はじめに
ポアソン分布は
P(k)=\frac{\mu^k}{k!}e^{-\mu}
で定義され、「平均発生回数 $\mu$ のもとで、$k$ 回起きる確率」を表します。
前回の記事では、ポアソン分布の中で $p(0)$ が少し特別に見える理由について整理しました。
今回は数式の性質を追う代わりに、$p(k)$ を実際に描いて眺めることで、$p(0)$ とそれ以外の違いを直感的に確認することを目的にします。ポイントはとてもシンプルです。
- $p(0)$ は単調に減る
- $k\ge1$ の $p(k)$ は、一般に同じ確率値に対して複数の $\mu$ が対応しうる
それがグラフだけで見えてきます。
本記事の実装コードは、Google Colab こちら からも試すことができます。
1. 横軸 k・縦軸 確率:μ を変えた分布を見る
まずは、横軸を $k$、縦軸を確率 $p(k)$ とし、$\mu$ を少しずつ変えたポアソン分布を同じ図に描きます。
Python実装コードはこちら
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from math import factorial
from matplotlib import colors, colormaps
def poisson_p(k, mu):
return (mu**k / factorial(k)) * np.exp(-mu)
ks = np.arange(0, 15)
mus = np.arange(0.1, 5.2, 0.5)
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6,4))
norm = colors.Normalize(vmin=mus.min(), vmax=mus.max())
cmap = colormaps["turbo"]
for mu in mus:
ps = [poisson_p(k, mu) for k in ks]
ax.plot(
ks, ps,
"-o",
color=cmap(norm(mu)),
lw=0.8,
alpha=0.7,
markersize=3
)
ax.set_xlabel("k")
ax.set_ylabel("probability")
sm = plt.cm.ScalarMappable(norm=norm, cmap=cmap)
sm.set_array([])
cbar = fig.colorbar(sm, ax=ax)
cbar.set_label(r"$\mu$")
fig.tight_layout()
plt.show()
この図から分かること
この図を見ると、$\mu$ が大きくなるにつれて分布全体が右にずれ、分布が広がり、ピークがおおよそ $k\approx\mu$ に移動していく様子が分かります。
そして重要なのは、$k\ge1$ において 同じ $k$ に対して異なる $\mu$ の分布が重なって見える という点です。つまり $k\ge1$ では、「この $k$ に対してこの確率が得られたから $\mu$ はこれだ」と一意に言えない状況が、色の重なりとして自然に現れています。これは、小さな平均 $\mu$ からの上振れと、大きな平均 $\mu$ からの下振れが同じ $k$ に集まって見えていることに対応しています。
一方で $k=0$ に注目すると、このような情報の混じりが起きていないことも分かります。次の章では、$p(k)$ と $\mu$ の対応関係を、別の視点からもう少し整理して眺めてみます。
2. 横軸 μ・縦軸 確率:p(k) を関数として見る
次に視点を変えて、$p(k)$ を $\mu$ の関数として描きます。
Python実装コードはこちら
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from math import factorial
mu = np.linspace(0, 15, 1000)
def poisson_p(mu, k):
return (mu**k / factorial(k)) * np.exp(-mu)
plt.figure(figsize=(5,4))
for k in [0, 1, 2, 3, 4, 5]:
plt.plot(mu, poisson_p(mu, k), label=f"p({k})")
plt.xlabel(r"$\mu$")
plt.ylabel("probability")
plt.legend()
plt.tight_layout()
plt.show()
この図から分かること
まず目立つのは、$p(0)$ だけが単調に減少していることです。
p(0)=e^{-\mu}
は $\mu$ が増えるほどなめらかに減り、同じ確率値に対応する $\mu$ は必ず一つしかありません。つまり、$p(0)$ は $\mu$ と一対一で対応しています。
一方で $k\ge1$ の曲線はすべて途中で最大値を持つ山型になり、頂点を除けば、同じ確率値に対して異なる $\mu$ が対応する領域を持ちます。その結果、$p(1)$ や $p(2)$ だけを見ても、元の $\mu$ を一意に定めることは一般にできません。
グラフが教えてくれたこと
2つの図を並べて見ると、$p(k)$ の性質はかなりはっきりします。
-
$p(0)$
- 単調
- 重なりがない
- $\mu$ と一対一対応
-
$k\ge1$ の $p(k)$
- 山型の形を持つ
- 頂点を除けば、異なる $\mu$ が同じ確率を与える
- 単独では生成過程を一意に定めにくい
ここで重要なのは、$k\ge1$ の確率が
「小さな $\mu$ からの上振れ」と「大きな $\mu$ からの下振れ」
という 2 つの異なる生成過程がカップルした結果として現れている点です。そのため、同じ $p(k)$ が異なる $\mu$ から自然に生じ、確率の値だけを見ると情報が混ざって見えます。
おわりに
ポアソン分布は、グラフでグラデーションや軸の取り方を変えて眺めてみると、$p(0)$ と $k\ge1$ の振る舞いが明確に異なることが分かります。「何も起きなかった」という事象は一見地味ですが、視覚的には 最も素直で、最も混ざらない情報として現れます。数式で整理すれば、さらに踏み込んだ議論も広がりそうですが、本記事ではこの辺で留めておきます。この記事が、ポアソン分布を感覚的・視覚的に理解するための一助になれば幸いです。
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