要約
もしあなたが「メモを取る」こと自体に追われ、思考が鈍っていると感じているなら、
一度「メモをやめてみる」という選択肢を試してみてはいかがでしょうか。
説明を受ける側から、対話をするインタビュアーへ。
はじめに
前職で、話している最中にメモを取るやつは信用できないという話を聞きました。
数年経ち、私なりの解釈を記事にしてみました。
「会議中はしっかりメモを取りなさい」と指導された経験はありませんか?もちろん、それは大切な教えの一つです。しかし、もしその「メモを取ること」自体が、最も重要な「話を理解する」という行為の妨げになっているとしたら、どうでしょうか。
大切な説明を受けている最中、私たちの意識はペン先の文字やキーボードを打つ指に向かいがちです。視線が手元に落ちた瞬間、相手の表情や話のニュアンス、そして話の全体像を見失ってしまう可能性があります。
この記事でお伝えしたいのは、単に「メモを取るな」ということではありません。状況に応じて最適なインプットの方法を自ら考え、記憶力を高めて効率的に仕事を進めるための具体的な技術です。AIが議事録を作成してくれる現代だからこそ、私たち人間はより本質的な「聴く」そして「理解する」スキルを高めるべきだと考えています。
そこで私は、説明を受ける際は「記者がインタビューをする」ように臨む、というスタイルに切り替えました。優れた記者が、対話の流れを止めないようにインタビューに集中するのと同じです。
この記事では、AIによる文字起こしが当たり前になった現代において、インプットの質を最大化し、チームとの共通認識をより強固にするための、一つの実践的なアプローチを紹介します。
1. 「聴く」から「対話する」へ ― 思考を止めないインプット
まず、議論の場ではメモを取るのをやめ、短期記憶への全力書き込みと、対話による理解に集中します。その際、以下の3つの視点を意識的に切り替えることで、情報の解像度を高めます。

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タカの目(鳥瞰):議論の目的と全体構造を把握する
- 「この議論のゴールは何か?」
- 「なぜ今、この話をしているのか?」
- 話の全体像を捉え、論点のズレを防ぎます。
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虫の目(複眼):具体的な仕様や数値をインプットする
- 「具体的なパラメータは?」
- 「参照すべきドキュメントは?」
- 実装に必要な詳細情報を正確に捉えます。
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人の目(共感):相手の立場や背景を理解する
- 「なぜこの仕様を提案しているのか?」
- 「懸念している点はどこか?」
- 技術的な正しさだけでなく、背景にある意図を汲み取ります。
この思考プロセスは、ただ受動的に情報を聞くのではなく、能動的に情報を整理・構造化するためのフレームワークです。
2. 「質問」という最強のアウトプット
認識が違えば、その場で訂正される。対話を繰り返すことで、最終的に双方合意の共通認識が出来上がる。
質問を起点としたこの対話のキャッチボールこそが、プロジェクトを前に進める上で最も重要だと考えています。
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自分の言葉で要約して質問する
- 例:「つまり、このAPIのエンドポイントは〇〇という仕様で、認証には△△を使う、という認識で合っていますか?」
- このプロセスにより、情報は脳内で再整理され、記憶に強く定着します。
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相手に「伝わっている」という安心感を与える
- 的確な質問は、自分が議論に深くコミットしている証左となり、相手との信頼関係を築きます。結果として、より有益な情報を引き出せることも少なくありません。
3. 未来の自分とチームを救う「ドキュメント」作成術
さて、密度の濃い対話が終わったら、ここからがドキュメンテーションの工程です。
単なる個人用のメモではなく、
「後から誰が読んでも正確に理解できる、チームの資産となるドキュメント」 を目指します。
- タイミング:議論が一区切りついた直後、記憶が鮮明なうちに。
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ポイント:
- 客観性と網羅性:誰が読んでも一意に解釈できるように記述する。
- 一覧性:決定事項やTODOがひと目でわかるように構造化する。(Markdownの見出しやリストを活用)
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実践:
- まずドキュメントの骨子(各セクションと概要)を作成する。
- 可能であれば、その場で関係者に内容をレビューしてもらい、認識のズレを即時修正する。
このひと手間が、未来の「これってどういう意味でしたっけ?」を防ぎ、チーム全体の生産性を向上させます。
4. AIとの協業 ― 人間は「編集」に集中する
最近では、高精度なAI文字起こしツールが普及し、私たちの働き方は大きく変わりました。もはや、人間が必死にタイピングして議事録を作る必要はありません。
私たちの役割は、AIが生成したテキスト(素材)を、価値ある情報(ドキュメント)へと昇華させる 「編集者」 になることです。
- 校正:AIが誤認識しやすい技術用語や固有名詞を修正し、情報の正確性を担保する。プロジェクト固有の用語集をAIに学習させるのも有効です。
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編集:単なる文字の羅列に、文脈を付与する。
- 議論の背景
- 決定事項の要約
- 保留となった課題(ペンディング事項)
- 具体的なネクストアクションと担当者
AIに記録を任せることで、人間はより創造的で付加価値の高い「文脈付け」や「構造化」といった作業に集中できるようになりました。
まとめ
インプットのスタイルは人それぞれですが、もしあなたがかつての私のように「メモを取る」こと自体に追われ、思考が鈍っていると感じているなら、一度「メモをやめてみる」という選択肢を試してみてはいかがでしょうか。
説明を受ける側から、対話をリードするインタビュアーへ。
この意識の転換が、あなた個人のスキルアップだけでなく、チーム全体の開発効率を向上させる一助となれば幸いです。



