1. イーサネット(Ethernet)
イーサネットはコンピュータネットワーク規格の1つであり、現在のLANで最もよく使われている。
1.1. イーサネットの概要
イーサネットの基本仕様は、OSI参照モデルの物理層とデータリンク層を規定している。
LANの標準化を推進するIEEEでは、IEEE 802.3でイーサネットを標準化している。
1.2. MAC副層とLLC副層
IEEEの仕様では、データリンク層をMAC副層とLLC副層の2つに分け、他のLAN規格と共通する部分については802.2で標準化している。
1.2.1. MAC副層
MAC(Media Access Control)は媒体アクセス制御の意味。
ケーブルなどの媒体に「どのようにフレームを転送するか?」
を定義している。
1.2.2. LLC副層
LLC(Logical Link Control)は論理リンク制御の意味。
イーサネットやトークンリングなどLANの種類に依存せず、ネットワーク層のプロトコルから同じ手順で利用できるように定義している。
1.2.3. IEEE 802の規格
OSI参照モデル | IEEE 802 |
---|---|
データリンク層:LLC副層 | IEEE 802.2 |
データリンク層:MAC副層 | IEEE 802.3、802.5、802.11など |
物理層 | MAC副層と同じ |
1.3. イーサネットフレーム
タイプ:上位層のプロトコルを識別
長さ:データフィールドの長さ
802.2ヘッダ:IEEE 802.2規格でリンクするサービスの識別情報
FCS:フレームのエラーチェック
1.4. MACアドレス
イーサネットや無線LANにおいてフレームの送信元や宛先を識別するためのアドレス。
コンピュータのNICやネットワーク機器のポートなどにあらかじめ割り当てられているため、「物理アドレス」とも呼ばれている。
MACアドレスは48ビットであり、:(コロン)
や-(ハイフン)
で区切って16進数で表記する。
1.4.1. MACアドレスの構成
48ビットのMACアドレス = 24ビット(OUI) + 24ビット(製品番号)
※ OUI(Organizationally Unique Identifier)
MACアドレスをもつ機器のベンダを表す識別子を意味。
1.4.2. MACアドレスの種類
ユニキャストMACアドレス
マルチキャストMACアドレス:0100ー5E00ー0000 〜 0100ー5EFFーFFFF
ブロードキャストMACアドレス:FFFFーFFFFーFFFF
1.4.3. イーサネット規格の命名規則
100:通信速度(100Mbps)
BASE:伝送方式(ベースバンド方式)
TX:ケーブルの種類(ツイストペア+ANSIの技術)
2. CSMA/CD
IEEE 802.3の標準の媒体アクセス制御方式。
2.1. CSMA/CD
※ Carrier(キャリア)
ネットワーク媒体上に流れている信号。
2.1.1. CS(Carrier Sense、キャリアセンス)
伝送媒体(ケーブル)上に信号が流れていないか確認する。
信号が流れていない状態をアイドルといい、ホストはアイドル状態ならデータの送信を行う。
2.1.2. MA(Multiple Access、多重アクセス)
アイドルの状態を確認すると、ネットワーク上のどのホストも送信を開始することができる。
全てのホストに対して送信権利が平等に与えられていることを表す。
2.1.3. CD(Collision Detection、衝突検出)
2台以上のホストが同じタイミングでキャリアセンスを行ってデータを送信すると、衝突(コリジョン)が発生する。
衝突の発生を検出することを表す。
2.2. 衝突の処理
2.2.1. CSMA/CD:バックオフ
衝突検出
送信停止
全てのホストに32ビットのジャム信号を送信
ホストはランダムの時間を待機
待機時間後、再送信
コリジョンが発生すると、またバックオフを行う
2.2.2. 全二重のイーサネット
