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GAS(GoogleAppsScript)で「社内通貨」を作ってみた話

「働き方改革」及び「タレントマネジメント」の推進のため、GAS(GoogleAppsScript)を使って、社員間で流通させることを目的とした「社内通貨」を作ってみたのですが、いまいち社内での反響が少なくて寂しいため、反応がもらえそうなQiitaにレポートを書いてみようと思います。もしもピンと来た方は何らかの反応を頂けますと幸いです。

(2019.5.16追記)
本記事に多くの反響をいただきありがとうございます。
いただいたご質問の中でも多かった、「メリットデメリット」について詳しく別記事にて執筆を行いました。
もしよろしければこちらも合わせてご覧ください。

社内通貨・ピアボーナス制度導入のメリット、デメリットについて
https://productivityresearch.net/personnel-system/140/

※注意事項

検討はしていますが、現状はまだ「ブロックチェーン」は使っていませんので、そのあたりのナレッジを求めている方のご期待には添えないと思います。あくまでも、「仮想通貨」の仕組みを通じて社内の働き方改革にどのようなアプローチができるのか、という試みとなります。

GASで仮想通貨ってなんだ?

まずはじめに、GASで仮想通貨を作るとはどういうことなのか、仕組みについてのお話です。

一つのスプレッドシートが台帳

ビットコインなどの仮想通貨で利用されている「分散型台帳」においては、どこか特定のサーバーに中央となる台帳があるのではなく、世界中の参加者で台帳を共有し、常に同期を取り合う事で、正当な取引であることを確認しながらチェーンが繋がっていきます。

一方、今回の社内通貨においては、特定の一つのスプレッドシート上に、各社員の保有コイン数や取引履歴などの情報がすべて記録されています。ブロックチェーンを利用して取引の正当性を確認しながら記録していくようなやり方ではなく、送信リクエストがあったものはすべて正当なものであるとしてそのまま記録しています。パブリックなブロックチェーンは、いわば信頼の置けない人と信頼できる取引を実現する仕組みですが、今回の場合は参加者が社員だけというものもありますので、原則としてみなさん信頼できるということを前提にしています。

仮想通貨を動かすにあたり、分散型台帳を使う方式と一つの台帳を使う方式がどちらが優れているのかという話をするつもりはございません。ただ、今回お話する社内通貨においては、台帳は中央のスプレッドシート一つであるということをご認識いただければと思います。
(本当は分散型にしたかったけれど私の技術不足で諦めたのは内緒です)

半中央集権

ビットコインなどの仮想通貨が、特定の管理者を置くことなしに流通し続ける様が、「非中央集権」と呼ばれることはあります。一方、今回の社内通貨は「中央集権」と「非中央集権」の性格の両方を兼ねそろえていることから、「半中央集権」というのがふさわしいのではと考えています。

中央集権的部分

中央集権的な部分というのは、先ほども書いた通り、台帳が分散しておらず一つのスプレッドシートとなっていることです。一つのスプレッドシートのみに情報が記録されているということは、そのスプレッドシートの編集権を持つ管理者の不正に対して全くノーガードであることを意味します。現時点で管理者の私に不正を働くインセンティブが少ないため、台帳の改ざんなどを行う意図はありませんが、将来的に社内通貨の経済圏が広がるなどした場合にどうなるかは不明です。

また、社内通貨はできるだけ実際の経済に沿うことを意識しているため、中央銀行による金融政策や政治による財政政策のようなものも行われています。詳しくは後述しますが、このような仕組みにより、インフレ率の操作や所得再配分などが行われるようになっています。このことにより、直接台帳を書き換えるような不正行為だけでなく、管理者のさじ加減で管理者の有利な政策が行われ、一般ユーザーが実質的に不利な立場に追いやられる可能性も否定できません。

一方、中央集権の良い点としては、社内通貨の経済圏の秩序が保てなくなるようなプログラム上のエラーや好ましくないユーザーへの対応がスムーズに行えることが挙げられます。万が一、送受信ができなくなったり保有コイン数がおかしくなったりするバグが発生した場合でも速やかにプログラミングレベルで対処が可能です。

