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[ゲームデザイン] ゲームの波を作る(経営ゲーム)

Last updated at Posted at 2019-07-05

[1]概要

経営ゲームを用いて、ゲームの波を作る手法について記載します。

ここで言うゲームの波とは、シナリオの起承転結のような、ユーザーの感情を波のように揺さぶりをかけて楽しませるものです。

今回はシナリオを使わず、
ゲーム要素(イベント、コマンド、パラメータなど)で波の構造を作り、
ユーザーを楽しませる仕組みについて考えてみます。

個人的に考えたゲーム作成手法の一つなので、あくまでご参考までに。

○参考資料
・CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン
https://www.slideshare.net/KoujiOhno/cedec2016

・【CEDEC 2017】 [前編] ルイージ要素で感情を揺さぶるメタAIの仕組みとは? -SQUARE ENIX 人工知能(メタAI)を用いたゲームデザインの変革-
http://ainow.ai/2017/09/06/121608/




[2]波を作る

[2-1]はじめに

飲食店の経営ゲームを例にとって、ゲームの波について説明します。

▼飲食店の経営ゲームについて(説明用)

ユーザーはお店の店長になって、
料理のメニューを決める、店員を雇う、お店の内装を決めるなどの仕事を行います。
お客さんの接客や料理を作る仕事は、雇った従業員が自動的に行います。

たくさんのお客さんに利用してもらい、
自分好みのお店を作りつつ、お店を大きくしていくのが目的です。

○ユーザー(店長)が実行できるコマンドについて

・料理メニューを開発する
・提供する料理メニューを決める
・店員を雇う
・お店の内装デザインを決める
・テーブルを用意する
・宣伝する

○店員の行動(自動)について

・接客、配膳
・料理を作る
・清掃

○お客の行動(自動)について

・席に座る→注文する→食べる→レジで精算→帰る



経営ゲームのおもしろいところは、
キャラクターがわちゃわちゃ動いてるのを見て楽しんだり、
自分の好みのお店を作ることができるところです。

アクションゲームなどに比べて、ボタンを押す回数(選択肢を実行する回数)が少ないですが、
その分1回の意思決定にいろんな考えや感情を込められるようにしています。


[2-2]事の始め、まず"ゲームの谷"を作る

①何もしない場合

ゲームの谷10.png

経営ゲームの特徴ですが、
従業員とお客さんは自動的に動くので、何もせずに見ているだけでお金が溜まります。(もちろん例外あり)
バランス調整次第ですが、大体は費やした時間に対してプラスになるようにしています。

※このグラフの縦軸は資金ですが、以降のグラフでお客の数やユーザーの感情になったりします。とりあえず流れだけを把握してもらえればと思います。

②ユーザーの基本コマンドについて

ゲームの谷11.png

ゲームとして何もしないわけにはいかないので、ユーザー(店長)の基本コマンドを実行します。
お金を払い、新しいメニューを開発したり新しいテーブル導入することで人気が上がり売上も伸びます。
資金の流れは上の図のようになります。

▽基本コマンドの例
・新しい料理メニューを開発する
・新しいテーブルを購入する
・店員を教育する
・お店のレイアウトを変える
など

③ここで②の落ち具合を急激に落とした場合、スリルや緊張感があっていいのではないかと考えました。

ゲームの谷12.png

大量のコストを支払ったり、大きなマイナスイベントが発生するイメージです。

▽例.
・全財産を使って高級料理にチャレンジしてみる
・ライバル店が近くにできて、お客さんを半分とられる
・海外出店する


[2-3]"谷の逆"も用意する

ゲームの谷13.png

上に凸の"谷の逆"も用意してみました。

○谷の逆の例.(うれしいイベント)
・夏休み商戦でいつもよりお客さんが来る
・近くでイベントが開催されてお客さんがたくさん来る
・新メニューがテレビで取り上げられてお客さんがたくさん来る
など


[2-4] 合体してみる

[2-2],[2-3]の"谷"と"谷の逆"を合体します
ゲームの谷15.png

夏休み商戦が終わったころに、ライバル店が出店してきたイメージです。
波っぽい!!

補足説明ですが、
後半の谷(落ちてる方)は、ライバル店が撤退することで元の基準に復帰するようにしています。
波の要素は一定期間経過すると元の基準に戻るものが扱いやすいです。(もしくは何らかの解決方法がある)
戻らないとただのマイナスイベントになってしまいます。

これで大丈夫か?と思われそうですが、効果は高いと思います。
ただ、要素は揃えられても波の高低差の実現が難しいです。




[3] いろんな波について

[2]で下と上に凸の波ができましたが、実際のゲームはこんな単純ではないです。
さまざまな大きさの波(ゲーム要素)があり、タイミングもばらばらです。
ユーザーの思考や認識、記憶も考慮すると感じ方も毎回変わってきます。

そのあたりの対応策も含めて、いろんなパターンの波について考えてみます。


[3-1] 予測とサプライズ

ユーザー目線でその先の波が、予測できるor予測できないを考えてみます。

ゲームの谷16.png

○予測できない場合

予測できない出来事(サプライズ)で、より大きく感情が動きます。

▽例.
・サプライズで誕生日をお祝い
・泥棒に入られる(マイナス)

○予測できる場合

予測できる分、感情の動きは小さいですが、事前準備をすることができます。
事前準備をすることで、プラスを上乗せしたり、マイナスを軽減することができます。

▽例.
・来週お祭りがある→来客が多数見込まれるので、材料不足にならないように食材をたくさん用意しておく
・台風が来る→風に飛ばされないように準備する(マイナスの軽減)

○図で整理

予測 できない できる
感情の動き 大きい 小さい
事前準備 できない できる


○その他テクニック:注意をひかせる

予測できない波で、
波の直前にユーザーの注意を引かせることがあります。
予測できるできない波01.png
予測できるできない波02.png

出来事をきちんと受け止めてもらうためのものです。
一番注目してもらいたい所の、ちょっと前に仕込むとちょうどいいです。
(直前に[!]のマークを出すなど)


[3-2] 波の重なり

複数の波が重なる場合を考えてみます。

○プラスの重なり

小さな波でも、複数の波を重ね合わせることで大きな波を作ることができます。

▽例.
来客数がアップするコマンドを複数実行する+来客数がアップするイベントが実行される
1.新メニューを開発する
2.宣伝する
3.口コミが広がる(イベント)
波の重なり00.png

3つとも来客数をアップする小さな波ですが、3つ同時に実行することで、より大きな波になります。
大きな波になるので、感情の動く幅もその分大きいはずです。
単純な足し算だけでなく「コンボ!」みたいな形で補正をかけるといいかもしれません。

○プラスとマイナスの重なり

▽例.
上の夏休み商戦とライバル店の出店が重なった場合
波の重なり02.png

夏休み商戦中にライバル店が出店してきて、来客数が減少しています。

図の波の真ん中あたりが、プラスとマイナスが干渉してなんとも言えない増加量になっています。
これはこれで面白いと思います。
マネージメント感も出ます。


[3-3] 波の並列

波の重ならない場合を考えてみます。

▽例↓、Aさんの日常業務とBさんの海外出張
ゲームの谷17.png

上の図のAさんの日常業務と、Bさんの海外出張はゲーム上それぞれが干渉しません。

図の左の意識%はゲームをプレイしているユーザーの意識の配分です。
%が高いほどその要素に気をとられています。

Aさんの日常業務はお客さんや店員などの動きなど、ゲームのメインとなる部分です。
普段はこの画面をベースにゲームを進めます。
意識の%が高くなります。

Bさんは飛行機で移動中の場合は、特に目立ったイベントはないので意識の%は少なくなります。

○面白そうなところで視点を移動する

ゲームの谷18.png

時間が進み、Bさんは到着後に異国の街の散策に出かけました。
ゲーム上ここは面白い場面なので視点を移動させます。
意識の%も変わります。

ずっとAさんの日常業務(メインになる画面)ばかり見てると、飽きてくるのでたまにこういった視点の切り替えの要素があるといいです。


[3-4] 波の繰り返し

波の繰り返しについて考えてみます。

波の繰り返しとは、RPGの戦闘シーンのような何度も同じゲーム要素をプレイするときのことです。
最初は新鮮に感じますが2回目以降はだんだんとマンネリを感じるようになります。
その場合の対策案について記載します。

○対策その1.アレンジを加える

▽例として、料理コンテストが毎月1回開催されるとします
ゲームの谷19.png

最初の1回目は初めての料理コンテストで楽しめますが、
2回目、3回目になってくるとマンネリを感じてきます。

対策として料理コンテストにアレンジを加えます。
・難易度を上げる
・出品する料理に条件をつける(品目、能力)
・対戦相手を調整する
・季節で変化をつける
などなど。

それぞれの要素に細かくアレンジを加えることによって違った印象を出します。


○対策その2.フェイントを入れる

ユーザーの予想と逆の出来事が起こることによって、より高い印象をユーザーに与えます。

ゲームの谷20.png

▽例.
コンテストが終わると思ったら、確率で対戦相手が泣きのもうひと勝負を挑んでくる

・1回目
コンテスト終わり
→日常業務に戻る

・2回目以降
コンテスト終わり
→(ユーザーは日常業務に戻ると思う)
→対戦相手が泣きのもうひと勝負を挑んでくる→「そろそろ本気だす!」
→日常業務に戻る

普段は「コンテスト終わる→日常業務に戻る」で一連のイベントを終了させます。
一定確率で「泣きのもうひと勝負」のイベントが発生することでユーザーの意表をつくことができます。
「泣きのもうひと勝負」の発生確率を低くするほど、発生したときの驚きが大きくなります。


○対策その3.さらにフェイントを入れる

フェイントで発生したイベントで終るとみせかけて、さらに次のイベントを出します。
ゲームの谷21.png

▽例.
「泣きのもうひと勝負」で勝利したあとに、ある確率で「対戦相手が仲間になる!」のイベントが発生する。

上のフェイントの時と同じく、確率でイベントを再度発生させます。
流れのサンプルを書いてみます。

A:コンテスト終了
B:対戦相手の泣きのもうひと勝負
C:対戦相手が仲間になる
とします

・1月:A
・2月:A
・3月:A→B(勝利)
・4月:A
・5月:A
・6月:A→B(勝利)
・7月:A
・8月:A→B(勝利)→C
・9月:A

8月のCのイベントのとき、
ユーザーはそれ以前の経験もあるので、予想外のイベントとして驚くはずです。

※補足
・例ではフェイントの要素は2つですが、何個にでも増やしていいと思います。(○○コンボなど)
・例のBやCの部分を重要なゲーム要素の獲得にすると、普通に獲得するより喜んでもらえると思います。


[3-5] 波に枠組みをつける、休憩時間を入れる

波に枠組みをつけたり、休憩時間(波のない時間)について考えます。

ゲームの波062301.png
枠組みと休憩時間を作って、
現状を見直す時間と休む時間を確保します

この時間は、以下のような要素をユーザーに提供することができます。
・過去の振り返り、ユーザーのがんばりを評価
・その先の計画、準備、戦略性、頭の中の整理
・ユーザーは疲れてくると感受性が薄まるので休む→次から新鮮な気持ちで楽しんでもらえる(一息入れる)

▽例.
年度末にお店の評価を出す+次の1年間の目標を決定する

○1年間のお店の評価を行う
・1年間の売り上げ
・来客数
・人気メニュー
・市場調査(結果)
など。
評価が良かったらユーザーのがんばりを評価する。悪かったら改善案を出します

○次の1年間の目標について
・ノルマなど掲示
・ざっくり1年間の計画をイメージさせる(夏にイベントがある場合はその前に準備させるとか)

なかなか忘れがちな要素ですが、あると効果は高いです。


[3-6] 異なる波に影響を与える

異なる波に影響を与える波について考えます

1.影響を与える波

影響を与える波のサンプルとして、宣伝活動のコマンドについて記載します。
宣伝活動は街の知名度を上げて、来客数UPの効果を見込めます。

2種類の宣伝項目があるとします
・宣伝_小(コスト低い、来客数UP小さい)
・宣伝_大(コスト高い、来客数UP大きい)
ゲームの谷22.png


2.影響を受ける波

このあとにライバル店が現れるとします。
ライバル店の能力は、その街の知名度に比例するものとします。
なので、上の宣伝活動の量によって能力が変わります。

ゲームの谷23.png

・宣伝が少ない→知名度が低いので、ライバル店は強い
・宣伝が多い →知名度が高いので、ライバル店は弱い
となります。
宣伝のコストのかけ方でライバル店の強さが変わりました。
ライバル店との直接バトルはさておき、事前に行った宣伝活動がライバル店の能力に影響しているのは面白いと思います。

ちなみに、このあとの宣伝活動でユーザーが考えることは以下の3つになります。
・コストの大きさ
・来客数の上昇幅
・ライバルの強さ ←NEW!
なかなかややこしくなりました。

この宣伝活動の支払いコストとライバルの強さの関係のように、関連性を持たせることは大切です。
関連性を厚くしていくことで、ゲーム全体がシンプルで奥深いものになっていくと思います。


3.初見で感じること、考えること

この例は初見の場合、漫画の伏線回収のような効果が出てきます。
0630_波の関連性00.png
ライバル店出現後に、宣伝活動が影響していたことがわかり、
「あー宣伝が影響してたのね」といった感想を抱くと思います。

また、ライバル店の出現も初見なので、[3-1]の予測できない波のサプライズの効果もあり、感情の動きもより大きくなるはずです。


[3-7] その他、今後のためのメモ

・波の波、波の階層化

・波にタイミングを合わせる(ユーザーに能動的な行動をさせる)

・波のテンポを速くするor遅くする
イベントが間延びしてきたら、間隔の小さい波を挿入する
間隔の小さい波が連続していたら、間隔の長い波を後ろでまわしておく

・波→次の波→次の波…
超えた波が次の波につながるようにする。
例.コンテストで優勝→賞金GET!→次の選択肢が実行可能になる




[4]まとめ、用途、補足など

○まとめ、ゲームの波の作り方について
まず、現状組み込んであるゲームの要素を波の構造で考えます。
追加しようとしている案も波の構造で考えます。
それが波としてどう合わさるかを考えて案を追加していきます。
これを繰り返すことで、ゲーム全体としての波ができあがっていくのではないかと思います。

○下に凸の波(マイナス系のゲーム要素)の例が少ない理由について
マイナス系のゲーム要素はネガティブな印象が強いので、どのゲームでも少なくすると思います。
ある程度マイナスの落差も欲しいですが、やりすぎるとユーザーがゲームプレイを止めてしまう危険性があります。

○波の起こし方について
・ユーザーが任意に起こすもの、ユーザーのコマンドなど
・定期的に行われるもの、予測可能、お祭り、季節ごとのイベントなど
・突発的なイベント、予測不可、ライバル店の出現、天変地異、事件など→メタAIで管理?

○一時的効果の波の他ゲームの例
・マリオのスター
・ドラクエの毒状態

○[3-4]のフェイントの他ゲームの例
・ロマサガのひらめき
・ドラクエでモンスターが仲間になる
・音楽のCメロ?



以上です。

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