はじめに
研究や開発を進める中で、「昨日は動いたコードが今日は動かない」「誰がどこを変更したかわからない」といった経験はありませんか?
本記事では、ソースコード管理のデファクトスタンダードである Git と GitHub について、その概念から導入手順までを解説します。
エンジニアだけでなく、データ分析や研究論文の執筆を行う方にとっても必須のツールですので、ぜひ環境を整えてみましょう。
1. GitとGitHubの違い
名前が似ていますが、役割が異なります。まずは概念を理解しましょう。
| 名称 | 役割 | イメージ |
|---|---|---|
| Git (ギット) | 変更履歴を保存するツール (分散型バージョン管理システム) |
自分だけの日記帳 「いつ、何を書いたか」を記録する |
| GitHub (ギットハブ) | 履歴をWeb上で共有する場所 (ソースコード共有プラットフォーム) |
交換日記を置くクラウド 日記をみんなで共有・編集する場所 |
なぜこれが必要なのか?(データサイエンス・研究の視点)
特にデータサイエンスや研究の現場では、以下の理由から導入が強く推奨されます。
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「再現性」の担保
- 「モデルの精度が昨日より悪化した」という時、「どのコミット(時点)で、どのパラメータを変更したか」を即座に特定・復元できます。
- 論文で再現実験を行う際、特定のバージョン(Commit Hash)を指定すれば、第三者でも完全に同じ環境・コードで実行できます。
-
共同作業の効率化
- 「最新版_final_修正版.py」のようなファイル管理から解放されます。
- 複数人が同じファイルを編集しても、変更箇所を統合(マージ)しやすくなります。
2. 環境構築(インストール)
Windows環境を例に手順を解説します。
Gitのインストール
-
インストーラのダウンロード
- Git公式サイト にアクセスします。
- 「Download for Windows」をクリックし、「Click here to download」等からインストーラ(例:
Git-2.xx.x-64-bit.exe)をダウンロードします。
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インストール
- ダウンロードしたexeファイルを実行します。
- セットアップウィザードが表示されます。設定項目は多いですが、基本的には全てデフォルトのまま「Next」を押し続けて問題ありません。
- 最後に「Install」を押し、完了画面が出ればOKです。
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動作確認
- コマンドプロンプト(またはPowerShell)を立ち上げます。
- ※注意:インストール前から開いていた画面は一度閉じて、開き直してください。
- 以下のコマンドを入力します。
- コマンドプロンプト(またはPowerShell)を立ち上げます。
git help
ヘルプメッセージがズラッと表示されればインストール成功です。
エディタのインストール(VSCode / Cursor)
コードを書くためのエディタも準備しましょう。
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VS Code (Visual Studio Code)
- Microsoft製の標準的なエディタです。公式サイトからダウンロードしてインストールします(基本的に「次へ」でOK)。
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Cursor
- VS Codeをベースに、生成AI機能が統合された次世代エディタです。公式サイトからダウンロード可能です。
3. GitHubのアカウント作成
Gitで管理した履歴をクラウドに保存するために、GitHubのアカウントを作ります。
- GitHub にアクセスし、登録ボタンを押します。
- ユーザー名、メールアドレス、パスワードを入力します。
- ※大学や組織のメールアドレスを使うと、学生向け特典(GitHub Education)などが受けられる場合があります。
- メール認証を行い、ログインできれば作成完了です。
4. 初期設定(ユーザー登録)
ここが重要です!
「誰が変更したか」を記録するために、PC上のGitに「あなたの名前」と「メールアドレス」を教える必要があります。
コマンドプロンプト(またはターミナル)を開き、以下のコマンドを実行してください。
# ユーザー名の登録(半角英数字推奨)
git config --global user.name "あなたのユーザー名"
# メールアドレスの登録(GitHubに登録したもの)
git config --global user.email "メールアドレス"
入力例
git config --global user.name "taro-yamada"
git config --global user.email "taro@example.com"
設定確認
正しく登録できたか確認します。
git config --global user.name
git config --global user.email
登録した内容が表示されれば設定完了です。
5. 基本的な使い方・コマンド集
日常的によく使うコマンドと用語を紹介します。
ローカルでの操作(自分のPC内)
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git init- 今いるフォルダをGitの管理下(リポジトリ)にします。
- 「ここから記録を始めるぞ」という宣言です。
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git add- 変更したファイルを「記録候補」としてステージングエリアに上げます。
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git commit -m "メッセージ"- 変更を歴史として確定(保存)します。
- メッセージには「データ読み込み処理を追加」など、変更内容を書きます。
# 例
git init
git add .
git commit -m "first commit"
GitHubとの連携(クラウドへ)
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git push- ローカル(PC)の履歴を、リモート(GitHub)にアップロードします。
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git pull- リモート(GitHub)の最新の変更を、ローカル(PC)に取り込みます。
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git clone- GitHub上にある既存のリポジトリを、自分のPCに丸ごとコピーしてきます。
- 例:
git clone https://github.com/ユーザー名/リポジトリ名
まとめ
- Git = 履歴を管理する「日記帳」
- GitHub = 履歴を共有する「置き場所」
- データサイエンス = 再現性の確保のために必須
最初はコマンド操作に戸惑うかもしれませんが、VS CodeやCursorなどのエディタには、クリック操作でGitを扱える機能(GUI)も備わっています。まずは「履歴を残す」習慣をつけることから始めてみましょう!