CSMA/CDによって、コリジョン制御をしながら共有ネットワークで通信することができる。
しかし、ホストの台数が増えてネットワークのトラフィック量が多くなると、衝突の発生率が増加し、再送信を行っても衝突する可能性は高くなってしまう。
この問題を回避するのが全二重通信である。
UTPケーブルの複数のツイストペアを利用して、送信と受信を同時に行う。
全二重通信するには集線装置にスイッチはぶを用いて配線する必要がある。
3. ネットワーク機器
ネットワーク機器はOSI参照モデルの階層に疑って、エンドユーザ間のデータを中継する。
3.1. ネットワーク機器の位置付け
OSI参照モデル | 対応するデバイス |
---|---|
ネットワーク層 | ルータ、レイヤ3スイッチ |
データリンク層 | ブリッジ、スイッチ |
物理層 | リピータ、ハブ |
3.2. レイヤ1デバイス
リピータ及びハブ(レイヤ1デバイス)は、フレームを単なる電気信号として扱う物理層で動作するデバイス。
通信の距離が長くなると、伝送途中にノイズや減衰の影響で電気信号の波形が歪んでしまう。
歪みがひどくなると、受信側で解釈できずに正しいビット列に戻せないことがある。
3.2.1. リピータ
電気信号を増幅し波形を再生して中継を行う。
3.2.2. ハブ
ハブは、リピータの機能を持つ集線装置であり、他のタイプのハブと区別するためにリピータハブとも呼ばれている。
ハブは複数のポートをもち、あるポートで受信した電気信号を増幅して波形を再生し、受信ポートを除く全てのポートに信号を中継する。
3.2.3. コリジョンドメイン(セグメント)
イーサネットのネットワークにおいて、電気信号の衝突が伝わる範囲のこと。
リピータを用いてバス型ネットワークを拡張したり、ハブをカスケード接続したりすると、コリジョンドメインの範囲は拡大する。
コリジョンドメインが大きくなると、衝突率が高くなり、ネットワークパフォーマンスが低下する。
※ かスケート接続
すつ属するポートの数が不足した場合、ハブを相互にカスケード接続(多段接続)することによってネットワークを拡張することができる。
ただし、CSMA/CDのスロット時間の制約があるため、カスケード接続の段数は決められている。
3.3. レイヤ2デバイス
ブリッジ及びスイッチ(レイヤ2デバイス)は、MACアドレスを使用してフレームの中継を行うデータリンク層で同作するデバイス。
3.3.1. ブリッジ
ブリッジは、コリジョンドメインが拡大した時の問題を解決するために登場。
フレームのMACアドレスを基に、セグメント間でフレームを中継やフィルタリングを行う。
ブリッジはMACアドレステーブルにMACアドレスに対応するポート情報を保持する。
3.3.2. スイッチ
スイッチは複数のポートを持ち、たくさんのセグメントを相互に接続する集線装置。
3.3.3. ブリッジとスイッチの違い
ブリッジ | スイッチ | |
---|---|---|
フレーム処理 | 中継or抑制を判断 | マルチポート(送信元まで識別) |
転送速度 | 低速(ソフトウェア) | 高速(ハードウェア) |
ポート密度 | 低い | 高い |
3.4. レイヤ3デバイス
3.4.1. ルータ
ルータは、IPアドレスなどの論理アドレスを使用して効率的にパケットを中継するネットワーク層で動作するデバイス。
パケットのIPアドレスを基に、ルーティングテーブルを参照して最適経路を選んで転送する。
それをルーティング
という。
※ ルータの機能
1. 複数の経路から最適経路を選んで、効率的な転送を行う。
2. 異なるネットワークを相互に接続する。
3. ブロードキャストドメインを分割する。
ルータはルーティングテーブルに、ネットワークに対応する経路情報
を保持している。
3.4.2. レイヤ3スイッチ(L3スイッチ)
レイヤ2スイッチの機能とレイヤ3のルーティング機能を1つの筐体で高速に実現するネットワークの器機。
3.4.3. ルータとれいや3すいっちの比較
ルータ | レイヤ3スイッチ | |
---|---|---|
