【初心者向け】主要クラウドサービスマップ!AWS, Google Cloud, Azureの主要サービスを整理してみた
対象読者
- これからクラウドを学びたい方
- AWS, Google Cloud, Azureなどクラウドのサービスが多すぎて、何が何だか分からない…と感じている方
- 非エンジニアだけど、クラウドの全体像をざっくり掴んでおきたいビジネスパーソン
TL;DR
クラウドは「コンピューティング」「ストレージ」「データベース」などの基本パーツを組み合わせてシステムを作ります。この記事では、3大クラウド(AWS, Google Cloud, Azure)の公式情報を基に、主要サービスを機能別にマッピングし、全体像を分かりやすく解説します。※主要なものを中心に説明するので、今回取り上げていないものも実際には含まれます。
はじめに:クラウドで何ができるのか?
「クラウド」とは、インターネット経由で提供されるサーバー、ストレージ、データベース、ソフトウェアなどのITリソース群のことです。
動画配信サービス、オンラインストレージ、スマホゲームの裏側など、現代のあらゆるデジタルサービスは、AWS (Amazon Web Services)、Google Cloud、Microsoft Azure といったクラウドプラットフォーム上で動いています。
自前で物理的なサーバーを購入・管理する必要がなく、必要な時に必要な分だけリソースを借りることができるため、スタートアップから大企業まで幅広く利用されています。
1. クラウドサービスの3つの基本モデル (IaaS, PaaS, SaaS)
具体的なサービスを見る前に、クラウドの提供形態(責任共有モデル)を知っておくことが重要です。
- SaaS (Software as a Service): 完成したソフトウェアを利用します。(例: Gmail, Microsoft 365)
- PaaS (Platform as a Service): アプリを動かすための土台(OSやミドルウェア)が提供され、開発者はアプリ開発に専念できます。
- IaaS (Infrastructure as a Service): サーバーやネットワークといったインフラのみを借り、OSの設定から自分で行います。最も自由度が高いモデルです。
※参考: IaaS、PaaS、SaaS とは (Microsoft)
この記事では、主にエンジニアが利用する IaaS と PaaS に分類されるサービスを紹介します。
2. アプリケーションの実行基盤となるサービス
Webサイトや業務システムなど、あらゆるアプリケーションの土台となる最も基本的なサービス群です。これらは、AWSの全製品、Google Cloud プロダクト、Azure 製品の中でも中核をなすものです。
2.1. コンピューティング - 「アプリケーションを動かすエンジン」
プログラムを実行するための計算リソース(CPU、メモリ)を提供します。
- 仮想サーバー: 物理サーバーを仮想化したもの。OSレベルから制御可能です。
- コンテナ: アプリと実行環境をパッケージ化する技術。軽量で移植性が高いのが特徴です。
- サーバーレス (FaaS): サーバー管理不要で、コードを実行する環境。イベント(HTTPリクエストなど)に応じて起動し、実行時間分だけ課金されます。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure 仮想サーバー Amazon EC2 Compute Engine Azure Virtual Machines コンテナ Amazon ECS / EKS Google Kubernetes Engine (GKE) Azure Kubernetes Service (AKS) サーバーレス AWS Lambda Cloud Run Functions Azure Functions
2.2. ストレージ - 「データを保存する倉庫」
ファイル、画像、バックアップデータなどを保存します。用途に応じて種類を選んで利用します。
- オブジェクトストレージ: 容量無制限で、インターネット経由でデータを出し入れするのに最適。Webコンテンツの配信元やデータレイクとして使われます。
- ブロックストレージ: 仮想サーバーに接続するディスク(HDD/SSD)。OSやDBのストレージとして使われます。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure オブジェクト Amazon S3 Cloud Storage Azure Blob Storage ブロック Amazon EBS Persistent Disk Azure Disk Storage
2.3. データベース - 「構造化されたデータの管理」
アプリケーションが扱うデータを効率的に管理・検索・更新するためのマネージドサービスです。パッチ適用やバックアップなどの手間を軽減して利用できます。
- リレーショナル (RDB): 表形式でデータを管理し、SQLで操作します。トランザクション処理(整合性)が求められる基幹システムに向いています。
- NoSQL: 柔軟なデータ構造を持ち、高いスケーラビリティとパフォーマンスを発揮します。Webアプリのセッション管理などに適しています。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure RDB Amazon RDS Cloud SQL Azure SQL Database NoSQL Amazon DynamoDB Firestore Azure Cosmos DB
2.4. ネットワーキング - 「安全な通信経路の構築」
クラウド上に論理的に隔離されたネットワーク環境を構築し、通信を制御します。
- 仮想ネットワーク: 他のユーザーから分離された、プライベートなIPアドレス空間を作成します。
