故あって資格受験の機会があり、「どうせなら学習をAIに付き合ってもらおう」と軽い気持ちで始めたのですが、いつの間にか学習支援システムの実証実験のような形になってしまった話です。
暗記ができない!が、覚えてないと答えられないもの(実務経験などで「こうだった→これが間違い」というケース)がある。さて、どうしようか?
という問題に向き合い、模試で約9割の正答率に到達するまでの記録です。
この記事は学習の取り組み時のチャットログをAIにインプットして、私の体験記としてアウトプットしてもらったものを手動でいじってます。
学習方法の迷子状態
考えてみると、これまでの人生で学習方法そのものを体系的に学ぶ機会がほとんどありませんでした。
普段の私の講義方針として
受講生には「ここは頑張って覚えるしかない」と伝えてみたり、「今覚えなくても、後でまとめておこう」とか「書いている内容は知らなくていいが、こういう仕組みや経緯があった事は頭の片隅に置いてほしい」といった理解度先行型の講義を好む私ですが、試験向けの講義というよりは実務を目指したものです。
つまり、試験対策の観点で見ると相性最悪の指導方針です。
以前受けた実務経験バリバリの範囲で獲得した資格試験では過去問を3周回すという定番の手法で合格しましたが、それも「実務経験があるから問題に慣れれば解けるだろう」という方針によります。
つまり「知らないことを学習しよう」ではなく「知っていることを試験に合わせて組み替えよう」程度でした。
知らないことを学習していた頃の私は何をしていたか?
学校では「何を学ぶか」は詳しく教わりましたが、「どう学ぶか」については各自の工夫に委ねられていました。学生時代であれば、成績の良い同級生に「どうやって勉強してる?」と聞けましたが、社会人になるとそういう「学習の参考例」を身近で見つけるのは困難です。結果として、毎回手探りで学習を進めて、「もっと効率的な方法があるのでは」と思いながらも、具体的な改善策が見つからないというパターンを繰り返していました。
AIと壁打ちしながら進めてみようとするのですが、彼らは提案するというよりは、今のやり方をベースとして改善するというアプローチだったので、0→1の気付きを得られることがありませんでした。
AIエージェントという新しい「学習の先輩」
AIを使って学習を進めると効率的だよ、とはいったものの、学生時代にAIもなければタブレットもない時代で、黒板を見て紙(ノート)に書き写す、という勉強しかしてこなかった世代です。
2025年現在、LLMの性能がかなり上がってきて、これまで身近な同級生や先輩から学んでいた学習のコツを、AIエージェントから教えてもらえるんじゃないかと思いました。学生時代に「あの人の勉強法、参考になるな」と感じた経験を、社会人になってからも得られる環境を作れたらいいなと考えたんです。
「実務経験が(ゼロではないけど)強みではない分野でも通用するのか?」
という、ちょっとした実験です。
実験設計:意図的な制約で仮説を純粋検証
なぜテキストを読まなかったのか
実証実験の純粋性を保つため、私は意図的に公式テキストの通読を避けました。テキストを読んでしまうと、それは「従来型の暗記学習」になってしまい、実務経験活用型学習の有効性を純粋に検証できないからです。
とはいえ、テキストを使わなかったわけではなく、問題集や模試を活用しました。試験の出題傾向を読んだり回答の仕方に慣れていなければ実務経験の有無以前に、問題に適切に取り組めない。もっと言うと、1問あたりに時間をかけすぎると時間が足りなくなる可能性が高いからです。
自分の現在地把握から始めた
AIエージェントを「学習の先輩」のように活用する最初のステップは、自分の現在地をちゃんと把握することでした。
ノー勉状態で模試を解くのが一番力が可視化できますね。
結果は予想通りというか、思っているより自分のことを理解していないことに気づきました。気づいたというよりは自覚した、が近いですかね。うまくいかないだろう→どこが、なぜダメなのか?を自己分析・言語化するところまで棚卸しできました。
とはいえ「IT業界で長年従事してるから、Web関連は得意でしょ」と漠然と思っていましたが、実際に分析してみると、得意な部分と苦手な部分がかなり入り組んでいることが分かりました。
得意分野(経験あり。ただし確信はない):
- Web技術、システム設計
- プロジェクト管理、契約関係
- 業務システム・経営戦略
苦手分野(確実):
- マーケティング実務経験(ほぼゼロ)
- 消費者行動理論(聞いたことはある程度)
- 広告運用の実践的知識(全くの未経験)
この背景をAIエージェントと議論してみたところ、自分では気づかなかった観点がいくつも見つかりました。
