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ちょっと気持ち悪いけど実はすごいマーケティングオートメーション(MA)のお話し


はじめに

2018年の2月くらいから日々使っているマーケティングオートメーション(MA)ツールのお話しをします。プログラミングやシステム開発とはちょっと違うマーケティング領域のコラムっぽいものです。

普段Qiitaに採り上げられるテーマではありませんが、変わり種のデザートみたいに軽く読んでいただければ幸いです。


人の購買行動(昔)

たとえば、あなたは家のテレビをそろそろ買い換えたいとしよう。あなたに他に何か欲しいモノがあるのであれば、それに置き換えていただいても構わない。

一昔前だと、まず家電量販店に出向いて陳列されたテレビを眺めながら、声をかけて来た販売員に話を聞いてみたりするだろう。ふむふむ、と聞いているうちにだんだんその気になって、結構いい値段のテレビとブルーレイレコーダーと、おまけにネット回線まで契約してしまうのだ。そしてあなたは何パーセント還元などと称したポイントで炊飯器とトースターなんかも貰って何だか得した気になるわけだ。

もうちょっと高額な商品(家とか車とか)だと、営業マンに家まで来てもらってじっくりと話を聞いたり、モデルハウスに行くなり車に試乗するなりして気が済むまで比較して、いくつかのモデルに絞り込んだうえで見積って・・・みたいなプロセスを経て購入に至る。人によってはここがスタート地点とばかり値切りまくったりするだろう。

前置きが長くなったが、従来の購買活動は始めから大半が「人と人とのコミュニケーション」なわけだ。


人の購買行動(今)

ところが、最近はそうとは限らない。というよりも、そうでないケースが一般化している。

まずはネットで探すのだ。そうして、自分にあったデザインや機能を絞り込み、比較し、あるいはレビューを調べてみたりする。買うほどでもないけど気になる、といった段階であればメールを購読したり、ウェブサイトをブックマークしたりしてたまに眺めて妄想したりする。

最近のウェブサイトはその妄想を膨らませる楽しい仕掛けが満載だ。写真や動画コンテンツはもはや当たり前となり、家や車みたいな高額商品に至っては、近年大進化したVR技術のおかげで家に居ながらにして擬似体験ができるのだ。豪邸を建てて中に好きなだけお気に入りの家具を置いて悦に入るも良し、めちゃくちゃ格好いい車でドライブ体験するも良しだ。欲しかったゴルフクラブを気の済むまで振り回すこともできるし、憧れのヨーロッパ旅行だって出来てしまう。

モノを買うというプロセスに「体験(Experience)」が組み込まれると一気に買う気にさせられる。所詮そんなものだ。

そのうちもうちょっと実物を見てみたいとか、手に取ってみたいとか思うだろう。そうなればネット上で「ポチる」のをちょっと躊躇い、店舗に出向いて販売員に話を聞いてみるだろう。なお、その時点で、あなたの心の中には意中の製品は何となく決まっているはずだ。あなたが店舗に出向いでいる時点で「製品を選ぶ」のではなく、「背中を押してもらいに行く」のだから。

この行動心理の変化は新しい理論でもなんでもなく、マーケティング業界ではよく知られた「AIDMA」から「AISAS」モデルへの変容そのものである。(現在はAISASの進化形であるデュアルAISASやDECAXといったモデルもある)

ここまでテレビや家や車(またはあなたが欲しいモノ)で例えてみたが、B2Bだって同じだ。


営業が顧客に会う前に、顧客は購買プロセスの6割を終えている

ビジネスシーンでは「顧客が営業に会うときには、もう意中の製品は決まっている」ということがままある。

営業と会う前に、顧客は散々気がすむまでネットで検索し、比較し、あるいは仮想現実の世界で体感してすでに満足しているのである。もしかしたらその顧客はどこかの製品に決めていて、比較するためだけに色々な会社の営業マンを呼んでいるだけなのかもしれない。

私がかつて地方の営業マンだったときにはまだあまり見られなかった光景だが、今の顧客はとにかくリテラシーが高いし、目も肥えている。

そうなると、顧客が営業に会う前に自社の製品やサービスを知ったり気に入ったりしてもらわなくてはならない。

そんなことができるのだろうか?