転送速度 | 低速(ソフトウェア) | 高速(ハードウェア) |
インターフェイス | イーサネット、シリアルなど | イーサネット |
ポート単価 | 高い | 安い |
3.4.4. ブロードキャストドメイン
イーサネットなどのネットワークにおいて、ブロードキャストのフレームが届く範囲を意味。
レイヤ1とレイヤ2のデバイスはブロードキャストのフレームを中継する。
しかし、ルータはブロードキャストを他のインターフェイスに転送しない。
このため、ルータはポート単位でブロードキャストドメインを分割。
3.5. デフォルトゲートウェイ
通信相手が別のネットワークにいる場合、パケットはルータに転送してもらう必要がある。
ルータは異なるネットワークへの「出入口」となり、これをデフォルトゲートウェイという。
3.6. ネットワーク機器のまとめ
各ネットワーク機器の特徴と、ホスト間の通信におけるOSI参照モデルの関係
階層 | 機器 | 特徴 | コリジョンドメインの分割 | ブロードキャストドメインの分割 |
---|---|---|---|---|
L3 | ルータ、L3スイッチ | IPアドレスを基に経路を選択してパケットを転送 | O | O |
L2 | スイッチ、ブリッジ | MACアドレスを基にフレームを転送 | O | X |
L1 | ハブ、リピータ | 電気信号を増幅して中継 | X | X |
4. レイヤ2スイッチング
レイヤ2スイッチングとは、データリンク層でフレームを効率的に転送するためのスイッチングテクノロジー。
4.1. スイッチの基本機能
MACアドレスの学習
フィルタリング
全二重通信
マイクロセグメンテーション
4.2. MACアドレスの学習
スイッチは、内部にMACアドレスとポートの対応表であるMACアドレステーブルを管理している。
このテーブルには、各ポートとポートに連結されているホスト(ステーション)のMACアドレスが記録されている。
シスコではCAMテーブル(Content-Addressable Memory Table)と呼んでいる。
MACアドレステーブルの作成手段は2つある。
動的(ダイナミック):自動学習
静的(スタティック):手動登録
4.2.1. 動的なMACアドレス学習
1. スイッチ起動直後(MACアドレステーブルは未学習)
スイッチに電源の投入したら、MACアドレステーブルには何も登録されていない。
2. MACアドレス学習
スイッチはフレームを受信すると、L2ヘッダを分析してMACアドレステーブルに登録する。
* MACアドレステーブルに登録可能なアドレス数には限りがある。
* 動的に学習されたMACアドレスは、エージングタイムが過ぎたら削除される(デフォルト300秒)。
4.3. フィルタリング
スイッチはフレームを受信するとMACアドレステーブルを調べる。
アドレスがある場合、それに関連付けられているポートだけに転送する。
その処理をフィルタリングという。
4.4. フラッディング
受信したパケットの宛先MACアドレスがテーブルにない場合、受信したポートを除く全てのポートにフレームを転送する。
その処理をフラッディングという。
4.4.1. フラッディングが行われる時点
宛先MACアドレスが未学習のユニキャストフレームの場合
ブロードキャストフレームの場合
マルチキャストフレームの場合
4.5. 全二重通信
データの送信と受信を双方から同時に行える通信方式。
同時に行えない通信方式は半二重通信という。
全二重通信には衝突が発生しないため、CSMA/CDに夜アクセス制御は不要。
4.5.1. 全二重通信に必要な条件
双方の機器が全二重通信をサポート
スイッチポートで接続
ポイントツーポイント接続
4.5.2. マイクロセグメンテーション
1つのスイッチポートにホストを接続してコリジョンドメインを最小分割すること。
4.5.3. オートネゴシエーション
接続している2つのポート同士が、通信規格や通信モードを自動的に判定して最適な設定で通信を行うための機能。