非中央集権的部分

非中央集権的部分と言えるのは、コインの送受信・コインの新規発行・取引手数料徴収・資産税徴税といった経済圏を維持するための仕組みがGASにより完全に自律して動作し、人の手が一切介在しない点にあります。

社内通貨という性質上、運営者が運営手数料のようなものをもらって工数をかけて仕組みを維持することはできず、極力手を動かさずに経済が回るような仕組みに仕上げることが重要です。働き方改革を進めるための仕掛けであるのにもかかわらず、そこに人手がかかっていては本末転倒です。

このような、中央集権的部分と非中央集権的部分の両方を兼ねていることが、半中央集権と呼んでいる所以です。半中央集権というネーミングについてはあまり重要ではないですが、社内通貨の仕組みを効率的に動かすという点を考えると、このようなやり方がベストプラクティスであると考えています。

社内通貨の機能

続いて、社内通貨の持つ機能のお話です。

送受信

GASベースで開発され、ブラウザ上で動くWebアプリの「ウォレット」を通じて、他のアカウントを持つ社員へフリーコメントともに自身の保有数以下のコインを送金することができます。コインを受信した方へは、「誰からいくらのコインが、どのようなコメントとともに」送金されたのかのメールが届きます。

また、任意のコイン数を設定し、「請求書」を発行することもできます。請求書はQRコードの形で提供され、スマホから読み取ることにより支払いが簡単にできます。社内通貨での支払いが求められる「有料」の社内セミナーなどを想定した機能です。

取引ログ閲覧

行われたコインの送受信はすべてのユーザーに公開されます。このことにより、誰が誰にいくらのコインをどのようなコメントともに送金したのかが全員に共有されることになります。多くの仮想通貨においても、ブロックチェーンをたどることによりこれと同じようなことができますので、それ自体は特筆することではないですが、このように取引ログが公開されている、ということがこの社内通貨にとって重要な意味を持ちます。詳しくは後述します。

PoI(Proof of Importance)

PoIとは、仮想通貨界隈の方であればご存知の方も多いでしょうが、NEMというプロトコロルで採用されているアルゴリズムです。詳細は私が書くよりもこちらをご覧いただいた方が良さそうです。
http://nemmanual.net/proof_of_importance.html

社内通貨におけるPoIアルゴリズムとは、コインの送信数や受信数などのパラメーターに応じて算出される重要度に基づき、毎日正午に新規発行されるコインの配布を受けられる、というものです。具体的にはとあるユーザーの重要度が10%で、新規発行数が500コインである場合は、毎日正午に50コイン(500コイン×10%)が獲得できます。

このような仕組みがあることにより、たくさん送受信を行った人はそれだけ毎日自動で多くのコインを獲得することができるため、ネットワークの活性化につなげることができます。また、重要度の算出にあたっては、新しい取引履歴ほど重み付けをしているため、毎日取引を行い続けるアクティブユーザーに有利な設計になっています。

正直なところ、社内通貨におけるPoIは単なるコイン配布ルールに過ぎないため、本家PoIとは全く性質が異なっているのですが、私が個人的に本家PoIに感銘を受けた人間であるということと、なんとなく響きがかっこいいので名前ごとパクらせていただいています。

取引手数料

PoIを採用しているため、多くのコインを保有することを望む場合にはできるだけ多くの送信を定期的に行うことが重要です。そのため、過度に少ないコインをばらまくように送金するという戦略に合理性が出てしまうため、送金にあたっては定額の取引手数料を課すことにしてます。このことにより、ばらまき戦略にはコストがかさむことになり、あまりいい戦略ではなくなります。

徴収した取引手数料は経済圏から焼却を行い、流通しなくなります。いくつかの仮想通貨で採用されている"Burn"と同じです。したがって、ネットワーク全体で取引の総数が増加すると、それだけコインの流通量が減少し、1コインあたりの希少性が上昇すると言えます。