「な、何を言っているのかわからねーと思うが・・・」というのはとある人気マンガの名台詞だが、実はすでに実現しているのだ。

それが「メールを使ったナーチャリング」という手法であり、オートメーション化するツールとして世に出回っている。

そしてあなたも知らないうちに体験しているかもしれない。


絶妙なタイミングで売り込む

こんな経験をしたことはないだろうか。

何となく気になったお店や製品があって、資料請求をしてみたりメールマガジンを購読する。メールは本当はいらないけどクーポン欲しさに購読、ということもあるだろう。程なくしてメールがぽつぽつ届き始めるが、大半は真剣に読むこともなくメールボックスのゴミ箱に直行するか、あるいは放ったらかしにされるだろう。

メールなんて所詮そんなものだし、よくある話だ。

ところが、たまたま件名が目についたメールを開いて流し読みをして、ちょっと面白そうな製品のリンクをクリックしてみたりする。すると、翌週のメールがやたら自分好みの情報満載になってきてだんだん気になってくるようになる。数週間そんな状態が続き、だんだん本気で欲しくなってきて価格を調べ始めたりすると妙にタイムリーなタイミングで電話や個別のメールが来て、製品の無料体験を勧められたり、特別割引キャンペーンの案内があったりする。

気持ち悪いくらい絶妙なタイミングである。

でも、あなたは名指しで電話やメールが来たことにはさして驚かないだろうし、強く拒否することもないだろう。なぜならその時点で、あなたは気づかないうちにその製品のファンにさせられているからだ。

実はその裏側には、顧客を「自動」で自社のファンにする仕掛けが動いていて、綿密に計算された顧客心理に則って的確に売り込みをしているのだ。


Pardotというマーケティングオートメーションツール

その仕掛け(ツール)は色々な会社から提供されているのだが、ここではSalesforceから提供されているPardot(パードット)を紹介する。実際の画面を見ていただこう。



これはサンプルで作ったものなのだが、「顧客の行動に合わせて何をするか」を設計する画面である。メールマガジンを開封したり特定のリンクをクリックしたら別のメールを送ったり、スコアという評価ポイントを加点したりする。そして一定のスコアに達したら、その情報が営業マンに通知される。

こういった一連の仕組みをオートメーション化できてしまうのだ。

一定のスコアに達した顧客(=たぶん、そこそこ買う気になっている)を狙って、そこで初めて営業マンが登場したかと思ったらいきなりトドメの一撃(クロージングとか、特別割引キャンペーンの案内とかで背中を押す)を繰り出すというわけだ。

買い手にとってみればそこそこ買う気になった絶妙なタイミングで背中を押しに来るわけだから迷惑でもないし、その時点ですでに売り手の会社や商品のことを知っているわけだから色々と話が早い。お互い好都合である。

営業マンが汗水垂らして歩き回って、買うかどうかわからない不特定多数に電話をかけまくったりチラシやダイレクトメールをばら撒くより遥かに省力化できるし効率がよい。

こう言うと魔法のようなツールであるが、実際にはどんな手段をとったら顧客が買う気になるか(カスタマージャーニーマップ)を可視化して検討したり、そもそも顧客はどんな層で、どんなアプローチ方法が有効なのか考察する(セグメンテーションやペルソナ作成)などといった入念な下準備が必要になる。


営業マン不要論ではない

こんな便利なツールが使いこなせたら営業マンはいらないのか、というと決してそうではない。

商談の終盤にはもっと詳細にわたって運用を確認するなどコミュニケーションが必要になる。エンジニアも絡んであれこれ試行錯誤してみたり、もっと泥臭いところではおカネの交渉ごとだってあるだろう。上席同士を引き合わせて接待だってするし、社運をかけたギリギリの駆け引きやドラマもある。

オートメーションツールに初期営業を任せ、営業マンはクロージングのプロフェッショナルとして専念できるようになるのだ。


おわりに

この題材はQiitaというプロフェッショナルエンジニアが集う場所で需要があるのだろうか?と躊躇ったが、システムインテグレーター企業に身を置くプロモーターが雑多に書いてみるのも面白いかな、と思いまとめてみた。

スレ違いだよ、と叱ってくださるのであればそれはそれで良いと思うが。

営業だけでなくエンジニアの人たちも、自社や他社の技術を「売る」「買う」といったことがあるはずだし、もちろんそれがないとおカネは動かない。その裏側に、いち早く自社を気に入ってくれるお客様を見つける仕掛けがあるということを知っていただければ幸いである。