要件定義の勉強に『ユーザのための要件定義ガイド 第2版』を読み始めたので、ベンダ向けの箇所中心にまとめてみます。
引用元
第3章 要件定義の全体像
この章に記載されていること
- 要件定義の全体像
上流工程における要件定義の位置付け、プロセス概要、各プロセスで使うドキュメント、要件定義工程の主要な成果物の関連図や基本的な用語の定義等の提示
3.1 要件定義の位置付け
本ガイドにおける要件定義の位置付け、目的を記載。
要件定義は、システム開発の初期に実施される工程であり、前後に企画、基本設計(外部設計)という工程がある。一般的にはこれらの工程を総合して上流工程と表現する。
- 企画工程
- ・新たな業務の全体像と実現に向けたシステム構想の立案
- ・システム化計画、プロジェクト計画の立案
- 要件定義工程
- ・ステークホルダの要求分析と要求に対応するビジネス要求、システム化要求の定義
- 基本設計工程(外部設計)
- ・システムの技術適用要件、ソフトウェア構成要素の要件に詳細化
本ガイドでは、要件定義工程の終了時に、設計から移行・運用準備までのコストを概算レベルで見積もることを想定している。
3.2 要件定義プロセス
第2章で提示された、要件定義 問題カテゴリマップの各項目で
想定する主な実施項目と対応する記載箇所を一覧化している。
3.3 要件定義ドキュメント
後続する設計、実装、テスト工程につなぐ主要な要件定義ドキュメントを一覧化している。
3.4 用語定義
解釈が論議される以下の3項目について、国際標準や日本工業規格を参考に、本ガイドの用語を定義している。
- 要求の分類
- 要求と要件の違い
- 検証と妥当性確認
第4章 ビジネス要求定義(BR)における問題と解決の勘どころ
この章に記載されていること
- ビジネス要求定義における問題、解決のための勘どころ
「BR.ビジネス要求定義」では、大きく 3 つのサブプロセスに分けて作業を行う。
4.1 ビジネス要求の獲得(BR.1)
4.1.1 現状の把握(BR.1.1)
要件定義の入り口として複数の人が業務を共通理解し、他の人に伝達していけるようにするためには、現行業務や現行システムを可視化し、把握することから始める必要がある。
- (1) 業務・システムの状況をさまざまな方法を活用して把握する
-
- 勘どころ① 現行システムから可視化する
- 勘どころ② 全体像を可視化する
- 精通者でない担当者でも理解できるよう、概略化し全体像を文書化する必要がある。
- 勘どころ③ 現行業務を再学習する
- 勘どころ④ 埋もれている既存資料を発掘する
- 勘どころ⑤ 実態と照らし合わせて確認する
- (2) 現状業務・システムを理解・共有する
-
- 勘どころ① プロジェクト全員での共通認識プロセスを実施する
- 勘どころ② 業務運用時の人材の育成を要件定義から始める
4.1.2 問題・課題の抽出(BR.1.2)
- (1) 適切な問題・課題の抽出・分析を行うために、ステークホルダの特性を理解する
-
- 勘どころ① ステークホルダを漏らさない
- 勘どころ② 各ステークホルダの問題・課題認識の違いを認識する
- 各ステークホルダの関心事を意識して臨む必要がある。
- 勘どころ③ ステークホルダ間の対立・関連を見極める
- (2) 問題の原因を分析し解決テーマ(課題)を抽出する
-
- 勘どころ① 問題と課題の違いを意識する
- 勘どころ② 要求の源泉を分析する
- 「なぜ(原因)」を明確にしてから、課題(解決テーマ)を「適切」に設定する。
- 勘どころ③ なぜなぜ分析を行い、真の原因を見極める
- 勘どころ④ 解決テーマ(課題)を適切に設定する
4.1.3 ゴールの抽出(BR.1.3)
- (1) 経営レベルの目的・目標を明確にして共通認識する
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- 勘どころ① 経営レベルの目的・目標、経営施策を明確にする
- 勘どころ② 経営レベルの目的・目標を見極める
- 経営レベルの目的・目標を明確にし、そこに向かった要求を抽出、取捨選択する必要がある。
- 勘どころ③ 経営施策(手段)を見極める
- (2) 業務レベルの目的・目標を抽出する
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- 勘どころ① 目的と手段の違いを意識する
- 勘どころ② 目的と目標の違いを意識する
- 勘どころ③ 目的・目標にはレベルがあることを意識する
- 勘どころ④ 業務レベルの目的・目標を抽出する
4.1.4 手段の抽出(BR.1.4)
- (1) 目的・目標を意識して手段を抽出する
-
- 勘どころ① 手段のレベルを意識する
- 勘どころ② 手段の十分性から他の手段がないか検討する
- より効果的な手段がないかを探ること(新たな要求の抽出)と、複数の案の中からどの手段が目的を達成するために最適な方法かを検討することが重要
- 勘どころ③ 業務手段・システム手段の双方を抽出する
4.2 ビジネス要求の分析(BR.2)
4.2.1 要求の体系化(BR.2.1)