AIエージェントとの対話例
私: 「IT経験者がマーケティング検定を受ける場合、どんな点に注意すべきでしょうか?」
AIエージェント: 「技術知識は強みになりますが、以下の点で苦戦する可能性があります:
- マーケティング理論の暗記系知識
- 検定特有の用語定義と実務用語の使い分け
- 検定が求める解釈と実務感覚のギャップ
むしろ強みを活かせる分野は:
- SEO・技術的なWeb制作関連
- 個人情報保護法・契約関係
- システム構成・セキュリティ関連」
例えば、企画者(だと思っていた私の)視点で「これは効果的ではない」と感じる選択肢が、検定では「正解」とされるケースがありそうです。技術者として「こうすれば動く」「こうすれば効率的」という発想に加えて、ユーザー心理も考慮する習慣があるのですが、それが検定の解釈と合わない場合もあるということですね。
おかげで例えばプッシュ型、プル型広告の違いや考え方について疑問がずっと残り続けたというので苦労しました。
最初の難問:思った以上に手強かった現実
実際のサンプル問題で仮説を検証してみました。以下は公式サイトで公開されている典型的な問題です:
問題例:Y社では日本各地をドライブできるオンラインゲームをリリースしている。本商品について、インターネット上で様々な広告を出したが、なかなか効果が得られない。そこで、ページに埋め込まれたタグなどを使ったアクセス解析等により、原因を分析することとなった。
選択肢より、ゲームの体験版の話は「確かにそうだよな」と思えるし、KPIの話も悩む事はないのですが、「複数サーバーをまとめて解析するにはパケットキャプチャ型が有効」とあって、現場ではそうした手法を使う機会がなかったので、検定特有の知識として覚える必要があります。
何故か結構出題されているらしく、試験がアップデートされてないんか🤔と思ったんですが、比較的最近の手法についても触れられている。模試の方が古いのか?うーむ。
とまぁ、こういう問題がぽつぽつ見つかり、検定的には「基本知識」扱いですが、実務との接点が少ない技術について、どう効率的に学習するかが課題になりそうでした。
確信度測定システムの発見:「ポチョムキン理解」を可視化
正解しても不安な問題の正体
一般的な過去問演習では「正解/不正解」で評価されがちですが、実際に勉強を進めてみると、これでは大事な情報が抜け落ちることに気づきました。特に「自信ありで正解したはずの問題が、再度やると間違えている」問題の特定が一番やっかいでした。正解しているので見過ごしがちですが、本番で同じような問題が出たら間違える可能性が高そうなんですね。
そこで、各問題に対して1-6段階の確信度を記録するシステムを導入してみました:
確信度評価システム(私が考案)
確信度評価基準:
6: 実務経験による即答レベル。(注・これで間違えているとヤバい)
5: 高い確信を持って回答
4: 論理的に判断して回答
3: 消去法・推論による判断(注・これで正解の場合はヤバい)
2: 勘に頼った判断
1: 完全に推測
最初は「記録が増えて手間だな」と思いましたが、やってみると思った以上に役に立ちました。特に「正解したけど実は分かってない問題」が見えるようになったのは良い発見でした。
注釈を入れた部分が特にまずく、消去法は問題文や選択肢がヒントになっているケースなので2:勘との違いがほとんどないことに注目。1は事実上の空欄なので2と同じですが、2の勘にすら頼れない場合が1なので意味合いが異なります。(らしいです。AIの評価による)
実務経験活用型学習の効果が見えた
IT業界での長年の経験を持つ私の診断結果で、興味深いパターンが見えてきました。
強い分野(確信度5-6、正答率95%以上):
- 法務・契約関係: 実務経験による高確信度
- 技術基盤・インフラ: 既存知識がそのまま活用
- 個人情報保護法: 法務実務経験で即答レベル
検定解釈が必要な分野(確信度3-4、正答率78%):
- マーケティング基礎用語: 理論的定義の暗記が必要
- 古い技術手法: 現場では使わないが検定では出題
- 検定特有の解釈: 実務感覚と異なる「正解」
未経験分野(確信度1-2、正答率65%以下):
- 広告運用の具体的手法
- 業界特有の慣行・常識
ここで重要な発見がありました。
従来の暗記型学習では「弱い分野を重点的に」となりがちですが、実務経験活用型では「強い分野の確信度を6に固定して時間短縮し勘違いしやすい問題をキャッチアップする」という戦略が有効でした。
慣れた問題(実務経験など)を確実に取って、覚える範囲が広い未知または苦手な問題はほどほどぐらいにしておく方が学習負荷が低減されます。具体的には集中力が続きます。
