを問い合わせてもらった。
すると、「推奨しないでは、判断できない」と言われたらしい。

つまり実行するかは会社判断となる。
そして社長はやると言っている。

私は、勝手にしろと言った。
俺はやらない。この開発に対して何も感じない、別のエンジニアに頼め。

結局依頼はイエスマンの技術部長の元へ行った。

結末

話はつまらないオチで幕を閉じる。

私はそれぞれのプラットフォームを調査していて、amazonを調べた時点で、やめるべきと判断した。

これが開発者が部長に移り、残りのヤフオクを調べると、ヤフオクにはAPIがないと発覚したのである。

確かに、私はヤフオクのAPIについて調べるべきではあった。
しかし、先方はすでにヤフオクのAPI(らしきもの)を使って、ヤフオクから情報を引いていた。

それを実際目の前で見せてくれたが、それを見てまさかやばい方法を使っている、とは(その時の私はまだ)考えなかった。だからヤフオクはAPIがある、で私は話を進めていた(いくらかの非は認める)

結局先方の開発依頼元には思いっきり怒られたらしい。やると言ったじゃないか!と。

さすがにこちらは「あなたがやってるの見てできると思ったから」とは、言わなかったらしい。

この話は、人によって判断、感じ方は違うと思う。

そんな中、結局最後はAPIがないからできない(しない)、となった訳だが、

私は「合法かどうか」「ちゃんと費用は払うか」「実現可能か」というフィルタリング以前に

「信用できるかどうか(やばい人じゃないか)」は最重要のファクターだと考えている。

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