要求の体系化は、「ビジネス要求の獲得」「ビジネス要求の分析」「ビジネス要求の文書化」の3つのカテゴリを横断して実施される。
見直しによって新たな要求が抽出されたり、不必要な要求を取り消したりする。
- (1) 要求全体の整合性を分析し評価する
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- 勘どころ① 要求を構造化する
- 勘どころ② 妥当性の観点から真の目的を見極める
- 勘どころ③ 十分性の観点からより効果的な手段がないか検討する
- (2) 具体的な測定尺度を検討する
-
- 勘どころ① 目標に評価指標を設定する
- 現状値や目標値を測る物差しを「測定尺度」と呼ぶ。測定尺度は、間接的でも良いので、定量的に自らが測定可能なものを設定することが重要である。
4.2.2 要求の具体化(BR.2.2)
本ガイドにおいて、要求の具体化とは
「~したい」という要求(業務レベルの目的や業務手段、IT 手段)を具体化・現実化するための新しい業務の姿を描くこと
その実践のために業務モデルを利用する。業務モデルとは、データ構造のモデル、プロセスのモデル、相互作用のモデルの3つを指す。
- (1) 情報構造の観点から業務を可視化し、新しい業務として具体化する
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- 勘どころ① 管理対象のバリエーションを整理する
- 勘どころ② 管理対象のバリエーションを削減する
- 勘どころ③ 業務ルールと照らし合わせて概念データモデルを描く
- 概念データモデル(ER 図)は業務を表現するモデル
- 勘どころ④ 工夫して業務部門と確認する
- (2) ビジネスプロセスの観点から業務を可視化し、新しい業務として具体化する
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- 勘どころ① 問題・課題、要求と照らし合わせてプロセスモデルを描く
- 勘どころ② 要求との紐付けをする
- 勘どころ③ 業務プロセスのバリエーションを整理する
- 勘どころ④ 業務パッケージの適用を検討する
- (3) 情報とプロセスの両方の観点から業務を可視化し整合性を確認する
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- 勘どころ① 相互作用のモデルを描き、情報、業務プロセスの両面から業務の実現性を確認する
- 勘どころ② 業務パターンを削減する
4.2.3 優先順位付け(BR.2.3)
- (1) 優先順位を明確にする
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- 勘どころ① 客観的な判断基準を明確に定義する
- 勘どころ② 大きな判断と詳細な判断を使い分ける
- (2) 要求を棄却する
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- 勘どころ① 要求を捨てる
- 勘どころ② 要求を先送りにする
4.2.4 要求の交渉(BR.2.4)
- (1) 経営層や業務部門への説明を行う
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- 勘どころ① 説明相手の視点にあった資料を準備する
- 勘どころ② 説明資料作成の計画を立てる
- (2) 要求の絞込み交渉と合意形成は、ポイントを意識して行う
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- 勘どころ① 当事者意識を持たせる
- 勘どころ② 声の大きい人に負けてはならない
- 勘どころ③ セレモニーでないレビューを行う
- 勘どころ④ ステアリングコミッティを用意する
4.3 ビジネス要求の文書化(BR.3)
4.3.1 ビジネス要求の文書化(BR.3.1)
ここでは、ビジネス要求定義のドキュメントの全体像を示す。
- (1) ドキュメントの全体像、関連を明確にする
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- 勘どころ① 成果物相互の関連性を明確にする
感想
間に挟まっているコラムが、寄稿されている方のかなり具体的な事例を扱っていたりしていて読み物として面白いです。
業務がシステムに埋没し、業務部門に業務の精通者が減っているという企業もある。開発当時のことを記憶しているシステム精通者がいなくなり、すでにあるシステムの保守だけを担当した人しか残っていない企業もある。
耳が痛いですね![]()
現行業務を再学習することで、要件定義メンバが単に業務の流れ、システムの使い方を知るだけでなく、潜在する問題、ニーズ、課題を一人称で、あたかも自分事のように考えられるようになる。
ここまでの領域にいたれれば、みんな幸せになれるんでしょうか![]()
管理対象についての記載で、分類の具体的な方法に触れられているのも参考に出来そうだなと思いました。例えば下記。
整理の基本は、「同じか」「違うか」「部分か」である。
管理対象の整理は企業文化に依存するので、結果は企業ごとに異なる。