- ロードバランサー: サーバーへのアクセス負荷を分散させ、可用性と耐障害性を高めます。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure 仮想NW Amazon VPC Virtual Private Cloud (VPC) Azure Virtual Network 負荷分散 Elastic Load Balancing Cloud Load Balancing Azure Load Balancer
3. データ活用とインテリジェンスを加速するサービス
蓄積されたデータを分析し、AI技術を活用することで、ビジネスに新たな価値をもたらします。
3.1. データ分析 (Analytics)
ペタバイト規模のデータを高速に分析するための基盤です。データウェアハウス (DWH) がその中心となります。従来のDBでは処理しきれない大量データをSQLで分析し、BIツールで可視化などを行い、ビジネスにおけるデータ活用を強化していきます。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure DWH Amazon Redshift BigQuery Azure Synapse Analytics BIツール Amazon QuickSight Looker Power BI
3.2. AI・機械学習 (AI & Machine Learning)
機械学習の専門知識がなくても、API経由で高度なAI機能を利用したり、独自のモデルを開発・運用したりするためのプラットフォームです。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure ML開発基盤 Amazon SageMaker Vertex AI Azure Machine Learning 画像認識API Amazon Rekognition Vision AI Azure AI Vision
4. 開発と運用を支えるサービス
4.1. 開発者ツール (Developer Tools)
ソースコードの管理から、ビルド、テスト、デプロイまでの CI/CD (継続的インテグレーション/継続的デリバリー) パイプラインを構築し、開発プロセスを自動化します。また、インフラ構成をコードで管理する IaC (Infrastructure as Code) サービスも含まれます。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure CI/CD AWS CodePipeline Cloud Build Azure Pipelines IaC AWS CloudFormation Terraform on Google Cloud Azure Resource Manager / Bicep
4.2. セキュリティ (Security, Identity, & Compliance)
クラウド環境を保護するための最も重要な分野です。認証・認可、脅威検知、データの暗号化などを提供します。
- ID・アクセス管理 (IAM): 「誰が」「どのリソースに対して」「どのような操作ができるか」を細かく制御します。
- セキュリティ統制: セキュリティ設定の状況を可視化し、ベストプラクティスに準拠しているかをチェックします。
代表的なサービス対応表
分類 AWS Google Cloud Microsoft Azure ID管理 (IAM) AWS IAM Cloud IAM Microsoft Entra ID (旧Azure AD) セキュリティ統制 AWS Security Hub Security Command Center Microsoft Defender for Cloud
5. その他の主要カテゴリ(概要)
その他、特定のユースケースに対応する重要なカテゴリ群です。各社の製品ページへのリンクを参照してください。
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IoT (モノのインターネット):
- デバイスの安全な接続、管理、データ収集を実現します。
- 代表例: AWS IoT Core, Azure IoT Hub
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移行 (Migration):
- 既存のオンプレミス環境から、サーバー、データベース、データをクラウドへ移行支援します。
- 代表例: AWS Migration Hub, Google Cloud Migration Center, Azure Migrate
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管理とガバナンス:
- リソースの監視、ログ収集、コスト管理など、クラウド運用全体をサポートします。
- 代表例: Amazon CloudWatch, Google Cloud のオペレーション スイート, Azure Monitor
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メディアサービス:
- 動画のエンコード、ライブ配信、コンテンツ保護などの処理を行います。
- 代表例: AWS Elemental MediaConvert, Google Cloud Transcoder API
まとめ
クラウドの世界は広大ですが、基本となる機能分類と、各クラウドの対応する代表的なサービスを押さえることで、全体像が見えてきます。
各サービス名のリンク先には、より詳細なドキュメント、料金体系、チュートリアルが用意されています。興味を持ったサービスがあれば、公式情報を参照し、実際に無料枠などを利用して触ってみることをお勧めします。