■背景
DRGはv1とv2のバージョンがあり、2021年以降に作られたものはDRGv2で色々な機能が追加されています。なので、ほとんどの方はDRGv2を使っているので今回の記事は当てはまらないかもしれません。

DRGv1のものは今も使えますが、ネットワーク構成を変えるのはあまり好まれないので、2021年以前に作ったものを、そのままにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ドキュメントにある通り、「DRGの変更をロールバックすることはできません」と書いてあるので、ネットワーク運用者・管理者にとってはアップグレードに対して少し心配になるかもしれません。
なので2021年以前にDRGv1を作成してアップグレードする必要がある方向けに、ロールバックできる手段がないかを考えてみました。
また、ネットワーク構成の変更における注意点も学んでいきます。
■どんな手段があるか
- DRGv1をアップグレードしてDRGv2にする
- DRGv1にアタッチしているFastConnectやVCNをDRGv2に付け替える
今回は2の「DRGv1にアタッチしているFastConnectやVCNをDRGv2に付け替える」について実現は可能か、どんな懸念点があるかを考えてみます。

■実現可能かを見てみる
結論としては実現可能そうでしたが、この方法は既存のネットワーク構成を変える必要があるのであまり推奨はしません。
私はDRGのアップグレードの方をおすすめします。
ただ、「切り戻しできることが絶対条件」、「DRGのアップグレードと一緒にFastConnectのキャリアも変更する」、「LPGを使ったHub-Spoke構成ではなくDRG1つにまとめて再構成しておきたい」といった際には今回の記事は役に立つかと思います。
「DRGv1にアタッチしているFastConnectやVCNをDRGv2に付け替える」には大きく二つの作業と注意点が必要でした。赤点線枠の場所です。
①FastConnectをDRGv1からデタッチしてDRGv2にアタッチ
②VCNアタッチメントを付け替え後にVCNのルート表の書き換え

※お客様のネットワーク構成によっては他の検討事項があるかと思います。
①FastConnectをDRGv1からデタッチしてDRGv2にアタッチ
FastConnectの仮想回線の編集からアタッチするDRGを変更できます。

この際にBGPセッションは切断されましたが、数秒ほどでBGPセッションは確立されました。
※名前や帯域幅以外の項目を変える場合はBGPセッションが切れる可能性があるというドキュメントの記載通りでした。
OCIドキュメント 仮想回線の管理
+仮想回線を編集するには
+重要
また、切り戻しのためにDRGv2からDRGv1へFastConnectを変更することもできました。
※DRGのアップグレードに関してもBGPセッションは切れるため、ある程度の接続断はどのケースでも想定する必要があります。
②VCNのルート表の書き換えが必要
忘れがちですがVCNのルート表のルートルールについては静的で記述するため、DRGv1→DRGv2へアタッチしてもルートルールは自動で更新されません。
VCN内で使っているDRGv2向けのルートルールを自分で更新する必要があります。

赤:VCNをDRGv2にアタッチしたがVCNのルート表はDRGv1のまま
紫:まとめて変更する場合は表示を100にして、チェックボックスをつけるとまとめて変更できます。100以上のルートルールがある場合は2ページ目も同じ作業を繰り返します。
ルートルールの編集を押すとDRGv2が選択されているのでそのまま保存ボタンを押す。

特にサブネットに紐づくルート表の他に、トランジットルーティングのためにLPGに紐づけたルート表の中にDRGv1宛てのルートルールが一般的には記述されているので、編集の見落としがないかを確認しておきます。
さらに、DRGv2→VCN1→LPGへとトランジットルーティングするためのVCNルート表をDRGv2のところに紐づけするのを忘れないようにします。
以上のことを行ったうえで、最後にエンドツーエンドで通信ができるかを検証すれば、DRGv1からDRGv2へネットワークの付け替えは完了だと思われます。
■まとめ
DRGv1はまだ使い続けることができそうですが、もし強制的にアップグレードしますという通知が出た場合は急いで検討する必要があります。とはいえ、稼働中のネットワークを変えるのはなかなか難しいものがあると思います。
そのために2つの方法を検討しました。
①DRGv1をアップグレードしてDRGv2にする
メリット:
・アップグレードするだけ
・ネットワークの構成を変えなくてもよい
デメリット:
・アップグレードがスタックした場合はSRで対応 OCIドキュメント 「DRGをアップグレードする前に」
・ロールバックは不可
②DRGv1にアタッチしているFastConnectやVCNをDRGv2に付け替える。
メリット:
・切り戻し可能
デメリット:
・ネットワークの構成を変更する必要がある
さらに、既存のネットワーク構成変更や切り替えるタイミング、通信が止まることによる業務影響、メンテナンス時間をとれるかなどを考えると、それなりの検討が必要になります。

上記はLPGで繋いだVCN2,VCN3をDRGv2へ付け直す場合のことを考えてみましたが、VCN2,VCN3から見るとLPGとDRGv2が同時にアタッチさせた際はVCNルート表のルーティングを手動で変更する煩雑さが大きいので難しいと感じます。
ここまで色々と書いてきましたが、特殊な条件・要件がない限りきちんとメンテナンス時間をとってアップグレードするほうがいいと私は結論付けます。