知らないものを覚える負荷より、知っているものを確認する負荷の方が小さいので当然でした。あとは頻出問題だけ慣れれば半分以上は固い。
AIとの協働で見えた成長パターンと限界
人間だけでは見えない学習の軌跡
この実験で最も価値を感じたのは、AIによる客観的な学習分析でした。一人で勉強していると「今日はできた気がする」「昨日より理解が進んだかも」という主観的な感覚に頼りがちですが、AIは淡々と数値を示してくれます。
初日の正答率約75%からスタート(この時点で合格ラインに到達済み)し、得意分野を固めて頻出問題を抑えて約9割まで到達。ここまできたら100%より9割の状態をテストまで続けられるように様々な問題を解くのでOK。
なお、本番も模試も全40問出題されます。制限時間もこのやり方で学習すると比較的余裕がありました。
AIによる学習進捗分析結果
学習効率の推移:
初日: 約75%
1週間後: 約83%(+8ポイント)
2週間後: 約86%(+3ポイント)
前日: 約89%(+3ポイント)
問題数の都合で初日と前日は同じ問題を使用していますが、問題文は覚えていなかったのでほとんど無視できるはず。
AIの構造化分析の価値と判断の限界
実際にAIが分析してくれたサンプル問題では、選択肢の構造が明確に整理されました:
AIによる選択肢構造分析例
- 選択肢ア(正解): コンバージョン率低下→内部コンテンツ充実化
- 選択肢イ(誤り): ビーコン型 vs サーバーログ型の混同
- 選択肢ウ(誤り): サーバーログ型 vs パケットキャプチャ型の混同
- 選択肢エ(誤り): KPI設定の具体性不足
このような構造化された分析により、単なる正誤判定を超えて理解が深まりました。ただし、この分析をどう活用するかを判断するのは結局人間でした。AIは「なぜ間違えたか」は分析してくれますが、「この知識が実務でどう使えるか」「講師として受講生にどう説明したらいいか」といった応用的な判断はできないようです。
出題品質管理での試行錯誤
AIエージェントを活用した学習で一番難しかったのは出題品質の安定性確保でした。最初の頃は原文を勝手に要約して選択肢が変わってしまったり、「だいたい同じ意味で」と解釈して微妙に違う問題になったりして、「これでは学習効果が期待できない」と感じました。
試行錯誤を重ねた結果、以下のルールを決めました:
AI出題品質管理ルール(私が策定)
品質管理ルール(絶対遵守):
1. 原文完全遵守: 公式テキストから一字一句変更なく出題
2. 選択肢完全表示: 全選択肢を正確に表示、省略・要約禁止
3. 読み込み失敗時: 「手元のテキストで確認してください」と依頼
4. 問題不成立判定: 選択肢外正解の場合は問題不成立として扱う
このルールを徹底することで、学習品質がかなり向上しました。「AIに任せっきりじゃダメで、人間側でのコントロールが大事」ということを実感した体験でした。
実務ギャップ問題:予想外の教育価値を発見
検定理論と現実の12パターン
学習を進める中で、検定の内容と実務の現実が乖離する問題をいくつも発見しました。最初は「検定がおかしいんじゃないか」と思いましたが、よく考えてみると別の価値があることに気づきました。
80問を通じて最も興味深い発見は「実務ギャップ問題」の体系的分類でした:
技術の時代性ギャップ:
検定では「パケットキャプチャ型アクセス解析が重要」となっているが、現在はほとんど使用されない古い技術。
業界慣行のギャップ:
検定では「ゲーム業界では体験版配布が効果的」だが、現在はYouTuber・配信者とのコラボ動画の方が主流。私は実務経験重視で判断して不正解。
理想と現実のギャップ:
検定では「KPIは具体的な数値目標を設定すべき」だが、実務では忙しくて「とりあえずコンバージョン率向上で」となりがち。
講師としての差別化要素に転換
これらのギャップを単なる「検定の問題」として片付けるのではなく、IT教育での差別化要素として活用する戦略を採用しました。例えば、パケットキャプチャ型の問題が出たときは「検定では重要な技術として出題されますが、現在の現場ではほぼ使われていません。ただし、この技術の背景を理解することで、現在主流のタグベース解析の仕組みがより深く理解できます」というような説明ができるようになりました。
この発見は、技術研修講師業務での大きな差別化要素になると確信しています。
AI活用学習の現実:期待と制約のバランス
予想以上に制約が多かった現実
この体験を通じて、AI学習支援への過度な期待は禁物だと実感しました。
情報アクセスの根本的制約:紙媒体テキストは読み込めません。古い参考書や手書きメモなど、デジタル化されていない貴重な情報にアクセスできないのは想像以上に痛手でした。
