Databricks認定生成AIエンジニアアソシエイト
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『Databricks──ゼロから触ってわかった!AI・機械学習エンジニア基礎 非公式ガイド』
Databricksでの プロンプト設計・RAG構築・モデル管理・ガバナンス を扱うAIエンジニアの入門決定版。
生成AIとデータエンジニアリングの橋渡しに必要な“実務の型”を体系化しています。
資格本ではなく、実務基盤としてAIを運用する力 を育てる内容です。
RAG(Retrieval-Augmented Generation, 検索拡張生成)の基礎
最小RAGチェーンの仕組み
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、生成AIを実務で活用する上で最も重要なアーキテクチャの1つです。しかし「RAGは複雑」という誤解を持たれがちです。実際には、RAGの中核は驚くほどシンプルな構造で、わずか3ステップだけで本質的な動きを再現できます。この簡易版を 最小RAGチェーン と呼びます。
Databricks認定生成AIエンジニアアソシエイトでは、この最小RAGチェーンの理解が非常に重要な位置付けを持っています。なぜなら、RAGの複雑さを取り除いた“最小構成”を理解することで、どの工程が精度に影響し、どこを最適化すべきかが一気に可視化されるからです。
本記事では、最小RAGチェーンの仕組み、構成、Databricksでの実装までを一気に解説します。
1. 最小RAGチェーンとは?RAGの本質を最短構成で理解する 🔍✨
RAGの本質は次の一文に尽きます。
「必要な情報を検索してLLMに渡し、その情報を参照して回答させる」
しかし現実の実装では前処理・チャンク化・Embedding選定・メタデータ管理・スコアリングなど、多数の工程が追加されます。そのためRAGは複雑に見えます。
そこで、まずRAGの仕組みを「必要最小限の要素」だけに絞り込んで理解するのが最小RAGチェーンです。
最小RAGチェーンは次の3つだけで成立します。
- 質問をEmbedding化して検索
- 検索結果をプロンプトに入れて文脈を形成
- LLMに回答させる(生成)
これだけで、RAGの基本動作を完全に再現できます。
● 最小RAGが重要な理由
- RAGの全体像が一瞬で理解できる
- どの工程を改善すれば精度が向上するか可視化される
- 複雑な構成も「この3ステップの応用」と考えられる
- Databricks試験問題の理解が圧倒的に進む
企業利用での“RAG導入プロトタイプ”も、この最小構成から始めることで、無駄のない設計ができます。
2. 最小RAGチェーンを構成する3ステップ:Embedding検索・文脈生成・回答生成 📚➡️🤖
① Embedding検索
最小RAGチェーンの出発点は「質問をEmbedding化すること」です。
- 質問を数値ベクトルに変換
- Vector Searchで意味的に近い文書を検索
- 上位のチャンクを取得
この段階で検索精度が決まり、RAG全体の成果の半分がここで決まります。
Embedding品質・チャンク戦略・前処理が重要になります。
② 文脈生成(Context Creation)
検索で取得した文書を、LLMに渡すためにプロンプトへ挿入します。
- 必要な箇所だけを抜き出す
- 文脈として読みやすい形に整える
- テンプレート化された指示と組み合わせる
たとえば以下のような構造です。
質問:
{ユーザー質問}
参考情報:
{検索されたチャンク}
これに基づいて回答してください。
yaml
コードをコピーする
RAGの精度は「どの情報を」「どのような形で」プロンプトに入れるかで大きく変わります。
③ 回答生成(Generation)
最後に、LLMが文脈を参照して回答を生成します。
このステップは単純ですが、検索結果が誤っていたり文脈が不十分だと、正しい回答は生成されません。
● 最小RAGチェーンは驚くほど実用的
実際の企業ユースケースでも、最小RAGチェーンだけで十分な精度が得られる場合も多く、業務適用の初期段階では「最小RAG→必要に応じて拡張」というアプローチが最も効率的です。
3. Databricksで実現する最小RAGチェーン:シンプルかつガバナンス強化の設計 🚀🔐
Databricksは、最小RAGチェーンを実装する上で理想的なプラットフォームです。必要な構成要素がすべて揃い、レイクハウス上で統合されているため、RAGの全工程をひとつの基盤で扱えます。
● Databricksでの最小RAGフロー
- ドキュメント取り込み(Delta)
- Embedding生成(モデルサービング or ノートブック)
- Vector Searchインデックス作成
- クエリ検索(Vector Search API)
- LLMに渡して回答生成
ここまでを最小構成として一体化できます。
● Databricksが強い理由
- 前処理〜Embedding〜Search〜生成まで統合
- Unity Catalogでガバナンス・アクセス制御
- 再現性あるパイプライン化(Workflow)
- 再インデックスやアップサートが容易
- LLMサービングと組み合わせた一気通貫のRAG構築
RAGは“複数サービスを寄せ集めて組み上げる”方法もありますが、Databricksのように単一基盤で統合されていることには大きな価値があります。
特に実務では、再現性・ガバナンス・監査が非常に重要だからです。
まとめ ✨
最小RAGチェーンは、RAGの複雑な構造を「検索 → 文脈 → 生成」という本質だけに絞り込んだ構成です。
- Embedding検索
- 文脈生成
- 回答生成
この3つが理解できれば、RAGの改善ポイントや実装戦略が明確になります。
Databricksは最小RAGチェーンを強力に支えるプラットフォームであり、前処理〜検索〜生成まで一体化された強力なAI基盤を提供します。
RAGの基本を理解し、Databricksでの実装方法を押さえることで、企業AIプロジェクトを確実に前進させる力を得られます。
