はじめに
本記事では植田文也氏、誉田雅彰氏によって書かれた「隠れマルコフモデルによるサッカー選手のポジショニングパタンの分析」を読んだ私なりの解釈と、感想を述べていくものとします。
(原著論文リンク:http://jcoachings.jp/jc2016/wp-content/uploads/2017/11/01.pdf)
※【右クリック】→【URLを開く】で確認できます。
論文の内容
従来のサッカーにおける戦術分析の研究を見てみると、定量的でなかったり、選手のフィールド内の座標に注目し分析しており、戦術的な面で分析ができていなかったようです。
今回取り上げた論文は、攻撃中に見られた攻撃シーンを有効な攻撃であるか、非有効な攻撃であるか分類することを目的に学習を行います。
識別精度が高いモデルを作ることができた時以下のようなことがわかると筆者は主張しています。
・どういったパラメータが有効な攻撃か否かを決定することに重要か
・有効な攻撃に影響力のあるパラメータを知ることで、戦術面での指導ができる。
状態:選手のとボールの位置がどのようであったか(状態数はあらかじめ決めておく)
とした時
状態遷移率:ある状態からある状態へ変化する確率
生起確率:各状態から有効な攻撃になる確率、非有効な攻撃になる確率(相手にボールを奪われる等)
が未知です。これらはBaum-Welchアルゴリズムを用いて学習されるため、学習された時系列データの尤度が最大となるよう(最もらしい)パラメータを推定します。
実験として1試合を記録し、分析を行ったところ識別精度に関しては8割ほどの精度が記録され、状態について図示をしてみると、最もらしい有効な攻撃(サイドから攻め、中央にスペースを空ける)などが含まれていました。
読んだ後の感想と考察
隠れマルコフモデル(以下HMM)を用い行なっています。
HMMについては下記リンクの記事がとてもわかりやすかったので紹介させていただきます。
(隠れマルコフの具体例:https://satomacoto.blogspot.com/2008/07/blog-post.html)
HMMはどのように状態があり、どのような確率で遷移しているかは不明だが、状態からアウトプットされる観測データを観察することで、各状態の遷移率と生起確率を推定できるというものでした。(原則として状態がどのようなものかは推定できません。)
しかし、今回は有効な攻撃であるか否かに影響があるのは選手とボールの位置だという経験則から、状態とは選手とボールの位置だという強い予想が立てられます。
今回の論文で素晴らしいと思ったのはこの工夫でした。
また、状態が設定できないという事は、一見デメリットに感じるかもしれませんが、状態を人間の経験則などを生かさずデータで表現ができるというメリットにもなり得ます。
このように結果の推定のみに焦点を置くのではなく、パラメータに注目して機械学習を行えばより応用的なフィードバックが得られると、とても勉強になりました。