資産税

インフレの抑止と所得再配分の促進のため、毎週末に保有コイン数に応じて資産税が徴税されます。現在の税制は、日本の所得税を参考に累進課税となっており、たくさん保有している人ほど実質の税率が高くなります。このことにより、課税される前にできるだけ送金しておくインセンティブが働き、ネットワークの活性化につながります。

徴税された資産税は、現状では取引手数料と同様にただBurnされてしまっていますが、例えば「頑張ったで賞」などとして毎月誰か一人を投票で表彰し、受賞者にはプールしておいた税収を配布するなどを行うと、より仕事を頑張るインセンティブになるのではと検討しています。

スーパーウェンズデイ

毎週水曜日に、参加者全員が当たる可能性のある宝くじの抽選を行い、当選した人には一定のコインが配布されます。これはGAS、というよりJavaScriptでランダムに当選者を決定している完全に運による獲得方法です。あまり普段の業務においてランダム性やイベント的なものはなかったので、ちょっとした毎週の楽しみになることを期待して設定しました。

API

現状、社内通貨に関するアプリケーションを開発できるのは私だけですが、将来的にはGASの持つAPI公開機能を利用し、誰でも自由にアプリケーション開発を行えるようにできればと考えています。

何でそんなものを作ったの?

大きく言えば国策である働き方改革の推進、小さく言えば社内のESサーベイにより満足度が低かった項目の改善を目的にしています。ESサーベイの集計結果を分析したところ、社員は自分の持っているスキルや能力、すなわちタレントがあまり周囲の社員に伝わっていないと感じているのではないかと考えました。そこで、誰がどのような場面でどのような活躍をしたかを可視化することで、誰がどのようなタレントを持っているのかを明らかにするための仕組みとして、社内通貨を開発しました。そのため、社内通貨のやり取りはすべて公開され、誰でも閲覧できるような状態にしておくことが重要なポイントとなるのです。

今はどれくらい使われているの?

現状、社内の一つの部署に所属する90名弱がアカウントを保有しています。当然、各個人ごとに社内通貨に対する熱量は全く異なり、アクティブ度合いもピンキリです。

「面白い」と言ってくれる人もいる一方で全く利用しない人もいるため、より拡大させるためにはユーザーの熱量に応じてアプローチを変える必要がありそうです。

将来はどうしたいの?

コインの保有量に応じて賞与の一部に反映させたり、近隣の飲食店で使えるようになったりすると楽しそうですね。実現させるためには社内での調整が必要ですが・・・

また、当初の目的であるタレントの可視化についても推進し、現状キーワードだけ浮ついている「タレントマネジメント」の実現にも貢献できればと思っています。例えば、クラウドソーシングの社内版のアプリケーションを開発し、部署間あるいは社員間で足りないスキルや工数を融通し合い、対価を社内通貨で支払うような仕組みを作ると経済圏が活性化しそうです。

参考にしている他社の事例は?

株式会社ディスコの「Will」
http://www.disco.co.jp/jp/news/press/20170303.html

クラウドワークスの「ありがとうコイン」
https://crowdworks.jp/press/?p=7392

まだ実証実験中ですが、「アララコイン」もいい感じです
https://www.arara.com/news/press/entry4724/

まとめ

冒頭に書いた通り、自分が思っていたほどは社内の反響がないものの、やるべきことはしっかりやり、将来像も示しているつもりであるため、次第に分かってくれる人が増えてくれることを期待しています。社内通貨に限らず、「トークンエコノミー」などと呼ばれるような仕組みは今後世界的に活発になっていくと考えているため、数年後に振り返ってみれば先進的な取り組みであったと思われるように引き続き進めていきたいと思います。

〇著者
株式会社メタレピュテーション
代表取締役 新垣

当社サイト「生産性総合研究所」において、GAS関連の記事を執筆中です!
http://productivityresearch.net/category/programing/googleappsscript/

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