学習の偏りリスク:問題演習中心になりがちで、理論的基盤が薄くなります。「AIが提案する範囲」に思考が限定される危険性も感じました。
品質管理の難しさ:前述の出題品質問題からも分かるように、人間側でのコントロールが必須です。AIに任せっきりでは、むしろ学習効果が下がる可能性があります。
それでも価値があると感じた理由
こうした制約を認識した上でも、AI活用学習には確実な価値があります。ただし、魔法の解決策ではなく、従来学習を補完するツールとして位置づけることが重要だと感じています。
人間とAIの役割分担(実体験による整理)
AIが得意だった分野:
- 客観的なデータ分析と可視化
- 学習パターンの発見
- 選択肢の構造化分析
- 実務経験との関連付け提案
人間の判断が重要だった分野:
- 実務ギャップの教育的価値の見極め
- 学習戦略の実際の調整判断
- モチベーション管理
- 講師業務への応用方法の考案
88.8%の成果と講師としての価値向上
数値以上に重要だった質的な変化
全体の学習完了時点での成果は、正答率約9割で当初目標を上回りました。でも、数値以上に重要な成果がありました:
- 学習技法の確立:確信度記録、実務ギャップ分析など6つの技法をマスター
- 実務ギャップの体系化:12パターンの完全分類と対処法を確立
- 論理的推論力の向上:未知分野でも根拠を持って判断できるようになった
- 講師準備の完了:差別化要素を体系的に整理、指導準備完了
特に「一人で勉強しているときの孤独感が軽減された」のは予想外の効果でした。
講師業務への影響
この経験により、実務ギャップの体系的分析ができるようになり、指導での補足ポイントが明確になりました。また、AI学習支援ツールの効果と限界を実体験で把握したことで、受講生への的確なアドバイスができそうです。
同じような背景を持つ受講生に対して、単なる座学ではなく「実務と理論の橋渡し」ができる講師を目指していきたいと思います。
次世代学習システムへの展望
今度は作ってみたくなった
この経験をしていると、「これ、他の人にも使えるんじゃないか」と思うようになりました。現在の学習環境は私個人に最適化されすぎて、他の人への適用が困難だし、手動運用に依存する部分が多くて継続が大変です。
これらの課題を解決するため、以下のシステム化を検討しています:
構想中の次世代学習システム
小テスト自動作成機能:
ユーザーのプロンプトに応じたテスト自動作成、OpenAI/Anthropic/Gemini API対応、プロンプトエンジニアリングによるコンポーネント化。
マイクロサービス型API設計:
既存LMSへの組み込み対応、学習支援機能の外部利用、個人利用から企業利用まで対応。
診断システムの汎用化:
6段階評価システムの標準化、「偶然正解」の自動検出、背景経験との相関分析。
まだ構想段階ですが、今回の経験を活かして何か作ってみようと思っています。
振り返り:一人学習の孤独感から始まった実験
今回の経験で一番印象に残ったのは、「学習方法について相談できる相手がいる」ということの価値でした。学生時代は友達と「どうやって勉強してる?」という話ができたけど、社会人になるとそういう機会がありません。
AIを使うことで、久しぶりにそういう相談ができました。別にAIが魔法の解決策をくれるわけじゃない。でも一人で考え込むより明らかに効率が良かったし、何より「学習の孤独感」が大幅に軽減されました。
継続実験への意欲
**「実務経験があれば最小限の学習で合格可能」**という仮説は、約9割という到達レベルを見る限り、一定の妥当性があったと考えています。ただし、これは数十問規模という制約下での結果であり、本当の検証は実際の受験結果を待つ必要があります。
これからも色々な資格試験で同様の実証実験を続けて、実務経験活用型学習の有効性をさらに検証していこうと思います。特に次回の技術系資格試験では、テキスト全体にAIがアクセス可能な環境での実験を予定しています。
今回得られた知見をもとに、より精緻な学習システムの構築も視野に入れています。軽い気持ちで始めた「一人学習の寂しさ解消プロジェクト」が、思いがけず次世代LMS設計思想の実証実験に発展した経験を、今後も活かしていきたいと思います。
技術の進歩で、個人でも質の高い学習環境を作れる時代になったのは確かです。ただし、その恩恵を最大化するには、AIの能力と限界を正しく理解することが前提になると感じています。
追記(2025年7月):
この記事を書いた後、実際にネットマーケティング検定を受験して合格しました。
現在は、この経験を活かして小テスト自動作成システムの開発を進めています。
参考リンク: