🗒️ はじめに
スピード感が命のベンチャーやスタートアップでは、技術力が高い・低いに関わらず、「チーム全体のアウトプットを最大化するために、今何をすべきか」を考えられる人が重宝されるように感じます。
この記事は、技術力にまだ自信がない駆け出しエンジニアが、どうすればプロジェクトにうまく貢献し、チームから信頼されるメンバーになれるか、その超具体的なアクションを、自戒と学習の記録としてまとめたものです。
「プロジェクトの進め方」なんて小難しい話はたくさんありますが、この記事では「明日、いや、今すぐ自分も実践したい!」と思えるような、地に足のついた内容だけを厳選しました。
この記事が、同じように奮闘する駆け出しエンジニア仲間のお役に立てば幸いです。
📜 目次
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プロジェクトって、結局どう進むの?(超ざっくり全体像)
- Web系ベンチャーの「リアルな流れ」を5ステップで理解する
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【最重要】駆け出しエンジニアが「今すぐ」実践すべきコツ7選
- ① タスクの「ゴール」と「背景」を握る("Why"の確認)
- ② 「わからない」を放置しない(ただし「聞き方」は超重要)
- ③ 報・連・相は「鮮度」と「解像度」が命
- ④ "Pull Request" (プルリク) は「ラブレター」だと思え
- ⑤ テストは「未来の信頼」への投資
- ⑥ "ドキュメント" は未来の自分(と仲間)への贈り物
- ⑦ 自分のタスクが終わったら「+1」のアクションを
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【自戒】よくある失敗談と、そこから学んだ「現実的な対策」
- 失敗1: ひとりで抱え込みすぎて炎上(未遂)
- 失敗2: 「たぶん大丈夫」でテストをサボり、本番障害
- 失敗3: 「俺のタスク」しか見えていなかった
- まとめ:技術力は「後から」でも、信頼は「今から」作れる
1. プロジェクトって、結局どう進むの?(超ざっくり全体像)
小難しい用語(要件定義、基本設計...)は一旦置いておいて、ベンチャーやスタートアップの現場では、だいたいこんなサイクルで物事が進んでいくことが多いです。(ざっくり5ステップ!)
ステップ1:フワッとした「やりたいこと」が降ってくる
顧客や経営層、PM(プロジェクトマネージャー)から、こんなオーダーが来ます。
「最近ユーザーの離脱が多いから、登録プロセスを簡単にして離脱率を下げたい!」
「競合が〇〇機能をリリースしたから、ウチも似た機能を追加して対抗したい!」
この段階では、まだフワッとしています。
ステップ2:「で、具体的に何を作る?」を固める(要件定義・設計)
エンジニア、デザイナー、PM(時には営業も)が集まって、「じゃあ、具体的にどうする?」を話し合います。
- 「登録プロセスを簡単にするって、どこをどう変える?」
- 「ボタンのデザインは?」「入力項目は減らせる?」
- 「技術的に、それって可能?(DBの構造変えないとダメ?)」
- 「だいたい、どれくらい時間かかりそう?」
ここで決まった「作戦(=仕様)」を元に、デザイナーは画面デザイン(Figmaなど)を作り、エンジニアは「どうやって実装するか(=設計)」を考えます。
駆け出しの心得:
この段階では、まず「なぜこれを作るのか?」の背景と「何を作るのか?」のゴールを理解することに集中しましょう。わからなければ「これって、〇〇っていう理解で合ってますか?」と確認することが大事です。
ステップ3:タスクを分解して、ひたすら作る!(実装)
「登録プロセス改善」というデカい目標を、エンジニアが消化できる「小さいタスク」に分解します。
[タスクA] 登録ボタンのデザインを変更する(フロントエンド)[タスクB] 入力項目(住所)を削除する(バックエンド)[タスクC] 新しいDB構造に対応する(バックエンド)[タスクD] 入力エラーの表示をわかりやすくする(フロントエンド)
駆け出しエンジニアは、まずはこの「タスク」を任されることが多いです。ここが一番の腕の見せ所!(詳細は次章で)
ステップ4:「ちゃんと動く?」を徹底的に確認する(テスト・QA)
コードが書けたら、「本当にこれで大丈夫か?」を確認します。
- 自分でのテスト: まずは自分で作ったものが、仕様通り動くか確認。
- コードレビュー: 他のエンジニア(主に先輩)にコードを見てもらい、「もっと良い書き方ない?」「バグない?」をチェックしてもらいます。(=プルリク)
- Staging環境での確認: 本番環境とそっくりな「リハーサル環境(Staging)」で、機能全体がちゃんと動くか、他の機能に悪影響(デグレ)がないかを確認します。
- QA: 専任のQA(品質保証)チームがいる場合は、プロの目で「バグがないか」を徹底的に探してもらいます。
ステップ5:いざ、世の中へ!(リリース・運用)
すべてのチェックをクリアしたら、いよいよ「リリース」(本番環境への反映)です。
ベンチャーでは、このリリースが「毎日」「1日に何回も」行われることも珍しくありません。
でも、リリースして終わりじゃありません。
- 「リリース後、エラーが出てないか?」(エラー監視)
- 「狙い通り、離脱率は下がったか?」(効果測定)
- 「ユーザーから『使いにくい』って声が来てないか?」(フィードバック収集)
これらを見て、また次の「やりたいこと」(ステップ1)につながっていきます。このサイクルを高速で回すのが、ベンチャーの強みです。
2. 【最重要】駆け出しエンジニアが「今すぐ」実践すべきコツ7選
プロジェクトの全体像がわかったところで、いよいよ本題です。
技術力に自信がなくても、以下の7つを意識するだけで、チームからの信頼度は爆上がりします。(自分も日々実践中です!)
① タスクの「ゴール」と「背景」を握る("Why"の確認)
タスク(JiraやBacklogのチケット)を渡されたら、脊髄反射でコードを書き始めるのはNGです。
よくない例:
「『登録ボタンを赤色にする』って書いてあるな。CSSを background-color: red; に書き換えよう。」
なぜダメか?
もしかしたら、そのタスクの真の目的は「ボタンを“目立たせて”、クリック率を上げること」かもしれません。
だとしたら、ただ赤くするより、デザインチームが定義した「目立たせる色(ブランドカラーの赤)」を使うべきだし、もしかしたらサイズも大きくすべきかもしれません。
今すぐ実践したいこと:
タスクに着手する前に、5分でいいので「これって、何のためにやるんでしたっけ?」と確認しましょう。
「このタスク、確認させてください。目的は『ボタンを目立たせてクリック率を上げること』で、その手段として『赤色にする』という理解で合ってますか?」
背景(Why)がわかると、実装(How)の精度が格段に上がります。「ただの作業者」から「目的を理解して動ける仲間」に昇格する第一歩です。
② 「わからない」を放置しない(ただし「聞き方」は超重要)
新人が「わからない」のは当たり前。問題は**「放置すること」と「聞き方」**です。
最悪の聞き方:
「動かないです。わかりません。」(先輩はエスパーじゃない...)
最高の聞き方(テンプレ):
先輩の時間を奪わない「質問の技術」は、コードを書く技術より大事かもしれません。
「お時間あるときに恐縮ですが、〇〇について質問させてください。
1. やりたいこと(ゴール):
ユーザー登録機能(タスクID: #123)で、登録ボタンを押したときにバリデーションが動くようにしたい。2. やってみたこと(試行錯誤):
- 公式ドキュメントの〇〇の部分を読んで、
validate()メソッドを実装した。console.logを仕込んでみたが、ボタンを押してもログが出力されなかった。3. 結果(エラーや問題):
ボタンを押しても何も反応がない。(エラーメッセージも出ていない)4. 仮説(自分の考え):
もしかしたら、ボタンのonClickイベント自体が発火していない? or そもそもvalidate()メソッドの呼び出し方が間違っている?5. 聞きたいこと:
この場合のデバッグのアプローチとして、次に何を試すべきかヒントをいただけますか?」
ここまで整理されていれば、聞かれた側は「ああ、それなら〇〇のファイル見てみな」と瞬殺で回答できます。
今すぐ実践したいこと:
「15分(時間は自分で決める)悩んでもわからなければ、上記テンプレで聞く」とマイルールを決めましょう。
③ 報・連・相は「鮮度」と「解像度」が命
スピード重視の現場では、「問題の早期発見」が何より重要です。
よくない例:
- (朝会)「今日はタスクAをやります!」
- (夕会)「タスクA、ハマってしまって進捗0%です...」
- (チーム)「ええっ!? もっと早く言ってよ!」
今すぐ実践したいこと:
「ヤバい」と思った瞬間に報告しましょう。SlackなどでOKです。
(良くない報告)
「タスクA、終わりません。」(良い報告 - 解像度が高い)
「お疲れ様です。タスクA(〇〇機能の実装)ですが、想定外の事態が発生しました。
- 状況: 外部APIのレスポンスが、ドキュメントと異なっていることが判明しました。
- 影響: このままだと、今日中の完了は難しい見込みです。(おそらく+1日かかります)
- 対応: 先方(〇〇社)には確認の連絡を入れつつ、一旦モックデータで進められないか試してみます。」
「事実」「影響」「対応(案)」をセットで報告すると、チームは「じゃあ、〇〇さんにサポート入ってもらおう」「リリース日調整しよう」と、すぐ次のアクションに移れます。
④ "Pull Request" (プルリク) は「ラブレター」だと思え
プルリク(コードレビューのリクエスト)は、あなたの書いたコードをチームメンバーに初めてお披露目する場です。
レビュアーがキレるプルリク:
- デカすぎる: 50ファイル変更。どこから見たらいいかわからない。
- 説明がない: タイトル「修正」本文「(なし)」。何が変わったかわからない。
- テストが落ちてる: CI(自動テスト)が真っ赤。
レビュアーが惚れるプルリク:
レビュアー(先輩)の工数を削減することは、立派な「組織貢献」です。
タイトル:
feat: [ユーザー登録] バリデーション機能の追加 (#123)概要 (What)
タスク #123 の対応。
ユーザー登録フォームに、メールアドレスとパスワードのバリデーションを追加しました。背景 (Why)
不正なデータが登録されるのを防ぐため。変更点 (How)
useRegistrationForm.tsにvalidateEmailとvalidatePasswordを追加。RegistrationForm.tsxで、バリデーションエラー時にエラーメッセージを表示するように変更。レビューしてほしい点
- バリデーションのロジック(特に正規表現)に漏れがないか不安です。
- エラーメッセージの文言は、これで適切でしょうか?
備考(スクリーンショットなど)
- エラー表示時のキャプチャを添付します。
今すぐ実践したいこと:
- 「なぜこの変更をしたか?」を必ず書く。
- 変更は「意味のある最小単位」でコミットし、プルリクを出す。(Atomic Commit)
- レビュアーに「特にどこを見てほしいか」を明記する。
⑤ テストは「未来の信頼」への投資
「自分のPCでは動いてるし大丈夫」は、最も危険なフラグです。
よくない例:
- 「(めんどくさいから)正常系(うまくいくパターン)しかテストしない」
- 「(時間ないから)Staging環境での確認を飛ばしてリリース」
なぜダメか?
あなたのコードが原因で本番障害が起きたら、失うものは甚大です。
(サービスの停止、ユーザーの信頼失墜、そしてチームメンバー(特にインフラ担当)の睡眠時間...)
今すぐ実践したいこと:
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"意地悪" なテストをする:
- 「空っぽで送信したらどうなる?」
- 「とんでもない長い文字列を入れたら?」
- 「スマホの電波が悪い時にリロードしたら?」
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Staging環境での確認は「絶対」:
- 自分が変更した箇所以外(=一見関係ない場所)が壊れていないか(デグレ)を必ず確認する。
品質を守る姿勢は、技術力以上に高く評価されます。
⑥ "ドキュメント" は未来の自分(と仲間)への贈り物
スタートアップの現場では、ドキュメントが整備されていないことが日常茶飯事です。
だからこそ、「ドキュメントを書ける人」は神のように崇められます。
よくない例:
- 実装したけど、半年後どう直すかわからない。(作った自分も忘れる)
- 環境構築で半日ハマったけど、解決策をメモせず忘れる。(次の新人が同じ場所でハマる)
今すぐ実践したいこと:
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複雑なロジックにはコメントを残す:
// ここは〇〇という特殊仕様のため、あえて△△している
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READMEを「育てる」:
- 環境構築でハマった点、必要なコマンドなどは、即座に
README.mdに追記する。
- 環境構築でハマった点、必要なコマンドなどは、即座に
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仕様書(Wikiなど)を更新する:
- 仕様変更があったら、コードだけでなく関連ドキュメントも修正する。(これができると「超わかってるな」感が出る)
⑦ 自分のタスクが終わったら「+1」のアクションを
「自分のタスク、終わったー!コーヒーでも飲むか」...も悪くありませんが、一歩先へ進みましょう。
今すぐ実践したいこと:
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「何か手伝えることありますか?」と聞く:
- 他のメンバーが重いタスクで苦しんでいないか?
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レビューキューを消化する:
- 他の人のプルリクが溜まっていませんか?積極的にレビューしましょう。(レビューは最高の学習機会です)
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「気になっていたこと」を片付ける:
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console.logの消し忘れ、軽微なUIのズレ、TODOコメントの解消など、「今すぐやらなくてもいいけど、やった方がいいこと(リファクタリング)」に着手する。
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この「+1」の姿勢が、チームのアウトプットを加速させます。
3. 【自戒】よくある失敗談と、そこから学んだ「現実的な対策」
偉そうなことを書きましたが、もちろん自分も数々の失敗をしてきました...。
失敗1: ひとりで抱え込みすぎて炎上(未遂)
- 状況: 「できる」と思われたくて、自分の実力以上のタスクを「できます!」と安請け合い。実装方法がわからず1日中ハマったが、「遅れてる」と言い出せず、夕会で「(進捗)ヤバいです」と白状。
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学び(対策):
- タスクの見積もりは「バッファ」を持つ: 「1日でできる」と思ったら「1.5日」と伝える。
- 「助けて」を早く言う: 1時間ハマったらアラートを出す。(「報・連・相」の徹底)
- 「どうヤバいか」を具体的に言う: 「〇〇がわからないので、△△でハマってます。ここを教えてもらえれば進みそうです」と伝える。
失敗2: 「たぶん大丈夫」でテストをサボり、本番障害
- 状況: 軽微な修正だと思い込み、Staging環境での確認を簡略化。結果、変更箇所とは全く関係ない「決済機能」が動かなくなるデグレを発生させた。
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学び(対策):
- 変更の影響範囲を甘く見ない: 「1行の修正」が全体に影響することはよくある。
- 「クリティカルパス」は必ず確認: 決済、ログイン、会員登録など、「ここが止まるとサービスが終わる」機能は、変更がなくても毎回触る(リグレッションテスト)。
失敗3: 「自分のタスク」しか見えていなかった
- 状況: 自分の担当タスクの実装が終わり、プルリクもマージされた。しかし、その機能がリリースされるためには、フロントエンド側の修正と、QAチームのテストが必要だった。「自分の仕事は終わった」と思い込み、他のメンバーがバタバタしているのを横目に別の作業をしていた。
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学び(対策):
- 「タスクの完了」≠「機能のリリース」: チームのゴールは「価値をユーザーに届けること」。
- 「ボール」を意識する: 自分のプルリクがマージされたら、次の担当者(例: フロントエンド担当、QA担当)に「バックエンド側終わりました!お願いします!」とボールをパスする。
- リリースを見届ける: 自分の関わった機能が、無事にユーザーに届くまでが「自分の仕事」だと意識する。
4. まとめ:技術力は「後から」でも、信頼は「今から」作れる
長々と書いてしまいましたが、この記事で伝えたかったことはシンプルです。
Web系ベンチャー・スタートアップの現場では、もちろん技術力も求められます。
しかし、それ以上に**「チームの一員として、いかに賢く立ち振る舞い、貢献できるか」**を見られています。
- 相手(先輩・チーム)の時間を奪わない「質問力」
- 事故を未然に防ぐ「報告力」と「テスト意識」
- チームのアウトプットを最大化する「連携力」
これらの「ソフトスキル」は、技術力と違って「今すぐ」実践できることばかりです。
技術力は、日々の学習と実践で必ず追いつけます。
まずは「コイツとなら仕事がしやすい」「コイツはわかってるな」と信頼される存在になること。
それが、駆け出しエンジニアが現場で生き抜くための、最強の戦略だと信じています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!